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春の日 韓国版第10話


ウンソプ(チョ・インソン):笑って。


웃어요.
ウソヨ


笑顔で待つと、僕と約束したじゃないか。

웃으면서 기다린다고 나란 약속했잖아요.
ウッスミョンソ キダリンダゴ ナラン ヤクソクヘッチャナヨ


気を落とすチョンウンを心配し、笑顔でいて欲しい一心でチョンウンを見守るウンソプの言葉


「話して、どうしてチョンウンさんが母のピアノを?」

切なさのあまり思わずピアノのことを切り出してしまったチョンウンだが、ウノに全てを話すことで、ウノが母のことを思い出しショックを受けることを案じ、つい嘘をついてしまう。

「私が...ウノさんからピアノを買ったんです。
代金が払えなくて、その代わりに看病をしていました」

「僕が、他の誰かに母のピアノを売るはずがない」

「ええ、“他の誰か”にではなく“ソ・ジョンウン”に売ったんです」

何か新しいことが分かるのではと期待していたウノだったが、チョンウンがウンソプの恋人だと聞かされていたこともあり、この話に納得し、気を落としチョンウンに背を向け歩き出す。傍で見守っていたウンソプは“僕が行って全部本当のことを話す”といい出し、ウノの方へ向かおうとするが、
チョンウンはそうできるならとっくに話していたはず、と打ちひしがれる。おかしくなりそうだ、と言うウンソプに、自分もおかしくなりそうだと言い呆然と歩き出すチョンウン。がっくりと肩を落とし街を歩いている中、チョンウンは危うく事故に遭いそうになるが、ずっと彼女についてきたウンソプに救われる。お願いだから、自暴自棄にならずに、ウノの記憶が戻ることを待ってくれ、というウンソプの願いを聞き入れ、分かったと頷くチョンウンだった。

病院では取り戻せない記憶のかけらを探すウノが必死で同僚の医師や看護士を追求するが、口止めされている彼らは一切ウノに事実を話さない。ヒョンジンはいずれウノが取り戻すであろう母を 亡くした事故の記憶について、いつ話すべきか、頭を悩ませていた。ウノはミンジョンと話した後、突然断片的に記憶が戻る。ウンソプに自分の乗っていた車をあげて、その 後どこかへ行こうとしていたこと...ウンソプと共に彼の車のトランクの中を探してみたり、決死の思いで車を運転しようとするが、ウノがハンドルを握りアクセルを踏みしめた瞬間、訳の分からない恐怖が湧き上がり、それ以上車を進めることができない。自宅に戻り、事故に遭ったときに持っていた黒いリュックサックを探すウノ。ヒェリムが屋根裏部屋にある、と伝えるとウノはヒェリムの問いかけにも答えずに屋根裏部屋へと駆け込んでいく。とうとう黒いリュックを見つけたウノは中にある手帳を何気なく見ていると住所と電話番号が書かれたメモを見つける。


一方、別れを告げたはずのソンジェからヒェリムへと執拗に電話がかかってくる。ソンジェとの関係を断ち切りたいヒェリムだったが、相手は簡単に応じようとはしなかったのだ。


ウンソプはウノの様子をチョンウンに伝えると、ウノが自動車に乗ったことに対し、不安な表情を
浮かべる。先を急いだ治療は早すぎるのではないかと不安そうにまくしたてるチョンウンを穏やかになだめるウンソプ。笑顔で待つって僕と約束したじゃない?と話すとチョンウンは少し落ち着きを取り戻すのだった。ジャズバーで働き始めたチョンウンは、ウンソプのオフィステルを出て、ヒェジンと一緒に暮らすことにしたとウンソプに伝える。不機嫌な様子のウンソプは、何故オフィステルを出る必要があるんだとチョンウンを説得しようとする。チョンウンはウンソプの母ヒェリムのことや、ミンジョンやウノに誤解されたくないとウンソプに話す。

「おい、ソ・ジョンウン!」
ウノが呼んだのと同じようにウンソプに呼ばれ、驚いた表情でチョンウンが振り向くと、僕だって一度くらいそう呼んでみたいし、呼ばれてみたいよと甘えるウンソプ。チョンウンに親しみを込めて名前を呼んでもらえたウンソプは幸せそうな表情を浮べるのだった。

「今までウンソプさんと一緒だったから笑顔でいられたの...」
こう話しながら食事の支度をするチョンウンを見つめながら、彼女が愛しくてたまらないウンソプは思わずチョンウンを抱きしめる。

「少しだけ、1分だけ、30秒だけ、20秒だけ、10秒だけでいい...」

そこへ母ヒェリムが現れ、突然チョンウンに掴みかかる。ウンソプは母を制止するが、ヒェリムの怒りは収まらない。身の危険を感じたチョンウンは荷物を手に外に飛び出していく。ウンソプは生まれて初めて母の前で“いい子”を演じるのをやめていた。母がチョンウンに対し“あの女”という言葉を使うのを耳にしたウンソプは、

「二度と“あの女”と呼ばないでくれ。母さんでも、絶対だめだ!
 嫌だ、いい子でいるのも、いい弟でいるのも、もううんざりだ。こんな僕はもう捨ててくれ...」

初めて自分に逆らう様子に呆然とするヒェリムを残し、ウンソプはオフィステルを飛び出し、病院へと向かう。行き場を失ったチョンウンだが、ウンソプからの電話も受けようとせず、ウンソプはチョンウンの行き先が分からずに切なさが募るばかりだった。

そんなウンソプあてに病院に差出人名のない封書が届く。中身を確認し、愕然とするウンソプ。それは母の愛人ソンジェがウンソプ宛てに送り届けたヒェリムと愛人との写真だった。愕然として母に電話をかけるウンソプ。ヒェリムに対し、もう僕は本当に一生懸命生きてきた理由がなくなった、ありがとう、と告げると、白衣を脱ぎ捨て病院を後にする。

一方ウノはメモの住所に何か記憶を取り戻すきっかけがあると信じて、メモを手にその場所を尋ねることに。そんなウノをミンジョンが追ってくる。ミンジョンにどこへ行くのかと聞かれてもはっきりと答えないウノだった。心がどこか別の場所へ行っているようなウノに苛立つミンジョン。ごめん、悪かったと繰り返し、やり直そうと話すミンジョンにウノは怪訝な表情を浮かべる。

「一度去った男の元へどうしてそう簡単に戻れる?僕はそんなふうに出来ない」

「もう一度やり直したいの」

「いつ戻るの?」

「分からない」

「待ってる。待ってるから」

ミンジョンの言葉に返事をせずに立ち去るウノだったが、何か言い残したことがあるように戻ってくるとミンジョンを抱きしめる。戻ってくると約束しにきた訳ではなかった。

「約束はできない。...僕は怖い、僕が僕じゃないようで...。
 自分自身が他人のようで、生きているのに悲しくて怖いんだ」

「大丈夫よ、ウノ。戻ってきてね。
 どこにいくのか分からないけれど、あなたを待ってるから」


病院を出ようとウンソプが車に乗ると、突然若い女性が乗りこんでくる。暴力団に追われて怪我を負った様子の女性の逃亡を助けるウンソプ。近くで降ろしてちょうだい、ごめんね、車を汚しちゃって」と強がる女性の血を見たウンソプは彼女を病院へ連れて行こうとする。病院には行けないと話す彼女の方にウンソプが振り返ると、彼女は面識ある女性だと気づく。

姿を隠したチョンウンは亡くなったウノの実母の家を訪れていた。部屋をきれいに掃除しながらウノに語りかけるチョンウン。

「ここでお母様と一緒に食事をしたり、たくさん話をしたのね...」

ちょうどその頃、メモの住所を元にウノが実母の家へと向かっていた。実母の家を外から眺めているうち、懐かしい想いがこみ上げて涙が溢れだすウノ。ふと振り返ると母がウノの向かって歩いてくる...。