怪我を負い、病院には連れて行かないで欲しいと言って意識を失った女性の手当てを始めるウンソプ。
その頃チョンウンは、ウノの母のピアノ教室の前でウノの姿を見つける。もしかして、記憶が戻ったのかと問いかけるチョンウンにウノは首を横に振り、寂しそうな表情を浮かべる。
−記憶も戻らないのに、何故か涙が出るんです。...チョンウンさんはどうしてここにいるんです?ここはどこなの?
−どこかも知らず来たの?
−分からないけど、ただ住所があったんだ。ここは僕の母さんの家なの?鍵がかかってるから、どこかへ出かけたんだね。待たなきゃ。
−私が…話すことがあるのよ。お話しするわね。その方がいいわ、ウノさん。
チョンウンは、ウノさんが事故にあったときの車にウノの母も乗っていたこと、助かったのがウノだけだったことを伝えてしまう。母の訃報を聞いた途端、1人になりたいと閉じこもったウノは喪失感に包まれ、部屋の中でじっと悲しみを耐え続ける。翌朝1人部屋を出ていくウノに気づいたチョンウンが後を追う。
−僕が...ここをどうして知って来たのか、それも知ってるの?
−私の祖父がウノさんへ住所を渡したんです。ウノさん、その住所を知りたくて祖父のいる島へ来たんです。そして…
−僕が…来なければ….あんなことは起こらなかったんだね。
ショックを受けてチョンウンに背を向けるウノの後を、急いで荷物を手に追うチョンウン。
−話がまだあるの。ウノさんがまだ聞くべき話があるのよ。
−もういいんです。もう何があっても関係ない。他のことはどうでもいいんだ!僕のことはほうっておいてくれ。何も聞きたくない...
−ウノさん、聞いて、お願いよ。なぜあなたが私のことを気にしたのか話すわ。あなたがなぜ私を見るたび涙が出るのか、話すから。
−もう関係ないと言っただろう!!もう何もかもどうでもいい、母さんのこと以外は…あんたが誰だろうが、僕には関係ないんだ!
悲しさのあまり大声を張り上げるウノの様子に驚いたチョンウンは、ウノの名前を呼び後を追うが、ウノはチョンウンを置いて一人電車に乗り込んでしまう。
同じ頃、ウンソプは、チョンウンの下宿先の先輩の家の前、彼女を待ち続けていた。チョンウンが戻り、ウンソプに駆け寄ると、いきなりチョンウンを突き飛ばすウンソプ。
−何するのよ、どういうつもり?
−死にたいか?俺の手で殺してやるぞ!
−ウンソプさんやめて、私つらいのよ。死にそうにつらいの。
−俺と同じくらいつらいのか?
−ウンソプさん…
−俺はもうやめたよ。いい弟なんてやめた!兄貴も母も皆捨てる。皆捨てて君だけ手に入れるよ、俺。
−なぜ?もう駄々をこねないで。兄さんのところへ行って、ウンソプさん。私、兄さんを傷つけてしまったの...
−愛してる...愛してる...愛してる...愛してる!愛してる!愛してる!
−やめて...
−愛してるんだよ!君が好きでおかしくなりそうだ...一日中君のそばにいたくて心臓が破裂しそうだ。君と一緒にいられない時間は生きてもいられない!君は…俺の心臓をナイフでずたずたに切り裂いてるんだ!血が流れてるんだよ。兄貴なんだどうだっていうんだ、俺が死にそうなのに!
−それで、どうしたいの?だから私が、どうしたらいいというの?ウンソプさんの心臓は私と同じよ。私も血が流れてるの!私も他のことはどうでもいいの、ウノさん以外は!お母さんのことを話しちゃったの。彼が傷つくのは分かってたのに、私が耐えらず、自分のためにあの人を傷つけたのよ!後悔してもしかたないわ、もうしてしまったんだもの。私ができるのは待つことだけだから、私ができることをするのよ。ウンソプさん、こんなことは考えたくないけれど、ウノさんが永遠に私を思い出さなくても私がウンソプさんへ行くことはないの。あなたは彼の代わりにはなれないからよ!謝らないわよ、謝ることさえ申し訳ないから…さよなら、ウンソプさん。
チョンウンの決定的な言葉に、ウンソプは言葉が見つからず、途方にくれたまま家に戻る。そんなウンソプに、母が車を買い与え、キーを渡そうとするが、ウンソプはキーを受け取らず、母親を拒否して家を飛び出していくと、以前手当てをした女性キョンアの家に向かう。
家に戻っても食事も取らずに部屋に閉じこもったウノは、ようやく部屋の鍵を見つけてドアを開いた父の前で意識を失って病院に運ばれる。一方、チョンウンは祖父の説得にも島に帰ろうとしなかった。事情を聞いて病院へ急いだウノは、その場に居合わせたミンジョンとウノとのことで言い争ってしまう。ウノの状況を知らせるためにも、家を出た行方の分からないウンソプの携帯電話へ何度も電話をするチョンウンだが、ウンソプの電話に出たのはキョンアだった。
ふたたびウンソプに電話をしたチョンウンは、ウノが病室からいなくなったとウンソプに涙声で話す。屋上に行ってみてというウンソプの言葉に、早速屋上に向かうチョンウン。その頃、連絡を受けたミンジョンとウンソプも病院へ向かっていた。
屋上でウノを見つけたチョンウンはウノの手を強く引き、立ち上がらせると、いきなりウノを叩き始める。
−ねえ…泣くこともせず、何してるの?大声で泣けばいいのよ、泣いちゃってよ!お願いだから!知ってる?これはあなたが教えてくれたことよ。あなたが私に泣くことを教えてくれたんでしょう?あなたのお母さんは亡くなったの。もうこの世にいないのよ。だから大声で泣き叫んで取り乱して何もかも忘れるくらいに泣けばいいのよ!あなたと一緒に事故に遭い、あなただけが生き残ったのよ!お母様だけ亡くなったのよ...お母さんが亡くなったのに涙も流さないなんてひどすぎるわ!
チョンウンの心からの訴えに、ウノは心の奥に埋めていた感情があふれ出し、涙が次々にあふれ出てくる。