車を走らせるウノを見かけたミンジョンは、咄嗟にウノの後を追い、空港に着くとチョンウンの名を呼び彼女を探し求めるウノの姿を見つける。飛行機のチケットを買おうとするウノを引き止めるミンジョン。
−ミンジョン、とうとう全て思い出したよ。失われていた部分は全て“チョンウン、チョンウン、チョンウン”だった!
興奮した様子のウノの表情に、ミンジョンは不安になり、探し出した父を迎えに一緒に行って欲しいと頼み、ウノを困らせる。一緒にいて欲しいというミンジョンに答えられないウノだったが、一週間だけそばにいてほしいと言う彼女の寂しそうな表情に、その日はチョンウンに会いに行くのを諦める。
一方、愛人が夫の病院に乗り込み、息子のウンソプによって怪我を負ったことを知ったヒェリムは、夫の前で再び自殺を図り、病院に運び込まれる。傷が癒えたヒェリムの恋人は、ヒェリムの夫であるヒョンジンが、自分の体裁よりも息子を守ろうとする毅然とした態度に、ウンソプを許す気持ちになり、病院を去る。 憔悴しきったヒョンジンの前に、記憶を全て取り戻したウノが尋ねてくる。
−あの時、事故のとき、気を失っていた中で、一瞬だけ意識が戻りました。その時、僕は母の胸に抱かれていました、父さん。母さんが、全身で僕を守ってくれたんです。結局、僕は助かり…そして母さんは…。僕がもう治ったという話を申し上げているんです。母さんを連れて島に行き、チョンウンと暮らしたかったんです。僕は父さんの元を離れるつもりです、許してください、父さん。
−私が、お前に...許してもらえるのか?
−母さんが、父さんの選択には理由があったから、父さんを憎むなと仰っていました。ウンソプを探します、父さん。自分が大変なことをしたとどこかに隠れているんです。不安なはずですから…
父に深く頭を下げ、院長室を出るウノ。その頃、ウンソプはチョンウンのいる島へ向かっていた。ウンソプが島に着く頃、チョンウンは不安そうな表情で島を離れる祖父を心配そうに見送っていた。チョンウンはウンソプが島まで来たことより、顔色が悪くひどく落ち込んだ様子であることを心配する。
−話して…その顔はどうしたの?
−君に会うまでは...他の人のことなんてどうでも良かったのに...君を愛してからは、他の人のことも見えるんだ。君を忘れようとすればするほど他の人を傷つけてしまう。1人で傷つけばいいのに、他の人まで巻き込んでしまうんだ。死んでしまいそうで…すごくすごく会いたくて、死んでしまいそうだったから、来た..追い返さないで…くれ。帰れとは言わないでくれ…。死んでほしくないなら追い返さないでくれ。おとなしくしているから、おとなしくすると約束するから、追い返さないで。
−私が追い返さなくても多分、ウンソプさんが帰りたくなるはずよ。
チョンウンは、ウンソプと二人きりの部屋ですくっと立ち上がると、ウノとの思い出のプレーヤーやピアノに歩みよる。
−これはウノさんが直したの。このピアノはウノさんがくれたの。この白衣はウノさんが着ていたの。
呆然とした表情でチョンウンを見つめるウンソプにチョンウンが続ける。
−ソウルで、ウンソプさんのせいですごくつらかったわ。ウンソプさんを避けてここに来たのよ!ウンソプさんに会うのがつらいから逃げてきたのよ。ウンソプさんにここで会うために帰ったんじゃないのよ。ウンソプさんに会って、またウノさんに会って....またウンソプさんに会って、ウノさんに会って...頭がおかしくなりそうだったのに...ここに戻ってもあのプレーヤーに、あのピアノに白衣、ありがたくて、申し訳なくて、恋しくてつらくて一日中二人の間を行ったりきたりでめまいがして倒れそうだったのよ!
思いがけないチョンウンの言葉に、ウンソプが目を輝かせて立ち上がる。
−どういう意味なの、それ?それはどういう意味?それは…どういう意味なの?心が揺れたの?そうなの?
−そんなこと聞かないで。
−揺れていたのかって聞いてるんだ!
−関係ないわ!心が揺れるのは私の勝手なの!ウンソプさんに関係ないから聞かないで!
ウンソプはチョンウンを抱きしめ、愛しいチョンウンの髪に優しく触れる。
−それで十分だよ…分かったよ。僕は一度も…君の心をつかめたことなどないと思っていた。一瞬だけでも思ってくれて、嬉しいよ、最高の気分だよ。もう何も望まない…追い出さないで、苦しめないから。君の決定のとおり従うよ、約束するよ。
−ウンソプさんがここにいる間、私絶対ウンソプさんに優しくできないわ。
−構わない。
−ここにあるウノさんの思い出に苦しむわ。
−構わないよ...。
ソウルでは、ミンジョンが病気で先が長くないであろう父のためにウノと婚約したと嘘をつき、ウノに協力して欲しいと頼んでいた。ミンジョンの希望で結婚写真を撮るウノの表情は、終始曇ったままだった。
島では、伸びてしまった髭をそるようにチョンウンに言われたウンソプが、チョンウンに自分の髭を剃って欲しいと甘える。
−やってくれないと剃らない。やって…
あきれたように笑った後、ウンソプの髭を剃るチョンウンをウンソプは幸せそうに見つめる。島の人とふれあいで、徐々に優しさを取り戻すウンソプはある日ピヤン島診療所にかかってきた1本の電話に明るい声で応じる。電話の相手はウノだった。電話口にウンソプが出たことで動揺したウノは何も言わずに電話を切ってしまう。ショックを受けたウノの前に、島から来たチョンウンの祖父が姿を見せる。事情を知ったチョンウンの祖父はウノに島に戻らないように告げ、ウノの父が心臓病を患っていること、そして精密検査を断っていることも知らされる。
−おい、腹が減った飯をくれ!
ままごとをしたいというヒョジンの願いに答えながら、ウンソプはチョンウンに母の役を頼む。父と母、幼い子供の三人家族が食卓を囲むかのように、三人は仲良く食事を始める。父母が傍にいないヒョジンは嬉しそうに二人をパパ、ママと呼び、ウンソプも嬉しそうにヒョジンとチョンウンを見つめながら、その瞬間を慈しむように島での時間を過ごす。
事情を知ったウノは、院長室へ向かうと、チョンウンを連れて来ると話す。父は、島の診療所で働くのは自分の夢でもあったと言い、ウノに心配しないで島に行くようにと話す。父の言葉に、自分につらい思いをさせないでくれと答えたウノは、戻ったらすぐに検査を受けてくださいと父を説得する。
一刻も早くチョンウンの元へ駆けつけたいウノだったが、ミンジョンの父が亡くなり、彼女にずっと付き添うことになる。
島ではウンソプの存在を好ましく思わないチンテが、チョンウンにウンソプは他の女性と同棲していたと告げ口をする。事情を知ったチョンウンは、掃除をしながらさりげなくウンソプに文句を言い始める。
−そんなのいけないことよ、ウンソプさん。
−嫉妬してる?
−何ですって?
ー嫉妬でもしてくれたなら、すご〜くいい気分だよ!嫉妬なら嫉妬だと、嫉妬でないなら違うといってよ、早く。3つ数える間に答えないと、自分の言いように解釈するぞ。
−...ちょっと...
1,2と数え始めたウンソプがいきなりチョンウンを抱きしめると、チョンウンは力いっぱいウンソプを突き飛ばし、ウンソプは床の上に倒れてしまう。
−ウンソプさん、こんなの耐えられない!帰って、帰っちゃってよ!ウンソプさんのせいで、何も考えられないわ。いいえ、結論は出たの。ウンソプさんじゃない。私が錯覚したの。ウンソプさんも兄さんのせいで心を痛め、私もウノさんのせいで胸が痛くて、二人は同じ人に心痛めていたから、ただ情のようなものが移ったの。そうだったのよ。だから私に構わないでよ、ウンソプさんさえ我慢してくれたら私は何の問題もないの、本当に問題なくなるわ!
チョンウンの言葉を深刻な表情で聞いていたウンソプが悲しそうな表情のまま立ち上がる。
−本当?
−ええ、そうよ!
傷ついたウンソプは荷物をまとめ帰り支度を始めると、部屋を飛び出し船着場に向かい、座り込んだままのチョンウンの瞳から涙が溢れ出す。船着場まで行ったウンソプは船には乗らず、チョンウンの元へ戻ってきてしまう。涙を流してチョンウンを見つめるウンソプはたまらずチョンウンを抱きしめてしまう。
−行けないよ、どうしても離れられない...俺は…ダメなんだよ、君なしでは...
−どうすればいいの?一緒にいてもつらいし、会わなくてもつらいの...耐えられないわ...
心揺れるチョンウンと、彼女の心の中に少しだけ自分の場所が出来たことを知ったウンソプは、距離を保ちながら傍にい続ける。そんな中、ウンソプが突然ヒョジンの母かもしれないという女性のことを思い出し、チョンウンに伝える。チョンウンが事情をチンテに知らせようと診療所を出ようとしたその時、ウノからの電話が鳴る。電話に出たチョンウンに、ウノがかつてチョンウンを呼ぶときの懐かしい呼び方で語りかけ始める。
−チョンウン…おい、ソ・ジョンウン!