記憶を全て取り戻したウノは、助けが必要だった同級生のミンジョンを自宅まで送り届けた後、車に乗り込みすぐにチョンウンに電話をかける。
−チョンウン!おい、ソ・ジョンウン!ミンジョンには悪いが最終便までに葬儀が終わることを一日中願っていたよ。結局罰が当たった...明日の始発便を待つしかないな。お前、驚きのあまり口が開いたままなのか?それで何も言えないんだろう?
ウノの言葉通り、島の診療所で電話を受けたチョンウンは驚きと嬉しさのあまり何一つ言葉が出ずにただウノの声を聞いていた。
−...どこまで思い出したの?
−すべてだよ、すべて。島のことも、診療所のことも、君のことも、全部だ!君がくれたマフラーを巻いて母のところへ行ったことも、母を連れて君のところへ行って3人で一緒に暮らそうと夢見ていたことまでも、全てだ...。今は君のこと以外何も考えられない。最初からこうだったら良かったのに...最初からこうだったら、君もウンソプも苦しめなくて済んだのにな...チョンウン、聞いてるのか?うなずきながら涙をこらえてるんだな。僕の世界で一番愛する人が二人そこにいる。僕さえ知らない顔をすれば、3人とも傷つかずにすむとも考えたけれど...それはできない。君が必要だ…どうしても。これから君のところへ行くから…
涙を流しながらウノの言葉にじっと耳を傾けていたチョンウンは、話し中に大きな衝撃音が聞こえ、その後ウノの電話が通じなくなってしまい、不安に駆られる。自宅に戻ったウノの車の前に、ある男の車が故意に飛び出してきたのだ。継母の愛人の弟にウンソプと間違えられたウノは、突然殴りかかられ、大怪我を負って病院に運ばれる。胸騒ぎがしてどうしようもないチョンウンは、ウノのところへ行くとのメモを残し、ウンソプに一言も言わずに島を離れ、ウノの元へ急ぐ。目を覚まし、チョンウンの残したメモを見たウンソプは、迷わずチョンウンの後を追い島を出る。
怪我を負い入院中のウノは、チョンウンに連絡を取ろうと病院の廊下でチョンウンの携帯電話に電話をかけると、目の前にチョンウンが現れる。
−電話してたんだ、心配してると思って。ちょっと事故があって…大したことじゃないよ。始発便は君じゃなくて僕が乗るはずだったのにな。
明るくふるまうウノの痛々しい姿に、チョンウンは何も言えずに涙を浮かべウノをじっと見つめる。
−大丈夫だよ...大丈夫だって。本当は会ったら抱きしめてあげたかったのに、この手が…
チョンウンはそんなウノを優しく抱きしめ、ウノの痛みを想い涙を流す。
−死んでしまうんじゃないかって…生きていて欲しいと、それだけ祈ってきたわ。私の代わりにあなたが罰を受けたのね...ごめんなさい、ごめんなさい、本当にごめんなさい…。
ウンソプがソウルに着き、チョンウンの下宿先を訪ねると、ちょうど部屋に戻っていたチョンウンから電話が入る。不安に包まれるウンソプの前に、チョンウンが笑顔を浮かべて駆け寄ってくる。
−ウンソプさん...私もう迷わないわ。ウンソプさんのことは考えない。ウンソプさんが笑顔で楽しく暮らしてくれたら、嬉しいの。私もそうするわ。一晩のうちに天国と地獄を駆け抜けて、そう決めたの。堂々たる決断よ。ありがとう、そしてごめんなさい、ウンソプさん。元気でね。
ウンソプはショックのあまり一言も話すことができず、呆然とチョンウンの後姿を見送るが、チョンウンの姿が消えると突然大きな声でチョンウンの名を呼び、幼い子供のように泣きじゃくる。
−チョンウン…チョンウン、チョンウン!チョンウン!チョンウン!!
喪失感に包まれたウンソプは、キョンアの部屋に戻っていく。ウンソプの帰りを待っていたキョンアは、深く傷ついたウンソプを何も言わずに受け入れる。
その頃、ウノとチョンウンは初めてのデートに出かけていた。ショッピングや映画を楽しむ二人だったが、チョンウンはどこか無理をしたような笑顔を浮かべていた。心の中にいるウンソプを簡単には消すことが出来ないことを、ウノもまた悟っていた。ウノはチョンウンの気持ちを全て受け止めながら、結婚を申し込む。
−生きるか死ぬかも分からなかったこの僕を、見守ってくれてありがとう。助かってもこの先どうなるかも分からなかったはずなのに、僕の傍にい続けてくれてありがとう。記憶を失っている間、君がどんなにつらかったのか分かるよ...その間君を苦しめたことも、つらかった君の力になったのは僕じゃないことも、分かってる。だから君の心が僕だけに向かないのも分かるし、今君が僕の前にいることが罪滅ぼしだということも分かってる。僕が君が必要だといったけれど、その言葉を拒否できない気持ちも全部分かってる。それでも君が必要だ。一緒に暮らしたい、君と…一緒に暮らしながら君の迷いを消してみせるよ。心から笑えるようにしてあげるから...
ウノから贈られた指輪を手に、チョンウンは心から喜べない自分の心に戸惑いを隠せない。ウンソプは、チョンウンの心が自分に戻ることはないと感じ、キョンアと共に生きていこうと決心し、チョンウンの部屋を見上げて別れを告げる。
−さよなら、僕の愛しい人…もう二度とここには来ないよ。
ウンソプはウノを体育館に呼び出し、二人はバスケットボールを始める。ボールを介し、二人はこれまで抱えていた感情をあらわにする。
−家に帰って来い。
−お前からそんな話を聞くために、呼び出したんじゃない。
−お前、父さんが病気だと知りながら、そうしてるつもりか?
−お前がいるだろ、お前が。俺に面倒かけるなよ。
−俺もお前に頼んでるんだ。帰って来い!
−父さんにはお前がいるんだから、俺は父さんの心配なんてしない。
−父さんが検査を受けて手術が必要なら手術をして、チョンウンと島へ行く。父さんを頼む。結婚する、チョンウンと。
−そうなのか?結局結婚するのか?二人とも理解できない。到底...到底理解できないけれど、チョンウンを笑わせてやれ。あの人を泣かせずに笑わせてやれ。泣かせたら、この手で殺してやるぞ。その話をしたくて呼んだ。
言うべきことを言ったウンソプは、ウノに背中を向けて歩き出すが、そんなウンソプにウノが突然ボールを投げつける。
−生意気なこと言わず家に帰れ!ウンソプ、ウンソプ!
−家に戻って俺にチョンウンの義弟になれと?おい、自分の愛する女の義弟になんて死んでもごめんだぞ!
−だから俺が消えるんだよ!俺がお前の兄じゃなきゃいいんだ。俺とお前が縁を切ればいいことだ!
−コノヤロウ…
二人はつかみ合い、争い始める。ウンソプからチョンウンと過ごした島での日々について聞かされたウノは、激しい嫉妬で心が揺れ、それまで見せたことのないような姿でウンソプに殴りかかる。
−ウンソプ...チョンウンを忘れろ。今度の日曜日にチョンウンが家に来る。正式にあいさつに来るんだ。だから、忘れろ。
ウンソプとの喧嘩で怪我をしたウノは、チョンウンの職場を尋ねて行くと、彼女に不安な気持ちを打ち明けながら、傷の手当てをしてもらう。
−チョンウン、僕はうぬぼれて生きてきたようだ。僕は嫉妬なんかしない人間だと思っていた。でも違ってた。頭に血が上って、怒りに満ちて、不安で、怖いんだ。君が僕を不安にするんだ...
−ごめんなさい...
−僕も、ごめん…ごめんよ。だから僕たち、早く親になろう。そうしたらきっと平気になるさ。
抱きしめあっても、まだ不安が消えない二人は、ようやく記憶が戻った状態で再会できた喜びすら感じることすらできずに悩み続ける。
日曜日、チョンウンがウノの家に挨拶に向かう頃、ウンソプはある考えを胸にキョンアを連れてバスに乗り込む。どこへ行くのかと尋ねるキョンアにウンソプが事情を話すと、腹を立てたキョンアが途中でバスを降りてしまう。ウンソプが後を追うが、キョンアの怒りは収まらない。
−あなた、私の名前知ってるの?
−キョンア
−名字は?私の年は?故郷は、両親は、兄弟は?私が何故水商売をしてるか知ってるの?連れて行って恥をかかせたいの?いつ私が結婚したいなんて言った?最低よ!
−今から知ればいい。結婚してから知ればいいよ。わかった、知ってから結婚しよう。名字にに故郷、両親に兄弟、水商売の理由も!
−本気なの?結婚は本気かって?
−本気だ。
−どうかしたの?愛してるの?
−いいや...
悔しさのあまりウンソプの頬を叩くキョンアだったが、結局ウンソプと共に家に向かう。ウンソプはキョンアを連れてウノとチョンウンが居る自宅へと戻るが...