ウノはウンソプのオフィステルの部屋に遊びに来てウンソプが作ったプラモデルをみて楽しそうにしていた。「お兄さんにはこんなことできるはずないよ。コ・ウノがやったんだよね?」とウンソプに話すウノ。ウンソプは子供のようにむきになって怒り出し、2人は
少年の頃の兄と弟に戻ったかのようにふざけ合いを始める。そんな中、子供の頃ウンソプが隠してしまったウノの宝物のアトム(赤い飛行機のおもちゃ)を見つけたウノはとたんに表情を曇らせる。
「あ、兄さん、これは...」
「これ、ないな〜って心配してたんだよ。隠したの?」
「僕が隠したんじゃないよ〜」
「レプリカの中で始めて上手にできた、一番気に入っていた飛行機だったのに...」
「でも一度も触らせてくれなかったじゃないか...僕のおもちゃも返してくれよ」
2人はなんだかんだと言い争いを続けるが、ウノはふとアトムをウンソプに手渡すと「お姉さん、お腹すいた〜」と突然席を立つ。食卓ではチョンウンが得意の卵料理を作って2人を待っていた。元気の無い様子のウノを心配したチョンウンに、ウンソプはウノは卵が嫌いなんだ、と伝える。その言葉に驚いたチョンウン。
「卵、嫌いだったのね...知らなかったわ。ごめんね」
島ではウノがチョンウンの卵料理を嫌がる様子など全くなかったため、チョンウンは驚きをかくせない。傷ついた様子のチョンウンを心配したウンソプは「何で“ごめん”なの?僕は卵が大好きなんだ!」とチョンウンを元気づけるかのように嬉しそうにチョンウンの料理を頬張り始める。ウノはチョンウンをじっと見つめると、お姉さんは誰なの、と問いかける。
「チョンウン姉さんは誰なの?本当は誰なの?コ・ウノにとって重要な人なの?」
「そうよ、コ・ウノが気が付いたら、私も一番初めに聞きたいことなの。
チョンウン姉さんはウノにとって重要な人なのか、
重要ならどれほど大切な人なのか、聞きたいのよ。
私もずっと気になっていることなの。だから早く良くなってね...」
そこへミンジョンがやってくると、気を落とすチョンウンとは対照的にウノは楽しそうにはしゃぎだす。寂しそうなチョンウンをウンソプは心配そうに見つめていた。外に出たチョンウンは楽器店のピアノの前、1人寂しそうに立ち尽くす。寒いのに1人で何をしてるの、と後を追って来たウンソプがチョンウンに
語りかけ、コートを羽織らせる。
「ウノさんが卵嫌いだったなんて...。良く食べていたのよ、島で。嫌いだったなんて」
こう言って肩を落とすチョンウンにウンソプはそんな話を聞くのが楽しいと思うの、やめてくれと腹を立てるがチョンウンはウノのことで頭がいっぱいになり、ウンソプの言葉の本当の意味には
全く想いが及ばない。
「やめたいわよ、あの人を見るととてもつらいの。
戻りたい、あの島にあの人がいた頃に...。
私のかばんにはあの人にあげたマフラーがあるんですよ。
でも今戻っても、あのときとは違うのね」
「お願いだ やめてくれ...僕にどうしてそこまでできるの?」
ウノの話ばかりするチョンウンに切なさがこみ上げるウンソプだった。その後のウンソプは、チョンウンを忘れるかのように病院での仕事に没頭し始める。
ウノとミンジョンは2人でゲームセンターに遊びに出かけ、ウノが昔のゲームを探し求めてミンジョンを困らせる。その後2人はカラオケに行き、ウノはミンジョンに
すすめられたビールの味が懐かしく感じたように、思わず飲み干してしまう。
一方ウンソプの母ヒェリムは、自分の電話に全く答えようとしないヒョンジンに、がっくりと気を落としていた。愛人のソンジュンと一緒に過ごしていてもヒョンジンの言葉「この世にいない人を思って涙を流しても、おまえには何も言う権利はない」を思い出してしまい、胸が痛むヒェリムだった。いつの間にかヒョンジンを心から愛してしまった自分に戸惑うヒェリム。
近づいた当初はお金が目当てだったはずなのに、と。
島のタルホは、連絡のつかないチョンウンが心配でたまらない。携帯電話に全く応答しない様子に何か良くないことが起こった予感がするタルホ。ちょうどその頃、チョンウンは高熱でうなされていた
のだった。
「チョンウン、寝てるのか?ソ・ジョンウン!」
チョンウンは高熱にうなされ朦朧とする中、ウノの声が聞こえてくるような錯覚をする。2人で母を想い、声を上げて泣いたあの海での出来事
を昨日のことのように思い出していた。
酒に酔ったウノはたまたま間違いで入った他の部屋で島の女性ユンスクに出会うが、記憶をなくしたウノは全く気が付くはずもない。
見かけたことのあるウノの姿に、あわてて部屋を飛び出すユンスク。
彼女はチョンイを島に置いて逃げ出した母親だった。彼女が逃げる際、落としていったショールを手渡
そうと追っていったウノは、どこかで見たことのあるような女性との出会いで、記憶が断片的に脳裏をよぎるが、直後に突然の頭痛に襲われはっきりとした記憶は戻らない。
ウノは酔いがさめてくると、ミンジョンの当時の悲しい境遇を案じはじめる。
「ミンジョン...あのとき痛かっただろ?あのとき手術室へ行ったじゃないか。
お前のお父さん、今でも叩くのか?」
思わぬウノの言葉に、その頃の悲しみを思い出したミンジョン。“私全部忘れちゃった。覚えていたくないの”と話をはぐらかそうとする。ごめんね、と心を痛めるウノの様子を見たミンジョンは、心から自分を心配してくれるウノの優しさに心を開き“触ってごらん”と、ウノに頭の傷に触れさせる。
「すごく痛そう。痛かったろう?」
温かいウノの言葉にミンジョンは涙をこらえきれない。“泣くなよ、泣くな”そういいながらウノも一緒にミンジョンと声を上げて泣き出すのだった。
チョンウンを忘れようと仕事に没頭している病院のウンソプの元へ、バンドのメンバーから連絡が入る。その夜ステージでピアニストを務める予定のチョンウンが来ていないことを知らされる
が、自分と彼女とは何も関係ないから、聞かないでくれ、と電話を切ってしまう。
そう伝えながらも、本心ではチョンウンのことが気になってたまらないウンソプ。次の朝になり電話で確認すると、結局チョンウンが現れなかったことを知ったウンソプ。
チョンウンに何かあったのではと心配で、彼女の元へ急いで車を走らせると、前方を走っている車にぶつかってしまう。ところがウンソプはチョンウンが心配なあまり
、そのまま車を置いて走り出す。合鍵で部屋に入るが、チョンウンの姿はどこにも見えない。床に落ちている血の跡に気がついたウンソプはその跡を
辿っていき、洗面所のドアを開くと、そこにはチョンウンが意識を失い倒れていた。
チョンウンの手当てをして、床に落ちていた血をきれいに拭き取り、食事の支度をする
ウンソプ。血を見ても吐き気が襲ってこないことに気が付いたウンソプは自分の変化に驚きを隠せない。チョンウンの様子見ながらたまらず彼女に語りかけるウンソプ。
「どうしてあの日僕の涙を拭いたの?
君が先に僕に(優しく)したんだよね。
でも約束するから。僕はウノの弟だから、兄さんの女性には何もしないよ」
「血を見てももう吐かないよ。良くできたって言ってくれよ」
チョンウンを痛いほど愛してしまい、その心の行き場のなさに胸を痛め、涙を流すウンソプ
。ふと立ち上がり、諦めるように部屋を出ようとするとチョンウンの声が聞こえてくる。
「良く出来たね...良く出来たね」
うわごとのようにつぶやくチョンウンの言葉に、ウンソプの涙が次から次へと溢れてくる。
病院では、検査を受けたウノが担当医に時々急に悲しくなって涙が出ることを話していた。
「頭が痛くなって...何か思い出しそうになって涙が出そうになると、頭が痛くなるんです」
そこへチョンウンを心配したタルホがソウルの病院へやってくる。かつて共に過ごしたウノが全く自分を覚えていない様子にタルホは悲しそうな表情を浮べるのだった。タルホはその後、チョンウンの部屋を訪れると“島へ帰ろう”とチョンウンを説得する。タルホは疲れたチョンウンの様子を見て心から心配していたのだ。タルホと一緒にウンソプのオフィステルにやってきたヒョンジンはウンソプが食事の支度をした様子
に気が付くと、微笑みを浮べる。
少し回復したチョンウンは、真っ先にウノの元へと足を運ぶ。“病院に連れて行ってあげますよ。元気でしたか?”チョンウンとウノは地下鉄に乗り、病院へ向かう。
「お姉さん、とても具合が悪かったの?」
「少しね」
チョンウンはウノに島の家に帰ることを告げる。
「おじいさんが帰っておいでって。戻って待っていようって」
“誰を?”とチョンウンを真っ直ぐに見つめて問いかける様子にチョンウンの胸はますます締め付けられる。ピアノのことをきっかけに何とかウノの記憶が少しでも戻ればと、自分がピアノを弾くことを話すと、ウノは“僕の母さんもピアノを弾くんだ”と母親を思い出す
だけだった。そのとき、ウノがチョンウンの手の傷跡
(噛み傷)にふと目をやると、またひどい頭痛が襲ってくる。地下鉄をおりる2人。
“どうしたの?どうしたのよ。話して”とうずくまり苦しむウノに必死で語りかけるチョンウン。
「頭も痛くて、胸も痛くて、涙が出るんだ...。お姉さんは誰?お姉さんは誰なの?」
2人は一緒に涙を流し、お互いの痛みを抱えながら抱きしめ合うが、チョンウンは島でのことは決して自分から話さなかった。
病院に着いたチョンウンはウンソプに会いに行き“ありがとう”と言うと、島に戻ることをウンソプに伝える。
「おじいさんが戻って来いっていうんです。
おじいさんの言うとおり、戻って待とうと思います。
私が出来ることは何もないし、ウノさんにはミンジョンさんもいるし。
(中略)私に優しくしてくれてありがとう」
そう言ってウンソプから遠ざかっていくチョンウンをたまらず追うウンソプ。
「兄さんの記憶が、少しずつ戻ってきたら...どうします?答えて!」
「そんなこと考えられません」
「万が一だけれど、僕が(島へ)行ってもいい?」
「あなたは実の弟だもの、お兄さんと一緒にいて下さい」
チョンウンのウノを想う気持ちの強さに、ウンソプはそれ以上何も言うことはできなかった。
チョンウンが島へ戻る準備を始めた頃、オフィステルにウノ、ウンソプ、ミンジョン
が集まった。チョンウンからピアニストを辞めたことを聞かされたウンソプは、寂しさが募るがどうすることもできない。
ウノと話していたウンソプはいつの間にかウノが自分を「お兄さん(형ヒョン)」ではなく「ウンソプ」と呼び始めていることに気が付く。そしてガンダムに夢中だったウンソプに対し“遊んでばかりいては大学にも行けないぞ”と口にするウノにはっとする。驚いたウンソプはウノを部屋から連れ出す
とウノに問いかける。
「今何と言った?今年は何年?」
「1995年...」こう言いかけると、ウノは突然意識を失いその場に倒れてしまう。