突然目の前で倒れたウノを負ぶったウンソプは病院へと急ぐ。タクシーを拾うため車へと近寄るがウノが車を怖がることを思い出し、負ぶったまま歩いて病院へとゆっくりと歩いて向かうのだった。兄を背負ったウンソプは、幼い頃の記憶が蘇ってくる。
「大丈夫かい? 心配するな、車には乗らないから...病院までこのまま歩いていってあげるから。 あの人がそういった通りに...。ジオラマだって兄さんが先に始めたから僕も兄さんより上手に作りたくて始めたんだ。どうして兄さんが知っていることは皆良く見えるんだろう。チャップリンだって、レインマンだって、全部兄さんの為に見たんだよ。
だけど..あの人..あの人まで僕が初めて好きになった女性まで兄さんと関係があったなんて知らなかったよ。僕が見つけた女性だと思っていたのに、初めて好きになった女性まで兄さんの女性だったなんて本当に知らなかったんだ。
お前が本当に憎らしいよ..正直。本当に...嫌いだよ」
「早く戻ってきてくれ、僕と遊ぼう」こういって涙を流すウンソプの背中の温かさに身を任せていたウノはふとウンソプの顔に手を伸ばすと、そっと涙を拭くのだった。
一方、島へ戻るための荷物をまとめていたチョンウンはウノのために編んだマフラーを取り出すと、ウノの言葉を思い出していた。
「マフラー、暖かいよ。世界で一番暖かい」
チョンウンの元を訪れたミンジョンはどこへ行くのかと尋ねる。ミンジョンはチョンウンとウンソプが恋人同士だと錯覚している様子で、2人の出会いについて少女のようにチョンウンに問いかける。自分とウノとの出会いについてだとばかり考えていたチョンウンはミンジョンの口から思いがけないウノとの過去の恋について聞かされる事になり、ショックを受ける。
「ウノさんと..」
「し〜っ。このことはウンソプも知らないのよ。ウノと私のことは」
チョンウンはウノとミンジョンのことはもう終わった関係なのかとだけ問いかけ、2人の今の関係について確認するのだった。
記憶を取り戻し始めたウノに、ウンソプの心情は揺れていた。どこまで記憶が戻ったのか、チョンウンを思い出したのだろうか...。そんな中、突然ウノがチョンウンの元へやってくる。
「どこへ行っていたの?1人なの?1人で来たの?」
普段と様子の違うウノを心配したチョンウンだが、そんなチョンウンに対してウノが聞いたことはミンジョンの行き先だった。彼女は帰りました、と伝えると肩を落として去っていくウノの姿にまだ自分を想いだすことのできないことにチョンウンの気持ちは深く沈みこむ。
〜ウンソプさん、先生に挨拶しないで行きます。
電話します。本当にありがとう、ありがとうのほかに言う言葉が
見つかりません。ありがたくて、ありがたくて、本当にありがとう〜
ウンソプから渡されていた携帯電話を置いて家を出たチョンウンは書置きだけを残していった。チョンウンを追い急いで空港へ向かうウンソプ。空港に着いたウンソプはベンチにポツンと座っているチョンウンを見つける。涙を流すチョンウンに優しく声をかけるウンソプ。
「飛行機に遅れたから、そんなに泣いてるの?
様子のおかしいチョンウンを優しく抱きしめるウンソプ。
ウンソプはチョンウンを笑顔にしようと携帯電話の着信音であれこれと遊びはじめる。
「これから僕からの電話はこの音がするんだよ。...名前、“弟さん”って何だよ。」
ウンソプの温かい気持ちに、ようやく笑顔を取り戻すチョンウン。
「さっき空港でウンソプさんが私の前に来てくれたとき
何も言葉がでなかったけれど、嬉しかった。
ありがとう、道を見失ったときに知ってる人に出会った気分。
本当にありがとう。
ウンソプさんには、ありがたくて、ありがたくて」
「ありがたいならお返しをして」こう話すと、ウンソプは閉店後のジャズバーにチョンウンを連れて行くと、何でもいいから弾いてとリクエストする。ピアノを弾くチョンウンを幸せに見つめながら兄へと許しを請うウンソプだった。
記憶の断片を取り戻したウノはミンジョンの元をたずねていく。
「1人で来たの?何の用?朝から」
驚いた様子のミンジョンの手をとり、自分の胸に手をあてるとウノは「ここが痛むよ」と、ミンジョンを見つめる。ウノの記憶が少し戻ったことを悟ったミンジョンは気まずい表情を浮べる。
「僕を捨ててアメリカへ行くこと...
それで僕たちはどうなったの?
どうなったんだよ?」
外に出て話そうと、車に乗ろうとするミンジョンだが、車を怖がるウノはミンジョンの車に乗ろうとしない。また後で来るとその場を去っていってしまうのだった。
ジャズバーの控え室で目を覚ましたチョンウンは急いでその場を去ろうとするが、ウンソプから飛行機に乗る必要はない、兄さんは少しずつ記憶が戻っている、必ずあなたを思い出すと話を聞くとチョンウンは急いでウノの元へと向かう。
ウノは母の消息が気になり、父へと事情を尋ねる。
「父さん、私が母に会ったと言いましたね。
それは嘘だったんですか。
お母さんに会った記憶がないんです。
会ったのでないのであれば、今会わせてください。
今なら大丈夫でしょう?
おっしゃってください、お母さんはどこにいらっしゃるんですか?」
「会ったんだよ..」
「それなら母のピアノはどこへ送ったのですか?
僕はどうして事故にあったの?
僕の人生はどうなったのですか?」
切ない想いでウノを抱きしめるヒョンジンだが、ウノは父親の愛情を受け止めようとしない。
「事故にあったときのこと教えてください。教えてくださらないなら僕が調べます」
「ウノお前には時間が必要だ。
何も言えない、何も覚えていないお前に
何も出来なかったこの父だ...」
ウンソプが家に戻ると、ウノを待ち続けるチョンウンが外で待っていた。
「入ってまとう。寒いじゃないか」と説得するウンソプの話を聞こうとしないチョンウン。大丈夫です。大丈夫ですと繰り返す頑ななチョンウンに腹を立てたウンソプは強引に手を引いて家に入れる。どうしてこんなに未練がましい格好の悪いことをするのかと大声でまくしたてるウンソプ。
「私が...ウンソプさんの言うとおりどうしてこんなにあの人に未練がましくつきまとうのか考えてみたの」
チョンウンはウンソプに自分の気持ちを話し始めると、ウノとの思い出が次々にあふれ出し、まだウノに何も言えていない、お礼も言っていないし、私があの人にとってどんな存在なのか聞くこともできていない、だから未練がましくても格好悪くてもあの人を探し求めるの、と涙ながらに答えるのだった。そんなチョンウンを見る度、胸が張り裂けそうになるウンソプはその場を飛び出していく。
再びミンジョンに逢いに行ったウノは、ミンジョンから「あの時は夢を追いかけて米国へ行ったけれど私を一番分かってくれる人はあなたよ。また始めよう」と話を持ちかけられる。その場でウノはソ・ジョンウンがもしかして自分に深い関係がある存在ではないかと、ミンジョンに尋ねるが、チョンウンをウンソプの恋人だと勘違いしているミンジョンはウノにそのまま伝えてしまう。
酔いつぶれたウンソプは、ヒェジンへと愚痴をこぼす。
「ピアノなら僕だって弾けるよ。
名前を呼んでくれた?俺だって名前を呼んであげるよ。チョンウン、チョンウン...。
何で俺にはありがとうって言ってくれないの?」
ヒェリムに出て行くように言われたチョンウンが家を出て行ったとき、ちょうどウノが帰宅する。
「1日中待っていました」
「どうして?僕を、どうして?」
「記憶が戻ったと聞きました。それで...」
「ウンソプと一緒に暮らしているんでしょう?
看病してくださってありがとう」
涙を浮べるチョンウンを不審な表情で見つめるウノ。
「なぜ私のために頭を痛めるのでしょうか。
なぜ胸を痛めなければならないのでしょう。
チョンウンお姉さん..
いえ、チョンウンさん、私の記憶に関係のない人ならもう結構ですよ。
看病も必要ないし、私の前に現れないでください」
「ウノさん、あなたそんなことを私にしてはだめ。
私はあなたにとって何の関係もない人ではないのよ!
あなたは私に戻ってくるからって言ったでしょう
あなたが戻ってこないから探しにきたのよ!
あなたのお母さんのピアノだって私のところにあるし...」
ちょうどその場へウノの父とウンソプ、ミンジョンが現れると、様子を悟ったヒョンジンはチョンウンに戻るよう伝えるとウノを家へと戻るように言う。父の態度を不信に思ったウノはチョンウンの手を取り、走り出す。
「言ってみて。
さっき言おうと思ったことを話して!
僕の母さんのピアノがどうしてチョンウンさんのところに?早く答えて!」