【海辺 プロローグ】
海辺で純白のピアノに向かう一人の青年チャ・ソンジュ
は、瞳にうっすらと涙を滲ませながらピアノでショパンの調べを奏でる。
−もしかして...あの人は僕より彼女をもっと愛していたのかも知れない。だからと言って、僕が彼女をあの人より愛していなかった訳じゃない...
【ピアノの前 ソンジュとチョンソ/子供時代】
ハン・ジョンソはピアノを弾くソンジュの隣に座り、ソンジュに頬を寄せる。
−私ソンジュオッパが大好き。オッパはピアノも上手。私ににいろんなことを教えてくれたの。
(Ave Maria)
【海辺〜ソンジュの父、チョンソの母との別れ】
ソンジュの父親は交通事故で他界し、チョンソの母も癌で他界した。二人は辛い時いつも支え合いながら、互いをなくてはならない存在と想い、共に育ってきたのだ。
−オッパは私が悲しいときこう言ったわ。ハン・ジョンソ、そんなふうに笑うんだって。
海辺の白い家は建築家でもあるチョンソの父が、亡くなったチョンソの母にいつでも会えるようにと母の眠る海の側に建てた家だった。潮干狩りをしながらじゃれあい遊ぶ二人を見守るチョンソの父、ハン教授とソンジュの母親
。
−僕はチョンソが大好きだ。
チョンソは父が交通事故で亡くなったとき、僕の傍にいた。チョンソの母がガンでこの世を去ったとき、僕はチョンソの傍にいた。僕らはいつも一緒だった。チョンソが辛いときこんなふうに話していたな...オッパ、こんなふうに笑うのよねって...チョンソが本当の妹じゃなくて良かった。どうしてかって言うと、どうしてかって・・秘密だ
。
【セーフモール オープン】
亡き夫のグローバルグループを守るソンジュの母ミン会長。オープン記念式典で、以前からの知り合いでグループのモデルを務めるテ・ミラと建築家のハン教授への感謝のことばを述べる。パーティの会食時、ミラと仲の良い様子の父を嬉しそうに見守るチョンソ
は、ソンジュへ父への気持ちを話す。
−オッパ、どう思う?パパが幸せそうに笑うの、何年ぶりかな。おばさんに出会ってからよ。パパが再婚なさったら私も安心して留学できるわ
【刑務所前】
その頃、テ・ミラの元夫ハン・ピルスが刑務所から出所する。記者からテ・ミラについて尋ねられたピルスは、早速ミラに連絡を試みる。
【ハン・ピルス宅】
ピルスの住む部屋には二人の子供テファとユリがいた。ミラがピルスの連絡を受け、久しぶりに姿を見せると、そんな両親の様子をテファとユリが不安そうに伺う。ミラはピルスに5年間も子供に苦労をかけたことを罵られ
、頬を叩かれ脅迫を受けるが、これまでの15年間に嫌気が差したと、必死で稼いだお金もピルスに全て使い込まれたことに対し不満をぶつけ、これから再婚して幸せになると話し家を飛び出す。
ミラの後を追うユリ。
−ママ、私いい子にするからママと暮らしたい...連れて行って、ママ、ママ、ママ!!
ユリを振り払い、ミラは車に乗り込み、走り去ってしまう。
【ホテル 結婚式場】
ハン教授とテ・ミラの結婚式を祝う式。ソンジュはチョンソの隣でチョンソの嬉しそうな表情を見て安心したように微笑む。
【海辺の家】
海辺の家のチョンソの部屋にある大切な人形を手に、チョンソは亡くなった母へ語りかけながら涙を流す。
−私、今日ソウルへ引っ越すの。ママを思い出すものもっていかない方がいいんだよね。あの人に悪いものね...大丈夫よね、ママ?ママもパパが幸せになるのを願ってるでしょう?もう冬だから、セーターを着なくちゃ...次にくるとき着替えを持ってくるからね。
様子をそっと見守っていたソンジュはチョンソの複雑な心情を想い、ベランダに出てテープに海の音を録音するチョンソの元へ歩み寄る。カモメの鳴き声をまねてチョンソを笑わせ、「ハン・ジョンソ、
そんなふうに笑うんだ」と優しい言葉をかける。
【ソウルのハン家】
チョンソはミラに笑顔で挨拶するが、“お母さん”ではなく“おばさん”と呼んでしまう。ミラは笑顔で“私にはお母さんとは言えないわよね。これからチョンソの心の準備が出来たら、お母さんと呼んでね”と話す。ミラ
は再出発を願い、チョンソに誠実に接し、テファとユリのことをよろしくね、とチョンソに話す。
【食堂 ピルスとテファ、ユリ〜ハン家前】
子供たちを手放すことになったピルスは、食堂で子供たちと食事をするが、寂しい気持ちを隠すため乱暴な口調で接する。
−今までお前たちのせいで苦労ばかりだった。(急いで食べるテファに)お前もっとゆっくり食べろ!泣くなよ・・・
ピルスはテファを怒鳴りながら自分が
切なくて涙が出そうになるのを必死で抑える。
−ユリ、兄さんを頼むぞ。(テファに)お前は...ユリの話を良く聞いて、苦労をかけるなよ...元気でやれよ。
二人に小遣いを渡すと、ピルスはテファとユリに背を向け立ち去るが、テファは後を追い、受け取った小遣いを父のポケットに黙って返す。
【ハン家】
テファとユリを迎えるハン教授とミラとチョンソ。チョンソはユリに優しい笑顔で挨拶をし、握手を交わす。テファにも声をかけるチョンソだったが、テファは返事もせずに家から飛び出してしまう。
テファが外に出ると、そこにはうなだれたピルスが座り込んでいた。ピルスを追うテファだが、ピルスはテファに石を投げつけて泣きながらその場を去る。
チョンソの部屋で一緒に生活することになったユリ。ユリがチョンソの洋服などに興味を持つ様子に、チョンソはこれからはここにある服はなんでも着ていいよ、と
話す。ユリはチョンソと今までの自分の生活の違いから、チョンソに対し妬みを抱くようになる。 転校生として新しい学校に入った二人
だが、チョンソが先生に成績優秀な生徒だとほめられる様子に、ユリは女優である母の話をして、皆の注目を集める。級友らの注目が自分に向くよう、ユリは学校であたかもチョンソがミラの隠し子であったかのように話し、チョンソに嫌な思いをさせる。
【学校の出口〜自転車にのって走る坂道〜ハン家前】
学校の下校時刻、雨の中、ソンジュはチャン理事運転のリムジンで現れる。友達をたくさん連れたユリはソンジュの姿を羨望の眼差しで見つめる。傘を持って車から降りてきたソンジュ。ソンジュが微笑む先にはチョンソがいた。チョンソを
迎えに来たソンジュはチョンソのかばんを持ち、自分の傘に入れて車へ向かう。ユリを見つけたチョンソは「ユリ、一緒に行こう」と声をかけるが、そんな様子に嫉妬したユリは雨の中友人たちと歩いて帰っていく。
ソンジュとチョンソは二人で自転車に乗り、楽しい時を過ごす。(AveMaria)
帰りの車の中、チョンソはソンジュに手編みの赤い帽子をプレゼントする。かぶって見せて微笑むソンジュは、チョンソにいじめられていないかい?と声をかける。大丈夫よ
、と微笑むチョンソにソンジュはプレゼントを贈る。ソンジュからワンピースを贈られたチョンソだったが、ユリが先に箱を開け、悔しそうに見つめる。翌日、学校にそのワンピースを着て現れたのはユリだった。ユリはチョンソの一言一言に腹を立て、「何でも着ていいといったでしょう
、と言い、チョンソを困らせる。その夜、ソンジュから贈られたワンピースにユリがわざとインクをつけ、二度と着られないようにしてしまう。ミラに叱られて泣きながら言い訳をするユリを、チョンソは呆然と見つめていた。
【美容室〜セーフモール】
ミラはチョンソとユリをつれ、美容院と買い物へ向かう。ユリはチョンソと同じ髪型にしてと美容師に頼む。ブティックでソンジュからのプレゼントのワンピースと同じものを見つけたチョンソ
は嬉しそうに手に取るが、ユリがチョンソからその服をまた奪ってしまう。
【ハン教授事務所〜ハン家】
夫に娘ユリの試験の結果を自身に満ちた表情で報告するミラだったが、ユリが2番で、チョンソが1番だったことを知りショックを受ける。家に戻ったミラ
は、成績が1番でなかったことでユリを叱っている時、チョンソが2階から降りてきてユリを庇うと、それまでチョンソに向けたこともないような表情でチョンソを睨みつける。娘
ユリより成績のよいチョンソに口を挟まれたこと、“おばさん”と呼ばれたことでミラの態度が豹変し、チョンソに対し手をあげる。何度もぶたれたチョンソは頬を赤く腫らし、おびえて震えていた。
ちょうどその時ソンジュからスケートの誘いの電話が入る。周りの音が騒がしい遊園地から電話をしていたソンジュはチョンソの様子がおかしいことに全く気づかない。行くといいなさい
、というミラに言われたとおり、チョンソは泣きながらソンジュに答える。
【遊園地】
ソンジュの元へ向かったのはチョンソではなく、ユリだった。ソンジュがチョンソにプレゼントしたワンピースと同じものを着て行き“お姉さんは風邪をひいたので、代わりに行くように言われました”とソンジュに精一杯の笑顔を見せるユリ。ソンジュはチョンソを心配し、電話
で様子を伺おうとすると“今、病院へ行っていて家にはいない”とユリが咄嗟に嘘をつく
。様子がおかしいと感じたソンジュは、帰り際ハン家に立ち寄るが、ミラに衣裳部屋に隠れているようにと言われ、テファのいる部屋で息を潜める。ソンジュはチョンソの姿を探すが見つからず、不安な気持ちのまま帰宅する。
【留学の延期】
ハン教授はミラの巧みな言葉に騙され、チョンソに対し、「お前は体も弱い、留学は先に延ばそう。テファやユリのこともある」と言い出す。亡き父の会社の跡継ぎとなるソンジュは経営学を学ぶため米国へ1人留学することになる。
ソンジュも事情を聞かされ、突然の別れに二人は悲しい気持ちに包まれる。
【回転木馬前】
回転木馬に乗りソンジュに手を振るチョンソは(stairway to
heaven) 、ソンジュに寄り添って回転木馬の前に座ると、不安な気持ちを打ち明ける。
−待っていようか?待っていて一緒に行こうか?
−ううん...ただ、待っていて帰ってこなかったら、それが怖くて...
−戻るよ...戻る。お前、僕がいなくなったらどうしようって、心配してるの?
−どうしたらいいの?
−探してくれ。
−探してもいなかったら?
−見つかるまで探して。
−それで?
−会えるのさ!好き合うもの同士は、結局出会えるものさ。
−どんなに遠く離れても、最後は出会えるものよね?
−僕がいなくても元気でいられるだろう?
僕がいなくても笑顔でいられるだろう?
涙を流しうつむくチョンソを優しい笑顔で見つめ、抱きしめるソンジュ。
−チョンソ、僕が戻ったら、ここに絵を描いて君にプレゼントするよ。悲しみもない、別れもない、苦しみもないそんな世界...天国...
【海辺】
ピアノを弾く手を止め、立ち上がるソンジュ
−チョンソ、聞こえるかい?(AveMaria)