ソンジュの説得で、家族の待つ家に戻ることになったチョンソを前に、ハン教授とミン会長は心から喜び、涙を流してチョンソを迎え入れる
。ソンジュの母は、事実を知って素直にチョンソに謝罪する。
−チョンソ、本当にごめんなさいね、私はあなたが...
−いいえ、おばさん...ソンジュオッパも信じなかったんですもの...
チョンソが到着する前に事情を知ったユリは、家に戻ったチョンソとソンジュの前で母ミラとともに策略通りの行動に出る。
−私だけいなくなればいいんでしょう!私が出て行きます...
−あなたどういうつもりなの?チョンソ姉さんが戻って嬉しくないの?
二人が自己保身のための芝居を続ける様子を、チョンソは厳しい表情でじっと見つめ続ける。
−嬉しいわ...お姉さんが戻って、本当に嬉しいわ。でも喜んでばかりもいられないじゃない...
ユリはソンジュに自分はチョンソの代わりでしかなかったのかと声を張り上げ、婚約は解消して欲しいと涙を流し、さらに自分の兄であるテファを利用し、チョンソが5年も同棲していた男性から連絡を受け、チョンソのためにソンジュをあきらめろと脅され、恐ろしいと嘘を続ける。
テファをかばうため、チョンソは真実を言い出せず、ミラとユリの策略通りに物事が動いていってしまう。泣き叫ぶユリをなだめるように、ミン会長がチョンソに切り出す。
−チョンソ、見ての通り、ユリとソンジュは婚約したのよ...理解してくれる?チョンソ..
−私が出て行きます!
チョンソが窮地に追い込まれていく様子を見ていられないソンジュは、思わず“婚約します”と口にしてしまう。
−私は婚約します...。今日はチョンソが5年ぶりに家に戻った日ですし...もう休ませてあげてください...とても疲れているはずです
チョンソに寄り添い、優しく語りかけるソンジュ。
−今日は何も考えず、部屋でゆっくり休めよ。明日会おう。
ソンジュがある考えを胸にハン家を離れた後、チョンソはミラと対峙することになる。ミラの言葉にも決して屈しないチョンソ。
−テファの話はどうしてしなかったの?確かに、話していいことなんて何もないわね。警告するけれど、ユリからソンジュを奪おうなんて考えないでね。
−私...昔のハン・ジョンソではないと言いましたよね?もう脅迫は通じません。
−簡単にはいかないはずよ...全てがあなたが思う通りに簡単に解決したら、人生楽しくもなんともないわ、でしょう?
−それで、今楽しいですか?
−楽しいわよ。あなたは?
−話が終わったなら出て行って下さい。
テファの使っていた部屋に一人残されたチョンソは、かつてテファが描いた絵を目にすると、母にも妹にも愛を受け取ることのできないテファの今後の人生の幸せを心から願いながら夜空に向かって紙ヒコーキを飛ばす。
「私、幸せになるわ。お兄ちゃんも幸せにね...」
翌日、会社へ復帰することになったチョンソを
ソンジュが迎えにやってくる。ユリを視界にも入れずにチョンソだけを見つめるソンジュ。
−よく眠れたかい?また出勤できるよな?
−お姉さん...辞表を出したじゃない...
−マフラーの評判がよくて、またスカウトしに来たんだ。
ミラが二人の話を遮ろうと、ハン教授にしばらくチョンソを家で休ませるように言われていると口を挟むが、チョンソは出かけますと答え、身支度をしてソンジュと共に出勤する。二人の間にことごとく割り込むユリだったが、ソンジュは黙ってユリの行動を容認する。会社に戻ったチョンソを、ユリから事情を聞かされた同僚らが拍手で温かく迎える。チョンソの居場所をひとつひとつ取り戻す手伝いをしながら、ソンジュはチョンソが戻ったことの幸せをかみしめていた。従業員食堂までチョンソに会いにくるソンジュに
同僚たちが目を丸くするが、ソンジュは周囲の目を全く気にすることなく失った時間を取り戻すように、チョンソとの時間を大切に過ごし始める。
そこへ事情を聞かされたユリが姿を見せると、ソンジュに二人の婚約の準備の買い物へ行く話を持ち出し、チョンソに
も一緒に行こうと声をかける。ソンジュはチョンソとユリの二人を連れてドレスを選びに出かけると、ユリが試着している間にチョンソにもドレスを選
び、強引に試着させる。二着のドレスを購入するソンジュの真意が理解できないユリは、チョンソがドレスを身につける姿に困惑する。
その夜、バーに向かった三人。カウンターにユリを挟むように座るソンジュは、ユリの隣にいるチョンソに手を伸ばす。ユリに気付かれないように手を握ろうとするソンジュの態度に苛立つチョンソが手を離そうとすると、その手がユリの背を押してユリのカクテルが倒れてしまう。ユリが手を洗いに席を立った途端、耐えきれないチョンソがソンジュに怒りをぶつける。
−オッパどうしたのよ?
−俺が何?...お前の手が握りたくて握っただけだ...頭ではダメだと分かっていても、この手が言う事を聞かないんだよ...
−お願い、やめて!
−5年間お前だけ待っていた...それなのに、ここまできて見てるだけでいろと?
−もう私たち子供じゃないのよ...あの時には戻れないの、オッパ。
涙を流しソンジュに訴えるチョンソに、ソンジュは終始硬い表情で言葉を返す。
−俺はなにひとつ変わっていない。
−そうよ、なにも変わってないわ!それで今私に子供みたいにふざけてるのね?ユリと婚約するってこと、オッパが先に言ったのよ。子供じゃないなら自分の言った言葉に責任取りなさいよ!
−ユリとするとは言った覚えはないな
−オッパ!
−婚約は...俺が愛する人とする...
−オッパがいつもこんなふうに振る舞うのは、私がもっとつらくなるのよ。それをどうして分かってくれないの?
チョンソの腕を掴み、彼女を引き寄せるソンジュ。
−俺が平気だと?こんなことしてる俺が...平気だと?
−オッパがずっとこうするなら、私婚約式には行かないわ。行けないわ、行かない、ドレスに靴?そんなものなにひとつ必要ないの!靴だって私の足に合わないわ。ドレスも気に入らない!
ソンジュの手を振り払おうとするチョンソだったが、さらに強く掴むソンジュ。
−お前も俺を待っていただろう?俺を求めてるだろう?違うのか?
−違う...
−嘘を言うな...嘘だ...先に出てる...
二人はどうすることもできないしがらみから逃れられず、涙を流して悲しみをこらえ続ける。家に着き、ソンジュはユリとチョンソにプレゼントを手渡す。ユリへはアクセサリーの入ったもの、チョンソへは贈り物は入っていない空
の箱だった。ハン・ジョンソとして家に戻ったにもかかわらず、身の置き場のない苦しい日々が続くことで、チョンソはふとテファの存在を思い出す。
−お兄ちゃん...どうして私を手放したの?私に幸せになれと手放したんじゃないの?これが幸せって言うの?私を捨てて一人で逃げてすっきりした?気楽になれた?私がチョンソだと言っても、違うと、チスだと笑えば良かったのに...そうだったら私、オッパについていったのに...。
その頃、テファは痛む手をかばいながら、街で似顔絵を描いて生計を立てていたが、決して楽な暮らしとはいえなかった。そんなテファに、チョンソからの電話が入ると、テファは携帯電話を投げ捨てて壊してしまう。翌日、出社してもテファのことが気にかかるチョンソが休憩室で電話をじっと見ていると、ソンジュが姿を見せる。
−プレゼントは見た?
−私をからかうの、楽しい?
−からかったんじゃないんだよ...お前に何をあげていいか分からなくてさ...してあげたいことが多すぎて、これからひとつひとつ入れていくから。
−オッパ、オッパがこんなふうにすると、私どうしていいのか本当に分からなくなるのよ。婚約式の日、私は出ないわよ。
−...お前は何も怖がらなくていい...俺がする通りについてくればいい...
その日、チョンソを強引に会社から連れ出したソンジュが向かったのは、ジュエリーショップだった。拒むチョンソに指輪をはめようとするソンジュ。
−はめてみろ...
−嫌よ!
−指にはめてみないと...合うかどうかわからないだろう...どうだ?大丈夫か?少し大きいかな?(店員に)あれもちょっと見せて下さい
−オッパ、何なの、本当に?
−サイズを調べなきゃ買えないだろう!
−私、指輪ははめないわ。
−お前がはめるんじゃない。俺がはめてやるんだ。
−それでもはめないわ。
−(店員に)サイズ別に1つずつ全部見せて下さい。
嫌がるチョンソの手を乱暴に掴みながら、彼女の指にひとつずつはめて確かめるソンジュ。そんなソンジュの手を振り払い
−オッパが私をどんなに苦しめているのか分かる?
−...僕を愛してる?僕を愛してる?愛してる?...愛してるのかって...。
チョンソの手を取り、最後の一つの指輪をゆっくりとはめるソンジュ。
−婚約式の日、僕が愛する人に...この指輪をはめるつもりだ。
−だめよ...絶対にだめ...
チョンソの気持ちを知りながらも、彼女と離れることはできないことを知るソンジュは、だまって外に車を取りに向かう。店に一人残されたチョンソの前に、二人の姿を見て後を追って来たユリが姿を見せる。
−ずうずうしいわね...何か誤解しているようだけれど、この婚約はあんたじゃなくて私がするのよ!
−分かってるわ
−分かってる?分かってる人がここにどうしてついてくるの?一体どんな作戦?私の代わりに婚約しようとでも言うの?
−もうやめよう
ユリが手をあげ、チョンソの頬をぶつと、チョンソもユリをぶち返す。ソンジュを愛しているのかと聞かれたチョンソが、きっぱり愛しているとユリに答える
と、ユリは苛立ちを抑えきれずにチョンソに掴みかかる。そんな二人の前にソンジュが現れると、ユリは本性を隠し、一瞬で笑顔を作る。
緊張した空気が流れる中、三人は食事に向かうが、ソンジュの態度が我慢できずにチョンソは先に席を立ってしまう。その夜、一人グローバルランドに向かったチョンソは、天国の壁画の前に佇むテファの姿を見つけるて彼に駆け寄る。
−お兄ちゃん!お兄ちゃん!
ついてくるなと言い、テファはチョンソに背を向けて歩き出すが、チョンソが後を追う。
−大丈夫なの?電話も出ないから心配したじゃない!家に戻ってないでしょう?今どこで寝てるのよ?
−家に...帰りたいけれど、帰れない。
−どうして?どうして?どうしてなの!
−...お前のせいで、お前のせいだよ...ああ、面倒だな...
−ご飯、食べてるの?
−幸せか?
−ご飯食べたのかって聞いてるの!
−幸せか?
−ご飯食べたのかって聞いたでしょう?どうして聞いたことに答えないのよ!なんでよ!
−食べたよ、これでいいか?
涙があふれ出すチョンソの表情に、テファもこらえていた涙があふれ出す。
−婚約おめでとう...何かしてやりたいのに、俺お前にプレゼントを...だけどあいつは何でも持ってるから...何をしてやったらいいか分からないな
−私、婚約なんてしない
−しろよ、お前の婚約だぞ、絶対しろよ。お前が婚約しなければ、俺何をするか分からないぞ...帰るぞ...(チョンソをじっと見つめてその肩に手を伸ばし)しっかりやれよ...うん?
テファが走り去る後ろ姿を目で追いながら、“ご飯しっかり食べて、家で寝るのよ!”と声をかけるチョンソの様子を、ソンジュがそっと見守っていた。チョンソの心の痛みを誰よりも理解しているソンジュは、肩を落として歩くチョンソの手を掴むと、温かい手でチョンソの流す涙を拭き、
優しく抱きしめる。
−この世で一番美しく...婚約式の日、お前はこの世で一番美しくなれるよ...。来るだろう?来るだろう?泣いたら可愛くないぞ...。来るだろう?来るよな?
ソンジュの説得に
、チョンソは答えるかわりに何度も頷くのだった。