愛する父にまで疑われたチョンソは、耐え切れずに家を飛び出していく。そんなチョンソの後を追うテファ。チョンソはコインを手に公衆電話に向かい、泣きながらアメリカにいるソンジュの電話番号を押す。
−Hello?チョンソ?チョンソだろう?
−オッパ!
−どうして連絡もしてこなかった?何かあったんだな?
−ううん…何かあるだなんて、何も無いわよ…何も心配しないで、オッパ。
−チョンソ、泣いてるのか?お前、泣いてるんだな?
−違うわ、ただオッパに会いたくて…オッパ、私また後で連絡するからね、バイバイオッパ、バイバイ。
ソンジュに悟られないよう早々と電話を切ったチョンソは、小銭を握り締め、電話ボックスで泣き崩れる。そんなチョンソをテファは黙って見守り続けていた。家に戻っても中に入れずに家の前で泣き続けるチョンソに、テファは黙って上着をかけるが、チョンソはテファの上着を振り払う。
−オッパ、どうしてこんなことするの?私は妹よ!いくら好きだからってダメだって分かってるでしょう?どうして私をつらくさせるの?どうして?どうしてよ!
チョンソはテファの想いを拒み続けるが、テファはそれまでと変わらない態度でチョンソに温かく、時に強引に接し続け、常にチョンソを見守る。そんな中、テファが描いた絵が市長賞を受賞し、テファが表彰される。テファは壇上で賞状を受け取ると、すぐに一人の女性の姿を探す。そこにはテファの受賞を心から喜び、微笑むチョンソがいた。
−ハン・ジョンソ、泣くなよ、オッパがついてるぞ〜!
賞状を手に壇上で堂々とチョンソへの想いを打ち明けるテファの様子に、チョンソは戸惑いと恥ずかしさでいっぱいになる。チョンソはテファに、賞状をミラに見せようと促し、テファは躊躇しながらも母ミラの元に持って行く。台本を見ながら台詞の練習をしていたミラは、テファの受け取った賞状を足で蹴り、テーブルから落とし、相手にもしない。そんな母親の態度に傷ついたテファは深く傷つき、部屋に閉じこもってしまう。テファの心情を想い、チョンソは手紙を書いて紙ヒコーキを折ると、ベランダからテファの部屋に向かって飛ばす。
−オッパ、もう怒らないで。オッパが賞を取ったらプレゼントするって言ったよね。私達、遊園地でも行こうか?
チョンソの言葉に、存在そのものに、心から救われた気持ちになるテファは、その後も3年の時をチョンソに兄として接しながら、チョンソへの愛を抱き続ける。理解のない両親の間で育った二人は、助け合い、支えあいながら成長する。
チョンソの留学を前に、二人はチャジャン麺をつつきあう。
−アメリカにもチャジャン麺あるかしら?
−おい、中国料理がない場所なんてあるか?
−それでもこの味は食べられないはずよ。
−...留学の準備は出来たのか?
−うん、ソンジュオッパが全部してくれてるから私がすることは何もないのよ。
−3日後に行っちゃうんだよな…
テファと苦しみを乗り越えてきた衣裳部屋で、テファの描いた絵を嬉しそうに見つめるチョンソ。
−オッパ、これもらっていってもいい?
−何するんだよ?
−私が戻ったら、オッパが有名な画家になってるかもしれないわ。モデル代も受け取ってないのに、これでももらっておこうかなって。
チョンソの言葉に微笑むテファは、チョンソの肩に手をかけると、描いてあげるから座れと促す。
−可愛く笑って。なんだよその表情は、笑ってみろ。
明るく振舞うテファの様子が余計に気になり、チョンソは沈んだ表情のまま笑うことができない。
−オッパが最後に絵を描いてあげようってときに、なんだよ、その表情は?
−どうして最後なの?
−笑え、可愛らしく笑ってみろよ〜そうだ、今みたいにオッパを見てろ。ああ、可愛いぞ。笑っていて…
−私ずっとこうして笑ってないとだめ?
−うん…
チョンソを描きながら、テファはスケッチブックで顔を隠してしまう。チョンソはテファの顔を見ようと声をかけ、テファの顔を隠していたスケッチブックを動かすと、テファの瞳に涙が浮かんでいる。涙をぬぐうテファを見て、チョンソが真剣な表情になる。
−1人でラーメン食べちゃだめよ。嫌でも、これからは家族と一緒にご飯を食べて。答えて…答えて…答えて、オッパ、ね?
チョンソの言葉に笑顔でうなずくテファ。
−ありがとう…私、今までオッパのお陰でとっても幸せだった。オッパがいなかったら私どうなってただろう?
耐えられずに立ち上がるテファ。
−お前がいなかったら…俺はどうなってただろう…お前が発ったら、俺はどうなるか分からないよ。
別れを前に胸を痛めるテファの気持ちを誰よりも理解しているチョンソは、ベランダで壁ごしにテファに語りかける。
−オッパ、オッパ、そこにいるの分かってるわ。私1人で行ってごめんね。でもオッパも元気でいてね。オッパ…
チョンソの言葉に返事をせずに、テファは“明日どこへ行く?”と切り出す。 チョンソは、もう外ではオッパには会わないと告げ、毅然とした態度を取るが、テファは現実から目を背けようと、チョンソを映画に誘う。
−明日映画をみよう。シネマソウルで6時。待ってるよ。
−待たないで。私行かないわ。
翌日、花束を片手に映画館の前でチョンソを待ち続けるテファだったが、心を決めているチョンソは姿を見せることはない。そんなテファの純粋な心を利用しようと、ユリがテファの前に現れる。
−オッパ、いっそ逃げちゃいなさいよ。オッパ、チョンソを愛してるじゃない。
チョンソを失いたくないテファは、切なさで心が引き裂かれそうになり、酒に酔った勢いでチョンソの部屋に向かって叫ぶ。
−ハン・ジョンソ!窓をあけてくれ。チョンソ…俺を一度だけ見てくれ!俺を見てくれ!チョンソ…
テファの態度に驚いたチョンソは、急いで外に向かうと、テファを見て涙を浮かべる。
−オッパ、どうしてよ…何よ…やめてよ、お願い、オッパ…
−行くな。行くな、困らせないから、何も望まないし、俺を好きじゃなくてもいいから、行くな…行くなチョンソ、行くな。
−ごめんなさい、オッパ。
無理に抱きしめようとするテファを、チョンソは必死で振り払う。
−本当にやめてよ!こんなことするともう二度と会わないわ。それでもいいの?私オッパの妹じゃない。分かっていてどうしてなの?
−そうだな、行け。俺みたいな奴は捨てて…俺…お前のお陰で初めて笑ったよ。俺、お前のお陰で初めて喜びを感じたよ。俺、お前のお陰で初めて幸せだって感じたんだ。
ユリが二人の前に現れ、チョンソを罵り始める。
−ハン・ジョンソ....うちの兄さんをこんなにしたのはあんたでしょう?ソンジュオッパが来たらこう言ってやるわ。あんたには付き合ってる男がいるって、その相手はうちの兄さんだってね!
平常心を失っているユリの様子に気づいたテファは我に返ったようにユリを押さえつける。興奮が収まらず騒ぎ立てるユリは、チョンソの部屋までついていくと、チョンソが大切にしていたソンジュとの写真を投げつける。割れたガラスの中からそっとソンジュとの写真を拾ったチョンソの元に、ソンジュから電話が入る。
−もしもし、ソンジュオッパ?空港?今?
−ソンジュオッパが戻ったの?全部話してやるから!
ソンジュからの電話と察したユリを振り払い、再会の約束をしたグローバルランドの回転木馬前に向かい走り出すチョンソ。
ユリは叫び声を上げながら必死でチョンソを追ってくる。家の前でチョンソにつかみかかるユリを止めるテファ。ユリにつかまれ、大切なネックレスが切れてしまうが、ペンダントトップを必死で握り締め、
チョンソは再び走リ出す。テファに押さえつけられたユリだったが、テファを振り切り家へと戻ると父親の車のキーを手に取る。テファはチョンソを走って追うが、追いつけず見失ってしまう。タクシーに乗ったチョンソ「グローバルランドへ早く行ってください」と
言い、ソンジュとの海辺での写真、ペンダントトップを握り締め、ソンジュの元へ向かう。ユリは酔った状態で父親の車に乗り込むと、チョンソを乗せたタクシーを危険な運転で追い続ける。
グローバルランド前に着いたチョンソは橋の上で微笑むソンジュを見つけて手を振る。
−ソンジュオッパ!
−チョンソ!
2人はお互いの姿を見つめ、嬉しそうに走り出す。この直後、チョンソが道路へ飛び出した瞬間・・・ユリの運転する車が突っ込んでくる。思わずアクセルを踏みしめたユリ
が運転する車は無情にもチョンソをはねてしまう。
ユリは、あわてて車から降りると必死で助けを呼ぶが、誰一人助けに来る人はいない。血まみれになり、意識を失った状態のチョンソを車に乗せたユリは、救急病院へと急ぐ。
ソンジュがチョンソの姿を見た場所に駆けつけると、そこで再会できるはずだったチョンソの姿は忽然と消えていた。明らかに何かがチョンソの身に起こった様子に呆然と歩き出
したソンジュは、道に落ちている2人が写った海辺の写真を見つけ手に取るが、写真は血まみれだった。
−チョンソ!!チョンソ!どこだ!ふざけてるんだろ!
衝撃を受け、混乱したままチョンソを捜し求めるソンジュ。この後、チャン理事から、チョンソが病院の霊安室にいると聞かされ、ソンジュはその場に崩れ落ちる。
一方、救急病院で助けを呼ぶユリだが、付近で爆発事故が発生したため、病院は重患で大混乱だった。ユリはさらに助けを求めて病院内へと入るが、そこで身元不明の遺体をみつけ、
脳裏にある考えがよぎる。車に戻ったユリは意識を失っているチョンソの住民登録証の入った財布を取り出し、首にかけていたネックレスをはずすと
、その2つを手に身元不明の遺体の元へもって行き、ハン・ジョンソが死んだことになるように工作をする。
血まみれのチョンソをつれ、実父ピルスの元を訪ねるユリは、大怪我を負い、意識のないチョンソを父親に無理やり引き取らせようとする。嫌がるピルスだったが、ユリの「私が刑務所へいけばいいのよ」という言葉に、実の娘への愛情からチョンソを引き取ることになる。
ユリが震えながら自宅に戻ると、そこにはテファがいた。ユリの白い服についた血痕を目にしたテファは、チョンソの身に何か重大な事が降りかかったことを悟る。
−お前…チョンソに何をした?おい!チョンソはどこだ...
−私がどうしてそんなこと…
−どこにいる!どこにいる!チョンソはどこだ!チョンソはどこだ…
大怪我を負い意識のないチョンソの姿に、テファは言葉を失う。病院にも連れて行くことが出来ず、チョンソの意識の回復を待つしかない二人。様子を見守る二人の前で、チョンソがとうとう目を開けるが、チョンソは事故の衝撃で記憶を全て失ってしまっていた。テファは、父ピルスにチョンソを連れて逃げようと持ちかける。
~5年後 南大門市場~
キム・ジス!
呼びかけに振り返った女性は記憶を失ったハン・ジョンソだった。デザイナーとして洋服店「イカロス」を友人のチェヒと経営するチスは、快活で仕事熱心な女性だ。テファはハン・チョルスとして、チョンソにキム・ジスという嘘の記憶を植え付け
、生活を続けていた。2人は仲の良い恋人同士だった。盗作騒ぎで他の店の経営者とけんかになり、もみ合いになるが、そこへチョルス(テファ)が現れ彼女を守る。結局警察へと連れて行かれ、威勢のいいチスはまた署内で喧嘩をはじめるが、突然お腹が空いたと警察官に堂々と食事を頼むチス。
−おじさん、お腹すいたからソルロンタン頼んでくれる?
−俺はチャジャン麺。
−オッパ、ご飯食べて。朝食もパンだったじゃない。
−そうだな、じゃあソルロンタン3つ。うちのチスはネギたっぷりね!
5年の間チョンソの記憶が戻ることは無く、チスとして全く別の人生を送っていたが、
テファはそんな毎日に罪悪感を抱きながらも幸せを感じていた。その頃、チャ・ソンジュは経営者としてミン会長のグローバルグループを手助けするためにユリと共に5年ぶりにソウルへ戻るが...。