ソンジュの言葉に新作の大きなヒントを得たチョンソは、新作のマフラーのコンセプトを“たったひとつの愛”だと発表し、ソンジュを笑顔にさせる。チョンソがエレベーターに乗るのを目にしたソンジュは、急いで後を追い、ただ黙って彼女の傍にいるだけで幸せを感じていた。
−チョンソさんの帽子のおかげで助かりました。ありがとうございました。
素直に感謝の気持ちを伝えるチョンソに、言葉では何も答えず、ただその手をそっと握りしめるソンジュ。戸惑いながらもソンジュの手を無理に離すことができないチョンソは、ソンジュの笑顔をじっと見つめる。
−手袋もセットで作ってみてください。心と同じで手も冷たいね...
ソンジュに惹かれる気持ちを必死で心に閉じ込め、チョンソは壁画を描くテファの仕事場に向かう。
キム・ジスを愛し始めてしまったソンジュは、職場で二人の姿を見かける度、激しい嫉妬心に苦しみ、仕事が手につかないほどになる。一分一秒でも彼女をそばに置いておきたい気持ちが募るソンジュは、ブランド開発チームの会食を突然計画する。酒の席で、チョンソの代わりに次々注がれる酒を飲み干すソンジュは、胸を覆う悲しみも手伝い、徐々に酔いつぶれて行く。
その頃、テファはチョンソと約束した個展で驚くべき絵画を目にする。明らかに自分が描いた模倣画が展示されているのに気がついたテファは大きな衝撃を受ける。そのギャラリーの運営者ミン会長に呼ばれたユリをその場で見かけたテファ。
−あの摸倣画を撤去しろ...破ってしまえ!
−何よ!
−俺が描いたものだ...お前ここに知り合いがいるんだろ?伝えてくれよ...
−どいてよ、忙しいの!
全く取り合おうとしないユリに、テファは一層焦りが募る。
一方、酒に酔いおぼつかない足取りのソンジュは、ふらふらとダンスホールにいるチョンソに向かって歩き出す。チョンソの前にたどり着いたソンジュは、チョンソの目の前で倒れそうになってしまう。ソンジュを思わず支えてしまうチョンソだったが、すぐに体を離そうとする。
−ここままでいてくれ...倒れそうだよ...会いたい....おかしくなるほど会いたいよ....
悲痛な告白に黙って耳を傾けるチョンソはしっかりとソンジュを抱きしめる。
−僕が死ねば会えるかな?...許してくれ...キム・ジス....ごめんな、チョンソ....
我に返ったチョンソは、抱きしめていたソンジュから手を離すと、慌てて外に飛び出していく。店の前でユリの運転する車にひかれそうになってしまったチョンソは、その瞬間、あの事故の夜以前の全てのことを思い出す。突然戻った記憶に、愛しいソンジュとの記憶の数々に、チョンソの胸は引き裂かれるように痛みだす。ソウルの街を駆け抜けるチョンソが向かったのは、ソンジュと分かち合ったペンダントを投げ捨ててしまったあの場所だった。草の中に輝くペンダントを見つけたチョンソは、ペンダントをしっかりと手に握りしめ、取り戻すことのできない5年の歳月の重さを感じ、泣きながら街をさまよい歩く。
チョンソが記憶を取り戻したことを知らないまま、ソンジュは回転木馬の前で、天国の絵を見上げながら思い出のペンダントを手にチョンソに別れを告げていた。
−そろそろ君を天国に送ってあげなくちゃならない...。最後の贈り物、受け取ってくれるかい?
一方、テファもまた、壁画の完成と同時にチョンソへ全て真実を伝える心の準備をし、“壁画の前で待ってる”と部屋にメモを残していた。
翌日、チョンソが向かったのはテ・ミラの元だった。凛とした表情でミラの前に立つチョンソは、何気ない会話の中で“新しいお母さん”と呼びかける。
−あなた...どうかしたのね?もう一度言ってごらん。
−私ですよ...ハン・ジョンソ...
驚いてサングラスを落とすミラ。
−覚えていらっしゃらないの?おばさん!
かつてそうしたようにチョンソの頬をぶつミラだったが、チョンソはその手をしっかりと掴む。
−全然変わっていないんですね...
チョンソが記憶を取り戻したことを悟ったミラは、平静を装いながら仕事場に戻っていく。チョンソは急いでソンジュのいるグローバルランドに向かっていく。壁画の完成式に向かうソンジュの姿を見つけたチョンソは、ゆっくり、一歩一歩ソンジュに近づいていく。涙を流してソンジュの前で倒れ込むチョンソを、ソンジュが支える。
−どうしたんです?何かあったの?
ユリに遮られ、歩き出すソンジュの後ろ姿を涙を浮かべて見つめるチョンソ。
−ソンジュオッパ...