【チョイン VS チェ・ボックン】
一人でチェ・ボックンの前に向かったチョインは、チェ・ボックンに掴みかかり、力いっぱい拳を振りおろす。ところがチェの部下ヤン・マノが銃を持って近づき、チョインは結局捕らわれてしまう。砂漠の時の記憶が鮮明に蘇るチョインは、銃を頭に向けられた瞬間、チェに問いかける。
−最後に一つだけ聞くが、韓国に戻り、清州で俺を殺せと指示したのは...誰なんだ...
−それがな...韓国でお前をまた殺せと指示したのは...イ・ソヌ、お前の兄だよ...イ・チョイン、これまで金を儲けさせてもらったが、そろそろ挨拶しなきゃな...
チェが銃口を再びチョインに向けたその時、チェは自分の体に異変が起こったことに気付き、その場に崩れ落ち、体の自由が全くきかなくなる。チョインがチェに殴りかかった時、隠し持っていた注射器で薬物を注射していたのだ。飛びかかってくるマノを蹴り飛ばし、振り返ると、そこにはソヌの姿があった。チョインには、チェ・ボックンの姿がソヌに重なって見えていたのだ。これまでの悔しさを拳に込めてチェを殴り続けるチョインは、落ちていた銃を手にチェ・ボックンに狙いを定める。その頃、ソヌの指示で現場に向かったチェ・チスが銃声を耳にして異変に気付く。冷たい表情で引き金を引いたチョインだったが、怪我を負った状態で血まみれのまま建物を出るとすぐに救急車を要請し、神経毒性薬物中毒の解毒剤を持って来てほしいと電話で伝えると、呆然としたままタクシーに乗り込む。チョインの姿を隠れたまま見ていたチェ・チスは、チョインが命だけは助けたチェ・ボックンらに持っていたメスで切りかかり、絶命させると、ソヌへと連絡を取り、二人は処理したがオ・ガンホは逃がしてしまったと伝える。
【チョイン タクシーで病院へ】
チョインは怪我の様子からタクシーの運転手に不審感を持たれていることにも気付かず、車内でこれまでのソヌの行動を思い出しながら、じわじわと、まさに兄ソヌが、自分を殺そうとしていた事を実感し、衝撃を受け、絶望のどん底に突き落とされる。病院に戻ったチョインは、洗面所で顔を洗い、流れている血を拭き取りながら、込み上げる怒りを必死で抑えながら病院内を歩きだす。チョインの目線の先に、落ち着きなく自分を探しまわっている兄ソヌの姿があった。チョインは自分の携帯電話を何度もコールする兄の姿を、冷たい表情でじっと見つめたまま黙って電話を取る。
−チョイン?チョイン、今...どこにいる?どこにいるんだ?チョイン...兄さんだ...イ・チョイン、どこにいる?チョイン!チョイン!
黙ったままソヌの声と行動を見ていたチョインは、電話を切り、失望と軽蔑の眼差しを向けていたソヌから目をそらし、歩き出す。
一方、チョインの姿が見えないことで心配が募るヨンジの様子をそっと見守っていたチョインだったが、彼女にさえも何も伝えないまま休暇を取って病院を出てしまう。
その夜、チョインは父の別荘のある街へと車を走らせていた。川沿いに車を止めたチョインは、悲しみに耐えられず、一人暗闇の中で悲痛な叫び声をあげる。
−どうして...どうして兄が!...弟を殺す!!...なぜ兄が...弟を殺すんだ!!イ・ソヌ!!
【救急医療センター前 ヨンジ】
一晩戻ることのなかったチョインのことが心配でたまらないヨンジが救急医療センターの前で中の様子をうかがっていると、チョインの上司のヒョンジュとチングンが姿を見せる。ヨンジが清州でチョインを世話していた女性だと知るヒョンジュは快くチョインの居場所をヨンジに伝え、ヨンジはヒョンジュからもらったメモを片手に、早速休暇を取ると、チョインの居る街へ急ぐ。
【チョインの部屋に無断で入るソヌ】
チョインの部屋の中を探るソヌは、チョインが密かに書き綴っていたスクリーンの中のメモを見つけてしまい、チョインが全て知ったことを悟る。
ソヨンの心だけは手放すわけにいかないソヌは、急いでソヨンにプロポーズする。
【楊口(ヤング) 父の別荘】
チョインは別荘のブランコに座り、兄との思い出がつまった聴診器を耳につけ、幼いころにいじめられて怪我をしたチョインをいたわる兄ソヌの姿を回想していた。チョインに聴診器をつけ、自分の胸に聴診器の先を当てるソヌ。
−チョイン、これが心臓の音だよ。聴こえる?
−うん、聴こえるよ
−イ・チョイン、これからこの心臓の音が止まる日まで、兄さんがお前を守るよ。今日みたいに他の誰かがお前をからかって困らせたら、兄さんがとめるからな...二度とお前一人がこんな目に遭わないようにするから、誓うよ...
−うん、兄さん...
誰よりも優しかった兄ソヌが、自分を殺そうとしたことの衝撃に、チョインの心は深く傷つき、気力が徐々に失われていた。ブランコに揺られながら目を閉じるチョインの元に、バスを乗り継いで
きたヨンジが到着する。ブランコでぐったりとしているチョインを見つけたヨンジ。
−先生!先生!
ゆっくりと目を開け、悲しそうな瞳でヨンジを見たチョインは、必死で笑顔を作ろうとする。
−...ヨンジさん...来たんだね...?
また目を閉じてしまったチョインの様子がおかしいと感じたヨンジがチョインの額に触れると、高熱があることに気づき、急いで部屋に布団を用意し、チョインを寝かせる。震えるチョインの体を擦って温めながら、優しくチョインの手を握りしめるヨンジは、苦しみうなされるチョインを切ない想いで見つめる。
−先生、もう記憶を取り戻したのなら...幸せに暮らさなくちゃ...どうしてこんなに苦しむんですか?誰かが先生を苦しめているんですか?
チョインのために市場に買い物に出たヨンジは、幸せだった清州での暮らしを思い出しながら、チョインのために作る食事のための買い物を済ませ、別荘で支度を始める。ぐったりしたチョインに粥を食べさせ、看病を続けるヨンジの手を、両手で握りしめるチョイン。心をつなげ合うように、二人は手を握り合う。
翌朝、ヨンジは目を覚ますとチョインの姿が見えず、外へ飛び出す。ヨンジの看病で気力を取り戻したチョインは、春の日差しを浴びていた。ヨンジが声をかけてもじっと黙ったままのチョインが、ヨンジから目線をそらし、無表情のまま
話し始める。
−良く寝た?
−ええ....
−オ・ヨンジさん、ちょっとおかしい人じゃないんですか?
驚いたヨンジがチョインを覗き込みながら問いかける。
−何のお話ですか?
−ヨンジさん...私が具合が悪かったから、看病してくれていたんじゃないの?
−はいっ?
ヨンジを真剣な顔でじっと見つめ返すチョイン。
−そんな人が、どうして具合の悪い人より、ぐっすり眠ることができるんです?いびきまでかいちゃって。グ〜!って!
−...ああ、そんなつもりじゃなくて、少しだけ寝たつもりが...私、本当にいびきを?
−ヨンジさんのいびきの音で起きましたよ〜
−...ごめんなさい...
フッと微笑んで、鶏粥を食べに行こうと声をかけるチョインに、何故知っているのかという表情で驚いてチョインを見るヨンジ。
−昨日の夜、寝てる間に僕のタニシ女房が鶏粥を作ってくれたみたいだ。早く行こう!
【楊口 商店街】
昨夜とは全く違う様子で明るい笑顔を見せ、街を歩くチョインの隣で特産物を食べながら、嬉しそうに笑うヨンジ。
−美味しいかい?
−ええ...江原道だから、ソウルより私の故郷に近いからなのか、食べ物の味も似ていて美味しいです
−そうなの?
チョインはヨンジの手から食べ物を取り、自分が食べ始める。
−良く分からないな...
ヨンジの手から全部取って先に歩き出すチョインの姿を、以前とは違い、追う事もせずにじっと立ち止まって見つめるヨンジ。ヨンジがついてこないことに気付いたチョインが振り返り、ヨンジに近づくと、パッとヨンジの手を握り、二人はまた歩き出す。
−イ・チョイン先生、先生って言う人が...いくら考えても分かりません...
−何が?
−昨日はこの世で一番恨みを抱えている人のようだったのに、朝になったら、この世で一番幸せな人みたいです...
−そうかな、変だね...ヨンジさんと一緒にいるから幸せなのかな...。ヨンジさん、僕ソウルに戻ったら、あまり笑えないかもしれません。だからといって、ヨンジさんに怒っているんじゃないんだから、誤解しないで。分かるよね?もしかすると、僕は...本当に悪い奴になるかもしれない...
−先生が悪い人じゃないこと、良く分かっていますから...そんなことかまいません...
−なら、僕を信じるんだね?何があっても...
−はい、信じます
ヨンジの言葉を聞いて安心したように微笑むチョインは、ヨンジの手を強く握りしめながら、心でつぶやく。
−ヨンジさん...今が僕たちにとって、一番幸せな時になるかもしれない...
【ポソン病院 脳医学センター実績発表】
脳医学センター実績発表の日、病院に戻ったチョインは父の病室にいた。父の手を握りしめながら独白するチョイン。
−父さん...父さんには、この世の全てを話せますが...兄さんが僕を殺そうとしたことだけはとても言えません...どうしましょうか...兄さんを許せそうにありません...
センター長イ・ソヌにより、脳医学センターの入院患者数増加推移や手術成功率などの報告があり、3ヶ月間の収益が120億ウォンを超えたと発表される。発表会途中、余裕のある笑みを見せて席に着いたイ・チョインが、ソヌの言葉にソヌをあざ笑うかのように大きな拍手を送る。周囲が静まり返る中、立ち上がり発言するチョイン。
−私はですね、センター長!今まで何人かの人たちが何故こうして脳医学センター開設に命をかけるのか、理解ができなかったんですよ...今日になって、パッと答えがでましたね!患者を呼び寄せ、お金を少し儲けて、これでしょう?簡単に言えば...
ソヌは冷や汗をかきながら、冷静さを装ったままチョインに答える。
−イ・チョイン先生...うちの脳医学センターで手術を受けた患者の手術成功率はご覧になったので?少しどころか92%の成功率で...
−手術の成功率だけ高くてどうします?患者は意識さえ戻らない植物人間状態なのに...患者が死んでも、腫瘍はきれいに取り除いたから、この手術は成功した...これが脳医学センターの手術の道理ですか!!
はりつめた空気の中、副院長が発言する。
−イ・チョイン先生...先生は現在、救急医学科所属レジデントではありませんか?そんな人がなぜ脳医学センターの発表会にきて是非を論じているんです?
チョインの代わりにキム・ヒョンジュが発言する。
−副院長。イ・チョイン先生は現在救急医学科所属レジデントとして発表会に来たのではなく、ポソン病院理事の資格で参加されています。その点を確認されて下さい。気になりますね、続けてください、イ・チョイン先生。
ソヌはチョインに発言に責任を持てますか、と問いかけると、もちろんですと答えたチョイン。チョインは準備していた書類を手に“1,2件ではありませんから”と不敵な微笑みを浮かべる。一体どんな手術に問題があるんです、と問いかけるソヌ。
−覚えていらっしゃいませんか?センター長の手術を受けて植物状態になった患者です
−何だって?
−ポソン病院、イ・ジョンミン患者の手術を...まさにセンター長がなさったのでは...ありませんか?
−...うちのイ・チョイン先生は院長の手術に不満が多いご様子ですね...では、どうしますか?
−脳医学センターでの全ての手術に関して実施していると聞きましたが、センター長も例外ではないでしょう?...ケース カンファレンスです。
−いいでしょう、ケース カンファレンス...してみましょう...
【チョイン ヒョンジュとチングンに協力依頼】
チョインが臨時理事会招集を予定していると知り、ヒョンジュは票対決では負けてしまうとチョインに忠告する。
−だから僕が...弁当をひとつ準備しましたよ...
胸元から封筒を取り出すチョインに、チングンがふざけながら問いかける。
−何の話だよ?弁当か?美味しそうだな...おかずは何だよ?
−院長が下さった、センター敷地贈与契約書です
驚いた二人に、チョインはこれから準備することがたくさんあるので力を貸して下さいと依頼し、着々と兄ソヌに奪われたものを奪い返す準備をすすめていく。
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