【病院内 ソヨンを追うチョインとソヌ】
全てを知ったソヨンが衝撃を受けて病院から出ようとしたところへ、ソヨンの姿を見かけたソヌがやってくる。
−オッパ...違うわよね?違うでしょう?
涙を浮かべるソヨンの表情に、ソヌも事情を察したところへチョインがソヨンを追ってくる。チョインの姿を目にしたソヨンはいたたまれずに駆け出し、そんなソヨンを追いかけようとするチョインをソヌが引き止める。
−何を話した...
−あんたにとっては...ソヨンに今何が起こったのか...心配にもならないんだろう?
−ソヨンに何を話したんだ!
−ソヨンが...何を知ったのか気になるのか?気になるのなら、ソヨンに直接聞いてみろ...
チョインの言葉に震えだすソヌ。
−自信ないだろうな...それなら受け入れろ...
怒りがこみ上げチョインの白衣の胸元に掴みかかるソヌ。
−イ・ソヌ...二度とキム・ソヨンの前に現れるな...その時は、脳医学センターだけでなく...永遠に...メスも握れないようにしてやるからな...。俺ができないとでも?
ソヌの手を振り払い、ソヨンの姿を探すチョインだったが、ソヨンの運転する車はチョインの前から走り去った後だった。
【病院内廊下 ヘジュとチョイン】
一方、脳医学センターの問題でチョインに対して怒りが募るヘジュは、病院内を呆然と歩くチョインを呼び止め、頬を平手打ちすると、冷たく罵倒する。母に冷たく罵られたチョインは、深く傷つき、涙を浮かべる。
−お母さん...ご存じですか...?私もお母さんにとって...ソヌ兄さんと同じような...息子でありたかった...
−誰が!!誰が誰と同じような息子だって?夢を見るのもいい加減にしな、この悪党...
チョインが傷つき悲しむ姿を、ヨンジも胸を痛めながらそっと見守っていた。
【ヨンジ チョインの宿舎へ】
ヨンジはその夜、チョインと夜景を見にいく約束だったが、チョインの心情を気遣い、熱があるようだから今日は無理です、と優しい嘘をつく。ヨンジを心配し、額に触れて熱を確認したチョインは、栄養ドリンクと薬をヨンジに飲ませると、自分の胸の痛みを隠したまま仕事に戻っていく。
−本当に苦しい人は...私ではなく、先生じゃありませんか...お母様にあんなことを言われたのに...どんなに心が痛んでいるでしょう...
【チョンミンの病室】
夫の病室へ向かったヘジュは、チョンミンに怒りをぶつけ始める。何故チョインだけ大切にするのかと叫び声をあげ、チョンミンの目の前にあるPCを床に投げつけたヘジュは、チョインがドアを開けて病室に入ろうとしたことにも気付かないまま、チョンミンにまくしたてる。
−あなたは...いつもそうだった...あなたのせいでソヌがこんなことになったのに...あなたのせいで私のこの手でチョインの両親を殺すことになって...あなたはいつもそういうやり方で私を追い詰めるのよ!
恐ろしい事実を知ってしまったチョインは、雷にうたれたかのような表情でその場に立ち尽くしたまま、一歩も動くことができない。母だと思って慕って来たヘジュが自分を憎んでいたこと、その上その母が自分の両親を殺したことを知ってしまった上に、父が倒れた時に30分も故意に放っておいたことまでも知ってしまう。
衝撃的な母ヘジュの言葉に、立っていられないほどのショックを受けたチョインは、何も言えずにふらついた足取りで病室を出ると、絶望の底に突き落とされたように病院の廊下にうずくまり、涙をにじませる。自分の耳に聞こえてきたこと全てが嘘であって欲しいと願うチョインは、その手で耳をふさぐが、徐々に実感がわき、怒りがこみ上げてくる。
【ソヨンの家の前】
ソヨンを尋ねたソヌは、チョインを捨てたのは俺だと話し、全てをソヨンに打ち明けたことで、ソヨンまでも失うことになる。ソヌは自分を見失ったまま、チョインに対する憎悪感を一層強くする。
【チョイン 両親の死の真相を求める】
チョインは絶望の淵に立たされながらも、真相を求めて病院の資料保管庫に向かう。両親のカルテに目を通し、交通事故だったと知ったチョインは、当時の状況をキム・ヒョンジュに尋ねるが、ヒョンジュは詳細は分からないと答える。警察の捜査資料閲覧を求めたチョインは、事故原因がブレーキオイル切れのためのブレーキ故障と知り、ヘジュの犯行だと直感する。
【ソヨンの様子を見守るチョイン】
ソヨンが無事に過ごしていることを確認したチョインは、直接声はかけずに、ソヨンの携帯へメッセージを残す。
−ソヨン...君にだけには知られたくなかった...もう全て知ってしまったんだろう?キム・ソヨン、どんな決断をしても信じるが、今度はダメだ、イ・ソヌは絶対にダメだ...
【ヨンジ チョインのいる救急医学科へ】
前日の夜、チョインが一人悲しそうに涙を流すのを見ていたヨンジは、顔色が悪いまま仕事を続けるチョインの元へ駆け寄ると、チョインの手を取り外に連れ出す。ヨンジが向かったのは
ベーカリーショップだった。食べたいパンを選んでくれたらおごってあげますよと明るく語りかけるヨンジ。
−どういうことなの?ケチな女史が...何かいいことあったの?
−私、初めて中国の観光客たちの健康診断ツアーを受け持つんですよ。これも皆先生のおかげですから、今日は私がおごってあげます!
チョインが目の前にあるパンをひとつだけ選び、トレーにのせる。
−これひとつあればいいよ...
−もう...これひとつでどうやって患者を診るんです?人は体が丈夫であってこそ、どんなことにでも打ち勝つっていうじゃありませんか?
ヨンジがトレーを手に店内を歩きだし、あれこれとチョインのためにパンを選ぶ姿を見ながら、チョインはヨンジが自分を気遣っていることを察し、心が温まるのを感じヨンジの手をパッと掴む。
−ヨンジさん...こんなことしなくても大丈夫だよ...僕は大丈夫だから、こんなふうに気を遣わなくてもいいんだよ...
−本当に何でもないんですね?
微笑み頷くチョイン。
−だから、僕じゃなく、僕の父さんを少し気遣ってくれないか?最近は僕がちょっと余裕がなくて...できるでしょう?
−はい、心配しないで下さい!
ヨンジの笑顔に心が安らいだチョインの顔にも、微笑みが浮かぶ。
【病院前】
職場に戻ろうとするヨンジに声をかけるチョイン。
−ヨンジさん!中国の人たちをガイドするのはいつだと言った?
−明後日です
−明後日なら...定期理事会の日か...明日僕は休みだから、僕と一緒に出かけない?
−どこですか?
真剣な表情でヨンジをのぞきこみながら近づくチョイン。
−何でそんなに気になることが多いの?行こうって言ったら行くんだ。O.K.?
−...O.K.
チョインの背中を見送りながら、ヨンジが一人つぶやく。
−私が先生を助けるどころか、つらい先生にとって荷物になっているようですね...
ヨンジが職場に向かい歩き出すと、そのヨンジの姿を木の陰から監視する一人の男がいた。チェ・チスが、ソヌの指示で動き始めていたのだ。ヨンジが引き受ける予定の健康診断ツアーは、チョインが大切に想う女性ヨンジを危険な目に遭わせる策略を練るソヌが準備したものだとは、チョインは全く気付いていなかった。
【理事会 対策会議】
ヒョンジュとチョインは救急医学センター設立のために、賛同する理事の数を増やす方法に頭を悩ませていたが、脳医学センター設立を強行しようとするヘジュ側も理事らの説得に困難を極めていた。
【チョンミンの病室】
チョインに頼まれたとおり、チョンミンを温かく世話するヨンジは、嬉しそうにほほ笑みを浮かべるチョンミンの手をマッサージしながら、優しく語りかける。
−...あのお父様、私がこうして毎日マッサージをしてあげますから...早く回復されて、チョイン先生を、必ず抱きしめてあげてくださいね。イ・チョイン先生は...つらくないように笑っていますが、私の目には、つらいってことが全部見えるんです。
−本当に?
ヨンジはいつの間にかチョインが病室に来ていたことに驚いて顔を上げる。
−それなら僕がつらいとき、ヨンジさんが僕を抱きしめてよ...
ハッとした表情になり、チョンミンをちらっと見たヨンジ。
−もう...お父様の前でそんなこと言ってはいけません...それでは私もう行きますね...
チョンミンに目線を合わせるヨンジ。
−お父様、それではゆ〜っくりお休みくださいませ〜
ヨンジが出て行くと、チョインが微笑みを浮かべる父に、寂しそうにつぶやく。
−父さん...私の目には、何故かヨンジさんの方が、家族のように映ります...
【チョインとヨンジの休日】
翌日、チョインとヨンジが車で出かけると、チェ・チスが二人を尾行し続ける。チスに気付かないまま、チョインは見晴らしのいい高台にヨンジを連れて行く。
−ヨンジさんの故郷は、咸鏡だと言ったよね?
−はい
−そこまでは見えないかもしれないけれど、統一展望台よりは...北朝鮮が良く見えるはずだよ。あの向こうに、ヨンジさんの家族がいるんでしょう?
−はい...私の父と母が、いらっしゃいます...
−ヨンジさんのご家族の方が、どんな方々なのか、気になるな...
−お二人とも...心があたたかくて...とても良い方々です。
−そうだろうね...ヨンジさんとカンチョル兄さん...本当にいい人だから...。ヨンジさん、僕のこと心配したでしょう?
黙ったままチョインを見つめるヨンジ。
−明日になれば、全て終わりそうです...。そうしたら、僕たち家族になろうか?
黙ったままのヨンジを見つめながら、彼女の肩を抱き寄せ、その手を握りしめるチョイン。チョインの温かい胸の中で、ヨンジは答えるかわりにチョインの手を強く握りしめる。
【ポソン病院】
その頃病院では、運ばれてきた急患が院長のチョンミンとほぼ同じ状態であることに気付いたソヌが、手術を強行しようとしていた。ソヌの体の状態が良くないことを知るカン医師がソヌを制止するが、自分の手術方法が正しかったことを証明するためにも必ず自分が手術しなけらばならないと主張し、手術の準備を進める。
【チョンミンの病室】
翌日、チョンミンの病室にいたチョインの前に、ヘジュが興奮した様子で病室に現れる。ヘジュはチェ・ユラ患者のことも、チョインを中国で拉致し、殺害するように指示したのも、チョインの両親を事故に遭わせたのも、全てはチョインが憎かった自分がやったことだとチョインに暴露する。心が切り刻まれるような母の言葉に絶望の表情を浮かべるチョイン。
−私が...そんなに憎かったんですか?人に依頼し、拉致して殺すほどに...?
−そうよ、憎かったわ...死ぬほど憎かった...あなたをこんなに憎んでいる私が...こうしてお願いするから...うちのソヌの脳医学センターが設立できるように...お前が退きなさい...
−いいえ、そんなことはできません...私も、母さんにとって息子でありたかった...でも母さんにとっては...息子ではなかったんでしょうね...あなたがそれほど大切にする、あなたの息子イ・ソヌが、私に何をしたのか...気になりませんか?ナ・ヘジュ副院長!私が30年間...母さんと呼びたかったあなたが...私の実の両親を殺したように!イ・ソヌが私を殺そうとしたんですよ...両親まで殺し、その息子まで殺してまでも...この病院が、そんなに手に入れたかったんですか!!
チョインの話にショックを受け、私の優しい息子がそんなことをするはずがないと涙を流すヘジュに、チョインは病室に入ってきたソヌの姿を確認しながら、あなたの息子に直接聞いてみて下さいと言い、涙を流しながら部屋を出る。
次々と明らかになる衝撃的な出来事に耐えられず、チョインは救いを求めるように宿舎の2段ベッドで横になるヨンジの手を握りしめる。
−ヨンジさん...僕...つらいよ...
初めてヨンジに弱い姿を見せたチョインがヨンジの手を離そうとした瞬間、ヨンジがチョインの手を強く握り返す。そっと目を開けたヨンジは、自分がそばにいることをチョインに伝えるように、もう一方の手でチョインの手を優しく包み込み、微笑みかける。
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