【ポソン大学病院 救命救急センター】
運ばれてきた患者のCT画像を見たチョインは、脳腫瘍の患者の名前が"イ・ソヌ"だと知り、ベッドを確認し、横たわる兄の姿に衝撃を受ける。チョインは駆け付けたソヨンから全ての事情を聞くことになる。
−いつからだったんだ?...イ・ソヌ、腫瘍ができたのは...
−再発したそうよ...
−何?
−7年前オッパがアメリカで連絡を絶ったとき、その時初めて発病したそうよ...
チョインが事情を悟った頃、検査中に意識を取り戻したソヌは、病院のスタッフに口止めをすると、検査結果も全て消去するよう警告し、検査室を出て行ってしまう。ソヌの犯した罪の重さを全て知りながらも、ソヨンはチョインへソヌを助けて欲しいと訴える。
−チョイン、あなたがソヌオッパを治療してはくれない?
−キム・ソヨン、イ・ソヌが僕にどんなことをしたのか知りながら...どうして僕にそんな話をする?
−それならどうすれば?あなたの兄さんで、あなたの家族じゃない?あなたと30年も一緒に生きてきた、兄さんじゃない...
−いや、僕には兄なんていない...
−それならソヌオッパがこのまま死ぬのを放っておくの?イ・チョイン、あなた、それでいいの?できるの?
−どうしてだ?出来ないとでも?
ソヨンに背を向け歩き出したチョインの前に、ソヌが姿を見せるが、二人は目線も交わすことなくすれ違う。ソヌはソヨンに帰るようにと伝え、自分の部屋へと戻るとすぐCT画像を確認する。腫瘍が数日間で肥大したことを察したソヌは、自分の体をむしばんでいく病魔を前に、どうすることもできない。
一方、チョインもまた、スタッフの配慮で残されていたソヌのCT画像を目にして一瞬で状況を悟る。
【チョイン 父の病室】
−父さん...もしかしてご存じでしたか?イ・ソヌが...病気です...。あんなに涼しい顔で私を殺そうとしておいて...今になって病気だそうです...。弟までも殺そうとしたなら、病気にならず、最後まで生き残るべきだろう...
チョインの苦しい告白を聞いた父チョンミンは、胸を痛めながらチョインの後ろ姿をじっと見送る。
【チョイン 宿舎のヨンジの元へ】
チョインが贈った化粧品を嬉しそうに使うヨンジの前に、ノートパソコンを片手にチョインがやってくる。
−ヨンジさん、何してるの?
−清州で先生が買って下さった化粧品で...マッサージをしていました...
−(あきれたように)...は〜、ヨンジさん...うちの病院がダメになるザマを見たいの?
−(驚いて目を丸くしながら)それはどういう意味ですか?
−だからね、そんなマッサージのようなことはしなくても、可愛くて、病院でも評判で、未婚の男たちがチラチラ見てるのに マッサージまでして、もっと可愛くなったら、その時どうなるの?ね?
−ふざけないで下さい...
チョインはヨンジの顔を見ている間は心から幸せを感じ、全てを忘れたように微笑んでいた。ふと、ヨンジがチョインが持って来たノートパソコンに気がつく。
−父さんがね...あの時のノートパソコンがお気に召さなかったのか、パッと床に叩きつけてしまったんですよ。
−(嬉しそうに)ええ?もうそんなに早く回復されたんですか?
−ああ、ヨンジさん...時々...本当にバカみたいだ..
愛しいヨンジを見つめながらヨンジの頬をつまみ、“可愛いな”と言うチョインに、ヨンジは照れくさそうに微笑む。
−ヨンジさんが父さんの部屋に持って行ってくれるかな?お願いするよ。
−心配いりません。私は先生のお父様にこのコンピューターの説明もしっかりしますから。
−ん?ちょっと待って...ここに何かついてるよ...目を閉じてごらん...
ヨンジが目を閉じると、チョインはヨンジの口元に頬を寄せ、笑顔を浮かべて部屋を後にする。
【チョンミンの病室】
新しいノートパソコンを手にチョインの父の病室へ向かったヨンジは、チョンミンが自分の名前を入力してくれたことに感激の表情を浮かべる。続いて“今から私が書く手紙を...”と入力し始めるチョンミン。
【副院長室】
ヘジュはカン医師から、ソヌの置かれた状況について詳細を知らされる。このままの状態だと、残された時間がどれくらいなのかは誰にもわからないと言うカン医師は、すぐに手術をし、腫瘍摘出後抗がん治療に入るしかないと続ける。例え手術を受けたとしても、残された時間は恐らく2年ほどになるだろうとの言葉に涙を浮かべるヘジュの前に、チョインが姿を見せる。
−お前が私の部屋まで何の用だ?
−座れとも言って下さらないんですね?
−用件は何?
手にしていた封筒をヘジュに差し出すチョイン。
−救急医学センター機構組織図です。理事会で決定した救急医学センターを本日中に固めてください。
−固めて下さいだって?お前がこの私に命令でもしているつもりか?
−命令に...聞こえましたか?それでは従って下さい。そしてイ・ソヌ...もうこの辺で病院から放り出してください。
−放り出すだって?お前は今何を言ってるの?
−グレード4状態の脳腫瘍患者にメスを握らせることが、どんな意味があるのか、ご存じありませんか?殺人ほう助や殺人教唆と全く同じだということです。
チョインの言葉に顔色を失っていくヘジュ。
−私一人殺せばすむのに、誰を殺すつもりですか?いや...イ・ソヌが先に死ぬかもしれませんね..
−イ・チョイン、私を脅迫しているの?
−この程度が脅迫に聞こえますか?
−...分かった...明日理事会事務局に...
−いいえ!今すぐに...なさってください...
チョインは電話をするヘジュの前に書類をかざし、すぐに公知文を出すよう促すと、ヘジュはチョインの望むとおりに伝える。
−これで満足?
−いいえ、これは始まりですよ...それでは私は先に失礼します。副院長に会うため外で待機してる人がいらっしゃるので...
続いてヘジュを訪ねてきたのは診療部長だった。診療部長からソヌが倫理委員会にかけられることを聞かされたヘジュは、徐々に追い詰められていく。
公知文を見たソヌが、カン医師とともに脳神経外科へ戻ると、レジデントの一人がこのままポソン病院で働くためにも、ソヌに勇断して欲しいと進言する。
−私に...センター長を退き、出ていけということですか?
−それだけが患者を救い、私たち神経外科を救う道だと...
−今患者を救うと言ったな?...あなたたちは今私に...勇断云々という実力があると考えているのか?逆らうならば、それ相応の実力をつけてからにしろ...それならいくらでも受けてやるから...
医師生命すら危ぶまれるソヌの前に、倫理委員会出席要求の書類が届く。
【チョイン ヨンジの元へ】
チョインが推していた救急医学センター設立が決まったことを同僚に聞き、喜ぶヨンジの前に、チョインが昼食を食べようと姿を見せる。チョインから事情を聞いたヨンジが心から喜び、チョインを祝福していると、その場にソヌが現れる。
−イ・チョイン!
ちょっとだけ待っていてというチョインの言葉に、二人でゆっくりお話し下さいとヨンジが遠慮すると、チョインがヨンジの手を引き、“すぐ終わるから、待っていて”と真剣な表情でヨンジに話す。
【病院廊下 ソヌとチョイン】
−イ・チョイン...お前が俺の医師資格を剥奪でもするつもりなのか?
−お前には医師の資格はない...
−何だと?
−左前頭葉にある腫瘍の大きさが少しどころか4.7cmにもなったのに、その体で...患者の手術をするのか?
−それは俺の問題だ...
−患者の生命にかかわる問題が何故お前の問題なんだ!頭に腫瘍がある状態で、患者の手術に入って、発作でも起きたら...その時どうするつもりだ?お前に...患者の命が...そんなにたやすいものか?...ああ、考えてみれば、たやすいものだよな...だから弟も殺せる...だろう?
−..俺にとって...神経外科医師が、どんなに重要なものか分からずそう言ってるのか?
−分かっているからこうするんだ...分からないのか?
ソヌに胸元を掴まれたチョインは、落ち着いたまま、ふとソヌの手に目線を移す。
−右手に...力が入らないのか?もう...弛緩性麻痺が始まったのか?
愕然としてチョインから手を離すソヌ。
−お前は医師の資格がない人間だ。認めてガウンを脱げ!
−いや、死んでもできない...死んでも...医師をあきらめない...
−それなら、倫理委員会で、堂々と、明らかにするか...
ぶるぶると震えるソヌを一瞥し、チョインはソヌに背を向け、ヨンジの元へと歩き出す。
【昼食を取る チョインとヨンジ】
ヨンジには常に笑顔で接するチョインだったが、ヨンジはチョインが内に秘めた苦悩に気付き、率直に問いかける。
−先生...救急医学センターと言うのが、そんなに重要なものなんですか?そのためにイ・ソヌ先生と仲が良くないのではありませんか?
−もう全て終わったんだから、ヨンジさんは気にしなくてもいいんだよ...
−それでも心配になるんです...先生にとっては、この世でたった一人の兄さんじゃありませんか。
−ヨンジさんが心配してくれるのはありがたいんだけれど、僕ら二人でいるときは...僕らの話だけしようよ。ね?
戸惑ったように笑って“はい”と答えたヨンジを突然抱き寄せ、頬を寄せるチョイン。
−こうして...スキンシップもして...ね?
恥ずかしがって身を離すヨンジ。
−どうしたの?愛してるっていったじゃないか...この前言ったじゃない?違う?
うなずくヨンジを再び抱き寄せるチョイン。
−ヨンジさん、この前...夜景を見に行けなかったでしょう?今日の夕方行こうか?
−今日ですか?はい...
ヨンジの笑顔を見つめながら、チョインは心の底から彼女を愛しく感じていた。
【ソヌ チョンミンの病室】
父の手を握りしめようとして、あきらめて手を置くソヌ。
−父さん...父さんに勝ちたいという気持ちは、ただの一度も持ったことがありません...。ただ父さんのようになりたくて、父さんの背中だけ見てついてきただけです...。これも父さんの意志なら、従わなければなりませんね...それでも父さん、他人の手で、私の白衣が脱がされるのは、絶対に見たくありません。そうなるなら、いっそ死んでしまった方がマシです...。
ソヌが立ち上がると、その手を父チョンミンがしっかりと握りしめる。父の温かい手が自分の手を握りしめているという現実に涙があふれ出すソヌ。
−...父さん...少しだけ、少しだけ早く...掴んでくださったら...少しだけ...早く...
父の愛を受けたことを感じた瞬間、後悔の念がこみ上げるソヌの目から、涙がとめどなく流れ続ける。
【チョインとヨンジ ソウルの夜景を見ながら】
−先生...私の故郷の咸鏡道では、夕方になると灯りがみんな消えて真っ暗だけれど、ここソウルは夜になっても、色とりどりでとても綺麗です。あの赤い灯りひとつひとつは、全て人々がともしているんですよね?その人たちが、家族を作って、その家族がともした赤い灯りなんですよね...
−僕たちも家族になれば、こんなに赤い灯になれるだろうか?ヨンジさんのご家族が、どんな方々なのかな...。その方々はとても安らかな方々だろうね...互いに大切に想い、愛して...。会ってみれば分かるね...
−それはどういう意味ですか?
−ヨンジさんのご両親の消息、調べているんだよ...もう少しすると、良い知らせが聞けるかもしれない...
−先生...
−まだ感動するほどのことではないけれど...
微笑み、ベンチから立ち上がるチョイン。
−ヨンジさん、本当の家族に会っても、僕を追い出さないでよ...
家族に捨てられたチョインが寂しそうにつぶやくと、ヨンジはチョインをしっかりと抱きしめる。
−私がどうして先生を追いだすんです?先生が追い出せと言っても...私はピッタリくっついて、絶対に離しませんよ...絶対にです...
抱きしめ合う二人を包み込むように、美しい夜景の灯りが輝き続ける。
その頃、運転中のソヌに手に異変が起き、運転を続けることができなくなったソヌは、ふらふらと車道を歩きだす。
【倫理委員会】
倫理委員会の場にソヌが姿を現さないことで、会議は延期となる。チョインはすぐにソヌの携帯に連絡を取るが、留守番電話サービスへとつながってしまう。
−イ・ソヌ...今どこだ?卑怯に隠れたということか?あんなに堂々としていた人間が、なぜ今になって隠れるんだ?出て来い...お前が隠れるところは、この世のどこにもない...
連絡が取れないソヌを心配したソヨンは、ヘジュの元へ向かうと、病院にも姿を見せていないことにショックを受ける。思い当たる場所のあるソヨンは、急いで車を走らせる。
【楊口(ヤング) 父の別荘】
ソヌは危険な状態のまま、父の別荘に向かい、思い出のブランコに座っていた。少し前、チョインが向かったあの場所で、幼い頃から本当の弟としてチョインを深く愛し続けてきたことを思い出しながら、ソヌは激しい後悔の念に苦しんでいた。
−...後悔してる...チョイン...死ぬほど...後悔してる...
行くあてもなく歩き出したソヌの体は、徐々に自由を失い、震える手で携帯電話を取り出すと、真っ先にソヨンに連絡を取り、迎えに来てくれと伝えて意識を失い倒れてしまう。
【ソヌ、チョインの元へ】
ソヨンに連れられて病院に戻ったソヌは、スタッフらが騒然とする中、チョインのいる場所へ一人で歩いて向かう。
ソヌの姿を見つけたチョインは、ソヌから目線をそらし歩き出す。チョインの後を追うソヌ。ソヌの気配を察しながら、背を向けたまま問いかけるチョイン。
−どうした?死にそうになって怖くなったか?それでプライドも何も皆捨てて来たのか?どうやってでも生きてみようと?
−...ああ、それで来た...イ・チョイン、お前が俺の手術をしろ...
ソヌの言葉に表情を固くしたまま振り返るチョイン
−何?
−俺を生かそうが、殺そうが、お前が決断しろ...
−何故俺がしなければならないんだ?(ソヌの麻痺した右手を見ながら)黙っていても死ぬ人を...僕を殺そうとした人を...何故僕の手で、救わなければならないんだ...
−死ぬとしてもお前の手で死にたいし...生きるにしてもお前の手で生きたい...イ・チョイン、お前が手術しろ...
−手術はしない...手術をせずに、お前が死ぬほど後悔するのを、少しずつ、ゆっくりと、死んでいくのを見守ってやる...
チョインは断固とした態度のまま、ソヌの申し出を拒否する。ところが変わらず危険な状態のソヌに再び発作が起こり、ソヌは病院内の緊急救命センターへと運び込まれる。緊急手術が必要と判断したヒョンジュの前で、ソヌはチョインの名を呼びチョインのいる方へ手を伸ばすが、ソヌを許すことができないチョインは、動揺しながら持ち場から離れて行く。
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