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「カインとアベル」韓国版DVD
韓国語・英語字幕付

 
 




カインとアベル 第20話(最終話)
 



이초인:선우형, 그 시절로 다시 돌아 갈수 없어도...
    ソヌヒョン ク シジョルロ  タシ  トラ ガルス オプソド

이제 그만 돌아와.. 거긴 너무 외롭고, 춥잖아..
イジェ クマン トラワ  コギン ノム ウェロプコ チュプチャナ

ソヌ兄さん、あの時代に、また戻ることができなくても...
もうそろそろ、戻ってくれ...そこは、ひどく孤独で、寒いじゃないか...
 


【ポソン病院】

ソヌが差し出した手を握ることができなかったチョインは、一人病院の屋上で葛藤を続けていた。事情を知ったヨンジがチョインを探してチョンミンの病室へ向かうが、そこにはチョインの姿はない。ベッドに横たわるチョンミンは、 ヨンジにPCの画面を指差し、二人の息子への手紙を託す。

一方、病院内を呆然と歩くヘジュの脳裏には、倒れる前にソヌが打ち明けた言葉が渦巻いていた。

−私の手術は...チョインがします...

−何の話?あなたの手術をチョインが?

−申し上げた通りです...チョインでなければ、私は手術を受けません。

−ソヌ、チョインがあなたをどうするか分からないのに、どうして信じて手術を任せられるの?え?ソヌ、あの子は...以前のチョインじゃないのよ...あの子があなたをどうするかも分からないでしょう?

−チョインが...私を殺したければ、死んであげなければなりません...

−ソヌ...意地を張らずママの話を聞いて...今手術を受けなければ、いつ死んでもおかしくないのに...罰を受けるにしても、生きていなければだめよ...すべて私のせいで起こったことなのに、何故あなたが死ぬの?

涙を浮かべてソヌの手を握りしめる母ヘジュを、じっかりと見つめるソヌ。

−母さん...今度の事だけは、私の意思に従ってください...申し訳ありません...
 

その頃、病院の屋上で一人苦悩し続けるチョインの元に、ヨンジからの電話が入る。今は誰にも会いたくない、とヨンジに伝えるチョインに、ヨンジはチョンミンから預かった手紙があるために連絡をした と話し、チョインが屋上にいることを知り、すぐに向かおうとする。そんなヨンジの前にヘジュが姿を見せる。

−イ・チョイン先生を見ましたか?イ・チョイン先生は...

咄嗟に見なかったと答えたヨンジだったが、ヘジュがチョンミンに話しかける内容から、チョインが、そしてソヌが、ヘジュが今どんな 状況に置かれていて、どんな気持ちでいるのかを察して表情を曇らせる。


【屋上 ヘジュとチョイン】

ヨンジからチョインの居場所を聞いたヘジュは、チョインのいる屋上へ向かうと、チョインにゆっくりと近づいていく。

−イ・チョイン先生...

ヨンジを待っていたチョインが振り返ると、そこには母ヘジュの姿があった。黙ったままヘジュを見据えるチョインの目の前で、突然跪くヘジュ。

−今...何をなさっているんです?

−チョイン...全てのことは、全ては私の責任よ...私の欲が、あなたたちをこんなふうにしてしまったの...私の欲が...

愕然とした表情で黙ったままのチョインの足元にすがりつき、涙ながらに訴えるヘジュ。

−チョイン、ソヌの手術をしてあげてくれたら...ソヌを助けてくれたなら...あなたの言う通りにするから...私が罪人だと自分の口から世の中に全部話すわ 。あなたが望むなら刑務所も入るから...私がそこで一生老いて死ぬまで暮らしてもいい、死刑になってもいいから...お願いだからソヌを助けて、お願いよ...ソヌを助けて、チョイン...

今まで見たこともない母ヘジュの姿に心が痛み、涙を浮かべながら必死で言葉を絞り出すチョイン。

−イ・ソヌ...手術しても死ぬことを...ご存じありませんか?

−そうね、それでも死ぬかもしれない...。そうやって死んでいくのかもしれないわ...。それでも1日でも長く会えるでしょう?死んでいく私の息子に、挨拶でもできるじゃない...このまま死んでしまったら、挨拶もできずにただ別れなければならないわ...チョイン、お願いだからソヌを助けて...あなたの兄さんを助けて...

声を上げて泣くヘジュを直視できないチョインは、目線をそらしたまま心を閉ざしたように冷たく答える。

−"兄さん"ですって?私には兄などいません...お帰り下さい...

心の中で兄を許すことのできない気持ちと、許したい、助けたい気持ちとで揺れるチョインは、泣き崩れるヘジュに背を向けて歩き出す。様子を見守っていたヨンジにチョインの心情が痛いほど伝わり、ヨンジはそっとチョインの後を歩いてついていく。病院の外に出てベンチに座り、今にも泣き出しそうなチョインにゆっくりと近づくヨンジ。 黙ったまま傍にいるヨンジに気付いたチョインが声をかける。

−ヨンジさん...ヨンジさんもこう思いますか?たった一人の兄を、手術せず悪い奴だと...

−いいえ、私は先生の気持ち、全部分かっています。手術するより、手術しない今の気持ちが...もっと
苦しいことも、分かります。それでも、先生は、中国で会った面識もない脱北者を...何の条件もなく手術してくれて、手紙まで書いて下さった人です。

チョインの隣に腰かけると、ヨンジはチョインが固く握りしめた両手にそっと手を伸ばす。

−兄であり、敵だということは全て忘れて...先生は医者であり、お兄さんは先生に手術を受けたい患者じゃありませんか?

−ヨンジさん、これだけは、自分の思う通りにします。

−はい、先生の心の通りになさってください...

ヨンジはチョンミンから預かった手紙をチョインに手渡すと、その場を後にする。

【手術室】

緊急を要する事態に陥ったソヌを手術室へ運び、チョインを待ち続けていたヒョンジュとチングンの前に、チョインが遅れて姿を見せる。チョインの執刀により手術が進む中、腫瘍の全摘出を避けたチョインに対し、神経外科レジデントが疑心を抱くが、チョインは元来ソヌの手術方法に異論を唱えており、自分の信じる方法 (腫瘍を全摘出せずに一部を残す方法)で兄の手術に臨んでいたのだ。ソヌの手術を執刀中のチョインの脳裏に、父チョンミンの手紙の言葉が浮かぶ。

−そうだ、君は初めからそんな運命を持って生まれた子供だった。30年前、私の一番親友であり、君の実の両親のイ・ジンソンとチェ・ヨンヒが交通事故で救急室に運ばれてきた。弁解になるが、その日は週末であり、救急室のインターンと私が、君の両親の生命を預からなければならなかった。君の実父はインターンが心肺蘇生術中に亡くなり、君の実母は、私が手術を引き受けたが、脳出血と脳髄膜剥離による出血多量で33週に満たない君をお腹に残し、手術室で亡くなった。神経外科医として大韓民国で最高だと自負していた私は、君の両親の死の前で...限りなく無力だった。私を信じて、わずかな希望で遠い道を苦痛の中に連れられてきた君の実の両親を思うたび、父さんは胸が張り裂けそうだった。友人の命ひとつ助けることができない私は、必ず救急医学センターを設立しなければならなかった。その任務を任せられる人間は、ほかでもないチョイン、君しかいなかった。それだけが愛する友人を先に見送ってしまったこの父が許されるただ一つの道だった。チョイン、これで君にとってなぜ救急医学センターが運命か分かっただろう?...そして君の兄、ソヌに取り返しのつかない傷を与えてしまった。父として与えられなかった愛情を、君がかわりに与えてあげてくれないか?君たちは、二人といない愛する兄弟だから...。父さんの意思、受け入れることができるだろう?

−申し訳ありません、お父さん。私は、父さんの意思に初めて背くかもしれません...

術後、ソヌは父チョンミンと全く同じ状態で目を覚ます。ソヌが植物状態であることで、病院内ではチョインの手術方法に疑心を抱く声が聞こえるが、カン・ソックンだけは執刀医であるチョインの選択を尊重する。


【ソヌ 病室】

残り少ないソヌの人生を支えて行くと決心したソヨンは、ヨンジから受け取ったソヌ宛ての院長チョンミンの手紙を、ベッドに横たわったままのソヌに読み始める。

−私の息子、ソヌへ。ソヌ、父さんがチョインを養子にした時、君の年齢がたったの5歳だったことを...その時どうして何も考えられなかったのだろう...。保育器で今にも死にそうだったチョインを抱いて駆け回っていた頃、常におとなしく見ていただけの君の目が、“父さん、僕もちょっと見て下さい...私も父さんの息子です”そう言いたい眼差しだったことに気付いていたら...。私の息子、イ・ソヌ...愛している、と言えたはずなのに...すまない...。チョインは父さんが一生面倒をみなければならない運命のような子供だった。君が私の代わりになり、チョインが救急医学センター設立するのを手助けし、以前のように愛してやってくれ...。ソヌ、私が君をなぜ神経外科に転科させたと思う?君なら、父さんが叶えることのできなかったことを、叶えられると思ったからだ。君は、父さんの初めての分身で、夢で、未来だったから...。ソヌ、君は私の後を継ぎ、世界最高の神経外科医となった。君にはただの一度も言ってあげられなかったが...愛している、私の息子イ・ソヌ...。

チョンミンの手紙を読み終えたソヨンが、涙を流しながらソヌを抱きしめると、ソヌの瞳から一筋の涙が流れ落ちる。

【チョイン 宿舎へ】

チョインが憔悴しきった表情で宿舎へ戻ると、ヨンジが荷物をまとめていることに気がつく。

−ヨンジさん...どこか行くの?

−はい、清州へちょっと戻ります。

−どうして?

−店もそのままですし、整理をしなければいけませんから..

−いつ...戻ってくるんですか?

−私はもう、ここには戻りません。

−え?

チョインが顔色を失う様子を見て、微笑むヨンジ。

−私一人では絶対に戻りませんから、先生が私を迎えに来てください。

安心したようにホッとため息をつくチョインにヨンジが続ける。

−先生、お兄さんの手術の後、気分が穏やかでないように感じます...。イ・ソヌ先生とも和解してくださいね...。先生の心が楽になったら、その時私を迎えに来てください...。それでは、私そろそろ行きますね...

チョインはヨンジが誰よりも自分を想ってくれていることを改めて感じ、彼女を抱きしめる。

−ヨンジさん、必ず...迎えに行くから...

:::一ヶ月後:::

ポソン病院では、定期理事会の決定事項が公知されていた。その内容から、ナ・ヘジュが副院長の職を退くことを知るチングンとヒョンジュ。

−理事会でいつこんな決定が?

−私もセンターの事で忙しくて出席できなかったけれど、副院長の強力な意思表明があったそうよ。

−は〜、もうナ・ヘジュ時代は完全に去ったんだな...

−そういうことね...

−血の時代が去り、平和の時代が到来したようですね...

−...イ・ソヌ先生も療養所に移ったし、なんだか病院が寂しくなった感じね...

−病院はスイスイと上手くいっているのに、うちのセンター長の人生が寂しいのかな...

チングンの一言に腹を立てるヒョンジュだが、その後チングンから飛び出したプロポーズの言葉に目を輝かせ、差し出されたチングンの給与3ヶ月分という指輪をパッと手にすると、いつものようにふざけながら走り出す。

【副院長室】

公知文を見たチョインが、血相を変えてノックもなしに副院長室に入るが、ヘジュはそんなチョインを温かい眼差しで見つめる。

−...何をなさるおつもりですか?

−チョインだったのね...私から訪ねて行こうと思っていたのに...

−こんなやり方で、罪を償うつもりですか?

−いいえ...どうしてあなたのご両親を死なせた罪をこんなことで全て償えるの?ごめんね、チョイン...私も女だったからそうしたの...私が愛する人を、他の女に奪われるのが嫌で...嫉妬心で涙を流した、バカな女だったからそうしたの...

母が心から詫びる姿に、涙を浮かべるチョイン。

−チョイン...2ヶ月になるか、2年になるか分からないけれど...いつか、この罪を償うから...ごめんね...本当にごめんね...

胸の痛みに耐えきれず、チョインはヘジュに背を向け副院長室を後にする。

−チョイン...そのときは私を“母さん”と呼んでくれる?“私の息子”と呼んでもいいのね?

自分を見つめる母の穏やかな表情と、心からの謝罪の言葉に、チョインの心を覆っていた黒い雲が徐々に消えていく。これまでこらえていた感情があふれ出したチョインは、暗い病院の廊下の椅子に一人座り、声を上げて泣いていた。

−私も“母さん”と呼びたいです...。今ではありません...いつか“母さん”とまた呼べるでしょうか...
 

【清州】

ある晴れた日、清州でチョインを待ち続けていたヨンジは、友人のチノのバイクでチョインとの思い出の坂道を走りながら、チョインのことを考えていた。そのとき、チノの携帯電話に連絡が入り、チノは先に店に戻ると言ってヨンジを一人坂道に残して走り去る。怒ったヨンジは大声でチノを呼び止めるが、チノは意に介さずに行ってしまい、 ヨンジは仕方なしに歩き出す。そんなヨンジの目線の先に、懐かしい姿が見える。チョインだった。

−先生...イ・チョイン先生、イ・チョイン先生ですか?イ・チョイン先生ですか?

チョインはヨンジと初めて出会った中国で見せた笑顔のように、まぶしいほほ笑みを浮かべ、その時と同じように両手で大きく丸を作ってみせる。再会した二人は、二度と離れることがないことを願いながら、しっかりと抱きしめ合う。

かつて二人で暮らしていた頃のように、チョインのこぐ自転車にヨンジが乗り、二人は清州の風に吹かれながら幸せを感じていた。

−ヨンジさん、僕、遅くなかったよね?

−はい、全然遅くありません!

−ヨンジさん、僕たち今後は清州で暮らそうか?

−清州ですか?

−はい。清州で暮らしていた頃が、一番幸せだったよ...

−清州でも、ソウルでも、先生さえ傍にいてくれたら私は幸せです!
 

【納骨堂 カンチョルの遺影前】

正装し、カンチョルに結婚の報告をするチョインとヨンジ。

−カンチョル兄さん、僕のガールフレンドですよ。僕、ヨンジさんと結婚するつもりです...それで挨拶に来ました。

ヨンジを見つめ、彼女を抱き寄せると、チョインは再びカンチョルへ語りかける。

−どうです?僕たちお似合いですか?

ヨンジは心の中でカンチョルに語りかける。

−カンチョル兄さん、私が紹介したかった人は、この人なんです...この人と、私が一緒にいても、かまいませんか?

チョインもまた、言葉に出さずに心でカンチョルに語りかける。

−カンチョル兄さん...兄さんとの約束を守るのではありません。ヨンジさんを...深く深く、愛してしまったんです...
 

【チョイン ヨンジを連れてソヌの元へ】

穏やかな川の流れを、車いすに座ったソヌと、その脇に立つチョインとが共に静かに見つめている様子を、ソヨンとヨンジも見守っていた。

−キム先生はお元気でお過ごしでしたか?

−もちろんよ。元気に過ごしていたわ。あの人と、今までできなかったデートをしているんだもの。望むことがあるとすれば、今のこの時間が、もう少しあったらいいんだけれど...

チョインは、無表情のまま一点だけ見つめているソヌに語りかける。

−イ・ソヌ...その監獄、うんざりしないか?僕に犯した罪のために自分で閉じこもった監獄なら、もうそろそろ出て来いよ...。

イ・ソヌ、本当に許されない理由が何だか分かるか?僕たちの...一番輝いて美しかったあの時代に、二度と戻れないようにしたことだ...。戻りたくて死にそうなのに、もう二度と、戻れないだろう?もう僕が、この世で一番愛する兄さんに、会えなくしてしまっただろう...。ソヌ兄さん、あの時代に、また戻ることができなくても...もうそろそろ、戻ってくれ...。そこは、ひどく孤独で、寒いじゃないか...

チョインの言葉を黙って聞いていたソヌの目に、涙が次々とあふれ出す。ソヌの運動能力回復と意識回復を察していたチョインは、全てを覆い隠して暗闇に生きようとするソヌの心情を知っていたのだ。チョインが愛する兄ソヌに温かい手を伸ばすと、ソヌもまた愛する弟チョインが伸ばした手を強く強く握りしめ、後悔の涙を流す。
 

:::イ・チョイン ナレーション:::

僕らはそれぞれ、記憶を抱いて生きていく。ある記憶は、取り戻そうとすれば取り戻すことができるが、どんなに消そうとしても、決して消すことのできない記憶もある。...人として生きていくことは、消すことのできない記憶を作らないよう、記憶を指標に堂々と歩いて行けるように、努める過程かもしれない...。

身近な人によって受けた記憶の傷であるほど、より深く鋭利で、とても長い間、消えることはない...。それでも、消すことのできない記憶の傷はやはり、ただ人によってのみ、治癒を受けることができる。誰もが、美しく、幸せな記憶を抱き、生きて行くものだ...。人間にとっては、ただ人間だけが、救いである。

〜fin〜

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