【カンチョルに別れを告げるヨンジ】
兄を納骨堂で見送るヨンジは、しっかりと兄の遺影を見つめ、涙をふくと、これからはしっかりとお金を稼いで北にいる両親を迎えられるようにするから、と語りかける。
−次の世では...良い暮らしができる国に生まれて、必ず...どうか...幸せに暮らしてください...(あふれ出る涙をふき)私もこれからは両親が来て下さるまで、世の中の人たちが全て悪い人だとしても...(チョインが出て行った方向へ目線を移し)あの人...絶対に手放しません。兄さんが贈ってくださった贈り物のような人を...しっかりと掴んでおきます...
チョインの姿を探すヨンジは、一点を見つめて呆然と立ち尽くすチョインを見つけると、彼の目線の先にいる女性を見て愕然とする。チョインの婚約者、キム・ソヨンだった。懐かしそうな瞳で彼女を見つめるチョインの腕を掴んだヨンジは、彼女が気づかないよう、チョインを外へと連れ出し、足早に納骨堂を後にする。
【ポソン大学病院】
チョ・ヒョンテクからソヌの病気について知らされたヘジュは、
全てを懸けた息子の病状を知り、衝撃を受ける。ヘジュはチョンミンの病室へと向かい、怒りと悲しみをチョンミンにぶつけ泣き叫ぶ。様子を聞いたソヌが父の病室へ急ぎ、興奮する母をなだめる。ソヌに手術を勧める母に対し、ソヌは落ち着いた表情で、大丈夫だから心配しないでと涙を流す母に穏やかに語りかける。
【ヨンジの家】
チョインの身の安全を心配したヨンジは、一旦自分の家へチョインを連れていくことを決意する。家に着くとすぐに食事の支度を始めるヨンジ。ヨンジの暮らしぶりを目にしたチョインは、慣れない場所で1人一生懸命生きているヨンジの姿に触れることになる。ヨンジは
郷土料理のカムジャマッカマンドゥクク(じゃがいも皮の餃子スープ)を作り、スープを食べながら、チョインの前で子供の頃の家族の思い出を語り始める。学校から戻って来た時、そのスープをヨンジの母が作ってくれていて、とてもおなかが空いていたのに、兄さんがくるまで待たされて恨めしい想いをしたけれど、今になってみるとあの時が一番幸せでした、と話すヨンジ。
その夜、ドア越しに眠るヨンジに、チョインが語りかける。
−ヨンジさん...中国では、どんなふうに過ごしていましたか?
−はい...ガイドをしていました。韓国からいらしたお客様たちを案内して、通訳もしていました。お客様の望みは全て聞きましたし、どこかへ行かれるときは、そこまでずっとお供しました...
チョインに話しながら、ヨンジは中国でチョインと過ごした日々を思い出し、胸が痛む。
−先生...本当に何一つ、思い出せないんですか?
しばらくの間、じっと黙っていたチョインが重い口を開く。
−さっきは...ありがとう、ヨンジさん。
目線を合わせる二人。
−何がですか?
−オ・ガンホと...呼んでくれて...
ヨンジは目を閉じるチョインの顔を見ながら、自分の心に、チョインの心に呼びかけるように心でつぶやく。
−先生は一体誰ですか?本当にイ・チョイン先生ではないのですか?
翌朝、目を覚ましたチョインは、すでにヨンジの姿が見えないことに気がつく。食卓の上に用意された餅に気付いたチョインは、添えられていたメモを手に取る。
−ハナ院に届ける書類があるので急いで行ってきますね。まずはお腹の足しにしてください。
チョインの健康診断のための書類を受け取ったヨンジが急いで家へと戻ると、そこにはチョインの姿が無かった。心配になったヨンジはすぐに外に探しに出るが、なかなかチョインの姿が見つからず、不安でいっぱいになってしまう。その頃、チョインは行くあてもなく街をさまよっていた。過去の自分の面影を探すように、街を歩くチョインの前に一台の救急車が通り過ぎると、チョインは自然と病院の方へ足を向ける。救急医療センター前での光景に、不思議と懐かしさを感じるチョインは、思わず病院内に足を踏み入れるが、そこで脳裏に浮かぶのは、中国で同志を治療した時の記憶だった。銃で撃たれて倒れる前の記憶が何一つ戻らないチョインは、不安と焦燥に包まれながら、日が沈むころ、ヨンジの待つ家へと戻っていく。家に入らず、外に座ったままチョインの帰りを待っていたヨンジの前に、チョインが戻ってくる。驚いたようにヨンジの名を呼ぶチョイン。声に気付いて立ち上がったヨンジは、厳しい表情でチョインにどこへ行っていたのかと問いかける。
−どこかへ行きたいなら、行ってくると話してから行くべきじゃありませんか?どこかへ行って、何かあったら大変じゃないですか。記憶もない人がこんなふうに出て行ったら、道にでも迷っていないか、何かあったかと思うじゃないですか!
ヨンジが自分を心配して怒る様子をじっと見ていたチョイン。
−ごめんなさい...ごめんね、ヨンジさん...
−もうこんなことしないで下さいね、分かりました?
−はい、分かりました...
−それならいいです...お腹...空いてませんか?
−はい、空いてます、とても。
−それなら早く戻りましょう、すぐにご飯にしますから...
嬉しそうにほほ笑むチョインは、歩き始めてもまだブツブツと文句を続けるヨンジの後にゆっくりとついていく。その夜、チョインのために自分の名前と住所を刺繍したものを作るヨンジの後ろ姿を見つめながら、チョインは彼女を守り続けようと決意する。
−ヨンジさん...もう二度と、1人にしません...カンチョル兄さんとの約束...必ず守ります...
【国家情報機関】
拘束されていたチェ・チスは、自分の指の爪を剥ぎ、体を傷つけ、病院へと搬送される。
【脱北民 健康診断】
ヨンジの案内で健康診断に向かうチョインに、ヨンジは健康診断を終えたらどこにも行かず必ずここで待っていてくださいと伝える。そんなヨンジの元にチョインの兄ソヌから連絡が入る。チョインが韓国に戻ったかもしれないと考えたソヌは、脱北民の情報収集をしていた中で、ヨンジの写った写真を得ていたために、ヨンジが何か知っているのではと考えていたのだ。震えを抑えながら電話を切り、ヨンジは早速ポソン病院へ向かう。
チョインは、医師に自分の手術の傷跡を見せると、この傷跡から分かることはありませんかと尋ねる。
−どこで手術をしたのか、どんな手術だったのか...
この程度の手術は北では無理だろうという医師の言葉に、韓国で受けたものなのですかと続けるチョイン。20年は経過していると思われるその傷跡は、韓国でも数少ない病院でしか行われない手術によるものだろうとの医師の見解を聞き、記憶の糸口をつかめそうな予感がしたチョインは、早速センター内のパソコンを使い、病院について調べ始める。そんなチョインの背後に、入院中だったチェ・チスが、注射器に薬物を入れ、ゆっくりと近づく...
【ポソン病院】
その頃病院に着いたヨンジは、思いがけずソヌの姿をエスカレーターで見かけることになるが、ソヌの後ろに中国にいるはずのチェ社長の姿があることに気付き、恐怖のあまり思わずその身を隠してしまう。
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