【ハンガリー】
教会前に一人たたずみ、任務を待つNSS要員キム・ヒョンジュンの前に、NSS副局長である人物のペク・サンがゆっくりと近づいてくる。
−何をそんなに驚いている?
−副局長がいらっしゃるとは聞いていなかったものですから...
−ホン・スンリョンが殺された…我々の要員も全て殺された…。
言葉を失うヒョンジュンに、少し歩こうと声をかけるペク・サン。
−もしかして汎ヨーロッパ・ピクニックについて聞いたことはあるか?1989年共産国だったハンガリーが国境を開放し、数千もの市民を西ドイツへ送った事件のことだ。その事件は後にベルリンの壁崩壊を導き、冷戦時代はこうして終わることになった。
立ち止まったペク・サンは、しっかりとヒョンジュンを見据える。
−単独任務がある。この任務が成功すれば、その事件がハンガリーとドイツの統一において大きな役割を担ったように、お前の成功も韓半島の統一に大きな役割を担うだろう。
−暗殺対象は誰です?
−ユン・ソンチョル…
−北の最高…人民委員長のことですか?
−ああ
与えられた任務は一寸の狂いもなく遂行してきたヒョンジュンだったが、この単独任務の重大さに表情を曇らせる。着々と一人で任務遂行の準備を整えるヒョンジュンは、北の防衛員らの監視を逃れ、任務を成功させる。現場から逃げようとするヒョンジュンは、北の防衛員らに執拗に後を追われ、そのうちの一人パク・チョリョンが放った銃弾を腹部に受けてしまう。銃創を手で押さえ、追撃を逃れながらようやく隠れ家にたどり着いたヒョンジュンは、ペク・サンへと連絡を取る。
−任務は成功しました。隠れ家に潜伏中です…銃で撃たれ…一人での脱出が困難かもしれません。助けが必要です…一人では、ここを脱出するのは不可能です...
−今私が言えるのは、要員規則に従えというだけのことだ。
助けを求めるヒョンジュンに対し、ペク・サンは冷たく答えると、電話を切ってしまい、ヒョンジュンを見捨ててしまう。
−副局長…私には必ず戻らなければならない理由があります。助けてください!副局長、副局長…
【韓国 707特任隊】
韓国の特任隊に所属するキム・ヒョンジュンは、軍隊でずば抜けた身体能力を発揮し、その向学心の強さから、大学にも通って講義を受けていた。ある日、いつものように大学の講義を聴きに向かったヒョンジュンは、一人の女性と出会うことになる。その女性の美しさに息を呑んだヒョンジュンは、彼女の聡明さにも惹きつけられ、瞬く間に心を奪われる。
ヒョンジュンはスンヒに声をかけるが無関心な様子であっさりと断られてしまう。あきらめきれずに、お茶でも飲みながら話をしたいというヒョンジュンに、スンヒはお酒でも飲もうとデートを受ける。ヒョンジュンは美しく聡明なスンヒを前にすっかり舞い上がり、焼酎の注がれる杯を次々と空にしながらも、自分の記憶力の良さを披露し、スンヒにアピールを続ける。ところが、スンヒより先に酔いつぶれたヒョンジュンが眠ってしまうと、スンヒは先に席を立ってしまい、その夜を境に姿を消すことになる。
ヒョンジュンが気落ちしている頃、サウは先輩であるパク・サンヒョンから連絡を受け、喜んで約束の場所に向かう。すると、地方で事業をしているというサンヒョンから、職場の部下であるという女性を紹介される。ヒョンジュンが一目ぼれした相手に、サウも同じように一目で恋に落ちてしまう。
姿を消してしまったスンヒと会えずにむしゃくしゃしていたヒョンジュンは、サウを誘って軍隊の寮を抜け出し、夜の街に繰り出すが、騒ぎを起こし逃げ遅れたサウだけが警察につかまってしまう。外出が明らかになったサウ一人が罰を受ける姿を見たヒョンジュンは、上官に正直に自分も一緒だったことを打ち明け、二人共に罰を受けることになる。
こうして共に支えあいながら友情を分かち合ってきた二人だが、ある夜、突然上官にそれぞれ見知らぬ場所へと連れて行かれることになる。
【NSSへ】
厳重な警備体制が整った施設に連れて行かれたヒョンジュンは、暗い建物に入れられ、冷たい廊下を歩いていく途中、友人サウの叫び声を耳にする。行く先も告げられず突然暗い部屋に閉じ込められたヒョンジュンは、自由を奪われ、必死で抵抗するが椅子に縛り付けられてしまう。薬物を注射され、苦痛を味わうヒョンジュンとサウ。二人が苦痛に耐える様子を
ガラス越しに冷静に見つめていたのは、サウの先輩であるパク・サンヒョンとチェ・スンヒだった。彼らは計画的にヒョンジュンとサウに近づいていたのだ。
拷問に耐えるヒョンジュンは、残っている力を振り絞り手錠をはずすと、自分が縛り付けられていた椅子を手にしてガラスに向かって何度も何度も怒りをこめて叩きつけ...