【中国 上海】
ソンファからの連絡で上海へやってきたチョリョンの前に、ハンガリーで要人を暗殺した容疑者であり、チョリョンが最後まで捕らえることのできなかった男、キム・ヒョンジュンが姿を現す。チョリョンはこみ上げる怒りをこらえながらソンファを睨み付ける。
−私はお前が戻ってくると最後まで信じて待っていた...信じて、待った...。それなのにこれは何の真似だ?私の命令などすでに忘れたのか?
問い詰められるソンファが沈黙を守り続けていると、ヒョンジュンがチョリョンの前に座り、沈黙を破る。
−俺が会わせてくれと言った...あんたの助けが必要だ
−お前は共和国人民委員長を殺した奴だ...そんな奴が、警護責任者の私に助けを求めるだと?話になると思うのか...
−あんたも俺も命令で動いている人間に過ぎない。俺は命令に従っただけで、あんたは命令どおり俺を止めようとした。だが結論は、あんたは失敗し、俺は捨てられた。俺を利用し、捨てた奴らに復讐したい...
−お前をどう信じろと?
−俺は全てを失った...愛する人まで。俺に残されたのはこの命だけ...
銃を取り出し、チョリョンの前に差し出すヒョンジュン。
−命を差し出せば信じてくれるか?
【NSS サウ】
サウが日本の内閣調査室から受け取った映像データの中に映るヒョンジュンの姿に目を凝らしていると、ヤン・ミソンが映像を見て驚き“あ、ヒョンジュン先輩!”と声を上げる。
−これ、ヒョンジュン先輩ですよね?いつの映像ですか?
慌てて取り繕うサウ。
−ああ、NSS入社テストをした時のものだ...
−ふぅ〜ん...でも、こんなものを持っていてはいけないはずですよね?ヒョンジュン先輩に関する記録は削除されたと思っていたのに、監査チームに知れたら大事ですよ
−うん、最後に残ったものだから惜しくてな。消しておくよ
そう答えたあと、データを迷わず削除するサウの態度に驚くミソンは、じっとサウを見つめ続ける。
−何だ?まだ話でもあるのか?
−...そうだ!チェ・スンヒチーム長のカムバック記念にMTがあるんです。明後日です。
用件を伝えたミソンは、サウの見ていた映像を気にかけながらも黙って席へ戻る。
【ヒョンジュン 船上での回想〜釜山へ】
ヒョンジュンの真意を知ったチョリョンの配慮により、ヒョンジュンは北の諜報機関で調査を受けることになり、NSSに関する情報とユン・ソンチョル暗殺の任務を受けたことを正直に答える。
−パク・チョリョンを尋ねた目的は?
−復讐のため助けが必要だった
−復讐の対象は?
−ペク・サン、NSS副局長...。そして俺を利用して捨てた大韓民国...
黙ったままヒョンジュンの話に耳を傾けていたチョリョンがヒョンジュンに近づいてくる。
−この程度の供述ではまだお前を信じることはできない。これからが本当の始まりだ。お前が全ての過程を通過し、完全に私の信頼を得たなら、その時お前を助けてやろう
ヒョンジュンにある男性の画像を見せるチョリョン。
−我々護衛部で把握している南朝鮮国防部の要員だ。お前が始末しろ...できるか?
その後、ヒョンジュンとソンファの二人は、チョリョンの部下である北の諜報員らと行動を共にし始める。上海で船を乗っ取った一味は、船員を人質にし、漁師を装い韓国の釜山にあるカムチョン港へ到着する。ヒョンジュンや諜報員らは巧みな話術と緻密な計画の実行で無難に検査を通過すると、韓国内への入国を成功させる。
【NSS要員 MTへ】
スンヒの復帰を祝い、NSSのテロ対策チームのメンバーはMTへ向かい、一向は楽しいひとときを過ごす。メンバーの前で明るく振舞うスンヒだったが、ヒョンジュンを失った悲しみが心から離れず、ふとしたことで涙が溢れてきてしまう。そんなスンヒが一人輪を離れると、彼女の様子を気遣うサウがそっと彼女の後を追う。
−上着いる?
−いいの、大丈夫よ...。ありがとう!
−何が?
−なんとなく、色々ありがたくて...
−笑っていても、今も本当はつらいのに、サウさんのおかげで少し楽になれるわ
スンヒを見つめるサウ。
−ずっと友達でいてくれるでしょう?
スンヒの一言に、彼女にとって自分は“友”でしかないことを痛いほど感じたサウは、準備していたスンヒへの贈り物を渡すことができなくなってしまう。
【ヒョンジュン 隠れ家】
ヒョンジュンは行動を共にする北の諜報員らに信用されず、彼らと揉め事を起こし、ヒョンジュンを庇うソンファもまた彼らのターゲットとなってしまい怪我を負ったことに心を痛める。騒ぎが収まり、ふと二人きりになると、自分自身も怪我を負いながらも、真っ先にヒョンジュンの身を案じるソンファの手を強く握り締めるヒョンジュン。
−これ以上俺のために無理するな...
ヒョンジュンは自分を見つめたまま涙を浮かべるソンファの口元の傷にそっと手を伸ばす。
【NSS】
その頃NSSでは上海で暗殺された国防部要員の情報が飛び込み、さらに釜山の港からの不法入国者情報も重なり、慌しい空気が流れる。ヒョンジュンらが占拠して乗り込んだ船の調査に向かうサウは、着々とヒョンジュンらの足跡を追い始める。
【ヒョンジュン かつて暮らしていた部屋へ】
南北首脳会談に向けて着々と政府間交渉が進む中、首脳会談を阻止するための組織を任されているパク・チョリョンも慌しく準備を進めていた。組織のリーダーにの一人に要人の移動ルートに関する情報を要求されたヒョンジュンは、ソンファを連れてかつてサウと暮らしていた部屋へと向かう。ヒョンジュンとソンファがサウのパソコンを使い、NSSのデータ内へアクセスを試み始めると、サウの部屋での不穏な動きに気づいたNSSのミソンがスンヒに状況を報告する。保安チームとともにサウの家に急いだスンヒは、そこにヒョンジュンがいるとは知らないまま銃を構えて部屋へと潜入するが、一歩早くその場を立ち去ったヒョンジュンとすれ違うことになる。
【NSS】
船員を装い密入国したテロ組織の録音テープの映像を会議で見ることになったサウは、組織のメンバーの中にヒョンジュンらしき男性の姿を見つけて息を呑む。会議に同席していたスンヒの表情に目を凝らしながら、スンヒが気づかないように祈るサウは、動揺を抑えられないまま会議室を後にする。ヒョンジュンが生存しているのではという考えが拭い去れないサウに、追い討ちをかけるようにオ・ヒョンギル室長が衝撃の事実を打ち明けることになる。
サウの部屋に侵入したのはヒョンジュンではないかとオ室長がサウに話すのをたまたま聞いてしまったスンヒは、室長による詳細な分析を聞きながらヒョンジュン生存への希望に期待を抱き始める。ところがオ室長の分析に水を差すようにサウが冷たい口調で否定する。
−74%の一致ではヒョンジュンだと断定するのに無理がありますね。ヒョンジュンが死んだという事実は、すでにハンガリー諜報部での確認が終わった状態でしょう...
−ああ、そうだ、そうだったな...
−ここにはヒョンジュンのことを忘れようと、苦しんでる人がたくさんいます。この問題は室長の憶測で終わりにしてもらえたらと思います...
【部屋へ戻ったサウ】
仕事を終えて部屋へと戻ったサウは、パソコンの脇に残された十字架のネックレスを見つける。サウはそのネックレスがヒョンジュンがハンガリーで手にしていたものだったことを思い出し、ヒョンジュンの生存を確信するが...