ソ・ジソブ:自分でも気づかないうちに、私がムヒョクそのものになったのか...ムヒョクがソ・ジソブになったのか...
イム・スジョン:ソン・ウンチェという人物は感情の変化がとても激しかったですね。
監督:
「ごめん、愛してる」は純粋な愛のドラマです。
監督:「ごめん、愛してる」はオドゥリとムヒョク、つまり母と息子との悲劇的な運命と...
イム・スジョン:兄弟間の愛...そして(それまで)出会うこともなかった相手に出会った男と女の愛...
監督:ふたつの話が一緒に進行するドラマです。
イム・スジョン:その理解と許しと憎しみ...そんなものたちが、結局ふたたび愛によって結論が出ます。その過程を「ごめん、愛してる」でお見せすることが...できたようです。
監督:俳優たちは自分たちの運命を知らないかのように、視聴者たちからは見えるのに、視聴者より俳優たちが早く動くことのないドラマを作りたいと考えました。そして悲劇を通して、悲劇もまた見る人にメッセージを与えると思いました。
作家:ただ俳優が死ぬ話がとても多いので、ちょっと違う素材がないかと考えていました。そんな時、ある新聞で、銃を受けて手術を受けた人の話を一度読んだことがありました。それでムヒョクという人物が浮かんできたんです。
監督:
ドラマの企画をする時、“ロミオとジュリエット”のような愛の物語を作ってみようと作家の先生から言われたんですが、主人公二人とも死にゆく物語をと...。劇の後半でユンが助かれば、ムヒョクが死ぬような状況がありますね。これは、制作しながらも...少し残酷ですよね...運命のいたずらにしても...それでも私たちのドラマは悲劇で、その始まりであるムヒョクとウンチェの愛を、どうしようとも引き離すことのできないようにしました。このドラマのタイトルは、作家の先生が一人で作ったタイトルなんです。“미안해,
사랑해”この程度だとライトなので、“미안하다,
사랑한다”。とても重みがあります。この感じはムヒョクの心を現すためです。
ソ・ジソブ:全ての登場人物が、全て愛する人に“ごめん”という言葉を言えないけれど、心の中に抱いています、心に。
監督:“愛してる”とだけ言えばいいのに、言おうとしたんですが、“いえなくてごめんね”という感じでしょうか...
イム・スジョン:(言葉を)置きかえて変えて考えてみると、“사랑한다,
미안하다(愛してる、ごめん)”という言葉と“미안하다,
사랑한다(ごめん、愛してる)”とでは、話が違うと思うんです。それで、“미안하다,
사랑한다(ごめん、愛してる)”という言葉の方がはるかに深い愛を表わしているようです。
監督:ムヒョクとウンチェの愛は、古いタイプの愛ですよね。“おじさん”と呼び、お互いに“愛してる”とは言えず、
若干昔のタイプですね。私はこう考えました、昔のタイプ(の恋愛)であっても、心情は通じるものだと。
イム・スジョン:私たちのドラマでの特別な部分は、悪役がいないということでしょうか。全ての人物たちが、全て誰一人も
除くことなく愛されることができるということは、その人物たちを身近に感じ、とても人間的な部分を引き出すことができたようです。
ソ・ジソブ:ドラマを撮影しながら、作家の先生とこれだけ話し合ったのは初めてだった
かもしれません。それほど、俳優たちと会話もたくさんしましたし、そして俳優たちにたくさん学びました。
監督:私は演出者として思案だけはしますが、作家はそれを書かなければならないでしょう?
作家:ドラマを描いている間、その俳優の感情に没頭してしまうんです。実はドラマの中でも一番つらかったです。シーンを一つ書いてはまた休み、また起きて描くのがとても大変でした。その心情に寄り添ってみると、
心が重くなり、オドゥリの心に寄り添い、ムヒョクの心に寄り添い、それがとてもつらくて苦痛でした。作家になって初めてですが、友達に電話をして“ドラマ作家はもうできない”なんて言ったりしたこともありました。
監督:(作家は)集中力があり、そのために主人公たちに、その内面が深く憑依するような、そんな作家だと考えています。
イム・スジョン:
ただストーリーだけが抽象的に進行するのではなく、それぞれの登場人物たちを最後まで逃さずに、最終回までしっかりとらえながらひとつづつ、ひとつづつ、整理してあるようでした。
監督:私は俳優を見る時、目の輝きに注目しますが、ソ・ジソブさんは、瞳の奥に寂しさと言いますが、憂いというか、そんな感じがありますよね。ですから、ムヒョクとそんな部分が似ているように思いました。
作家:ムヒョクはガムを噛むシーンでは“欠乏”というものを現そうと思いました。幼い頃に、母の母乳すら吸う事もできず育った子供なので、そんな欠乏感を表すためにガムを噛むようにしましたし、本能が求めるものを満たす手段でもありました。
ソ・ジソブ:ムヒョクがガムを噛む演技は悩みましたね...。早く噛んでみたり、ゆっくりと噛んでみたり、風船を大きく膨らませてみたり、小さく膨らませたりしましたが、正直、あのガムを噛むシーンの演技はとても大変でした。
監督:
基本的に、私は荒っぽいキャラクターが好きなのかもしれません。ムヒョクは、母に捨てられた子です。母に捨てられるということは、その人物の人格形成の上で多大な影響を及ぼしますし、ですから自分の感情をうまく表現できないんですね。オーストラリアでチヨンという女性と同居をしますが、その時も“愛してる”というよりも、自分の傍に誰かがいてくれることを願っているという、そんな気持ちです。その女性も富豪と結婚してしまい、また捨てられますね。2度も捨てられたんです。
ムヒョクという人物設定をする際の大きなテーマは"捨てられた子"ということでした。
ソ・ジソブ:ムヒョクという人物は感情の起伏も激しく、難しい部分が多かったですが、
私は作家の先生が書いて下さったとおりに、全てのことは台本にあったので、台本が本当に詳しかったんです。
作家:ソ・ジソブさんという俳優は目の輝きが強くて、“瞳が語る”俳優なので、
いっそ言葉よりは、ただソ・ジソブさんの眼差しひとつと手の動きひとつと微笑みひとつで素晴らしい感動が与えられると考えました。監督と私とで作ったムヒョクではありますが、ソ・ジソブさんが作り上げたムヒョクだとしみじみ感じています。
イム・スジョン:すでに初めからチャ・ムヒョクが完璧に表現されていたので、私は演技をするのが難しくはありませんでした。
ソ・ジソブ:母に復讐してやりたいという想いを抱いていますが、その復讐心はむしろ愛だったようです。愛を渇望するムヒョクだから...
イ・ヘヨン:私がソ・ジソブという俳優に会った時、言葉にはできない、そう“気”のようなものを感じて、それが大きかったり、小さかったりと...演技のハーモニーのようでした。
作家:ムヒョクは衝動的でまるで野良犬のような子ですが、心の中は誰よりも温かくて、愛にあふれる子なのに、それをどう表現していいのか分からない子です。そのムヒョクを受け止めて、表現できるようにしたのがウンチェでした。ウンチェというキャラクターは本当に純粋で優しくて、オドゥリが持たないものを全て持っている子で、ムヒョクの暗闇を明るく照らしています。イム・スジョンさんの持つもの全てがウンチェそのものだったようです。
監督:とても優しくて、心が温かい子ですね。ウンチェはひどく貧乏というわけでもなく、教育もきちんと受け、優しい両親がいて、姉妹がいるという、そんな平凡な人生を生きてきた少女が、道で出会った一人の男に向かう話です。
イム・スジョン:ウンチェは感情の起伏が激しい人物ですね...
監督:ムヒョクを愛しながら、変わっていきますね。
イム・スジョン:誤解により、わざと冷たく突き放そうとするあの過程、ひどく残酷な言葉や振る舞い、その過程が二度目の過程でした...
監督:そしてムヒョクが死ぬという事実を知った時、またキャラクターに変化が起こります。
イム・スジョン:三度目は、もうムヒョクの全ての事実を知った後に、ムヒョクだけに
向かい...
監督:イム・スジョンさんが多面的なキャラクターを表現できる俳優なので、最後の方は若干神秘的な感じを出さなければと考えていたのですが、そんな雰囲気までもしっかりと表現されていました。
イ・ヘヨン:イム・スジョンは初めてミーティングした時、パッと受けた印象は“ああ、演技がすごく上手なんだな”と感じました。
ソ・ジソブ:別の場所で見かけたときは、とても明るく、話し上手だったので...実際に会ったときは本当に驚きました。
監督:実はイ・ヘヨン先生は15年ぶりのテレビドラマ出演なんです。
ソ・ジソブ:私の母役にイ・ヘヨン先輩がキャスティングされたという話を聞いて、期待感が大きかったです。
監督:最近の若い視聴者は分からないと思いますが、一時韓国で最高にセクシーなスターだったんです。
イ・ヘヨン:捨てられたと思った息子、そして誤解、その誤解を視聴者たちは同情したでしょう。オドゥリはその過去
に気づかないので...。視聴者たちはどうかわかりませんが、確信を持ってオドゥリを演じました。少なくとも悪い女ではないと、自分では考えていました。自分では...確信を持ち、その痛みに打ち勝つため養子をもらい、楽しそうに暮らして、養子を心から愛し、ですから自信がありましたね。
監督:俳優の雰囲気や自尊心、そんな部分がオ・ドゥリにピッタリだと思いましたし...
イム・スジョン:以前は本当にこうして見つめていただけで“ああ、とても素敵、素敵な俳優さんだ”と考えていました。
監督:悲劇の中心にいる人物、そしてミニシリーズは若い視聴者が多く見ているドラマだからでもありますが、実際にモデルをあげるとすれば、中心にいる人物ですね。人間と言う存在が持つ悲劇性は、昔も今も同じだと考えています。結局死ぬじゃないですか。そして運命は誰にもわかりません。私がドラマを撮りながら、こんな話を聞いたことがあります。韓国で、自分の子供を事情があって孤児院に任せたある女性が、このドラマを見て涙が止まらなかったといいます。何故悲しいのかというと、自分の子供に会ったのに気がつかないから...
作家:初めから私はオドゥリは最後まで気付かないと設定していました。監督と話をしながら、子供の前で涙をぽろぽろ流す悲しい話より、テレビで見た時心が引き裂かれそうになる、気付かない悲しみのようなものを、そんな感じを表現しようと思いました。
ソ・ジソブ:初めて台本を見たときから、気付かれもせずに死ぬんだと考えながら演技しました。気付いたとしたら、母の感じる苦痛は果てしなく大きいと思います。息子の立場では、母に気付かれず、
他の人は皆知ってしまいますが、母には気づかれないままムヒョクが一人で旅立つのがいいのかなと、そんなふうに思いました。
作家:むしろオドゥリが気づかないままの方がオドゥリがより大きな罰を受けたのだいう考えもありました。
監督:(ユンは)モーツァルトのような人物設定でした。天才的な音感を持つ子供。
作家:実はユンもとても可哀想な子なんです。ウンチェに対する愛情に気が付かずに、後で気が付く瞬間がきます。一番人間的な子ですね...自分を育ててくれた母の実の子が現れたことで、その負担感のために、むしろ死んでしまうムヒョクよりはるかに悲しくてつらくて、自分の背負う荷物がより重く感じたのではないでしょうか。そんな部分を見てもユンが一番可哀想な子だと思います。
ソ・ジソブ:撮影中、(ユンに対して)本当に弟のような感じが沸いていて、ドラマが終わる時、これからも本当の兄弟のように親しくできたらいいなと言って、こんなことは初めてでした。
(3,4分中略します...21分〜)
〜ウンチェの父が自分の罪をムヒョクに打ち明ける場面〜
作家:(ウンチェの父は)ユンと同じくらいの苦痛を抱いていた人物だと思います。オドゥリをとても愛していたため
どうしようもなくしてしまったことであり、その荷を背負う訳ですが、自分の愛する人のために最後まで黙っていたのでしょう。自分自身のために黙っていたのではありません。
監督:最近の視聴者は知らないと思いますが、かつては韓国で最高のメロドラマ俳優だったんです。歳月が過ぎて良いお父さん役で知られるようになった方です。「ミサ」に出演してくださって、本当にありがとうございました。
:::2009.12.07 以下追記:::
〜ミン記者について〜
監督:ミン記者は若干悪役ですが、あるときは笑いも与えてくれる温かみのある老人、そんな雰囲気を表現して下さいました。台本に書かれている以上の部分をシン・グ先生が読み取って素晴らしい演技をして下さいました。ありがとうございました。
〜ソギョンとカルチについて〜
監督:ソギョンのような場合は演技が難しかったと思います。障害のある人物の演技は、少し間違えば非常にオーバーになりえるのですが、ある瞬間にふと現実味を感じさせてくれるような演技が良く表現できていました。私の好きな子役のイメージは、可愛く演じようという子供より、子供っぽい姿がそのまま表現できる子供がいいですね。パク君(カルチ役)はあの年齢にしてはあどけないのに、演技は上手ですから、キャスティングしましたし、実際良く出来ていましたね。
〜チヨンについて〜
監督:チェ・ヨジンさんは、ドラマで初めてお目にかかった方ですが、外国で育ったという設定なので、モデルのような外見でなければなりませんでしたし、少しセクシーな雰囲気を自信を持って表現できる俳優が必要でした。その雰囲気に合っていると考えましたし、演技をすればするほど良くなっていきましたね。
〜ウンチェの姉スクチェ、妹ミンチェについて〜
監督:オク・チヨンさんは台詞よりはふざけている姿や寝ている姿などが多かったと思いますが、台詞を多く与えてあげられずにごめんなさい。そしてチョン・ファリョンさんは本当に愛嬌のある俳優さんだと思いまし、愛情深い姿を見せることができたと思います。
〜ムヒョクがオ・ドゥリの家の前で"俺のあなたの息子だ!"と悲痛な叫びを上げるシーン(26分)〜
監督:「ミサ」では私がオム・テマン撮影監督に恩恵を受けました。
オム・テマン撮影監督:まず台本を見てみると、内容が普通のドラマとは違いましたね。
監督:撮影現場では次々欲が出る方のようでした。そして「ミサ」では逆光を生かしたカットが多く、それが良い映像を作り出してくれました。
照明パク・チュンギ:とても胸の痛む愛の話だったので、冷たい印象を出さないように、暖かい色を多めに使いました。
監督:照明監督と撮影監督のおかげで「ミサ」のアングルや色使いが悪くなかったと思います。
監督:編集はキム・ユミさんがしてくださったんですが、お願いするのは初めてで、いつもはマニアドラマを多く編集されていて、今度のドラマは大衆的なドラマであればと多くを要求してしまいました。
編集キム・ユミ:監督が抱いていらっしゃる人物への目線は、私が抱いているものとそれほど違いはありませんでした。
監督:編集者が、ただムヒョクを好きな気持ちを抱き、編集されたようです。ですから台詞がないシーンのような場合も...ムヒョクはカッコイイじゃないですか。
キム・ユミ:台詞のないシーンが多いですよね。実は私は今も覚えているのは、9話の台本でシーン1から35ページまで台詞がありませんでした(笑)。
監督:「ごめん、愛してる」が実は悲しい愛のドラマであり、私は他の悲しい愛のドラマとは違う編集や、音楽や、効果などを出せるドラマを作りたかったんです。音楽もこの「ミサ」では、大きな効果があったと思いますが、テーマ音楽、もちろん「雪の華」という歌も良いのですが、テーマ音楽がこのドラマの色を明確にお見せできたようです。
音楽チェ・ソンウク:強い音楽を求めていらっしゃると考えて、平凡ではない音楽を駆使しなければと思いました。実際放送されてから、まずは成功だと思いました。
監督:バイオリンの高音が、見方によっては悲しくて...
〜ムヒョクがバイクにまたがるシーン〜
監督:音楽を担当したチェ・ソンウクさんは、演出者の意図をしっかりと受け止めて、それにピッタリの曲と音楽を表現してくださった音楽監督です。
チェ・ソンウク:「ごめん、愛してる」のような場合は、むしろ悲運の主人公たちが見ている人を安らかにしてくれて、ですから音楽もあえて音楽を少なくして、心に残るよう、そんな思いで作曲しました。ソ・ジソブのテーマとして作曲した曲が今も心の中に残っていますし、その曲だけ聴けば今でもメルボルンの通りが目に浮かびます。
〜監督について〜
ソ・ジソブ:他の方々よりは、少し独特な感覚をお持ちで、これほど後姿が好きだとは知りませんでした。特に、歩く後姿...憂いのある後姿。
イム・スジョン:ストーリーも好きですが、映像も綺麗で...
ソ・ジヨン:細かい部分にも気を配る、そんな方ですね。
(中略)
ソ・ジソブ:「ごめん、愛してる」に出演できて、とても幸運だと思いますし、本当に素晴らしいスタッフたち、素晴らしい俳優の皆さんと撮影できて、その瞬間がとても幸せでしたし、このチームに次もまたお会いできたらうれしいです。全ての皆様に感謝申し上げます。撮影中多くを学ぶことができました。皆様へ、ありがとうございます。そして、愛しています。