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고맙습니다 韓国ドラマ「ありがとうございます」ストーリー  第12話

第12話



クニャン タルンゴエヨ

그냥... 다른거에요.

「ただ 違うだけだ」
 

 

 

 


 



ヨンシンに口づけしようとして止めたキソは、「行こう」と立ち上がり歩きだす。ヨンシンはふらふらとした足取りでキソを追い、後姿を見ながらつぶやく。

−お酒強いって言ったくせに...

ヨンシンの言葉に振り向いたキソが手招きする。

−レディファースト...私の前に、私の前に歩いてください。

キソがヨンシンの後にまわると、二人は再び歩き出す。 

−俺がどうしてまた青い島に戻ってきたのか、コンビニすらないこのド田舎に、何故戻ったかというとね...まさかチョコパイのためじゃない。ソウルでは、なんだか本当に死にそうだったんだ。息が苦しくて、呼吸が出来なくて。

−なんで死にそうだったんです?なんで息が出来なかったんですか?

−ソウルの空気がどんなに悪いか知ってます?自動車公害、騒音公害、オゾン注意報...

−ソウルの空気が悪くて、また青い島に戻ってきたんですか?

キソの方へ振り返るヨンシンに前を向いて歩くよう仕草で示すキソ。

−うちのヨンウが言ってました、空気はカンウォンドが一番いいって。山が多いから。

−空気が良くないから、水もまずいし、水もまずいから、パンも美味しくなくて、ご飯も美味しくなくて、酒も美味しくない。息が出来ないのも問題だし、飢え死にも時間の問題だった。

−ここのパンだけど、あれはソウルで作ったものですけど。

−このおばさんは...

−つまり、ポムが心配で戻ったのではなくて、ソウルの空気と水が悪くて死にそうで、それで戻ってきたんですね?...ふ〜ん...。

暗い道を千鳥足でふらふら歩いていたヨンシンは突然足をくじいて転倒する。慌てて駆け寄るキソに、心配しないで、と答えるヨンシン。

−私、1歳の誕生日に餅を食べられなかったの、幼い頃貧乏だったから。お餅を食べ損ねた子はよく転ぶって。だから普段から良く転ぶんですよ、大丈夫。

笑顔で思い出話をするヨンシンをじっと見つめるキソ。

−おじさん、私が怖くないの?うちのポムは怖くない?他の人たちは私達を怖いばい菌を運ぶ害虫扱いしてるじゃないですか。仕事にも行けず、学校にも行けない。会って話すのも嫌がるし、こうして一緒の島に暮らすことも...でもおじさんはうちのポムがHIVだと知っていながら、うちで下宿してポムと手をつないで、話もしてくれて...

−なあ、おばさん、俺を見損なわないでくれ。それは原始人並みに無知な奴らの話で、俺は医者だよ、医者、おばさん!

−どうしてそんな大声出すの?みんな起きちゃうじゃないの!

−ちょうどいいさ。続けて大声出して聞かせりゃいいよ。どいつもこいつもバカで無知で石頭だ!

−いっそ放送でもしましょうか?放送でも!そこの里長さんちのマイクで放送しちゃいましょうよ。

−ああ...それはいいな...里長の家はどこだ?里長!里長は出てこ〜い!

立ち上がって叫び続けるキソの後ろを“やめて、静かにしてよ”と追うヨンシン。ヨンシンとキソは足がもつれて道端に転んでしまう。

−もう、おじさんがこうだから本当に私達この島から追い出されちゃうじゃない!追い出されるのは嫌よ、出るなら自分で出て行くわ。だから騒ぎ立てないで下さい。...何してるの?起きないんですか?ここで寝るの?

仰向けに寝たままじっと動かないキソ。

−俺は伝染病患者ですか?ちょっと接触しただけで、大騒ぎだよ、大騒ぎ...。もう一度言っておくが、俺は伝染病患者じゃない。検診の記録でも見たの?

−ううん...おじさんだって言葉ではそういっても本当言うと私が怖いんでしょ?HIV患者の母親だもの、実際不安なはずよ。だから...

−だから...さっきキスをするのをやめたって?全く、ご近所さんと変わりないな。元祖石頭さんはここにいらした。HIVはですね、おばさん。仮におばさんが感染者だったとしても、キスなんかじゃ感染しないんですよ。口に傷がなければキスだって関係ない。HIV患者の母親がこんな基本的なことも知らないのか?

ヨンシンに手を伸ばすキソに、ヨンシンはためらいがちに手を差し出す。

−キスしても、いいですか?


受け入れることも、拒むこともせず、キソの気持ちを受け止めるヨンシン。再び夜道を歩き始めた二人に言葉はなかったが、うつむきがちに力なく歩くヨンシンの様子にたまらずキソが沈黙を破る。

−罪でも犯したのか?単に違うだけだ。HIVに感染したのは何かひどいことをしたわけでも、悪いことでも、申し訳ないことでもなく、ただ他の人と違うだけだ。鼻の大きな人もいて、目の小さい人もいる、右足の方が短い人も、人差し指が中指より長い人もいる、そういう違いの一つだ。だからこの国中の人にそうやって詫びるように縮こまって暮らすことはないと言ってるんだよ。

不安そうにキソを見つめるヨンシンの頬に、キソはそっと優しく手を添える。

−堂々と顔を上げ、目をしっかり開き、背筋を伸ばして。

−私が可哀想なの?

−どういう意味だよ?

−私、女じゃありません。女じゃなくて、ただ、ポムの母です。私は人間でもない無生物なの。例えば木や岩や机、そんなもの。

−分かるように話してくれないか?

−ただ、そうだってこと。私は人間でもなくて、女でもないから、可哀想だと思わず、気の毒に思わず、胸を痛めず、好きにもならず、これからはキスみたいなことしないで欲しいの。私は石なの。石だから感情なんかありません、本当です。...ありがとう...。

−何がだよ...。

老人の手助けをしながら“ありがとう”とまた言葉にしているヨンシンを見ながら、やるせない気持ちになったキソは、一人家へと引き返す。そんなキソの前に、ポムにぬいぐるみや贈り物を届けにきたソッキョンの姿が。ソッキョンに苛立ちを隠せないキソは、ソッキョンをじっと睨みつける。そんな中、ソッキョンはついにキソに打ち明ける。

−俺への質問は“ポムはお前にとって何か”という質問だったよな?ポムは...俺の娘です。俺がポムの父親です。

−やはり、血縁はすごいな。感心だよ、今からでもやり直せるんだな。イ・ポム!良かったな。お父さんが帰ったぞ。

−いや、俺はただ、届け物をしにきただけだ。持ってきてとあの子に頼まれて。...ポムとヨンシンを頼みます。

−犬畜生め...トンダル、お前の息子が帰るぞ、挨拶しろ。犬畜生...犬も我が子は捨てないというが、お前は犬にも劣る。悔しいか?悔しいなら殺してみろよ。どこの馬の骨かも分からない奴が、ポムとは赤の他人の分際で偉そうに言うなと、口がきけないほどぶちのめすがいい、悔しいならな。

ポムとヨンシンに罪悪感を抱いているソッキョンは、キソへの怒りを抑え、そのまま立ち去る。翌朝、ソッキョンからもらった二段ハンバーガーを嬉しそうにほおばるポムは、キソにもハンバーガーを届けに向かう。ポムはキソに学校に行きたいと話すが、キソは天使を狙う悪の軍団が学校の近くにいるからとポムの気持ちをなだめるように答える。

ちょうどそのとき、近所の女性たちがヨンシンの家に押しかけてくる。島から出て行けと激しい口調でまくしたてる島の女性たちを見て、たまらず声を上げるキソ。ポムがキソの後で怯えていると、ポムの友達のポラムの父が女性達をたしなめ、ポムに温かい言葉をかける。ポムを抱き上げ、いたたまれない気持ちでその場を離れるキソ。母親を心配するポムに、キソはポムを安心させるように実はママは守護天使3号だと話す。

ヨンシンは島の人たちを前に毅然とした態度で、キソが言ってくれた言葉をはっきりと話始める。

−ただ違うだけなんです。何も病もなく健康な子供と、ただ違うだけのことです。私は罪人ではありません。一生懸命、悪いこともせず、心のままに精一杯生きてきて、ある日突然娘がエイズにかかってしまったんです。

ひっそりと暮らしますから、ただそれだけでいいです、島にいさせてくださいと話すヨンシンの態度に納得がいかず、腹を立てた数人の女性達がヨンシンに掴みかかり、それでも気が収まらずに部屋を滅茶苦茶にしていく。ヨンシンは、ポムの面倒を見ているキソに「ポムをもう1時間だけ頼む」と電話を入れ、騒ぎがあったことは一切告げずに電話を切る。

海辺でキソに「美しい世の中」を歌って見せるポムの愛らしい姿を遠巻きに見ていたソッキョンの母は、ヨンシンとポムに情を抱き始めていたため、何かあったときにヨンシンとポムが逃げられるよう、自宅の地下を用意する気持ちでいた。

その夜、ヨンシンの頬の傷に気がついたキソは、ヨンシンに島を出るなら自分が手助けすると伝えるが、ヨンシンは逃げたくない、と気丈に答えるのだった。