ヨンシンはポムが学校へ行ったことを知り、慌てて学校へ向かって走り出す。事情を知ったキソもヨンシンの後を追い駆け出す。
学校に着いたポムは魔法のコートを着ているから大丈夫、二段ハンバーガー食べて、と友達の方へ近づくと、ポムを見て驚いた友達のテチャンが“悪魔!”と怯えたように叫び、ポムを近寄らせないよう手に石を持つ。たまたま学校へ現れたソッキョンの母がその様子を見て咄嗟にポムを庇う。
−誰が悪魔だい?誰が悪魔だって!?
−違うんだ!ポムの体に悪魔がいるんだ!悪魔を退治しなくちゃ!
テチャンは手に持っていた石をポムに向かって投げつける。その石はポムをかばうように抱きしめたソッキョンの母の頭を直撃してしまい、ソッキョンの母はその場に座りこむ。ショックを受けたポムが泣きながら家に向かって走っていると、そこへポムを追って車で学校へ向かっていたヨンシンとキソが現れ、ポムを見つけて抱きしめる。泣きわめくポムの話の断片からソッキョンの母が怪我を負ったことを知ったヨンシンらは、ポムを車に乗せ診療所へ急ぐ。
診療所に着いたキソは、ソッキョンの母が傷の縫合を嫌がっていることを知り、自ら縫合を申し出る。ポムを祖父に預けて診療所に戻ったヨンシンは、ソッキョンの母に“ありがとうございます”と言葉をかけるが、ソッキョンの母は素直になれず、またヨンシンとポムを罵り始める。暴言が続く様子に耐えかねたオ医師は、自分の実の孫に対してあまりにも酷いと言葉を挟む。ソッキョンの母は、じっと黙り込むヨンシンに、父親がソッキョンなのか、どうして勝手に産んだんだ、無責任に産むなと怒鳴り声を上げる。部屋の外でじっと事態を見守っていたキソが耐え切れず治療室へ戻ってくる。
−何を黙ってる?文句も言わずに...何を黙って聞き続けているんだ!何の関係も無い他人の話を、聞く価値もない話を!
キソはヨンシンの手を取り、ソッキョンの母をじっと睨みつける。
−生きるために宿った命...生まれてもいない命を殺せって言いました?それと...ポムはそんなに簡単に死なせはしません。
キソは嫌がるヨンシンの手を離さず、診療所の外へと連れ出す。だから入るなと言ったでしょう!とヨンシンを諭すように声を荒立てるキソを、ヨンシンは憮然とした表情で見つめると、車に乗れというキソの言葉を無視して背を向ける。
−やるせなくてあんな風にしか言えなかったのに...それは何て言い草なの?それも他の人の前で。ヨンジュのおばあさんはおじさんの友達ですか?こんなのちっともありがたくないですよ。たくさんぶたれるわよ、おじさん。
−そうやってひたすら耐えていれば、いつか孫として、嫁として受け入れてくれる。そんな計算してるのか?無条件で理解して、耐えることをすのは、一種の戦略なんだろう?正直に言ってくれよ、知らなかった。分かったよ、これからお宅らのことは関係ない。俺の目の前であんたが死んでいこうが、絶対知らないからな。
二人のすれ違いを悲しむように、大粒の雨が降り出す。雨の中、ヨンシンが呆然と家へと歩く頃、ポムに友達のポラムから電話が入る。子猫を見に行こうというポラムの誘いが嬉しかったポムは、台風が近づく荒れた空の下、迷わず出かけてしまう。家に戻ったヨンシンは、布団の中にいるのが祖父だけだったことに気がつき、ポムを探しに激しい雨の中飛び出す。揺れる心を落ち着かせるように、部屋でじっと音楽に耳を傾けていたキソは、ヨンシンの様子に全く気づかずにいた。空が暗くなり、不安が募るヨンシンの前に少女が現れ、ポラムとポムが土が崩れた防空壕に閉じ込められてしまったと聞き、二人を救いに走る。防空壕の中にいるポムらを見つけたヨンシンがポムに手を伸ばすと、ポムは先にポラムを助けてくれと一度伸ばした手をまた戻してしまう。そんなポムの姿に胸が痛むヨンシンの瞳にり涙が溢れ出す。
−ポム!あなたは今病気なのよ!怪我しちゃだめなのよ!ポラムもすぐに助けるから早くママの手につかまって!
−いや!ポラムが先よ、泣いてるじゃない。
ポムの気持ちを尊重して、ポラムから助け出したヨンシンは、大怪我を負って診療所に運ばれる。診療所のオ医師から連絡を受けたキソは、迷わず車を診療所へ走らせる中、ヨンシンに言ってしまった心にも無い言葉を思い出していた。キソは診療所に着くと、毛布に包まって泣き叫ぶポムをしっかりと抱きしめる。診療室に入ったキソは、目の前で青白い顔で意識を失い横たわるヨンシンの姿を見るやいなや、救命処置を始める。肋骨が折れ動脈を傷つけたことが原因で大量に出血しているヨンシンに危険な状態が迫る。キソは十分な治療設備の無い中、懸命な治療を続け、ヨンシンへの輸血のため血液提供者を必死で探し回る。雨の中提供者を求めて歩き続けるキソとオ医師の前に現れたのはソッキョンだった。ヨンシンと同じB型であるソッキョンは迷わず二人に協力する。ソッキョンの協力で一命を取り留めたヨンシンだったが、出血が止まらず依然安心できる状態ではなかった。キソは、心の底では尊敬している父に、助けを求めて電話をする。キソの父からの的確な助言とキソの懸命な治療によりようやくヨンシンの出血が止まる。キソは長い間反発していた父に、初めて「あり...ありがとう」とつぶやく。
−医者としてできることはした。後は神の領域だ。
父の言葉を胸に、キソは教会に車を走らせると、一晩中神に祈り続ける。
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