【青い島 ヨンシンとポム、お散歩中】
ヨンシンはポムと家路に着きながら、大切な「約束」を忘れないようにポムに念を押す。ポムは朝もやったばかりなのに、とすねた表情をしながらも母の言うとおりに「約束」を繰り返し始める。
「1. 歯ブラシと爪切りは他人に借りない。貸してもいけない。
2. 血が出たら自分のハンカチで拭き、捨てずにビニール袋に入れて持ち帰る。
3. 転んで血が出たら他の人の世話にはならない」
3番目の約束を言葉に出した後、表情を曇らせたポム。3番目は少し変、とヨンシンに訴える。
「転んで血が出たら、どうして友達に助けてもらっちゃだめなの?
私は絶対友達が転んだら助けるのに...」
「それはね 家門の秘密に関係があるんだなぁ」
「家門の秘密?」
ポムのそばに駆け寄るとヨンシンはこう続ける。
「ほらあの巫女さん、ヨンウ(ヨンシンの弟)の大学合格やチソンさんのおばあさんが亡くなることを当てた人」
「うん、分かるよ、ポラムの家の子犬が何匹産まれるかも当てたよ」
「そうそう、そのすごい巫女さんが言うにはね、あなたはちょっと特別な子どもなんだって。本当はお空の天使だったんだけど、小さな罪を犯して地球に来たんだって」
「あ〜、私も前にそんなこと思ってたの。わたしは竜王の娘の生まれ変わりでママのところに生まれてきたのかもって」
「そうね、そんなようなものね。どちらにしてもあなたが生まれて我が家は運気が上がったの。ミカンの収穫は2倍、だからママもお金がたくさん儲かったのよ。叔父ちゃんは大学進学、おじいちゃんは屋根から落ちたけれど怪我ひとつ無かったでしょう?」
「全部ポムのパワーなんだね」
「そうよ、ポムは我が家の福の神なんだから」
ヨンシンはポムの耳元にそっと小声でささやくように続けた。
「でもね、この秘密はまさにあなたの“血”にあるのよ」
「私の血?」
「あなたの血はママと先生の言うとおり他の人にぜったい見せちゃダメなの。パワーが落ちるから。」
「どうして?...うん、私が天使だからだね。天使の血は他の人に一度だって見せちゃいけないからだよ、秘密だもん」
「うんそのとおり 天才だね、ポムは!」
【ソウル ミン・ギソ】
チミンを失った後、葬儀が終わり、時間が流れても魂を抜かれたように日々を無気力に過ごすキソ。ある日、病院に入院中の女性患者の夫が、意識のない妻に対し非情な態度をとる様子を目にする。同僚の医師の訴えも黙認していたが、ふとしたことをきっかけに、キソは突然この男性に腹を立て、病院内で暴力沙汰を起こしてしまう。
【青い島】
ポムを育てながら熱心に働くヨンシンは島の人たちに愛されていた。そんな中、ヨンシンを負担に思うソッキョンの母は、ヨンシンに見合い話を進め、同じ島に暮らし、以前からヨンシンを想い続けていたパクという男性を紹介する。歳の離れた相手との縁談を勧められ、パクを目の前に戸惑うヨンシンだったが、ちょうどその場へポムが駆け込んでくる。ポムが用件を思い出せない様子に苛立つソッキョンの母は、しきりに自分とポムとが似ていることを気にしていた。認知症の祖父が粗相したことを思い出したポムからその話を聞いたヨンシンは、事情を話すとお見合いの席を立ち、遠くに住む弟に連絡をする。
【ソウル ミン・キソ】
暴力事件を起こしたキソは、事件を示談にし、留置所に迎えにやってきた母と顔をあわせる。今回のことでキソが医者をあきらめるのではと期待する母は、亡くなったチミンに感謝していると話す。キソの母親カン・ヘジョンは自らが経営する事業を手伝って欲しいとキソに話すが、キソは考えもせずに断ってしまう。その後、病院を辞める決心を固めていたキソは退職願をもってチミンの父に挨拶に向かう。病院を出て、行く当てもなく歩くキソの後に一台のタクシーがゆっくりと近づいてくる。タクシーの運転手が父ミン・ジュノであると気がついたキソはしぶしぶと助手席に乗り込む。
「そんなに長く落ち込むな。
お前の驕(おご)りだ。医者がどうして全ての人の命を救える?
少し休んだら元の場所へ戻るんだ。お前を待つ患者のためにも」
かつて父親として、医師として尊敬していた父の言葉も今のキソの胸には届かず、キソは父の話に返事もせずに、携帯電話を取り出し母に電話をかける。
「母さん俺だ。やるよ、俺 母さんの事業を手伝うよ。
医者には戻らない。二度とやらない。未練ももたない」
オープンしたばかりのショッピングモール内を経営者の母親と共に見学するキソだったが、心の中は空虚なままだった。そんなキソの前に有能な社員が姿を現す。
「チェ・ソッキョン。ソウル大学建築科卒。2005年に首席入社。歴代最短期間で最年少課長に昇進」
母親が話す言葉にキソは虚ろな表情で耳を傾けていた。
【ポムの家】
ソウルから何時間もかけて祖父のためにやって来た弟のヨンウは、粗相するたびに呼ばれては困ると苛立つ。ヨンシンに粗相のときの世話をさせない祖父の事情も理解できるヨンウは、ヨンシンに再婚するようにすすめる。ヨンウは、ポムに誕生日にほしいものを聞いたら「パパ」だと言ったと、ポムが父親をほしがっていることをヨンシンに訴える。
翌朝、青い島ではいつものように走って学校へ向かうポムと、ポムが忘れたかばんを持って追いかけるヨンシンの姿があった。遅刻しそうなポムが必死で走っていると、友達のポラムが父親に車で送ってもらう様子を見て気を落とす。その様子を見守っていたヨンシンは、ポムを思い、以前の見合い相手パクの元へ足取り重く向かう。ところが相手のパクは、「おじいさんの面倒を見る自信がない」と逃げ腰になっていた。
【ソウル カン会長とキソ、ソッキョン】
「故郷は青い島でしょう?」
カン会長に問いかけられたソッキョンは、会長の意図をすぐに察すると、大規模開発の予定がある青い島に行き、現地が建設レジャーにふさわしい場所かどうかの調査を一任されることになる。現地調査にかかるひと月の間、キソも同行するようにと会長はソッキョンに話すが、キソが自分の息子であることをソッキョンに隠し、単純作業や掃除など何でもさせるようにと伝える。ナイフさばきと裁縫はピカイチだと言うキソを不思議そうに見つめるソッキョンだった。
現地調査に向かうため、車のトランクに荷物を持つソッキョンのところへキソが現れる。
「力仕事は得意ですが、こき使うとイライラします。
坊ちゃん育ちなんで。それと長距離運転はごめんです。体力がなくて居眠りを」
ソッキョンと共に青い島へ向かう船に乗るキソは、亡くなったチミンを思い出していた。
青い島に到着した二人は早速ソッキョンの実家へ向かうが、ソッキョンがヨンシンとポムに会うことを警戒したソッキョンの母は、他の理由を並べ立ててソッキョンを家に入れようとしなかった。二人は仕方なくそれぞれの宿を探すことになる。
1人慣れない場所で宿を探し回るキソは、ふと前を見ると、チミンがあの船で抱いていたクマのぬいぐるみを負ぶって歩く老人を見つける。クマのぬいぐるみをじっと見つめながら、老人の後をつけていくキソ。老人はポムの祖父、ミスター・リー(本名、イ・ビョングク)だった。イ老人は家に入ると、家を覗き込むキソに気がつく。
「どなたさま?
どうそ入ってください。入って、寒いでしょう?入って」
素直に家に入ったキソをもてなすイ老人。
「チョコパイ食べる?チョコパイは?」
「はい...」
キソに飲み物を用意しながら、ヨンシンの言葉を思い出したイ老人は体にいい大切なものだと信じて飲んでいる喘息の薬などを飲み物に入れると、キソに飲むようにすすめる。結構です、と断ると、キソはクマのぬいぐるみを指差し、あの人形、私に譲ってくださいと話す。全く話が聞こえない様子で“体にいいから”とひたすら飲み物を勧める老人の様子に、キソは諦めたように一気に勧められたものを飲み干し、またクマの人形の話をする。
「その人形譲ってください」
「これはメジュのです!うちのメジュ、怖いんです」
老人がぬいぐるみを渡そうとしない様子に、キソは一度あきらめて家を出ようとすると、携帯電話が鳴る。足元がおぼつかず、目がかすむよろけたところにヨンシンとポムが帰宅する。ヨンシンが近寄るとキソは気を失って倒れてしまう。
突然現れ、目の前で倒れてしまった見知らぬ男性を布団に寝かせ、気がつくのを待つポムとイ老人。携帯電話が鳴り続けていたため、イ老人は携帯電話を箪笥に隠してしまう。
「このおじさん見覚えがあるのよ」
「うちの兄さんだよ、メジュ」
チミンの夢を見ながらうなされていたキソがようやく目を覚ますと、目の前には少女と老人がいた。
「こんにちは。
ママがお医者様のところへ行ってます」
ポムの顔を見つめ、キソはふらふらと起き上がるとクマの人形を手に取り、外に出ていく。大切なクマのぬいぐるみを取られて慌てて後を追うポム。
「あ、私のポムドン!」
追ってくるポムに振り返ったキソが言い聞かせる。
「お前のじゃない、他の人のだ」
「私のものよ!返して、ポムドンを返して!
おじさん、ドロボーなの?強盗?盗賊!ドロボー!」
「お前が買ったのか?」
「ううん、知らないお姉さんが船で私にくれたの」
「そのお姉さんが間違えたんだ。
持ち主がいるのに、病気で苦しくて間違えたんだ」
「ううん。そのお姉さんが私に...あ!船にいたおじさん!」
「そうだ、そのお姉さんと一緒だったおじさんだ。
俺が持ち主だ。ついてくるな」
「ポムドン...ママ、ママ」
今にも泣きそうなポム。納得できずにポムドンを抱えて歩くキソの後を着いて行く。
一方、目の前で倒れた男性を診てもらうため、青い島診療所にかけつけるヨンシン。看護士であり友人のソランの慌てた様子に何があったかと尋ねる。畑で作業中だったポムの友達のポラムの父親がトラクターに足を挟まれ瀕死の重傷だと聞かされ、自分の用件も忘れて現場にソランと一緒に向かうヨンシンだった。
その頃、ポムドンを抱えながらキソとポムが事故の現場近くを歩いていた。遠目で状況を把握したキソだったが、人の命を救う気持ちにすらなれずにその場を去っていく。ポムがキソの後を追い歩き続けていると、ポラムが泣きながらやってくきて、二人の目の前で転んでしまう。ポムが駆け寄り、ポラムを抱き上げる。
「よしよし、大丈夫、血は出てない」
「ポム、パパが事故に遭っちゃった。死んじゃうかもしれない...」
泣き続けるポラムを見て、ポムもまた泣き出してしまう。
「あげる。私のポムドン大切にして。ドロボーおじさん」
ポムはキソにこう話すとキソに背を向け、ポラムの父を心配し、泣きながら事故現場へ向かって走り出す。
事故現場には島の人たちが大勢集まっていた。診療所の医師オ・ジョンスは大量の出血を目の当たりにし、具合が悪くなってしまい、応急処置をすることが出来ず、状態はどんどん悪くなっていく。けが人の出血が止まらず、顔色が悪くなる中、慌てふためくオ医師は動脈を押さえる事すらできずにいた。周囲が青ざめ、悲痛な表情を浮かべているところに、キソが突然現れると、何も言わずに手を消毒し、処置を始める。島の人々は一瞬戸惑うが、オ医師とソランはすぐに医療関係者だと気がつき、流れを見守る。キソは手際よく怪我人の出血を止め、オ医師が落ち着くと、クマのぬいぐるみを手にその場を離れようと歩き出すが、また気を失いその場に倒れこむ。
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