頬に温かみを感じてふと目を開けたヨンシンは、横に寝ていたはずのキソが自分の涙を拭いてくれていたことに気がつく。ヨンシンと目が合ったキソは、照れ隠しに、おばさん、俺に何かしたのか、とぶっきらぼうに話し、その口ぶりに腹を立てたヨンシンは立ち上がり、「そんな生き方で平気?」とキソに言い返し、部屋を出て行ってしまう。
一方、ソウルに戻ったソッキョンは理事たちや投資家らの前で青い島に建てられるリゾートに対して説明し、その完璧さを経営者でありキソの母であるカン・ヘジョンは満足そうな表情で見守っていた。
青い島診療所では、ソランがキソの傷を消毒しながら、オ医師がキソに対して、亡くなった恋人のことで言い過ぎた事をまだ苦しんでいるから声をかけてやってほしい、と話す。キソはあきれた表情を見せるが、その後トイレに隠れているオ医師の元へ向かい、男には過去があるものだから、威勢よくそれを暴露したなら堂々としていろ、死なせたのは事実なんだからと早く出てこいと促し、さりげなくオ医師を許すそぶりを見せる。
キソが下宿先のヨンシンの家に戻ると、ヨンシンとポムは、犬小屋に向かってご飯よ、ご飯よと何度も出てこない犬に声をかけていた。そんな二人の目の前でキソはいきなり犬小屋を勢い良く蹴飛ばす。さらにキソはポムに学校に早く行け、と怒鳴ると、犬にまで優しい口調で語りかけるヨンシンを非難してまた二人は口げんかを始める。何も言い返せなくなったヨンシンは、背を向けるキソを呼び止めるが、逆にまたキソに余計な一言を言わせてしまう。
「キムチを焼いたフライパンでトースト作らないでくれます?臭いが酷いから」
気分が沈みがちなヨンシンのもとに、ソッキョンの母から電話がくる。贈った服で見合いに行くようにとソッキョンの母に言い聞かされたヨンシンは、着替えの前にシャワーを浴びるために浴室に行く。先に入っていたキソが出てきて、一緒に入る?と茶化されたヨンシンはまた腹を立て、私にも好みがあるの、私の男性の見る目はどれほど高いと思ってるの?と踵を返して浴室へ向かう。
ソッキョンからの電話で仕事に出かけようと部屋を出たキソは、小花柄のワンピースに着替えて新しい靴を履いて出かけるヨンシンの姿をじっと見つめる。ぎこちなく歩いていくヨンシンの後を何歩か遅れてついていくキソ。歩くのを止めてふと振り返ったヨンシンは、なぜついてくるのかと尋ねる。キソはヨンシンに、自分の用事があるから出かけるんだと話し、その上また余計なことを言い続けてヨンシンを困らせる。
「私に関心でも?関心があるのかって聞いてるのよ、おじさん」
「あるといったら?どうしますか。あるとしたら見合いにはいかないの?」
「私、理想が高いの。さっきも言ったでしょ。
私の理想、本当に本当に本当に高いのよ。うぬぼれないで、おじさん」
キソは強がって歩き出すヨンシンの後姿を見ながら、あの夜、ソッキョンの母の前で涙を流すヨンシンの姿を思い出していた。
ソッキョンの母が紹介した男性とお見合いをしていたヨンシンが、彼と共に村道を歩いていると、仕事でたまたま運転していたキソが埠頭で2人の姿を見かける。キソはヨンシンの隣にいる見合い相手が船着場で見かけた男性だと気がつくと、二人の傍をすれすれに走り抜ける。危ない目にあったとき、見合い相手の男性は、ヨンシンを盾にして自分の身をまもっていたのをキソは見逃さなかった。
一方、ソッキョンとの子どもを授かったと考えていたウニは、産婦人科の診察で妊娠していなかった事、更に子どもを授かりにくい体質である事を医師に聞かされ衝撃を受ける。婚約者のウニがショックを受けていることも知らず、仕事に没頭しているソッキョン。ソッキョンは買収予定の土地を譲らない人物の中に、賭博には目がない男がいることを掴み、キソに話す。ソッキョンは賭博師と共にキソに同行させ、土地の権利者コ氏を陥れ、土地の権利書を手に入れる作戦を企て、早速キソを賭博師とともに賭博場に向かわせる。その頃、土地の権利者のコ氏の妻が夫の賭博癖を苦に農薬を飲んで自殺を図り、青い島診療所へ運び込まれていた。予定通りコ氏は賭博で負け、土地の権利書を持ち出すが、土壇場でキソが突然権利書をコ氏へと投げ返し、今度こんなものを賭けたら許さないと一言残してその場を去っていく。
その夜、ヨンシンの家にパク氏が駆けつけ、キソを出せと大声で騒ぎ立てる。ヨンシンが事情を聞くと、パク氏の父の従姉妹が農薬を飲んだこと、キソが賭博を開き、パク氏の叔父をそそのかして土地の権利書を奪ったと、興奮して話し続ける。
その頃ソッキョンに呼び出されたキソは何故権利書を返したのか問い詰められるが、何故かは自分にも分からないと答える。お前のような奴はクビだ、ソウルへ帰れとソッキョンはキソに厳しく言い放ち、キソに背を向ける。足早に歩き出すソッキョンにキソが呼びかける。
「どうやって生きればお前のようになれる?
オーナーに認められ出世して...
ちょっと教えてもらいたいね。目的のためには手段も選ばずか」
キソがソッキョンに詰め寄ると、ソッキョンはその土地がどんなに重要だったかをまくしたてる。
「私生活もそんなに明快なのか?」
「どういう意味だ」
「プロになるため、あんたの野心のために踏みにじって捨てたものが突然気になってね。
たとえば仏心とか
愛とか、女だとか...自分の子だとか」
ポムがソッキョンの子であると感じているキソの言葉の重みは、ソッキョンの胸に突き刺ささる。
キソが下宿先へ戻ると、ヨンシンがキソの部屋の入り口に張り紙をはっていた。様子がおかしいことに苛立ったキソは「おい、おばさん!」と大声を出す。もうおじいちゃんが寝ているのに、大声出さないでくださいとヨンシンが外へ出てくる。キソに向き合ったヨンシンは、出て行って欲しい、下宿代は返すからと冷たくキソに言う。呆然とするキソにヨンシンは、船で会ったあの女性が純粋に見えたから、今まで我慢してきたといい、そんな生き方で先に亡くなられた彼女に合わせる顔があるのかと続ける。外での騒ぎに気がついてパジャマのまま飛び出してきたポムが事情を察し、キソに出て行かないでとしがみつく。ヨンシンの頑なな態度に、キソは肩を落として出て行ってしまう。
旅館に向かったキソは、ドゥソプの母がソッキョンの母に怒鳴り声を上げているのに気がつき、そっと様子を見守る。二人の会話から、ヨンシンの見合い相手は過去に妻を暴力で傷つけ、妊娠中だった妻が亡くなったという噂があることを知る。その場では否定していたソッキョンの母だったが、すぐにヨンシンとの縁談を無かったことにする。見合い相手はヨンシンの財産を目当てにしているため、すぐには引き下がらずにソッキョンの母の元へ向かい、許しを請う。ヨンシンに二度と近づくなという母のインターホン越しの声をちょうど家に戻ったソッキョンも聞いていた。
諦めきれずにヨンシンの家にやってきた見合い相手は、これからは心を入れ替えるから、一度でいいから信じて欲しい、大切にするからとヨンシンの前にひざまずく。
「私あなたにそんなふうに言ってもらえる資格ないんです。
私も隠してることが...さっき言おうと思ったけれど勇気がなくて。
ポムが病気なんです。娘が病気なんです」
この言葉に、どこが病気なんですか?と男性が尋ねるがヨンシンはなかなか答えることができない。その場に忘れ物のライターを取りに戻ってきたキソが見ていた。
「知ってどうする、お前が!」
ポムの病気が何であるか、ヨンシンが打ち明ける前にキソがたまらずに二人の間に割り込んでくる。キソを見て驚いてヨンシンは立ち上がり、キソをじっと見つめる。
「どこが病気か、知ってどうするお前が!
早く出て行けよ、ここから! 早く出て行け、この野郎!」
止めて下さい、とキソを制すヨンシンに、誰なんですか、と見合い相手が尋ねると、ヨンシンは、知らない人です、何の関係もありませんと答える。その瞬間、キソが突然ヨンシンを抱きしめ、キスをする。
|