ポムがHIV感染者であることを島の人々に知られてしまった事実に衝撃を受けたヨンシンは、言葉を失い、青ざめた表情で立ちすくむ。ヨンシンはポムが心配になり、涙を流しながらポムの元に向かう。友達のポラムらに算数の勉強を教えているポムの姿を見つけたヨンシンは、無邪気に笑うポムを見つめ胸を痛める。そこへポラムの母があわてて駆けつけ、娘のポラムらをポムから引き離し連れて帰ってしまう。突然の出来事に戸惑うポムに
、ヨンシンは涙を拭き、元気に声をかけ、あふれ出そうな涙をこらえながらポムをぎゅっと抱きしめる。ポラムの母の様子を気にするポムに、ヨンシンはお家に戻ってカルグッス(韓国風うどん)を作ろうと明るく話しかける。島の人たちにおすそ分けしようと話すポムの優しさに、ヨンシンは思わず立ち止まり、ポムをじっと見つめる。
私のポムはとっても優しくて、愛がたくさんで、この世にこんな天使は他に1人といないのに…
皆が分かってくれなかったらどうしよう?
それが分かったらだめじゃない、ママったら。秘密だもん!
ヨンシンとポムがミスター・リーの待つ家に戻ると、家の中からミスター・リーの大きな声が聞こえてくる。ミスター・リーは部屋に閉じ込められて怯えていた。
怖いよ、怖いよ、メジュ!
誰がこんなことをしたのかと腹を立てるポムに、ミスター・リーはドゥソブがやったと伝えると、私がとっちめてくる、とポムは外に出ようとするがヨンシンに引き留められる。ポムの病を知ったドゥソブがドゥソブの母とイ老人を会わせないようにするために、イ老人を閉じ込めたのだった。HIVに対して確かな情報のないまま、島の人々はヨンシン家族を徹底的に避け始める。
その頃、診療所のオ・ジョンス医師の元には、HIVの検査をしてほしいと島の人々が殺到し、今まで事実を黙っていたヨンシンを皆口々に非難し始める。ヨンシンの痛みを知るソランは、自分が黙っているように口止めをした、とヨンシンを必死でかばうが、興奮した女性たちはソランにつかみかかり、怒りが収まらない。ソランは泣きながらヨンシンを許してと、いつも自分は後回しで私たちを心配するヨンシンを一度だけ許してやってくださいと訴える。その頃、ヨンシンは、涙をこらえ、重苦しい不安を隠し、ミスターリー・とポムと一緒に笑顔でカルグッスを作っていた。
一方、ソッキョンもまた全てを知ることになり、ポムが鼻血を出したときのことを思い出しながら、一度は目を背けた幼い自分の娘が抱えた病の重さに一人泣き崩れる。その様子をウニも不安そうに見つめていた。
翌朝、いつものように学校に出かけようとするポムを呼び止めたヨンシンは、今日はママとミスター・リーと遊ぼうと言い、ポムがつらい思いをしないようポムを引き留める。友達に手品を見せてもらう約束だからと、嬉しそうに学校に向かってポムは駆け出して行ってしまう。ポムはすれ違う人々が自分を避ける姿を不思議に思いながらも学校へ向かうが、学校には1人も生徒が来ていなかった。
ヨンシンはポムを迎えに行く前に、ミスターリーに食事を用意しながら、最後の頼みだからと意を決して転居の話を切り出す。青い島を愛するミスター・リーは島を離れようというヨンシンに怒ってヨンシンのおでこをスプーンで叩きつけ、食事のテーブルをひっくり返すと寝た振りをしてしまう。
自宅に戻ったソッキョンは、甥っ子ヨンジュの話から、皆がポムを避けて学校を欠席していることを聞かされると、HIVは簡単にうつるような病ではないとヨンジュに言い聞かせる。そこにソッキョンの母が口を挟み、母親までもがヨンシンとポムに島を離れてほしいと考えていることを知ったソッキョンは、ポムの学校へと車を走らせる。学校に到着したソッキョンは、ポムを心配して学校に迎えにきたヨンシンの姿を見かける。他に誰もいない教室で一人先生を真似ているポムの姿にヨンシンの涙は止まらない。涙を拭いて、笑顔でポムの教室のドアを開けるヨンシンは、開校記念日でお休みだと先生から連絡があったのをうっかり忘れていた、ごめんねとポムに言い聞かせ、不思議そうにしながらも納得したポムは、ヨンシンと2人家路につく。
家までの道のり、二人が仲良くじゃんけんをしながら歩いていると、目の前をポラムとポラムの母が通りかかる。ポムに会ったポラムは嬉しそうにポムの手をとるが、ポラムの母は険しい表情を浮かべて子供たちを見ていた。ポラムに開校記念日って何?といわれたポムは、思いがけない言葉を耳にする。
あなたがエイズにかかっているから、学校に行かないでってママが。
ぜんぜん何ともないのにね…。
ポラムの母は、ポラムの手を引くと、足早に去っていく。驚いた表情のポムがヨンシンに救いを求める。
ポラムが言っていたことは何?私になんでエイズが?エイズって何、ママ?
心の準備もないままに娘が事実を知ることになった現実を目の前に、ヨンシンは言葉を詰まらせる。そこに2人の様子を見守りながら車を走らせてきたソッキョンがポムに声をかける。
ヨンジュが手品を見せる約束を?あれはおじさんが教えたんだよ。今見せるね。
ポムはソッキョンの手品を見て嬉しそうに微笑み、ソッキョンにもっと見せてあげるから車で待っているように、と言われ、素直に車に乗り込む。
がっくりとその場に座り込むヨンシンに、ソッキョンは優しく声をかける。ソッキョンの方へなんとか目線をくばることができたヨンシンはソッキョンに「悪いけど、助けてくれる?」と一言つぶやく。ヨンシン一家のため、ソッキョンは急いでソウルに3人の住まいを探し始める。その夜、ヨンシンは島を離れる決意を固めていたが、ポムにはまだ話さず、ソウルの遊園地に行くと話す。遊園地と聞いたポムは嬉しそうにはしゃいでいた。
翌朝、ヨンシンたちを迎えに来たソッキョンは、大きな荷物は後で送るからとヨンシンにそっと伝えると、3人を乗せて車を走らせる。不安な表情を浮かべるイ老人に、ヨンシンは、遊びに行くだけ、ソッキョンが連れて行ってくれるからねと言い安心させる。車内で浮かれるポムの様子に、ヨンシンは切なさがこみ上げ、青い島の風景をじっと見詰めながら悲しそうな表情をしていた。車がしばらく走ると、突然ミスター・リーが声を上げて泣き出してしまう。その様子にポムまで悲しくなり、ポムも泣き出すと、二人の泣き声にヨンシンはますます胸が痛むがどうすることもできない。そんな彼らを乗せた車の前に見覚えのある白い車が近づいてくる。
おじさんだ!
ポムがミン・ギソの姿を見つけた瞬間、ミスター・リーが突然意識を失ってしまう。その様子を見たキソは急いで駆けつけ、ミスター・リーを車から出すと、心臓マッサージを始める。キソの脳裏にコ氏夫人を救えなかったあの瞬間のことが思い浮かぶが、ヨンシンの切ない表情を目の前にして気持ちを切り替え、人工呼吸を続ける。キソの必死の救命措置にミスター・リーは意識を取り戻し、うっすらと目を開けキソを見つめて「兄さん」とつぶやく。
安心したように座り込んだキソは、「チョコパイちょうだいよ、おじいさん」とミスター・リーに語りかける。そんなキソの背中にポムが嬉しそうに飛びつく。
おじさん、どこ行ってたの?
お前どこいくの?
ソウルだよ。
あんな空気の悪いところに何しに?
一旦診療所に運びましょうと、キソはイ老人を負ぶうと診療所に車を走らせる。呆然と様子を見ていたヨンシンはソッキョンに謝るが、ソッキョンはどうして謝るのか、と答え、診療所まで送ると話す。ソッキョンの言葉に、ヨンシンは一人歩いていくと答える。
お前にとって俺は何だ?引き留めてくれたらここにいる。
お前とポムの隣にいてと言ってくれたら、
俺は全てをあきらめ、捨てて、お前の側にいる気持ちだってある。
チェ・ソッキョンを引き留める気はないのか?
自分の言葉に何ひとつ返事をしないヨンシンに背を向け、ソッキョンは車を走らせる。
診療所でミスター・リーの治療を続けるキソの前に、島の女性(テチャンの母)が赤ん坊を連れてやってくる。嬉しそうに駆け寄り、赤ん坊を抱こうとするポムだったが、その女性はポムの手を振り払い、何故ここにポムがいるのか、追い払ってと騒ぎ立てる。ショックを受けているポムを心配したソランがポムを外に連れて出すが、そこにポムの友達テチャンが現れ、ポムの姿を見ると一目散に走って逃げ出してしまう。診療所での様子から、島の人々がヨンシン家族に嫌悪感すら抱いていることを感じたキソだった。ちょうどその場にヨンシンがやってくると、ポムはヨンシンの前で不安そうに泣き出す。
ママ、みんな変だよ…すごくすごく変だよ。
何が?ぜんぜん変じゃないよ、何が変?
ヨンシンが慰めてもポムの涙は止まらなかった。そこへキソが出てきて、ポムに声をかける。
そうだ、俺がみたところ、超変だ。
あらかじめ手に汚れをつけてきたキソは、そっとポムの頬に触れると、いつ、顔を洗ったのかと問いかけると、ポムは朝洗ったことを小声で話す。
何だよ。その後洗ってないな?俺が赤ん坊のママでも怒るぞ。
お前のママは何やってんだ?
赤ん坊を抱くときは手を洗う、そんな基本的なことも教えてもらってないの?
話をそらしてポムの気分を変えようと、キソはヨンシンに矛先を向け、子供の教育がなっていない、ただ可愛くないだけじゃなくて…とヨンシンの容姿について言い始めると、ポムは腹を立ててヨンシンをかばい始める。ポムが気持ちを立て直すことができたことに気がついたキソは、家で鏡を見ろ、俺がテチャンでも逃げ出すぞと言うと、診療所へと戻っていく。キソの配慮に救われたヨンシンはほっとして、ポムに鏡を見せる。
ポムを厄介者のようにあつかう島の住民に驚きを隠せないキソだったが、怒りをこらえ、赤ん坊を診察し、原因をすぐに見つけて処置をする。
エイズというものが、そう簡単に空気感染していたら、今頃人類は皆死んでるよ。
以前のキソとは違い、冷静に、怒りを抑えながら、ポムを守る発言をする。
治療を終えて自宅に戻ったイ老人の様子が落ち着くと、キソは安心したように部屋を出る。落ち着いたヨンシンも外に出ると、キソが星空を見上げていた。黙って見ているヨンシンの前で、キソが星空を見つめたまま話し出す。
元気だったか?俺がお前をどんなに心配したのか、愛してるのか分かるか?
だから来た。。お前たちが恋しくて恋しくて、おかしくなりそうで。
キソはふとヨンシンに視線を移すと、ヨンシンに歩み寄る。
お父さんにお辞儀は?お前の父だ、ヨンシン。
一ヶ月前、キソが島を出ることになる前の夜の自分の失態を思い出し、ヨンシンはあわてて部屋へ逃げ帰る。キソは一瞬微笑むが、また空を見上げると、これからヨンシンとポムとイ老人に降りかかるであろう困難を思い、少し表情を曇らせる。その頃、ヨンシンとイ老人が寝静まる中、ポムは思いつめた表情で暗闇の中パソコンに向かっていた。
翌朝ヨンシンがうなされて目を開けると、隣に寝ているはずのポムの姿が見えない。疲労がたまり、熱を出したヨンシンが、やっとの思いで立ち上がり、ふとポムの布団に目をやると一通の手紙が置いてある。
ポム!ポム!
手紙を片手にパジャマ姿のまま外に飛び出してきたヨンシンだったが、高熱で足元がふらつき、ジョギングから戻ったキソの目の前で倒れてしまう。ヨンシンを支えるキソがヨンシンが握り締める手紙を開き、言葉を失う。
ママ、ミスター・リーと幸せに暮らしてね。
ポムを探さないで。さようなら。ポムより
|