【あらすじ ※詳しいです】
互いへの愛を確認しあったミニョンとユジンは、スキー場を出てミニョンの別荘へと向かう。別荘のドアを開けると、そこにはミニョンの母カン・ミヒが来ていた。カン・ミヒは遅い時間にミニョンとユジンとが二人で別荘に来たことを仕事とは言えど、感心できないとはっきり話す。しきりにユジンを見て警戒心を抱くミヒの様子に気づいたミニョンは、ユジンに好感を抱いて欲しいために、会話を盛り上げようと努める。別荘近くの川での釣りについて話すミニョンに、母が7歳の時あの川で溺れたのを忘れたのかと咄嗟に戒める。ところが自分は韓国に来たのが今回初めてだと母に聞かされていたミニョンは、何の話かさっぱり分からず、母親がアメリカでの記憶と混同しているのだと考えた。そしてユジンが春川出身だと伝えるミニョンに突然表情を曇らせるミヒは、慌てて別荘を出ていってしまう。
カン・ミヒが別荘を発つと、ミニョンはユジンに戸惑ったでしょう、と語りかける。首を横に振るユジン。
−僕は戸惑いましたよ。ここに着いたらすぐにしてあげたいことがあったのに...。
ミニョンは自分の両手でユジンの両手を取り、温かく包みこむ。
−手を握ってあげたかった。手を握り、こんなふうに見つめあって...そうしてあげたかったんです。つらかったでしょう?
つらい思いをしたユジンだったが、ミニョンの愛情に幸せを感じ、うつむきながら微笑みを浮かべる。
ミニョンはユジンの手をとり、別荘の横にある小さなベンチに座った。寒そうに見えるユジンを自分の着ているコートで暖めるミニョン。
−もっと寒いといいのにな...。今日は空に一つも星がないね...雪が降るのかな...。
−ポラリス、知ってます?ポラリス。
−知っているよ、ポラリス。
−前にチュンサンが教えてくれたんです。山で迷ったらポラリスを探すんだって。季節が変わると他の星は全て動いてしまうけれど、ポラリスは決して動かないと...いつもその場所に動かずにいるから。
ミニョンはチュンサンを思い出すときの表情をしているユジンの顔をじっと見つめ、問いかける。
−ユジンさん、道に迷ったの?
目に涙を浮かべながらユジンがミニョンを見つめる。
−私は、今日、大切な人たちに大きな傷を与えてしまいました。母さん、ヨングク、チンスク...サンヒョク。もしかしたら、もう許されないかもしれません。どうしたらいいでしょう...
目をそらさず、ユジンをじっと見つめたまま答えるミニョン。
−他の星座は動いても、ポラリスはずっと同じ場所にいると言いましたよね?もしかして、他の人が皆ユジンさんを許せないと、理解できないと去ったとしても、私がいつもこの場所にいてあげれば、道に迷わないでしょう?私を...信じられますか?
答える代りに温かいミニョンの瞳を見つめながらうなずくユジン。ミニョンはユジンにとってのポラリスになれるよう祈りながら彼女の額にそっと口づけをする。
一方、ユジンがミニョンと一緒に車でどこかへ走り去っていったのを目にしてしまったサンヒョクは、家族や友人たちに、ユジンをソウルの家に帰したと嘘をつく。ユジンのためではなく、自尊心が傷つかないように、自分のための嘘をついたのだ。サンヒョクの言葉を信じない母に、サンヒョクは母の誕生日の日、ユジンにひどい事をしてしまったと話してしまう。サンヒョクの嘘に気がついたユジンの母は、ユジンがミニョンと一緒だと分かり、サンヒョクに申し訳ないと泣きながらスキー場を後にする。一人になったサンヒョクが部屋へ戻ると、そこにはチェリンが待っていた。
−あなた嘘ついてるわね?他の人はだませても私には無理よ。ユジンはソウルにも帰っていないのね?
−お前は関係ないことだ。
−ミニョンさんと逃げたのね?違う?
−ユジンとイ・ミニョンさんの関係...母さんに告げ口したのはお前だろう?お前がどんな意図でそうしたのかは分かってる。何をしてでもユジンとイ・ミニョンさんの仲を裂きたかったんだろう...だけど意図とは別の結果が出たのは、お前も見たから分かるだろう?分かってるなら知らないふりをしろ。
翌朝ミニョンの別荘のユジンが眠る部屋へと、彼女の心を癒すようにまぶしい冬の光が差し込んでいた。ユジンが目覚めると、2階に寝ていたはずのミニョンの姿が見当たらず、ユジンは外へと散歩に出る。携帯電話の着信履歴を見たユジンが不安な気持ちで前夜ミニョンと座ったベンチに一人で座っているところ、ミニョンが戻ってくる。
−よく眠れました?不便なことはありませんでしたか?
明るい笑顔でユジンを気遣うミニョンに、それまで心を覆っていた厚い雲がすっと消えていくのを感じるユジン。二人はミニョンの買ってきた魚などで朝食の支度を始める。
キッチンに立つミニョンはユジンのために朝食を用意したいと言い、ユジンが手伝おうとするのを断るが、包丁で手を切ってしまう。
−ほら、だから私がするって行ったのに...。
手際よく料理を始めるユジンを見て幸せそうに微笑むミニョン。
−この感じなんだ...キム先輩が言っていたんですが、大体の男性にはこんなファンタジーがあるって。会社から家に帰ると、愛する人と、温かくて美味しそうなテンジャンチゲが待っている感じ...それが何なのか分かったよ。
ユジンが用意した朝食をおいしそうに食べるミニョン。
−わぁ...美味しい...。ありがとう、ユジンさん。
−何がですか?
−朝食をプレゼントしてくれて。誰かと一緒に朝食を取ること...本当に久しぶりなんです。
朝食を終えたユジンがチョンアに電話で連絡を取ると、ユジンの母がソウルに戻ったと聞かされる。サンヒョクが事情を話していないことを知ったユジンは、ある決心を胸にミニョンの車でソウルへと向かう。ユジンの家に着いたミニョンは、ユジンの部屋が3階だと聞くと、部屋のある方向を見つめる。
−私、行きますね。
ユジンの方へ向き直るミニョン。
−戻ってくるでしょう?
−必ず戻ります。
ミニョンはユジンを抱きしめた後、彼女が傷つかないよう願いながら彼女を見送る。
部屋に戻ったユジンを待っていた母は、ユジンがサンヒョクを傷つけたことを非難し、サンヒョクを愛していないというユジンの言葉を理解できず、部屋を飛び出していく。気落ちするユジンの前に、チンスク、ヨングク、サンヒョクが現れる。サンヒョクはユジンの部屋で、なぜこんなことをしたのかとユジンを問い詰める。
−チュンサンでもないのに、俺じゃなく、なぜあの人なんだ...お前があの人を好きな理由は何だ?
サンヒョクの言葉に、咄嗟にミニョンの言葉が頭に浮かぶユジン。
「本当に好きなら、理由などいえないものですよ」
−理由は...ないの...
−別れてあげようか?俺の気持ちが変わる前に早く話せ。別れる?
−ごめんね...
−許さない...絶対に許さない...絶対...
飛び出して行ったサンヒョクを、ヨングクが追い、ユジンの心が理解できないチンスクもユジンの部屋を出て行ってしまう。
別荘に戻ったミニョンは、ユジンがつらい状況に置かれていることで心が晴れない。不安そうなミニョンの表情に気がついた母のカン・ミヒは、ユジンのためなのかと問いかける。
−春川で高等学校にいた時、私にそっくりな外見の人を好きだったらしいけれど、亡くなったそうです...。
ミニョンの話に動揺したミヒは、手に持っていたコーヒーをこぼしてしまう。母の慌てた様子が気になるミニョンだったが、それ以上にユジンが戻るかどうか、心配で眠りに着くことができない。
翌日スキー場に戻ったユジンが、木漏れ日が差す中、雪道をゆっくりと歩いていると、彼女の帰りを待ち続けていたミニョンが姿を見せる。振り返り、笑顔を見せるユジン。
−戻らないかと不安でした...大丈夫でしたか?
−大丈夫でした。
ミニョンを安心させようと微笑むユジンに、彼女の心を痛いほど感じ取ったミニョンがゆっくりと近づき、そっと手を差し伸べる。ユジンはミニョンの手を取り、二人は雪道をまた歩き始める。ミニョンは雪玉を作ると、ユジンへと“贈り物”と投げ渡すが、何も知らないユジンはまたミニョンへと投げ返す。ミニョンがもう一度ユジンへと投げ渡し、片手で雪玉を割ってみるようにと仕草で伝えると、ユジンは言われたとおりに雪玉を崩してみる。雪の中からポラリスをかたどったネックレスが現れ、キラキラと輝く。ユジンがミニョンを見つめる瞳のように輝くネックレスだった。二人は本当に久しぶりに明るい表情で微笑み合えたのだ。
そんなユジンの元、ヨングクからサンヒョクの具合が悪いと連絡があり、そんなユジンの涙を見たミニョンは複雑な思いを抱く。
さらにユジンの職場にサンヒョクの母が訪ねてくる。サンヒョクの母は、ユジンに謝罪し、サンヒョクの状態が良くないことを伝えると、戻ってきてほしいと懇願する。ユジンの様子を見ていたキム次長は、ミニョンに十年の歳月の重みを、ある犬とその飼い主の話に例えて話始める。
−10年の歳月...怖いってことだよ。動物でもそうなのに、人間ならどうなるだろうな...。
キム次長からサンヒョクの母が来たことを聞いたミニョンは、ユジンが苦しみを受けるたび、自分も同じように胸を痛めていた。ミニョンはサンヒョクのいる病院に車を走らせ、食べ物すら口にせず青白い顔で横たわるサンヒョクの姿を目にしてしまう。
サンヒョクを心配するユジンを連れ、サンヒョクのいる病院へと向かったミニョン。病院の駐車場で心の内を言葉にする。
−行ってみて。
−ミニョンさん、こんなことするのはいけないわ。
−いいえ、こうするんです。サンヒョクさんを心配してるじゃないですか、違うの?
−心配です...でももう心配しないと決心したんですから戻りましょう、私たち。
−私なら大丈夫ですから、行ってきて。ユジンさんが来るまで、ここで待っています。
−もし...戻れなかったら?サンヒョクの顔を見たら、戻ってこられないかもしれません。どうしますか?
ミニョンの瞳にも涙が浮かぶ。
−それでもいいです。ユジンさんの苦しそうな顔を見るよりは、ずっとましです...。
車内にユジンが貼った星のシールを見上げるミニョン。
−ユジンさん...ポラリス、見つけられるでしょう?私は大丈夫ですから、行って。その代わり、戻る道は迷わずに戻れますよね?時が流れ、ずっとずっと先になっても、見つけられますよね?
−戻ります。必ず戻ります...
ユジンはミニョンの車から降りた。ユジンの後ろ姿を見送ったミニョンの胸は張り裂けそうになっていた。涙が静かに頬を伝い落ちるのにも気がつかないほど、ミニョンの心は苦しかった。
サンヒョクの病室に入ったユジンは、サンヒョクの弱った姿を見て涙があふれ出す。自分がそばにいなければ、生きることすらあきらめてしまうサンヒョクを前に、ユジンはサンヒョクのそばで生きることをつらい気持ちで決心する。
スキー場を離れることになったユジンは、チョンアの車へ荷物を積みながら、ミニョンの姿に気がつく。
ユジンはミニョンと真っ白な雪道をゆっくりと歩いていく。
−...私、ミニョンさんにごめんなさいとは、言いません。ミニョンさんは、私の一番大切なものを持っていったから...私の心を持っていったから...私全然申し訳なくありません...
ユジンの澄んだ瞳を黙って見つめるミニョン。ユジンは涙を浮かべながらミニョンに大切な言葉を伝える。
−...愛しています...
ミニョンは横を通り過ぎるユジンの腕を掴むと、ユジンを強く抱きしめた。
−...ありがとう、ユジンさん...
ミニョンの声がユジンに伝わってきた。ユジンは優しくミニョンを抱きしめ、想いを振り切るようミニョンの胸から離れると、彼の前から足早に去った。真っ白な雪の中に一人残されたミニョンは、ユジンの後ろ姿が遠ざかるのをいつまでも見つめていた。