【あらすじ】
スキー場を離れるチョンアの車の中で、ユジンは涙を流し続けていた。ミニョンとの別れがこれほどつらいものだと思いもしなかったユジンは、ソウルへ戻ってからも胸が張り裂けそうな日々を過ごすことになる。
ユジンの姿のないスキー場で、ミニョンもまた胸の痛みを消すことができず、苦しい時間を過ごしていた。仕事にも身が入らないミニョンは、キム次長に休暇を願い出ると、一人別荘へと向かう。ユジンに話た近くの川で釣りをしていたミニョンに、ある男性が声をかける。その男性は、かつて溺れたチュンサンを救った男性だった。20年前に救った子供から連絡すらないと寂しがる男性の話から、“チュンサン”という名前が出たことにショックを受けるミニョンは、自分の記憶がどこかおかしい事実と、何かの間違いがあるのではとの疑心が生まれる。
一方、ピアニストカン・ミヒの取材に向かったサンヒョクは、その場で父チヌに偶然会い、父チヌとカン・ミヒが高校時代の同級生であることを知る。
さらにサンヒョクは父親とミヒの会話の中で、“カン・ジュンサン”という名を耳にしてしまう。
母親を訪ねたミニョンは、自分が無くした記憶について、改めて母親に問いかける。ミヒはそんなミニョンの表情に胸が痛むが、知らないふりを通す。
ミニョンを忘れようと努めて過ごしていたユジンだが、チェリンからミニョンの様子を聞き、最後のつもりでミニョンに会いに向かう。カフェで向き合う二人は、つらい気持ちを隠し、必死で笑顔を作る。
−元気でした?
−ええ...今日電話をしたのは...
−待って...用件を言う前に、少しだけ想像をしながらユジンさんを見つめさせてもらえないかな?本当に少しだけ、ユジンさんが何の用件もなくただ、私に会いたくて呼んでくれたと想像しては、いけませんか?
−...私の用件は...
心が揺れるのを抑えるかのように急いで用件を伝えようとするユジンは、カバンの中からポラリスのネックレスを取りだすと、そっと机の上に置く。
−これ...返さなければならないと思って..もう、私のものではない気がして...ごめんなさい、ミニョンさん。
−いいえ、私の方こそごめんなさい。さっきユジンさんの電話を受けて、ネックレスのためかなとも考えていたんです。それでももしかしてと期待もありました...バカみたいでしょう?でもありがたい。これのおかげでユジンさんの顔がまた見られたから...。
ネックレスに手を伸ばすミニョンだが、手にすることができない。
−だけど、長い間スキー場にいてソウルに来ると、気分が変ですね。ユジンさんはどう?
−冬が終わってしまったようですね...雪も見えないし、人も全て違ってみえる...全てになじめません。
−私もそうです。私だけ冬にいるみたいです。ここでは、私のすべき事と、してはいけない事が、よく見えるようです...。また戻りたい。
涙を浮かべて見つめあうミニョンとユジン。ユジンはミニョンへの想いを振り切るかのようにチェリンの話題を口にする。
−私させいなければ、今もチェリンと仲良くしていたはずなのに...
−私がチェリンと...上手くいけばいいなんて、耳にしたくないな...言ってはだめです。私は、ユジンさんの望みは何でもしてあげるけれど、それは出来ません。チェリンのためにも...
−私がでしゃばり過ぎたみたいですね...
−ユジンさんは、最近どうですか?
−...元気です。ミニョンさんは?
−...私もです...
話すことが見つからず、悲しみをこらながら二人はカフェを出る。別れを惜しむように街をゆっくりと歩き出すと、信号が故障していることに気がついたミニョンとユジンだったが、その場から歩き出すことができない。
−私がカン・ジュンサンと似ていなかったら、ユジンさんが私に気付きもしなかったでしょう?最初、私がカン・ジュンサンではないかと、そう考えたんでしょう、ユジンさん?
−そうでした。後で違うと分かりましたが。
−そうですか...私がカン・ジュンサンの訳がない...最近、こうして壊れた信号を待っている気分です。
−そんな風に思わないで下さい。
−ええ、意味のないことです...。向こうにも信号がありますが、移動しますか?
−昔も同じような事がありました。その時は他の道を回ったんですが、家に帰るのに遠くてとても大変だったのを思い出します。
ミニョンの優しい瞳をじっと見つめるユジン。
−どのみち私の行くべき道は、決められているじゃないですか。故障しても、渡らなければならないのはこの道のようです。戻ったら、また迷ったり、つらくなるかも知れないから...。行きます。
ユジンの後ろ姿を見送ったミニョンは、ユジンが自分から遠く遠く離れていくことへの悲しみをこらえながら、ポケットに入れたままのポラリスのネックレスを出し、そっと握りしめる。