【詳しい詳しい...あらすじ】
残務整理のため、ポラリスに向かったユジンは、チョンアからイ・ミニョンがその日の午後アメリカに向かう飛行機に乗ると聞かされ、さらにミニョンがユジンに宛てて残していった贈り物を渡される。ユジンが受け取った封筒の中には、チュンサンとの思い出の曲「初めて」のCDが入れられていた。CDプレーヤーから流れる「初めて」に耳を傾けながら、ユジンが何気なくCDケースを開くと、ミニョンの残したメモが出てくる。
“ユジンさん、今私は飛行機の中にいるはずです。この贈り物がユジンさんの重荷になるかもしれませんが...それでも何かを残さずにいられなかった。チュンサンのようにテープに録音してあげられませんが、それでも贈りたかった。お幸せに…”
ミニョンの手紙を読み終えたユジンが、驚いた表情でチョンアに語りかける。
−姉さん…この話したことないわ…話したことないのに...チュンサンがテープをくれた話…誰にもしたことないわ…
ポラリスを飛び出したユジンは、胸を引き裂かれそうな想いでタクシーに乗り空港へと急ぐ。空港に到着するとすぐに空港内に駆け込み、チュンサンの姿を探し求める。ようやくチュンサンの後ろ姿を見つけた時、チュンサンが搭乗口に向かう瞬間だった。
−チュンサン…
ユジンの呼ぶ声に振り返るチュンサン。
−チュンサン…
一歩一歩チュンサンに近づくユジンの目に、涙がとめどなく流れる。
−チュンサンでしょう?あなたでしょ?
チュンサンは何も答えられず、ユジンを見つめて一筋の涙を流す。 チュンサンの目の前で力を失い倒れかけるユジンをチュンサンが支える。
−チュンサン…ごめんね…分からなくて…本当にごめん…
チュンサンの滞在していたホテルへと戻った二人は、それまでの誤解や空白を埋めるかのように長い時間見つめあっていた。
−こうして会えたなんて、信じられない…チュンサン、チュンサン…チュンサン…
−ユジンさん…言いたいことがあれば言ってください。私は覚えていませんが、全部聞いてあげますから...
−チュンサン…私こうして声に出して名前を呼ぶのが願いだったの。会いたくなるたびに声に出して呼びたくなるのに、こうして呼んでも返事がないと、本当に死んでしまったようで、本当にいなくなってしまったようで、呼べなかったの。本当に、死んだとは信じたくなかったんです。死ぬはずがないのに…私と会う約束していたのに...はっきりと約束したのに、守らないはずがないのに…
−私が…そうしたんですか?
−思い出せませんか?私と会う約束してたのに、覚えていないの?
首を横に振り涙を流すチュンサン
−何ひとつ覚えていないんですか?私、手袋もあげたのに…ピンクの手袋。12月31日に返してくれるって話していたのに。ひとつも思い出せませんか?ひとつも?
悲しさをこらえながら静かにうなずくチュンサン。
−それなら…私にピアノを弾いてくれたことも覚えていないのね?授業を抜け出して自転車に乗ったことも、手をつないでくれたことも?
−ごめんなさい…ごめんなさい…本当にごめんなさい...
謝ることしかできないチュンサンの涙を見て、ユジンが続ける。
−ミニョンさんが悪いところなんてひとつもないわ。全部チュンサンが悪いの。ミニョンさんが思い出せないのは、全部チュンサンがいけないのよ。生きていながら…私をすっかり忘れちゃって…私は何一つ忘れていないのに...全て覚えているのに...
記憶のない自分を前に、胸を痛めるユジンを見ているだけで胸が苦しいチュンサンには、涙を流すユジンを抱きしめることしかできなかった。ユジンはチュンサンの胸の中で泣き疲れて眠ってしまう。
その頃、チンスクからユジンが戻らないと連絡を受けたサンヒョクは、胸騒ぎを抑えられないままユジンの部屋へと急ぐ。サンヒョクの携帯電話がなり、ユジンとチュンサンが一緒にいることを知らされる。ユジンが眠っているため、翌朝ホテルに迎えに来て欲しいとサンヒョクに伝えたチュンサンは、ユジンの元を去る決意を固めていた。夜が明けるまでユジンの寝顔を見つめていたチュンサンは、明け方、そっとメモを残し、部屋を後にする。物音に気付いて目を覚ましたユジンは、ベッドサイドに置いてあるメモに気がつくと、メモを読み始めた途端慌てて部屋を飛び出していく。ホテルの入り口で待ち続けていたサンヒョクの制止を振り切り、チュンサンの後を追うユジン。
“ユジン…私は昔、ユジンさんをこう呼んでいたのですね?ユジン…ユジン…ユジン...でも私は何一つ思い出せません。ユジンさんがあれほど恋しかったカン・ジュンサンは、私でありながら、私ではありません。一緒に過ごした思い出をなくしたなら、私がカン・ジュンサンであってもそれは単に名前が同じに過ぎません。ごめんなさい...思い出せない私の記憶の中に、あなたがいてくれたことに、ありがとう。心から、心から…”
大通りを挟んだ反対側の歩道を荷物を手に歩くチュンサンの姿を目にしたユジンは、大きな声でチュンサンの名前を呼ぶと、車通りの多い道路に飛び出してしまう。
−チュンサン!
ユジンの声に振り返るチュンサンは、大通りを横断してくるユジンの方へトラックが向かってくるのに気が付き、咄嗟にユジンを庇う。ユジンを守ってトラックに撥ねられたチュンサンは、病院に搬送される。意識を失い、危険な状態に陥ってしまったチュンサンの傍から、ユジンは一時も離れることができない。病院にサンヒョク、チェリン、チンスク、ヨングクが駆けつける。
チュンサンを“ミニョンさん”と呼ぶチェリンは、ショックのあまり一緒にいたユジンを責め立てる。チェリンの言葉に毅然とした表情で答えるユジン。
−そうよ、私のために怪我をしたわ。
−何?チュンサンもあなたに会うために事故に遭って今度はミニョンさんも?あんた本当に大した女ね。ユジン本当に良かったわね。これでチュンサンの記憶まで戻ったら嬉しいでしょう!
−ええ、嬉しいわ。チュンサンがこうして私をかばって怪我をしたこと、とても嬉しいわ…。バカみたいにチュンサンだとも気づかずに優しくできなくて、傷つけてばかりだったから...こうしてでもチュンサンを取り戻せて、私、とても嬉しいわ。こういえばいいの?もう満足?
友人たちが病室を出た後、病院の廊下のイスに座り、チュンサンの無事を祈るユジンの姿を痛々しい気持ちで見守っていたサンヒョクが、ユジンに語りかける。
−ユジン…寒いのにどうして出てきた?
−怖いの…怖くて死にそうなの…チュンサンにもしものことがあったらって怖くて死にそう…万が一チュンサンに何かあったら...どうしよう?私のせいよ…私が悪いのよ…
−誰もお前が悪いなんて思っていないよ。チェリンのことは気にするな。これでも食べよう。朝から何も食べて無いだろう。
差し入れの食事を手渡すサンヒョク。
−私のせいよ…
−わかったから早く食べよう。
−ごめんね、サンヒョク。私食べられない。
−何があろうと食べろ、看病も出来ないだろう!
サンヒョクの言葉に気持ちを強く持ったユジンは、食事を取り終えると病室へと戻る。
−チュンサン…さっきバカみたいに怖がって泣いたりしてごめんね。もうこれから怖がらないわ。しっかりと気を強く持っていくわ。あなたからも離れない。こうしてあなたの手を絶対に離さないからね。だからあなたも私の手を離さずに、私を見つけてよ。分かった?
病室にチュンサンの母カン・ミヒがやってくる。過去のチュンサンを知るユジンを警戒するミヒは、看病人を手配するから帰ってくれと冷たくユジンを突き放す。
−それはできません...私はチュンサンから、いえ、ミニョンさんから離れられません。10年間、思い続けた人です。今になってようやく見つけたんです。チュンサンとは呼びません。チュンサンを思い出させるようなことはしませんから。ですから、傍にいさせてください。お願いします。
ユジンの真摯な態度に心打たれたミヒは、ユジンも申し出を受け入れる。
ユジンが看病を続ける中、サンヒョクが訪ねてくる。
−チュンサン、まだ意識が戻らないのか?
−うん...でも絶対目を覚ますよ。
−ユジン、俺…イ・ミニョンさんがチュンサンだと知ってたんだ。ずいぶん前から…俺が、チュンサンにお前から手を引いてくれと言ったんだ。記憶がないならチュンサンじゃないと。だからチュンサンはここから離れようとした。
−そうだったの、そんなことがあったのね。
−俺が憎くないのか?俺に腹が立たないのか?
−ううん…あなたが何故そういったのか、理解できるわ。それで申し訳なくてここに来たのね?私は大丈夫。もう過ぎたことじゃない。
−もし、もしもだよ、チュンサンが目を覚まさなかったら...
−そんなことないわ。絶対に必ず目を覚ます。だからあなたもそう信じて、サンヒョク。
ユジンの心が完全にチュンサンに向かってしまったことを悟ったサンヒョクは、肩を落として病院を後にする。チュンサンの回復を信じて付きっきりの看病を続けるユジンの元へ、ユジンの母が訪ねてくる。
−チンスクに全て聞いたの。あの人がチュンサンなの?本当に?...この世にこんなことがあるなんて。でもここにいてどうするのよ。サンヒョクはどうするの?こんなことしたらバチが当たるわよ。
−サンヒョクを思うと申し訳なくて胸が痛むわ。でも母さん...どう考えても、あの人は私の運命よ。同じ人を2回も愛したの。今度は私のせいで大怪我したの。万が一のことがあったら、私が二度も殺すことになるわ。今はあの人が死なずに生きること以外何も考えられないの。私を愛さなくても、何も覚えていなくてもいい。ただ、生きてくれたらそれでいい。母さん、私、バチが当たるって言ったわよね?私その罰を全て受けるわ。
その夜、真っ暗な病院の待合室で、ユジンは強く祈り続けた。
−神様、助けてください。お願いです、神様…助けてください...
状態が悪化したチュンサンの手を握り締め、無事を祈りながらも涙があふれるユジンは、チュンサンのベッドに寄りかかったまま眠ってしまう。翌朝、意識を失っていたチュンサンの左手が動き出し、付き添ったまま眠っていたユジンの頬にその手が触れる。目を覚ますユジン。
−ミニョンさん?ミニョンさん、気がついたんですか?私が誰だか分かりますか?
ゆっくりと頷くチュンサン。
−お義母さまに電話をしなくちゃ...先生にもお話しなきゃ...
急いで病室を出ようとするユジンを、懐かしいチュンサンの声が呼びとめる。
−ユジン…ユジン…
10年前のチュンサンの声色に驚いて振り返るユジンは、ベッドに横たわり自分を見つめるチュンサンの方へゆっくりと近づく。
−チュンサンなの?
うなずくチュンサンの瞳から、涙が流れる。