【あらすじ(※注:9話 かなり詳しいです)】
ミニョンの車でスキー場に戻る間、ユジンは安心感に包まれ、それまでの緊張の糸が切れたように眠ってしまう。スキー場に着くとユジンに声をかけたミニョンは
、彼女が眠っていることに気づき、静かに語りかける。
−私は...ユジンさんが私のことを好きだと、そう信じたいけれど...信じてもいいですか?
ミニョンがユジンの髪に触れようと手を伸ばした瞬間、ユジンが目を覚ます。コーヒーを買ってくる、とミニョンが自動販売機に行っている間、ユジンはメモを残して部屋へと戻ってしまう。
「ミニョンさん...
私、先に戻りますね。
今日はありがとうございました。−ユジンー」
ユジンのメモをみつけたミニョンは、ユジンが慌てて立ち去ったであろう姿を思い描きながら、少し寂しそうに微笑む。
ミニョンが次にユジンに会ったのは翌日の夕方、ライトが落ちた誰もいないスキー場だった。ユジンは長い時間そこで悩んでいたかのようだった。まるで寒さも感じていないようなユジンの
表情は、ミニョンの心を締め付けた。冷え切ったユジンの襟元に自分のマフラーを巻いてあげようとするミニョンだが、ユジンはミニョンの優しさを拒もうとする。
−じっとしていて。寒いじゃないか...。
ユジンにマフラーを巻くミニョン。
−生きていれば、時々岐路に立たされることがあります。この道へ行くべきか、あの道に行くべきか、決断しなければならない瞬間が...。
マフラーでしっかりユジンの首元を暖めると、次にミニョンは凍えそうなユジンの手を優しく握りしめる。
−決断するのがつらければ、掴んでくれる方へ行くのも悪くありませんよ。今みたいに...。
ミニョンの瞳をまっすぐに見ることすらできないユジンだったが、その手の温かさを感じながら、暗くなったスキー場の道を一歩一歩、決断に向かって歩みを進めていた。
数日後、サンヒョクからの連絡を受けたユジンはソウルへと向かう。カフェでサンヒョクの前に座るユジンは、凛とした表情でサンヒョクを見つめる。
−ごめん...俺がホテルで...どうかしていたみたいだよ...ごめんなユジン。
−サンヒョク、私たち、その話はもうやめよう。
−ユジン、もうあんな事はしないよ。だから俺を許してくれないか?なかった事には出来ないだろうけれど、一緒に忘れる努力をしよう。
−サンヒョク...私たちの結婚のこと、また考え直してはくれない?あの日、あの事があったからの話じゃないの...。だから誤解しないで、聞いてくれる?私この頃、とてもつらいの。
はっきりしていることが何一つなくて、私が想う全てのことが揺らいでいるのよ。結婚すること...考え直してくれない?
−別れようってこと?
悲しそうにうつむくユジン。
−つらい理由は何だ?イ・ミニョンさんか?
−あの人のためだけじゃない。
−“あの人のためだけじゃない”なら、あの人のためでもあるという事だろ?そうなのか?
−初めそうだったように、昔みたいに友達として、家族のような友達として、そんなふうに過ごせないかしら?そうしてくれない?
−できない、そんなことはできない!絶対にできない...俺にはできないよ...。
サンヒョクはユジンの話を聞き入れようとせず、先に席を立ち、ユジンを残してカフェを出ていく。サンヒョクの後ろ姿を見送ったユジンは、自分の心が変わることないと確信していた。ユジンの気持ち
に目を向けようとしないサンヒョクは、予定していたスキー場でのコンサートを成功させるため着々と準備を進めていく。
サンヒョクに会い、スキー場に戻ったユジンが力なくロビーに入ってくると、そこへミニョンが姿を見せる。ユジンは遅い時間であったけれど、ミニョンに伝えなければならないと考え、ミニョンに話をしたいと声をかける。
ミニョンとユジンは暖かいカフェに入り、向かい合い、穏やかに目線を合わす。ユジンを気遣い甘く温かいココアを注文するミニョン。
−さあ飲んで下さい。憂うつでつらい時は、ココアのような甘いものを飲むと力が出ますよ。
−私が憂うつに見えましたか?
−ええ、憂うつに見えましたよ!
ユジンを笑顔にしようと常に気遣うミニョンに、ユジンの口元に笑みが浮かぶ。
−ソウルにはどうして行ってきたのか、聞いてもいいですか?
−ミニョンさんが、岐路に立たされた時は決断しなければならないと、言いましたよね?この道か、あの道かをお話します。私、ミニョンさんが好きです...でも好き
でいることはできません。
ミニョンの顔から笑顔が消え、その表情が曇る。
−ミニョンさんを選べば、サンヒョクが気になるし、サンヒョクを選べば、ミニョンさんが気になる...私どの道にも行くことはできません。これが私の決断です。
−ユジンさん...
−今日、サンヒョクに会って結婚できないと伝えました。そしてミニョンさんにも、私は向かうことはできません。私、これからは一人で頑張ってみます。うまくいくかは分からないけれど、つらくても我慢できます。ミニョンさん、私ミニョンさんにとっても、サンヒョクにとっても悪い人間になりたくないの。助けてくれますよね?
ミニョンは曇った表情のままきっぱりと答える。
−助けられません。それは決断じゃない、放棄でしょう。私はユジンさんが放棄することなど、手助けできません。
翌日、サンヒョクは勤務先のラジオ局の収録のため、ユジンのいるスキー場を訪れる。早速ミニョンのいる理事室を訪ねるサンヒョク。仕事中のミニョンは、サンヒョクを紳士的に迎え入れる。
−お久しぶりです。おかけください。
−いいえ、用件だけお話して出ます。私にはイ・ミニョンさんが分かりません。でも、チェリンも好きで、ユジンも好きだと私の前で仰るところを見ると、感情を抑えられず欲しいものは全て手に入れる人間だと
いうことは分かります。
−キム・サンヒョクさん...
−でも私は違います。道徳的に解釈できない行動は絶対に取りません。ですからどんなに好きでも自分のもの以外は関心ありません。私は、自分のものは何が何でも守って見せます。
−何が仰りたいんです?
−ユジンがイ・ミニョンさんを通して、他の人を想っているのはご存知でしょう?カン・ジュンサンだ。
−だから?
−それを利用して純粋なユジンを惑わさないで下さい。
−惑わす?昔にもカン・ジュンサンとユジンさん二人に、こんなふうに言ったんですか?何かを利用して惑わすほど、私はそんなに自信がない人間ではありません。今の話は聞かなかったことにしましょう。
−何があっても、ユジンは私を離れません。
−それはユジンさんが選ぶことでしょう。
−では一度見ていてください。ユジンが選択するのは誰なのかを...。
サンヒョクはユジンの職場に顔を出し、強引に夕食に誘うが、ユジンは気乗りがしない。ユジンの気持ちを無視し続けながら、サンヒョクは職場の先輩にユジンを婚約者として紹介する。三人の食事の場では、先にミニョンとキム次長が食事を始めていた。いたたまれない気持ちでミニョンが席を立つのを、ユジンもまた心を痛めながら見つめていた。ミニョンはそれまでに感じたこと
もないような気持ちで心が落ち着かず、冷たい風に当たりに外に出る。
サンヒョクの態度に耐えられないユジンは、レストランを出ると、自分を理解して欲しい、とサンヒョクに訴えるが、サンヒョクは自分を愛していなくてもいい、どうせ今までも一人で愛してきたと
言葉にしてしまう。サンヒョクの言葉に傷ついたユジンは、ただそばにいてほしいと続けるサンヒョクに、それはできないと断固とした態度で拒絶する。
−理由は何だ?答えてみろ!イ・ミニョンさんのせいだろう!お前がいくら違うと言っても俺には分かる。イ・ミニョンさんのせいだろう!
大きな声を出し、ユジンの肩を乱暴に掴むサンヒョクの姿を、外から戻ってきたミニョンが見つける。
−何をしてるんです?
ミニョンの方へ振り向く二人。ミニョンはまずユジンを気遣う。
−ユジンさんは戻って。私がサンヒョクさんと話しますから、ユジンさんは戻って。
ミニョンの態度に腹を立てたサンヒョクは、ミニョンの襟元に掴みかかる。
−あんたは...
−殴りたいなら殴ってみなさい。いくらでも殴られてやりますよ。だがあなたがユジンさんにあんなことを言うのは見ていられない。
−何だと?
−どうしたの?殴れませんか?人を殴るのはいけないことだから、殴れないのか?
サンヒョクは、ミニョンの言葉にかつてのチュンサンとのやりとりを思い出し息を飲む。茫然と立ち尽くすサンヒョクを放っておくことのできないユジンは、ミニョンの誘いを断り、サンヒョクと共に歩き出す。
翌日、仕事中にミニョンに会ったユジンは、申し訳ない気持ちを抱きながらミニョンと目を合わすことができない。そんなユジンの様子に気づいたミニョンが先に声をかける。
−私に何か話でも?
−昨夜はミニョンさんの心が傷ついたでしょう?嫌な気分だったでしょう?
−私がなぜ?ユジンさんがサンヒョクさんの方に行ったから?
目を伏せるユジン。
−(少し笑って)ユジンさん、優しすぎるみたいだね。優しすぎるって言ったんです。でも知ってます?優しい人は、そばにいる人を苦しめるってことを。人が傷つくのではないかと、自責感を抱くのもユジンさんを苦しめるし、さらに周囲の人たちは、何だか分からない。何の話か分かるでしょう?
−私が優柔不断だっていうことですね?
−悪い意味じゃありません。私はそんなユジンさんがむしろ好きなんです。でも、今は少し明確にする必要がありますよ。サンヒョクさんも私もつらいから...一番つらいのはユジンさんでしょうけれど。
−私はどうしたらいいでしょう?
−明確に表現して。ユジンさんがどんな決断をしても私はユジンさんの味方です。
ミニョンとユジンがスキー場を歩いていると、サンヒョクの父と母が姿を見せる。サンヒョクの父はミニョンを見るとすぐにカン・ジュンサンと間違い、声をかけてしまう。サンヒョクの母はチェリンから聞いていた男性がユジンと一緒に歩いているのを見てますます猜疑心を抱いてしまう。ユジンの母や友人らも到着し、コンサートの準備は着々と進んでいく。そんな中、サンヒョクの母は仕事中のミニョンとユジンが親しそうにする様子を目にして、ユジンの気持ちがその男性にあることを確信する。
コンサートが始まり、ユジンやミニョンが会場へ向かうと、すでにユジンの母やサンヒョクの両親、そして友人たちが集まっていた。コンサートが終盤に近づき、サンヒョクがステージに上がると、サンヒョクは突然ステージ上でユジンと来月結婚すると発表してしまう。ユジンの心情が分かるミニョンは、とてもその場にいることができず、一人
誰もいないスキー場へと向かう。
コンサート終了後、サンヒョクの両親、ユジンの母、チンスク、ヨングク、チェリンが集まった場所には、深刻な雰囲気が漂っていた。サンヒョクの母が、この結婚は許さないと言いだしたためだった。サンヒョクの母は、ユジンはサンヒョクを愛しているのかと問いかけ、他に好きな人がいるのではないかと問い詰める。何も言えないユジンを、サンヒョクの母が責め続けると、その場にミニョンが姿を現す。あの人がユジンの好きな人では、と母が言いかけると、サンヒョクが立ち上がり、ミニョンに出て行って下さいと冷たく話す。ミニョンはユジンがつらそうに座っている姿を見ていられずに話を切り出す。
−お話し中に失礼します。私のために問題が起こったならば、謝ります。先ほどどんな姿をご覧になられたのかは分かりませんが、ユジンさんは誤解を受けるような行動は絶対にしていません。
−出て行って下さい、イ・ミニョンさん。...さっさと出て行け!
−お願い、やめて!やめて、サンヒョク...。
ミニョンの立場が悪くなることがたまらなくつらいユジンは、思わず声を上げ立ち上がる。涙を流しながらサンヒョクとは結婚できないと、皆の前で打ち明けるユジン。
−母さん...ごめんね。結婚、できないの...。
ミニョンは外へ飛び出して行ったユジンの後を追い、追いつくとユジンの腕をしっかりと掴む。ユジンの瞳を通してユジンの心の痛みを感じたミニョンは、ユジンを抱きしめる。
−もう離さない...どこへも、誰へも、渡さないよ...
ユジンの目を見つめ、その頬を温かい手で包むミニョン。
−私の言う通りにするんですよ...答えて...私についてきて下さい...
ユジンは答える代りにミニョンの優しい瞳をじっと見つめてゆっくりと頷く。二人はこれまで隠してきた互いへの愛を確認するよう、抱きしめ合う。
サンヒョクはミニョンがユジンを追うのを目にした後、二人の後を追い外に出るが、二人の姿はどこにも見当たらない。サンヒョクがユジンたちを見つけたのは、ユジンを助手席に乗せたミニョンの車が走り去る瞬間だった。ユジンの名を呼ぶサンヒョクの声には、深い失望感が漂っていた。