オーケストラ公演当日、交差点の中心で、故障した信号の代わりに交通整理をしていたコヌ。目線をふと反対側車線に移したコヌは、その場に立ち真っ直ぐに自分を見つめるカン・マエの姿に気がつく。カン・マエ、コヌに向かって迷わず歩いていく。
− フォームが決まっているな。私が教えたタクトテクニックをここで使うつもりか?公演の日ひとつも覚えられない間抜けなお前のために言うならば、公演開始は6時、お前のソロは2部最初の曲だ。
カン・マエから目をそらしたまま黙って交通整理を続けるコヌ。
−幸せか?故障した信号の代わりをし、排気ガスの臭いにまみれているのが幸せなのか?
コヌ、カン・マエと目線を合わすが、言葉が出てこない。
−ああ、もちろん認める。十人十色だ。金が最高だという人、キムチひと切れでご飯が食べられれば幸せな人、そのお金を皆エチオピア難民に寄付して足を伸ばして寝る人、多様だろう。どれも正しく、どれも間違いでない。みな自分の価値観によって生きているだけのことだ。...だからお前、カン・ゴヌ...お前の価値観に照らしてみて、今この瞬間は幸せか?
何と答えていいか分からないコヌは、黙ったままで、また交通整理を続ける。
−ひとつだけ聞こう。指揮をしたいと言ったこと...
−教わりたかったです。
−それで?
−夢として、そのままにします。
−夢?それが何故お前の夢だと?動きもしないで。それは星であり、空に浮かんでいて、届くこともない、試すこともできない、見つめるだけの星。誰が荒唐無稽な星の世界の話をしろと?
コヌ、振り返る。
−お前が何か行動すべきだろう!少しでも当たって砕けて...せめて計画でも立ててみてこそ、そこにお前の色だの匂いだのが現れるんだ。それでこそお前の夢だという事が出来るだろう?何もせずにお前の夢だと?そんなに簡単なことなら医者、博士、弁護士、判事、全部ひとくくりでお前の夢だ!何故?(うつむくコヌに続ける)....夢を叶えろということではない。挫折でもしてみろということだ。...事実こんな話は必要もない。私に何の関係がある?一生苦しむのはお前だ。“俺はこの程度しかできない人間だ、夢もない、挫折することすらできないんだな、人生に食われたな”一生そうやって生きて死の直前に頭をかすめる“指揮”...断末魔の悲鳴程度は上げて死のうが死ぬまいが。
カン・マエは車道を走る多くの車に目もくれず、堂々たる歩き方でコヌの前を去る。
:::베토벤 바이러스:::
韓国MBCドラマ18部作
(韓国放送日:2008.9.10〜2008.11.12)
企画:オ・ギョンフン/演出:イ・ジェギュ/脚本:ホン・ジナ.ホン・ジャラム/主演:「白い巨塔」「不滅の李舜臣」キム・ミョンミン.「ファン・ジニ」チャン・グンソク.「太王四神記」のイ・ジア。