カン・マエの配慮の無い言葉の数々に自尊心を傷つけられた市響の楽長らは、イ・ドゥンやチョン・ヒヨンに呼びかけ、オーケストラをボイコットし、さらにカン・マエに謝罪
を要求しようと企てる。以前からカン・マエに対して不満を抱いていたイ・ドゥンやヒヨン、ぺ・ヨンギらは、結局市響楽長に言われるまま、カン・マエを
追い詰めるための計画に手を貸してしまう。そんな三人がカビョンの家を訪ねて事情を話すと、カビョンはカン・マエの本心はただ素晴らしい音楽を作るため、私たちを育ててくれているだけのことだと
言い、団員らを諭そうとする。
一方、ルミはオーケストラを去った市響団員に再び戻るよう連絡を取ることに奮闘していた。その頃、「第九」のために練習を続けていた合唱団の団員らも、カン・マエの指導法に反旗を翻し、練習だけでも他の方に変えていただきたい、と申し出る。するとカン・マエは合唱団のメンバーの前にコヌを呼び出すと、今後合唱団の練習はこの人に任せますと言い、周囲を騒然とさせる。音大出身ではなく、自分の元で2ヶ月指揮を学んできたとコヌの音楽経験の浅い部分を強調するカン・マエに、当然合唱団員から経歴も無い人の指揮など無謀だとの声が上がる。するとカン・マエは指揮者として自分を拒絶したのは経歴の問題ではないでしょう、と切り返し、曲のことなどまるで頭にない彼らを前に我慢の限界を感じ、コヌを残して練習室を出ようとする。そんなカン・マエを呼び止めた合唱団のリーダーは、“先生が指揮者として我々の能力を引き出し、士気を高めるべきだった、先生がダメにしました”とこれ以上の継続は無理であるとの意思を主張する。
市響団員が次々と辞表を送ってくることで 、心配が募る市長に対し、カン・マエは全て予想していたことだと淡々と答える。謝罪をすれば済むこと、と主張する市長に、カン・マエは謝罪するつもりは無く、オーディションのとき次点だった人に声をかければ良い と続ける。ところが係長の話から彼らもまた市響団員らの声かけにより既に参加を断ってきたことを知らされる。窮地に立たされたカン・マエ だったが、あきらめずにヒョックォンと共にメンバーを探していると、そこへルミがやってくる。カン・マエを勇気づけようと持ってきた音楽雑誌を開き、ルミは前回の公演についての記事を読み始めるが、逆に空気を重くしてしまう。
−二人ほど、また戻られると思います。出ていかれた方に、私がお会いしてみたのですが…
−会った?何故お前が会う?
−足りないから…
−だからそれは全て私の…(ソファーから立ち上がるカン・マエ)答えなさい。トゥ・ルミさんは今も楽長なのか?
−...いいえ
−それなら私に大きな借りでもあるのか?(驚いた表情のトゥ・ルミを見て)何だ?不満そうな表情だな…スープを作ってくれて、湖に飛び込ませ、そこから何か大きな意味を見出しているようだが、勘違いはやめたまえ。私の目に映るトゥ・ルミさんは、耳が遠く、実力もあまり無く、お荷物団員...それ以上でもそれ以下でもない。
カン・マエの言葉に表情を失っていくルミ。
−ああ、もう1つある。私の弟子の恋人だ。基本から直せ....あちらこちらでいい顔をするのは浅はかだ。
−先生の気分を害したことは認めます....でしゃばったこと、申し訳ありません...私はただ…力になりたくて…
−その力はコヌへ注げ、私ではなく!
ルミは涙を流しながらカン・マエの部屋を後にする。涙を止めようと心を落ちつけようとしていたルミは、偶然近くでイドゥンが誰かと電話で話す内容を耳にしてしまい、彼らがカン・マエに謝罪を要求しようと準備していることを知る。ルミがイドゥンとカビョンにカン・マエの正統性を訴え、説得をしている頃、カン・マエの部屋に市響団員らとともにヨンギ、ヒヨンが謝罪と再発防止を要求し、条件提示するためにやってくる。自らが招いた事態とはいえ、ヒヨンらの態度 と容赦ない攻撃的な言葉にカン・マエの心は深く傷つく。 そんなカン・マエの救いは弟子であるコヌの存在だった。車内でコヌに対し引退をほのめかしたカン・マエに、コヌは 怒ったように突然車を止めると、“慰めることはできないけれど、先生は指揮の師匠で、人生の先輩だ”と照れくさそうに本心を伝える。
カン・マエの傷ついた心情を察していたルミは、カン・マエをメールで呼び出すと、彼を待つ間、カン・マエを笑わせるためビスケットを7枚同時に頬張る練習をする。その場へ少し前にやってきたカン・マエは、少し離れた場所からルミの姿を見て、笑いがこみあげ、とうとう抑えきれずに大きな声を上げて笑いだしてしまう。いつもの堂々とした雰囲気を失ったカン・マエに、どうしてそんな場所に隠れているのですかと声をかけるルミ。
−え?隠れている?さあ...ああ、うちの犬だが、トーベンが、怪我をしていたり調子が悪いときはいつも家の隅に隠れるんだ。他の動物からの攻撃を避けるためにな。動物の習性だ。私も動物だから、頭がちょっと痛くてな。....チョン・ヒヨンさんとぺ・ヨンギさんが来たことについて、聞かないのか?...(ヒヨン、ヨンギとの会話を思い出し、後味の悪い表情を浮かべながら)私には分別がない そうだ。他の人は皆、頭を下げることができるけれど...“子供も育てるな”と言われた..“気の毒だ”とも...。
笑って見せ、おどけながら話すカン・マエを、悲しそうな目で黙ったまま見つめるトゥ・ルミ。
−だからしようと思う...謝罪を。先延ばしにしては練習時間が足りなくなるし、万人の願いならどうしろと?指揮者だから、叶えてあげないと。簡潔にすればいい、何も難しいことはない。
ルミはこらえていた悲しみがあふれ出し、涙が次々と流れ出て、とうとう声を上げて泣き出してしまう。ルミの涙を見て心が痛むカン・マエは 、思わずルミから目をそらし、次の日の練習時に謝罪することを平静を装いながらルミに伝える。
翌日、練習室に入ってきたカン・マエは、団員達の前に立ち、メモを取り出す。練習室の外で、カン・マエの様子を見守るルミ。
−話が長くてもいいことはないでしょう?短めに終わらせます。私はソンナン市響の芸術監督と指揮を担当するカン・ゴヌです。団員の抗議という不測の事態に、私は熟考を重ねました。この事態の原因は何だろうかと。なぜ彼らは私に不信感を抱いているのか、私は何故彼らを理解できないのだろうか。もしかして私に過ちはないだろうか。そして私にとうとう結論が出ました。今日から私カン・ゴヌは指揮者として、そして人間として、再び生まれ変わるべく...皆さんに心の底から私は、心から…心から謝罪を…
廊下からじっと様子を見つめているルミに目線を移すカン・マエは、何か決意したように原稿から目を離し、団員らをしっかりと見つめる。
−できません!何故か?これは心からの謝罪ではないからです。あなた方のせいで無理やり書いただけのことです。そして皆さんの要求3つ(要求条件が書かれた紙を三度叩いてみせる)、これも拒否します。
楽長が“先生...”と話の腰を折ろうとするが、カン・マエは構わず語り続ける。
−延長練習禁止?練習を延ばさずどうします?実力がなければすべきでしょう。延長すれば時間外手当が出て、実力は伸び、公演も成功、経歴も増え一挙"4"得となるものを一体何故それをしないのです? (要求条件に目線を移し)団員の人格。これは解決済み。三番目、これまでの全てのホニャラララ、とりあえず謝罪。1つだけ伺います。私がこれまで皆さんの実力以外のことで不当に叱責したことがありましたか?でなければ私が準備不足で皆さんにご迷惑をかけたことが?ないでしょう?それなら何が問題なんですか?
奏者の一人チュンジンが“先生のそういう語り口が…”と切り出す。
−語り口ですか?それでは要約すればこういった話ですね。“先生、言い方をちょっと直してください”...。ですが申し訳ない、私は語り口も直しません。昔から、ママ、パパ、と習う前からこの語り口でした。ですから私の家族も皆私を嫌がります。でもどうしましょうか?生まれつきなのに。その代わりに、皆さんにいくつか約束をしましょう。 時間外手当や各種公演、諸手当、その日付に徹底して支給させます。市響は市議のものだから国歌の演奏をしろと?いいえ、タダでは演奏させません。音符1つにもピーッという音1つすべての音に報酬をつけます。正式な1年間スケジュール以外に行われる行事、演奏会など…演奏しません。市長の息子、娘、姪、甥の演奏会に共演しろ?言語道断です。私たちは私たちの意思で一歩一歩前に進みます。そして何より皆さんに恥はかかせません。我々の演奏する音楽の前に、作曲家の前に、観客の前に、 皆さんが堂々と出られるようにします。私たちの音楽を聴いた1人1人が、この世知辛い世の中で小さな安らぎでも感じられるようにします。それが私がこの市響を受けた究極的な目標であり、夢です。皆さんにもその夢を…共にかなえてもらえたら…嬉しいです。
カン・マエの堂々たる態度と心から素晴らしい音楽を作ろうとしている言葉の数々から、指揮者カン・ゴヌの真意に改めて気付かされた団員らは、納得し、感動の表情を浮かべる。その日を境に練習は順調に行われ、着々と公演に向けての準備が整っていく。そんな中、カン・マエの誕生日を祝うささやかなパーティを団員らが企画し、カン・マエを驚かせる。その場からいつの間にか姿を消していたルミは、カン・マエと共に過ごす時間が増えるたび、カン・マエに惹かれる気持ちが抑えきれず苦悩していた。 そして公演直前、カン・マエのいる控室に向かったルミは、カン・マエに気持ちを打ち明けてしまう。
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:::베토벤 바이러스:::
韓国MBCドラマ18部作
(韓国放送日:2008.9.10〜2008.11.12)
企画:オ・ギョンフン/演出:イ・ジェギュ/脚本:ホン・ジナ.ホン・ジャラム/主演:「白い巨塔」「不滅の李舜臣」キム・ミョンミン.「ファン・ジニ」チャン・グンソク.「太王四神記」のイ・ジア。