【警察署】
スンハはソクジンと警察署内で弁護人と依頼人として向き合う。
−私は、ナ・ソクジンさんのお話を信じます。ナ・ソクジンさんが殺人を犯していれば、現場にハンカチや吸殻を残すはずが無いからです。
−そうです、誰かが私を殺人者にしようとしているんです。
−しかし、残された証拠のために、ナ・ソクジンさんが不利ですね...。殺害現場にナ・ソクジンさんがいたという証拠が多すぎます。
−スンギに会ったのは事実ですが、絶対に殺してはいません!
−会って何をしていたのです?キョン・ジョンチョルに、キム・スンギさんを暴行するよう指示されたのですか?今一番重要なのは、あなたがキムスンギさんを殺していないと証明することです。
−暴行を...指示したのは確かです。
−カン・ヒスさんが指示されましたね?
−いいえ…。
−私には正直に話してくださらなければ、あなたを守ることはできません。
−社長はただ、スンギの問題を静かに処理しろと仰っただけです。
−死亡推定時刻にナソクジンさんのアリバイを証明できる方がいませんか?
−いません…これからどうすればいいですか?
−私たちには時間が少し必要です。死亡推定時刻のアリバイが重要で、殺人容疑を晴らす証拠をつかむまで、時間を稼ぐんです。
一方、スンハが12年前に会ったことのある少年だったと気がついたヘインは、心に生じる不安をかき消すためにオスに連絡を取る。
−聞きたいことがあってお電話したんです。以前話していたチョン・テソンという人、写真はありますか?本当にその人がそんなことをしたと、確信しているんですか?その人が生きていたとしても、犯人だとは確信できませんよね?チョン・テソンが犯人だとは限りませんよね?そうでしょう?
−どうしてそんなことを聞くんです?何か…あるんですか?
−いえ、何も、切りますね…。
ヘインの不安そうな様子を心配するオスだったが、ヘインは事情も話さず電話を切ってしまう。
取調室では、ソクジンに対する状況証拠を元に取り調べが進む。事件の夜、スンギと倉庫で会っていた事実を認めたソクジンだが、殺害に関しては断固として否定する。パン班長らの鋭い指摘に徐々に追い詰められ、そのたび横に座るスンハに救いを求めるように目線を送る
ソクジンの様子をオスは悲痛な表情でじっと見守る。
取調べが終わり、警察署から出たスンハの前にオスが姿を見せる。
−あなたの目的は何です?ソクジンに罪をきせておいて、また現れて罪を晴らそうとする…その次は、何をする気です?
−私の目的はカン刑事さんと同じです。私は何者かがナ・ソクジンさんを殺人者にしようとしているのを確信していて、それを証明するのが私の目的です。
−その何者かはあなたではありませんか?
−殺人者を捜すのは、カン刑事さんの役目です。これでカン刑事さんと私は共通の目的を持つ協力者ですね。ナ・ソクジンさんがキム・スンギさんを殺していないことを確信しているのは、カン刑事さんと私だけですから。
−一体お前は何を企んでいる?
−私は弁護士としての役目を果たしているだけです。カン刑事さんも刑事として、役目を果たしてください。全ては自分で回っています。運命の輪のように。
−あんたがそう仕向けて動かしているんだろう?
−あなたの言葉どおり、私は神ではありません。そして神がいたとしても、運命を変えるのは人間です。
−“神は運命を予言するが、人間は運命を変える”...そのことか…
スンハは冷たい微笑みを浮かべてオスをじっと睨み続ける。
【オ・スンハ 弁護士事務所】
その頃、クァンドゥはパンチーム長からの連絡で、スンハがソクジンの弁護を引き受けたことを知らされ
驚きを隠せない。さらに以前の知り合いからの情報で、家出人名簿の中に「オ・スンハ」をの名を見つけることになる。
【警察署】
捜査が進む中、ミンジェはソクジンの携帯電話の着信記録にチェ・ナヒという女性からの着信があった
とチーム長へ報告すると、たまたま署に戻ったオスがこの名前を耳にする。一瞬耳を疑うオスだったが、何らかの事情を知るであろうナヒに
ためらうことなく連絡を取り、ソクジンとの通話について尋ねる。ナヒからはヒスの居場所を知るためにソクジンへ電話をしたと聞かされるが、釈然としない想いで
オスは胸が一層重苦しくなる。オスからソクジンの置かれている状況を知らされ、さらにヒスからも事情を聞いたナヒは、ソクジンを救うためにはアリバイの証明が必要だと知り、激しく動揺する。
【スンハ、ヘインの元へ】
スンハは、行ってはならないと思う反面、ヘインに会いたい気持ちが抑えきれず、自然に足がヘインの図書館へと向かってしまう。スンハの姿を見つけたヘインは、迷わずスンハに歩み寄る。
−私に会いに来たんでしょう?
−ただ、近くを通りかかったので…昨日は驚かせてごめんなさい。
臆病になっているスンハの心境を察したヘインは、スンハの手をすっと握り締め、明るく声をかけると、スンハの心はふと軽やかになる。その日、二人は明るい日差しの中、デート
に出かける。
スンハとヘインはどこにでもいる恋人同士のように、カフェで向かい合い、微笑み合い、外でブランコに揺られながら木漏れ日に照らされ、幸せなときを過ごす。スンハはヘインがそばにいる
ときは穏やかで優しい微笑を浮かべていた。帰り道、ヘインが子供の頃の話を始める。
−今思うと、私、子供の頃とても変わった子供でした。毎日1人閉じこもって本を読んだり、絵を描いたり、そうでなければ花や草とぶつぶつおしゃべり。
−花とおしゃべりを?
−そうですよ、私、超能力者ですから。嘘じゃないのに…。とにかく、他の子から見たらへんな子供だったと思います。中学校に入ったとき、隣の席の子に言われたんです。あなた宇宙人でしょう?
って。
その質問をした相手は今も親しくしているチュヒであること、そして自分は一人ぼっちだったとその時分かったことをスンハに打ち明けるヘインは、スンハと過ごした1日がとても楽しかったとスンハ
を見つめて優しく微笑む。
−僕も楽しかったよ....僕に何か話があるの?
−いいえ、気をつけて帰ってね。
結局スンハに何
ひとつ聞くことも言い出すこともできず、スンハの今までの人生を想い、ヘインは部屋に戻るとそれまで抑えていた涙が溢れ出す。
【警察署】
オスは、スンギの持ち物から赤い封筒に入ったナヒの写真が見つかったことをミンジェに知らされる。スンギが何故その写真を持っていたのか、何か知っていることはないかとソクジンを問い詰めるオス。隠していることは何だと
オスが大声を上げると、ソクジンも声を荒げて秘密などない、と反論する。
−全てお前のために起こったことだ...テフンのことさえなければ、こんなことは起こらなかった。あのときあんなことすらなければ、俺たちにこんなことは起こらなかったんだ…。
悲痛な表情で涙を浮かべるソクジンを見ながら、オスも同じように胸を痛めていた。
【クァンドゥ スンヒの療養所】
事実にたどり着いたクァンドゥは、証拠を握るはずのオ・スンヒの療養所を訪ねる。USBメモリーの中にあった真実を改めてスンヒに問いかけるが、スンヒは音楽が入っていただけだと毅然と答え、話が終わったのなら帰って欲しいと話す。スンヒの
力ない後姿を見つめながら、クァンドゥが切々と心情を打ち明ける。
−チョン・テソンは気の毒な少年でした。家は貧しく、兄の痛ましい死に泣き寝入りするしかなく、母親まで失いました。その少年がどれだけ苦しかったのか、本人以外にその気持ちは理解できないでしょう。しかしこの世の誰一人として、その少年に関心を払ったものはいなかった....私も含めて。私には世間に復讐をする選択をした少年を責める資格はありません。でも引き返せない道をすすむ彼を今からでも止めてあげたい。何か真実をご存知なら、あの子を止めてください。それをお願いに来ました。
スンヒはクァンドゥの言葉に涙を浮かべるが、スンハ(=テソン)を想うと何一つ言葉が出てはこなかった。
【ヒス 社長室】
ヒスは、会社の顧問弁護士となったスンハから、ソクジンのアリバイをすでに握っていることを知らされると、顔色を失い、保身のためにさらにソクジンを追い詰める計略を練る。このヒスの策略で、ソクジンのロッカーから青酸塩が見つかることになる。
【警察署】
一方、ソン・ジュンピョ記者事故の際の重要参考人であったファン・デピルが、オス
を信頼し、警察署に姿を見せると、それまでのいきさつを正直に告白する。ソン・ジュンピョを憎んでいたこと、3年前から手紙が来るようになり、理解者がいると慰められた
こと、そして恨みを晴らす機会がきたと感じたことなど、真実を全て話し始める。さらにソン記者の居場所を知らせる電話をかけてきた相手の特徴を聞いたオスの脳裏に、ヨンチョルの顔が浮かぶ。
徐々に追い詰められていくソクジンだったが、ナヒの名誉を守るため、彼女と会っていたことはオスに話すことはできない。
【スンハ、ヘインの家へ】
連絡の取れないヘインを心配したスンハは、心配のあまりヘインの家を訪ねる。寝ていたはずのヘインの姿が見えないと心配するヘインの母の言葉に、思い当たる場所があるスンハは、すぐに車を走らせる。教会に着き、祈りを捧げるヘインの
後姿を見つけたスンハ。
−ヘインさん…
ヘインが振り返る。
−どうしてここに?具合の悪い人が何も言わず外出してどうするんです?また前のように倒れているのかと…お母さんも心配していらっしゃいます。
スンハの言葉に答えず、すっと立ち上がったヘインは、じっとスンハの目を見つめる。
−なぜ分からなかったのかしら...私に傘をくれたオッパの後姿…弁護士さんに似ていること…どうして分からなかったのかしら?
ヘインが自分の本当の姿に気がついたことを知り、愕然とするスンハ。
−後姿があんなに寂しそうだったのに、とてもつらそうだったのに...後姿に真実があったのに、それに今になって気がつくなんて...誰よりもあなたが一番つらいのは分かります。どんなにつらく、苦しくても、自分を止められないあなたが一番つらいことは分かります。それでも出てこなきゃ...どんなに苦しくても
、トンネルの中から、暗闇の中から、もう出てきて。精一杯力いっぱい歩いて出るんです。
−何を言ってるんです?
スンハは必死で動揺を抑えながら知らないふりを通す。
−私が一緒にいます...私が傍にいます。私が…チョンテソンさんのそばにいるから…
スンハの手を握ろうとするヘインだが、スンハはすっと手を離すと、ヘインに背を向ける。
−私は誰も...誰も必要ありません。ヘインさんが見たのは何ひとつ証明できません。12年前もそうだったように...今もヘインさんは何一つ証明できはしないんだ。
痛々しいスンハの後姿が見ていられず、スンハを抱きしめるヘイン。
−お願い、やめて....やめて、お願い...
こぼれそうな涙を抑えるスンハ。
−自分を捨てないで...希望を捨てないで。
涙をこらえながらヘインの手を振りほどくスンハ。
−僕は希望なんてものは信じません。それに既に歩き始めた道は、二度と引き返したりはしない。
教会を後にしたスンハは、もう戻れない道を歩きすぎたことで、愛する女性と共に生きることも許されない自分の運命に、自らの犯した罪の重さに、嗚咽する。
【オス ヘインの家の前】
肩を落として家に戻ったヘインの前にオスが姿を見せる。ヘインの様子から、彼女が何か知ったことを悟ったオスは、ヘインがスンハに好意を抱いていることを
察し、彼がチョン・テソンであり、事件の背後にいる人物だという事実を伝えずに戻ろうとする。オスの優しさに、ヘインはオスが手にした事件現場のハンカチの残像を読むこと
をすすんで協力する。
ヘインから、このハンカチからは地獄の門もコインロッカーも見えないこと、スンギに対して誰かが話しかけていること、そして男女が車内で抱き合う写真が見えると知らされるオスだったが、絡まった糸が解けることはなかった。
【オス スンハを呼び出す】
−俺がどう協力すれば、ソクジンを助けられますか?
−カン刑事さんが明らかにしようとしている真実が、あなたの心臓を貫くことになるかもしれません。それでもかまいませんか?
−ソクジンを救えるなら、俺の心臓なんてどうでもいい。
−カン刑事さんは、すでに犯人に関する証拠を握っています。
−どういうことです?
−ナ・ソクジンさんの通話記録、それと写真。 いつかあなたは私に言いましたね...目に見えるものだけが全てじゃないと
。
−目に見える真実さえ見ようとしないのが人間だといったのがあなただ。
−そうでしたね。目で見えることと見えないこと…目に見える証拠から
始めてください。そして目に見えない真実は、そこから見え始めるでしょう。本当に気になりますね、あなたが真実を知ったとき、いったいどんな選択をするのか...。
【警察署 オスとソクジン】
オスは状況証拠とソクジンの話とヘインの読んだ残像から、頭の中を整理しているうち、とうとうソクジンとナヒの関係を悟る。怒りに満ちた表情でソクジンの元へ急ぐオス。
−そんなはずがない、お前と義姉さんがそんなはずがない!違うと言ってくれ、言え!早く!
−何を言ってるんだ...違うよ、オス、違う...
−俺の目を見ろ!俺の目を見ろって!
ソクジンの力ない瞳から全ての事情を悟ったオスは、思わず
ソクジンに拳を振り下ろそうとするが、怒りをこらえると、黙ってその場を出て行く。オスは自分を取り囲む全ての人たちが不幸になっていく現実に心を痛め、崩れ落ちそうになる。
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