【ウンソク ボック 海辺の撮影現場】
−何?「リマリオ」?う〜ん、それなら俺は...「オジンオ(イカ)」!次は「オ」で始まるものだ。簡単だろう?
海辺の魚売り場で撮影中のウンソクに背を向けたまま、ボックはウンソクの警護中も兄ミングに語りかけていた。ボックはミングの意識が戻るのを祈り、友人のミスクに頼み、ミングの耳に携帯電話を当ててもらい、しりとり遊びを続ける。
−「オ」!「オ」で始まるものはたくさんあるだろう?
そのとき、休憩中のウンソクに異変が起こる。大量のアワビがウンソク視界に入ったことで、脳裏に悪夢が蘇ったウンソクに、突然アレルギー症状が出てしまう。
ウンソクの様子がおかしいことに気づいたボックは、兄との会話をやめ、ウンソクの状態を見守る。部屋に戻ったボックは、カラオケで友人たちと歌い遊んでいたミスクに再び電話をかける。
−すぐに走れ...1,2...
−病院から出て2時間しか経ってないんだって...俺にも社会生活させてくれよ〜
−すぐにソウルに飛ぶぞ!
−兄ちゃんももう寝てるよ
−分かった。お前そこでじっとしてろ。びくともせずにな...お姉ちゃんたちと歌でも歌ってろ!一歩でも動いたら死ぬぞ!
−あ〜、行くよ、すぐに行くから!行って何する?俺もしりとりするか?
−うん...本を読んでやってくれ
−スポーツ新聞も読んだし、広告のチラシまで読んであげたよ。これ以上読むと頭がパンクしちゃうぞお前の兄ちゃん
−詩集、読んでやれ。カン・ミング...詩が好きだ
読んでも分からないミングに本を読み聞かせることでボックも自分も看護師に変人だと思われていると反論するミスクに、ボックは居場所を言い当て、すぐにジェット機で向かうとつぶやくと、ミスクは
すぐに病院へ向かうと返事をする。
−そんなに怖いのか?お前の兄ちゃんが眠ること...。タジョンがそう言ってたぞ。兄ちゃんが眠ったら、永遠に眠ってしまいそうで、ずっと話しかけて...できもしないしりとり遊びをして、新聞を読んでやって、何でもない奴が
おかしなことをしてるって、そうなのか?
ボックはミスクの問いかけに一瞬言葉を失った後、正直に「そうだ」と答える。ミスクとの電話が終わると、ボックはホテルの廊下からウンソクの気配を感じ、普通の状態ではないまま外出しようとするウンソクの後を静かに着いて行く。
【ウンソク 夜の海辺】
真っ暗な海辺を一人歩くウンソクは、この世を去った母親への恋しさを募らせたまま暗い海を見ながら涙を浮かべていた。
その頃、ホテルではウンソクを心配して駆けつけたジュンソンが、ウンソクの親友ミソンから、ウンソクがプサンで暮らしていた頃の悲しい過去について聞くことになる。二人はタクシーに乗り、かつてウンソクが暮らしていた家へと向かう。
−ウンソクのお母さんがどうして亡くなったのかお話聞かれたことありますか?
−ウンソクさんのお母さん?先日ウンソクさんの家でお会いした方では?
−ああ、あの方は新しいお母さんで、ウンソクを産んでくださった実のお母さんのことです...
夜の海辺で座り込むウンソクを、ボックはじっと見守り続けていた。言葉に出せない大きな痛みを抱え、しゃっくりの止まらないウンソクを黙ったまま見つめていたボックは、立ち上がり、よろよろと歩き始めるウンソクの腕を掴んで抱き寄せると、突然ウンソクにくちづける。
突然のことに驚いたウンソクは、何もいえないまま目を丸くしてボックを見つめる。
その場へウンソクを探しにきたミソンとジュンソンが姿を見せると、ボックはウンソクをじっと見つめた後、彼女からスッと距離をとる。
−もう、ここに来るならそう行ってくれなくちゃ、心配したじゃない!
ジュンソンもいること気づいたボックは、ジュンソンに会釈する。
−ミスターカン、いつも苦労をかけるね...
−車は乗ってこられましたか?
−いや、タクシーに乗ってきたんだ
−では車で待機しています
ボックの突然のキスに動揺したままのウンソクに、ジュンソンが語りかける。
−どうして人を心配させるようなことを?体調も良くなかったって?
言葉のでないウンソクに、自分の上着を脱いで着せてあげたジュンソンは風邪をひくからもう行きましょうと、ウンソクを
気遣い、車へ乗るよう促す。後部座席にジュンソンと並んで座ったウンソクは、移動中もボックの表情を伺い続ける。そんなウンソクの心情に全く気づかないジュンソン。
−アワビのせいでずいぶん大変だったんだってね...もう大丈夫そうだけれど...
ウンソクのアレルギー症状が治まったことに気づいたミソンが声をあげる。
−あ!本当!そういえばしゃっくり止まってるじゃない!止まったのよね?わ〜、どうしたのよ!ウンソクのしゃっくりは一度始まると3日は続くのに。薬を飲んでもダメ、注射を打ってもダメ、撮影もできずにご飯も食べられず眠れず、この前なんて入院までしたのに。あ〜、どうしたのかしら。不思議ね〜。何をどうしたの?
ウンソクは唇に手を伸ばし、ボックとのキスの後にアレルギー症状が消えたことに気づきながらも、ミソンに一言も返事をすることができないまま、バックミラー越しにボックの表情を伺い、心情を探ろうとする。
〜中間タイトル〜
翌朝、ジョギングをしていたジュンソンは、アワビの入れられた水槽が目に付き、同行していたキム秘書に、近所にあるアワビを買い取ってしまってほしいと頼み、ウンソクを気遣い仕事へ戻っていく。
一方、ウンソクは前夜の出来事で頭がいっぱいになってしまい、撮影に集中できずにいた。姿の見えないボックを探し求めるウンソクの
変化をミソンが敏感に察する。
−誰か探してるの?誰?
−うん?
−誰か探してるって言ったじゃない
−さ、さがしてないわよ...こんなところで誰を探すの?さがしてないわ、さがしてないない!
【ボック タジョンの元へ】
その頃、ボックはタジョンの様子がおかしいとの連絡に、家に急いで戻っていた。タジョンが火傷の跡の手術費用としてためていた1000万ウォンを奪われたとの話を聞いて、部屋で荷物をまとめているタジョンに声をかけるボック。
−何してる?
−荷物をまとめてる
−引っ越すのか?
−うん...
−どこへ?
−あんたの知らない場所...
−俺の知らないどこだ?
−それを教えたら知らない場所じゃないよ。知ってる場所になる
−俺に知らない場所にどうして引っ越す?
タジョンに近づきタジョンの腕を握るボック。
−離してやるよ...今この瞬間にパッと離してやるから、出て行きな...
−どこに行き場がある?俺の...。このごろ家賃もどれだけ高いか...
−あんたが愛する女のところへ行きなよ...あんたに似合う女のところへ行って!
−俺に似合う女は...ここにいるじゃないか、お前が
−私は違うわ...うまくいくと思ったけれど、もう水の泡よ...
−誰の勝手で?お前の勝手で?すねるなよ...うん?荷物をほどけ、タジョン姉ちゃん
−終わりなの!もうだめなの!そのお金で手術して綺麗になって...ボック、あんたに恥ずかしくない人間ハン・ダジョン、本当に新しい人間として生まれ変わりたかったのに...もう終わりなのよ
涙を流し、声を上げて泣くタジョンの頬をつねるボック。
−嘘つくな...お前がその金で手術して綺麗になったら、俺みたいな奴の隣にいるか?その日にすぐさまリッチな奴と出会って逃げるつもりだろ...
−違うよ!そんなことない!あたしにはボック、あんたしかいないのよ...
タジョンをなだめたボックは“お前のために金を稼いでくる”と伝えると、ミスクにタジョンを託すと立ち上がり部屋を出ようとする。
−あんた!あたしのこと恥ずかしいんでしょう?恥ずかしくて、どこにいくにも連れて行ってくれないし、スヨンとかいう女とはどこでも一緒に出かけてバスに
乗ってデートまでしておいて...あたしなんて、あたしみたいなのだって、あんたとバスに一緒に乗れたらどんなに嬉しいか...
【ボックとタジョン デート】
タジョンを連れてデートに出かけたボックは、タジョンに笑顔が戻ると安心したように微笑みを浮かべる。タジョンと一緒にすごしながらも、その場所にかつて一緒に来たスヨンとの幸せな記憶が浮かび、さらにボックの瞳にしきりに兄ミングとウンソクの姿が見えてしまう。ミングとウンソクが心から幸せな時間をともに過ごしていたことを、知らず知らずのうちに思い描いてしまうボックは、ウンソクは兄が心から愛する人だったことを内心気づき始めていた。
【ウンソクとジュンソン 撮影終了後】
ウンソクはミングに対する失望から、胸を痛めた状態のままなんとか撮影を終えると、一人焼酎を飲みに出かける。ジュンソンは仕事を終えるとすぐにウンソクの元へ駆けつけ、ウンソクがいる店を貸し切りにすると、昼間から焼酎を飲むウンソクの元へ歩み寄る。
−昼間から何をそんなに飲んでるの?
−酒を飲むのに昼も夜もあるの?
ウンソクの向かいの席に座るジュンソン。
−いい酒を飲みなよ、それなら...僕の部屋にブルコーニュ産のワインがあるから、持ってくるようにいいましょうか?
−もう...ワインがお酒ですか?葡萄ジュースでしょ...室長も一杯いかが?
−焼酎は飲みません
−どうして?
−ただ...口に合わないみたいだから
−ははは...高貴な体なのね?そう、それなら室長は水でも飲んで。コーラにする?サイダー?牛乳?ココア?ヨーグルト?葡萄ジュース?
−その人...焼酎は飲めるの?
−誰?
−あの人、カン・ミングとか何とか...僕と比べられないほどの人
ミングの名前に表情を曇らせるウンソクは、ジュンソンが焼酎を大量にコップに注ぎ、一気に飲み干す様子に唖然とし、
急いで水を注いだコップを手渡す。
−無理はいけませんよ。あなたは全然カッコよくないわ。すご〜くダサい
ウンソクの言葉にプライドが傷ついたジュンソンだったが、表情も変えず、飲みなれない焼酎をもう1本頼んでしまう。
【ボックとタジョンのデート】
自分のために火傷を負い、苦労を背負わせてしまったタジョンに対し、ボックは常に責任感を抱き続けていたが、タジョンがどれだけ自分を愛しているかを知りながらも彼女の思いに応えることができない。彼女が求めているのを察したボックが、タジョンに
キスしようとした瞬間、ウンソクと唇を重ねたときの感覚が蘇り、やめてしまう。
−次に...カッコよく決めよう...俺今、汚れてる...
【ジュンソンとウンソク 店からホテルへ】
酔いつぶれていたジュンソンがようやく目を覚ますと、今度はウンソクが酔いつぶれて眠ってしまっていた。テーブルに伏せたままミングを呼び続けるウンソクに苛立ちを感じるジュンソン。
−君は自分が誰の恋人なのか、まだ混乱してるようだね...今夜確実に俺の女になれ...
酒に酔い、ほとんど気を失った状態のウンソクを連れて店から出てきたジュンソンを、持ち場に戻ったボックが車に案内する。
−ここからは...チャ・ウンソクさんのホテルに近いので一旦そちらからお送りいたします
−その必要はありません。私の宿泊先のホテルから行きましょう
ボックはジュンソンの言葉に咄嗟にジュンソンが何をしようとしているのかを察するが、言われたとおりにジュンソンの宿泊先のホテル前に車をつける。
−降りなくていいよ。僕らが降りたらすぐに出発して...降りるよ、ウンソク!
目を覚ましたウンソクは、泥酔状態のままジュンソンが誰かも分からない様子で問いかける。
−あんた誰?キム・ジュンソン?キム・ジュンソンが何?誰よ、あんた...
−酔ったからって自分の婚約者も分からないのか?さあ降りるんだ
−もう、ここどこなのよ!
−ホテルだ...
−ホテル?何ホテル?家に帰るのよ、家に...ホテルに来てどうするのよ...
−ここはプサンだ。君は映画の撮影をしにきたんだ、覚えてる?
−ん?知らないわよ...家に帰るの!父さんの家にすぐに帰るの!家に連れてってよ〜
二人のやりとりを見守りながら運転席に座っていたボックは、また眠ってしまったウンソクを抱き上げてホテルに入っていくジュンソンの態度に怒りを感じていた。しばらく車の中にいたボックだったが、こらえることができなくなり、車を降りるとジュンソンの宿泊する部屋へと急ぐ。
ジュンソンがベッドの上に寝かせたウンソクの頬に手を伸ばした瞬間、ボックが部屋を訪ねてくる。ドアを開けるとカン・ボックがいることに驚くジュンソン。
―...チャ・ウンソクさん...ください
―...うん?
何が起こったのかわからないジュンソンが呆然としたすきに、部屋に勝手に入りこむと、ウンソクの姿を探すボック。
―チャ・ウンソクさん!
ようやく状況の見えてきたジュンソンがボックを引き止める。
―何のつもりだ?
―チャ・ウンソクさんをお迎えにきました
―何だって?
―私はチャ・ウンソクさんの警護を任された人間です。チャ・ウンソクさんの身辺を守り、保護する義務があります。
―それで?
―チャ・ウンソクさんが宿泊する施設までお連れいたします。チャ・ウンソクさん!
大きな声でウンソクに呼びかけながら、ウンソクの眠る部屋へ向かうボックを慌てて引き止めるジュンソン。
―君は僕が誰か分かってるのか?
―分かります
―僕はウンソクの夫になる人間だ
―存じ上げております
―分かっていて、分かっていながらこんな失礼を?
―これはチャ・ウンソクさんの意思ではないのでは?チャ・ウンソクさんは、家に戻ると思っています
―そろそろ帰れ...僕にも我慢の限界というものがある
―ください、チャ・ウンソクさん...
ウンソクの元へ向かおうとするボックを引き止め、壁に押し付けるジュンソン。
―お前、今この瞬間に解雇だ...
―はい...解雇は室長の決定したことですが、今日は私の義務を遂行します。チャ・ウンソクさんをください
―...何をくれって?
―私に殴られるかもしれませんよ
―生意気な奴め!
ジュンソンに殴られても全く動じず、「チャ・ウンソクさんをください」と続けるボックに、ジュンソンはもう一度拳を振り下ろす。そこへ驚いた様子のジュンソンの兄が入ってくると、ジュンソンは我に返ったようにボックの襟首を掴んでいた手を離す。
―お送りいたします、それでは...
ボックはウンソクを軽々と抱き上げると、眠ったままの彼女を車まで運び、ウンソクの宿泊するホテルに向かう。ウンソクに対して抱く感情に、このときはっきりと気づいたボックは、ウンソクを部屋まで送っていくと、兄を想い、彼がよく歌ってくれた雲の歌を口ずさむ。復讐心は、いつしかミングがしてあげられないことを、彼女にしてあげたいという
気持ちに変わっていた。
翌朝海辺に出たジュンソンは、波打ち際に座るボックの姿を見つけて声をかける。
―朝食は食べましたか?
―...
返事のないボックに温かい飲み物を手渡すジュンソン。
―ありがとう...大失敗をしないようにしてくれて。いつか食事をご馳走するよ。やっぱり焼酎は僕の口には合わないな...痛かったでしょう?申し訳なかった、殴ったこと...。治療費請求していいから
一方、前夜の記憶がほとんどない状態のウンソクだったが、深夜に聴こえた雲の歌が気になって仕方がなかった。同じ部屋に寝ていたミソンに聞いてみると、隣の部屋は警護員のボックの部屋だと知るウンソク。
【ボック 警察署で騒ぐタジョンの元へ】
大切なお金を持ち逃げした女性を探してくれと警察で騒ぎ立てるタジョンの元に、ボックが姿を見せ、タジョンを抱き上げて家に戻ると、タジョンを部屋に連れて行く。タジョンが気にしてスカーフを巻き隠している火傷の跡をじっと見つめるボックは、火傷の跡を隠そうと抑えるタジョンの手を首から離す。
―可愛いよ。可愛いよ、俺には...俺にだけ可愛いならいいだろう?逃げたおばさんを探すのはやめにしろ...
自分を卑下する言葉を続けるタジョンを前に、ボックは彼女の火傷の跡に顔を寄せ口づける。
【ウンソク ボックの格闘技道場へ】
ボックとの突然のキスが頭から離れないウンソクは、彼に会って話したい気持ちが抑えられず、ボックのいる格闘技道場へ足を運ぶ。練習中のボックは、ウンソクに気づかないふりをしたまま運動を続ける。
―すみません、すみません...ちょっと!
運動をやめたボックは黙ってウンソクを見つめる。
―ええと...ここに来れば会えるかと、そう思って...。だから、そちらと、私との二人で少し話をしたほうがいいと思うの。それでここまで来たんです
―何の話です?
―え?ええと...だから...私が何に見える?
ウンソクの言葉に答えずまた運動を始めるボック。
―ちょっと...私がそんなに軽く見えるの?
―軽くみえません
着替えに向かうボックの後を追うウンソク。
―ちょっと!私に話すことはないの?本当に?
ボックの気持ちが知りたいウンソクは、格闘技道場を出ると、階段でボックを待ち続ける。着替えの終わったボックの行く手を阻むように手を広げたウンソクは、もう一度
、私に話はないのかと質問する。
―話はありません...
相変わらず淡々と応えるボックに、ウンソクは苛立ったように続ける。
―プサンで、ですよ...海辺で...。ありがとうというべきなのか、頬でも一度殴ってやるべきなのか、ひっかかって...本当に話はないの?
―はい...
ウンソクに背を向けて外へ向かうボックに、ウンソクはますます興味が沸き、自然に彼の後をついて歩いてしまう。
★監督版収録の削除シーンより★
ボックは道端で男性が自分の恋人に手を上げる様子を目にすると、迷わず男を止めに入り、なぜ女に手を上げるのかと男性に殴りかかるが、一緒にいた女性に止められる。そんなボックの行動をウンソクはじっと見
守りながら後を追いかける。
★削除シーンここまで★
【バス停 ウンソクとボック】
バス停でベンチに腰かけ、バスを待つボックに、再び近寄るウンソク。
―他人のことに元々そうやって関わるがじょうずなの?そちらは全ての意思表現を体ひとつでするのね?だから考えるより体が先に動いて、あのときのプサンのことも...
ウンソクの言葉に耳を傾けながら、棒つきキャンディーを口に含んだまま返事もせずに立ち上がるボックは、ウンソクに一歩一歩近づいていく。
―あの時のプサンのことって、キスのことですか?
間近にあるボックの顔を直視できないウンソク。
―ど、どうしてあんなことしたの?
さらにウンソクに顔を近づけるボック。
―...特に意味はありませんでした。忘れてください...
ボックがバスに乗って行ってしまうと、ウンソクは大きなため息をつく。
【ミングの病院 ボック】
兄の病室に来ていたボックは、ふと手にしたミングの携帯電話を開き、待ち受け画面で微笑むウンソクとミングの笑顔を見つめたあと、何かを確かめるかのように、突然ウンソクの電話番号を押す。ミングからの電話に驚いたウンソクは、恐る恐る電話を受ける。
―どなたですか?間違い電話じゃありませんか?
ウンソクの声にじっと耳を傾けるボック。
―...それじゃ電話切りますね...またお金が必要なの?どうして?この前受け取ったお金じゃ、あきらめきれない?今私お金がないの。婚約者にでも借りるわ。そんなお金でも受け取れるでしょう?大丈夫よね、カン・ミングさんなら...でしょう?
タジョンとミスクがウンソクに対してしたことを知らないボックは、一瞬受け入れかけていたウンソクの存在に怒りがこみ上げる。兄のつけていた日記帳を1ページ1ページ読みながら、ミングがどれだけウンソクと彼女の家族を大切に思っていたかを痛感
し、兄ミングがウンソクとの別れでどれほど悔しい思いをしたのかを改めて胸に刻む。
【ウンソク 射的場】
ウンソクはミングの裏切りに胸を痛めながらも、そばにいるボックにその痛みが癒されはじめているのを感じていた。射的場で見つけたボクシンググローブをつけたぬいぐるみを見つけたウンソクは、店の主人にそのぬいぐるみだけひとつくださいと申し出る。
―それひとつだけ下さい。そのレオンみたいなのあるでしょう?
―レオン?あ〜ペルーね
―ふふふ。あなた名前をペルーって言うのね?本当に似てるわ。色が黒くて不細工なところ...
―誰に似てるの?
―いるんです。殺し屋なのか警護員なのかわからない人...
ウンソクの心の中にはボックへの情が芽生え始めていた。
【ウンソク 写真撮影】
建物の高い場所に座った状態で撮影していたウンソクは、警護中のボックの姿に気を取られ、体をすべらせ転落しそうになってしまう。ウンソクが危険にさらされる姿を目にしたボックは迷わず走り出し、ウンソクの腕をしっかりと掴むが...