【ウンチェ ミンジュのマンションで】
気分が沈んだままのユンのため、ミンジュのマンションを訪ねたウンチェは、エレベーターの中でユン以外の男性とキスするミンジュの姿を目にしてしまう。ウンチェの声に驚いたムヒョクは、ミンジュがエレベーターから降りると、顔をそむけたままじっと扉が閉まるのを待つ。相手の男性がムヒョクであることに気付かないままミンジュを説得するウンチェ。ユンのところへ行こうと強引にミンジュを連れ出すウンチェは、ユンの家までようやくたどり着く。
−ユン、ミンジュが来たわ。
抱きしめあう二人を背に、ウンチェが家を後にすると、ミンジュはユンにとって本当に必要なのはウンチェだと思ったからユンを避けたと正直な気持ちを伝える。
−お前まで何だよ?他の人ならともかく、ウンチェだって?話にもならない...
−ウンチェ…あなたを好きなのよ、ユン。あなたを愛してるの、ウンチェは…
−何?
【ユンの家の前】
ユンのために自分の気持ちを必死でこらえるウンチェが家から出てくると、ウンチェを待っていたムヒョクが声をかける。
−トルティンア!俺と遊ぼう。
−うん、遊ぼう…
【ウンチェとムヒョク 初めてのデート】
ムヒョクと街へ出かけたウンチェは、売店でお菓子を買う間に外で待っていたムヒョクが老人と言い争い始めたことに気がつく。
−俺が何したんだ?分からないから分からないって言ってんだ!
老人が手にしていた杖でムヒョクを叩き始めると、苛立ったムヒョクは老人の手を掴み大きな声をあげて老人の手から杖を奪い、その杖を折ろうとしてますます相手を怒らせてしまう。様子を見ていたウンチェは怒った表情でムヒョクに向かっていく。
−おじさん!杖を渡しなさい!早く杖を出して!
ムヒョクから杖を受け取ったウンチェは、迷わずムヒョクを杖で打ち始める。痛がるムヒョクをよそに、老人に謝罪するウンチェ。
−申し訳ありません。お許しください。申し訳ありません…
ウンチェの誠意のこもった謝罪を受け入れた老人は、その場を後にする。
−ああ、俺は頭を叩かれるとダメなのに…あのじいさんめ!
信号が青に変るのを待ちながら、ウンチェはスナックを口に運びながらムヒョクをたしなめる。
−こんな日がくると思ったわ。目上の人にぞんざいな言葉遣いをした上、失礼な態度を取って…いつか1度はこうなると思ってた。
ムヒョクは悔しそうにウンチェの手からスナックを掴み、ひとつふたつとスナックに手を伸ばす。
−やめて正解よ、おじさん。私があのおじいさんなら、おじさんは破滅よ。情けもかけないわ。ああ、どこからどう教えたらいいのかな、このおじさん。
【地下鉄内】
目上の人への丁寧な表現をムヒョクに教えるウンチェだったが、ムヒョクの無関心な様子に"私おじさんと遊ばないわよ!"と席から立ち上がってしまう。そんなウンチェの手を掴むムヒョク。
−ありがとうございます...
−ごめんなさい
−ごめんなさい!
−良く分かりません
−良く分かりません!
−どちらへ行かれますか?
−どちらへ行かれますか…
−とても美味しいです
−とても美味しいです
−分からなければ、無条件に語尾に「ヨ(です)」をつけてみて。
−「ヨ(です)」?
うなずくウンチェは、一度やってみようと次々例題を出す。
−おやすみ
−おやすみ…なさい
−これなに?
−これなに…です?
−う〜ん…それなら違う言葉。「モッチダ(カッコイイ)」は?
−「モッチダ…ヨ(カッコイイ…です)」?
−そうじゃなくて、そんなときは「モッチョヨ」よ。
二人は何気ないやりとりをしながら、心の距離を近づけ合う。
−言葉を習うなら正しく習うべきね。誰がおじさんに韓国語教えたの?
−奥さん…奥さんが、です。
−おじさん結婚してたの?
−違…います。
−結婚もして無いのにどうして奥さん?奥さんどこにいるの今。
−結婚した…んです。ジェイソンと。
−どういう意味、それ…
−俺もう「ヨ(です)」はやめた!おしまい!
−ということは、おじさんの奥さんがおじさんを裏切って他の人と結婚したの?...可哀想…
地下鉄を降り、地上への階段を上ろうとするムヒョクの目に、重い荷物を持つ老女の姿が映る。ムヒョクは颯爽と女性を手助けするためにウンチェより先に階段を上る。
−1つ教えると10覚えるのね…賢いわ、おじさん…
ムヒョクの後姿を見て満足そうな笑顔を浮かべるウンチェに、ユンからの連絡が入る。
−俺が男にみえるのか?俺がどうして?お前どうかしてるぞ…
−何の話なの、ユン?
−1分以内にすぐ走って来い!
−ユン、私今遠くに来てるのよ…
−それなら30分以内に走って来い!
ユンの様子がいつもと違うため、ウンチェはムヒョクと一緒にいたことも忘れてユンの元へと走り出す。その頃、老人の家まで荷物を運んだムヒョクは、ウンチェの待つ場所に向かって走っていた。駅の構内でウンチェに贈るための花を買ったムヒョクは、地下鉄構内でウンチェの姿を必死探すが、彼女はどこにも見つからなかった。
−トルティンア!トルティンア!
【ユンの家の庭】
ユンの家に駆けつけたウンチェはユンの思いがけない愛の告白に胸をときめかせるが、瞬時にそれがユンの嘘だと分かる。
−お前こんなのダメだよ。ダメだろう…お前俺のことを好きだって?愛してるって?
−誰がそんなことを?
−ミンジュが…だめだウンチェ…家族じゃないか!お前と俺とは兄と妹だよ。親戚みたいなものだよ、分かるよな?しっかりしろ、ソン・ウンチェ!お前が俺にぞっこんでも、俺は何も感じないよ。だからお前と俺は男と女にはなりえない間柄。分かった?少し待て、お前にふさわしいボーイフレンドを見つけてやるからな。
その頃、ウンチェの姿が見つからず、肩を落として歩くムヒョクの元にユンからの電話が入る。ユンの声の向こうにウンチェの声が聞こえ、ふっと表情を曇らせるムヒョク。
−私好きな人がいるのよ、ユン。結婚の約束した人がいるの。あなたに紹介しようと思っていたところだったの。ミンジュと4人で、いつかご飯でも一緒に食べましょう。
−嘘だろう?
−嘘じゃないよ。
−何してる奴だ?
−ただのサラリーマンよ。カンナムにアパートも持ってるお金持ち。すごく優しくていい男で素敵なの。話そうと思っていたけれど、ごめんね、錯覚させて…
ウンチェの言葉を聞いたムヒョクは、ようやく心を開きかけたウンチェもまた自分から去るのだと感じ、ショックのあまり手にしていた花を落としてしまう。
翌日、ムヒョクのことを思い出したウンチェは、ムヒョクの携帯に何度も連絡を取るがなかなか通じない。ウンチェは妹にムヒョクへの想いを話し始める。
−あのおじさんを見てると、まるで私を見ているようなの…あわてんぼうで、不器用で、自分の感情1つもまともに表現できなくて…
ウンチェからの不在着信に気がついたムヒョクの口元にうっすらと微笑みが浮かんだ瞬間、ユンからの電話が入る。ユンがミンジュにプロポーズするための準備をムヒョクに依頼すると、ムヒョクは車のトランクに風船を入れ、プロポーズのを準備してミンジュのマンションの前へ向かう。ユンを残し、一人車を降りたムヒョクは、運転席で待つユンの姿を冷ややかな表情で一瞥した後、ムヒョクは足早にその場を去ると、変装してミンジュの前に現れる。ミンジュがユンに会うために出かけたことを知るムヒョクは、嫌がるミンジュの腕を掴み、強引に車に乗せ、ユンの車の脇を走り抜けていく。ホテルの前でミンジュをおろしたムヒョクは、誤解してムヒョクをぶとうとするミンジュの手を掴み、その手にプレゼントを残してホテルから去っていく。包み紙を開けたミンジュは、ムヒョクから贈られたスカーフを手に、彼が自分を母親の元へ送り届けてくれたことを悟る。
【ウンチェ ムヒョクの元へ】
妹との会話から、ふとアフリカへ行くことを思い立ったウンチェは荷物を片手に意を決して家を出て行く。ウンチェと会うことができずにすれ違ってしまったムヒョクは、ウンチェの携帯電話を受けた姉から事情を聞いて急いで走り出すが、ウンチェに追いつくことはできず、寂しそうに肩を落として家への道をトボトボと歩いていた。ムヒョクが路地を曲がると、そこにはウンチェがいた。
−トルティンア!
−おじさん…室長に聞いておじさんの住所を調べたの。別れの挨拶をしにきました。ちょっと遠くまで行くことにしたの。行くといつ戻ってこられるかわからなくて、挨拶しに来たわ。あ!(ムヒョクから借りたままのコートを手渡すウンチェ)これ、早く返そうと思っていたのに、ありがとう、おじさん。私おじさんを忘れないわ。おじさんは早く私を忘れてね。本当に素敵な人と出会ってね。
何も言えずに黙ってウンチェの言葉を聞いていたムヒョクは、ペコリと頭を下げて行こうとするウンチェの腕を掴む。
−キムチを漬けてから行け...姉さんは海苔巻きを作るのは上手いのに、キムチを漬けられない。キムチを漬けてから行けよ
−私もキムチ漬けられないのに…すみません…
がっかりとして俯くムヒョクだったが、ウンチェが振り返り"そうだ。カクテキなら漬けられますよ…"と声をかけると、パッと光が差したかのように表情を明るくする。ウンチェとスーパーマーケットに向かったムヒョクは、大根を選ぶウンチェを嬉しそうに見つめる。
−オーストラリアに養子に出されたの?それでお姉さんを探しにきたの?
−うん...
−ご両親は?ご両親は見つからないの?
−…
−ひどいわ…子供をこんなふうに一人だけでなく二人も、どうして捨てるのかしら。
−事情があったんだろ…ミルクも買えないほど貧乏で、お前達だけでも金持ちの家に行っていい暮らしをしろって。そんなとこだろう…
無邪気にウンチェに並んで買い物をしながら試食品を食べてむせるムヒョクを見て、ウンチェは慌てて売り場の牛乳を取りに行く。背中をぽんぽんと叩いて牛乳を手渡すウンチェに、じっと固まったままのムヒョクは彼女にうながされるまま牛乳を飲む。
−それでも偉いわね、おじさん…韓国語も習ってキムチも好きで、う〜ん、けなげだわ、おじさん!
その夜ウンチェと共にカクテキを漬けるムヒョクは、ウンチェと過ごす時間に心から安らぎを感じ、穏やかな微笑みを浮かべ続ける。
【ユンの家】
その頃、突然姿を消したウンチェがどこにいるのか気になって仕方が無いユンは、ウンチェの母にまとわりついていた。ウンチェの母の前で動揺するユンに、とうとうウンチェの母の忍耐袋の尾が切れてしまいウンチェはユンの負担にならないよう、ミンジュと幸せになれるようにと妹に話してアフリカに行くことになったのだと興奮しながら怒りをぶつけていた。
【ムヒョクの家】
具合が悪くなったムヒョクがトイレにいる間、ウンチェは帰り支度をすませていた。
−おじさんがトイレから出てくる前に行かなくちゃ。さようなら、おじさん…
荷物を手にムヒョクの家を出ようとすると、ムヒョクの姉のソギョンと息子カルチが帰宅する。カルチが泣いているソギョンをなぐさめている様子をじっと見守るウンチェ。
−大丈夫だよ
!僕もママみたいに怖い犬に吠えられてもらしちゃったもん。大丈夫!
ウンチェに気付いたカルチは、どなたですか、と問いかける。
−うん、ここに住んでいるおじさんの知り合いなのよ
トイレから出たムヒョクはウンチェが出て行こうとしていたことを察し、具合が悪いことも手伝ってより暗い表情になる。さらに姉が泣いていることに気づき、カルチに問いかける。
−母さんはまたどうして泣いてる?
−ズボンをぬらしちゃったの。怖い犬が吠えて怖くて…
−カルチ!
また泣き出してしまったソギョンをカルチがなぐさめていると、ムヒョクは不機嫌な声を上げる。
−良くやった…良くやった!姉さんカッコイイぞ!何を泣いている!静かにしろ!ユン・ソギョン!
ソギョンに向かって大声を張り上げるムヒョクの背中を叩きつけるウンチェ。
−このおじさん、いけない子ね!お姉さんになんて言い方するのよ!
あんたが静かにしなさいよ、あんたが!あんなに教えたのにまだ分からないの?だめね、本当に!
ソギョンに近づき、ソギョンの涙を拭くウンチェ。
−私もね、ズボンぬらしちゃったの。おとといもしちゃったの。ズボンもお布団もよ。姉さんは布団はぬらした?
−私は布団にしてないもん!
−それなら私よりいいわ!うわさにならないだけよ。ズボンをぬらしちゃう人なんてたくさんいるの。新聞にも出たのに、知らなかった?私が見てあげるから早く洗いましょう。お姉さんと私と一緒に洗いましょうか?さあ、行こうね...
ソギョンを綺麗に洗ってあげたウンチェは、彼女の髪をとかしながら、ソギョンが一度もローションをつけたことがないことを知り、そっとソギョンの頬に手を伸ばす。ウンチェはソギョンが寝入った後、自分のカバンからローションを取り出し、彼女の頬に優しく塗ってあげると、荷物を持って部屋を出る。ウンチェが縁側で横になって眠るムヒョクにコートをかけ、背を向けた瞬間、ムヒョクが起き上がりウンチェを抱きしめる。
−行くな…行くな、ウンチェ…つらい思いはさせないから…行くな…
初めてウンチェの名を呼び、彼女を強く抱きしめるムヒョクに、ウンチェは息が止まりそうになるほど、ムヒョクへの情がこみ上げる。 その夜、ソギョンとカルチの隣で眠るウンチェを、ムヒョクは長い間優しい眼差しで見つめていた。
翌日、ムヒョクはユンを連れて出かけた先で、ウンチェがソギョンとカルチと共に海苔巻きを売る姿を見かけるが、ウンチェのことはユンに黙ったまま、幸せそうな微笑みを浮かべる。
【カラオケボックス】
その夜、ソギョンらとカラオケボックスに行ったウンチェがユンに決別するつもりでユンの持ち歌を歌い始めると、カルチから連絡を受けたムヒョクがやってくる。ムヒョクは黙ったまま、ウンチェを悲しそうな瞳でじっと見つめ続ける。愛国歌を歌い終えたムヒョクが部屋を出て外に行くと、ウンチェが後を追っていく。
−おじさん、大丈夫?
−ウンチェ…頼みがひとつある。アフリカに行かないで、姉さんとカルチ…お前が面倒を見てやってくれ。後で、俺がいなくなったら…
−どこかへ行くの?おじさん?オーストラリアへ帰るの?ここで姉さんと家族と暮らしたらいいじゃない。オーストラリアには誰もいないって…奥さんも結婚して…
−寒いな、戻ろう。
ウンチェから目をそむけて歩き出すムヒョクを引き止めるウンチェ。
−おじさんを一度抱きしめてあげたいの…あのとき抱きしめてあげられなかったから、今抱きしめてあげる。そうしてもいい?
じっと立ちつくしたままのムヒョクを、温かく抱きしめるウンチェ。
−温かい?もう寂しくないでしょう?
ムヒョクを抱きしめることで幸せを感じるウンチェと、ウンチェの温かい胸に包まれ、穏やかな愛を感じたムヒョクは、自然と顔を寄せ合い、唇を重ねる。