ウニョクの妹ソンヒから半島ホテルにウニョクが潜伏していると聞かされたソッキョンは、“恩を忘れてはならない”とソッキョンを止めるチョンジャを振り払い、明け方ウニョクに会いに半島ホテルへ向かう。
一方トンウはウニョクが北朝鮮へ越境する決意を固めたことで、その手助けをするためヘギョンの叔父であるチョ・ホンドゥに助けを求める。アメリカ軍の軍納トラックで議政府までウニョクを運んで欲しいというトンウの言葉に躊躇するホンドゥだったが、必ず責任を取るからと言うトンウの言葉を信じ、これはチェ教授のためではなく、補佐官への恩返しだと話し、ウニョクの逃亡の手助けをすることになる。
ウニョクの身の危険を感じたチョンジャは急いでホテルのヘギョンに連絡を取り、知らせを受けたヘギョンは受話器を置いてウニョクの隠れる部屋へと駆け出すが、すでにソッキョンはウニョクの部屋をノックしていた。警備員を呼ぶというソッキョンにウニョクはドアを開く。
「あなたの選んだ道はこの程度だったの?
政治も人も...あなたはいつもバカみたいな選択をするのね」
レニングラードでウニョクに心を奪われた自分はもういない、昔の情などこれっぽっちも残っていないとまくしたてるソッキョンはトンウをこれ以上危険な目にあわせることは出来ないとウニョクに背を向ける。トンウやヘギョンを傷つけないために、自分が半島ホテルを出るまでは待って欲しいとソッキョンに訴えるウニョクだったが、ソッキョンは自分がこの部屋を出た後どんな行動にでるかは自分でも分からない、とウニョクの部屋を後にする。そのとき、急いでウニョクのいる部屋へとやってきたヘギョンがソッキョンと出会う。
ソッキョンの表情から、ウニョクが危険に晒されることを恐れたヘギョンは、ソッキョンの手を強引に掴み、ホテルの非常階段へと連れて行くと“今の私に出来ないことはありません”と備品倉庫にソッキョンを閉じ込めてしまう。“ここに居てください”とソッキョンの両手を縄で縛り、倉庫を跡にしようとするヘギョン。
「キム・ヘギョン!私がここから出たらお前は死んだも同然よ」
「お嬢様の好きなようにして下さい。
死のうが、監獄に放り込まれようが構いません!
でもオラボニは駄目です...オラボニさえ無事ならば...私はどうだって構いません」
「いっそのことチェ・ウニョクと一緒に北朝鮮へ行ってしまえ!トンウオラボニに取り入っていないで行ってしまいなさい!」
ソッキョンのいる倉庫に施錠すると、ヘギョンはトンウの元へ急ぐ。そして、トンウとホンドゥの手助けにより、ウニョクはついに半島ホテルを出ることになる。北朝鮮へ渡り、信念を貫こうとするウニョクをトンウは最後には一言も咎めることなく、そっと助けになるよう資金を渡す。そのとき、部屋のドアをウニョクの妹ウニがノックする。ソッキョンが出入りするのを目にしたウニがウニョクを心配してやってきたのだった。
「お兄さん、ごめんなさい...ソッキョンお嬢様に知れたのは私のせいです。お母さんお父さんがとても心配されたので、話してしまいました。それをソンヒが聞いてしまって..これからどうするんですか?」
「俺は北朝鮮へ行く。父さん、母さんを頼む...。おろかな兄を許してくれ」
ウニョクは父と母に会っていかなければ前に進むことはできない、とトンウに頼み、トンウはこれを承諾する。ウニョクの家の前にトラックが止まるとき、家の前に両親に出てもらうようにトンウはウニを家へ帰すと、ウニョクの部屋を出る。
結婚を目前に恩師が暗殺され、過酷な運命を背負わされたウニョクとヘギョンの二人は別れを前に、涙を浮かべて見つめ合う。ウニョクは悲しい表情で、愛するヘギョンをきつく抱きしめる。
「一つだけ約束して下さい」
「俺がお前に何の約束ができるというんだ」
「約束しなければならないわ...
戻ってくると...必ず戻ってくると約束して下さい
帰ってくると、待っていろと、言って下さい、早く!!」
ウニョクは胸を痛めながらヘギョンの手を振り払おうとするが、ヘギョンはその手をしっかりと握ってウニョクを見つめ続ける。
「俺を待つな...」
ヘギョンを置いて、一人ドアを開くと、ウニョクは何度か切なそうに振り返りながらホテルを出て行く。ウニョクが乗り込んだホンドゥのトラックがホテルの前を出発するとき、たまらず飛び出してきたヘギョンは走り行く車を見送りながら泣き崩れる。ウニョクの実家の前にホンドゥのトラックが止まると、ウニから事情を聞いていたウニョクの父母が涙をこらえながら路地へと見送りに出る。そんな二人の姿をトラックの荷台の隙間から見つめていたウニョクの瞳からは涙が次々に溢れ出す。
「母さん、父さん...祖国が一つに統一されたら戻ってきます。どうか、再び会えるその日まで、お元気で...」
ウニョクの姿を見ることはできない二人だったが、心の中で息子の無事を祈り、生きていてくれと願うと、出発するトラックが走っていく様子を見送り続ける。
ウニョクが発ち、呆然と街を歩いていたヘギョンだったが、たまらずに尾行を振り切ってタクシーに乗り込むとウニョクを乗せたトラックが向う場所へと急ぐ。突然現れたヘギョンにチョ・ホンドゥは驚き、トラックに乗り込んできたヘギョンに、戻らないと大変なことになってしまうと説得するが、ヘギョンは聞く耳を持たず38度線まで一緒に行く、歩いてでも着いて行くと車を降りようとしなかった。
38度線付近、車を降りたウニョクはヘギョンを巻き込むことを恐れ“車に乗れ!”とヘギョンをホンドゥとともに帰るように促す。
「誰が来たくて来たとでも!?
オラボニが憎いわ...本当は来たくなかったのに...
でも、来なかったら死んでしまいそうで、私が死んでしまいそうで」
「ヘギョン、ここが38度線だと思え。
お前をあの危険な場所へは連れては行けない」
成り行きを車の中から見守っていたホンドゥはこれもヘギョンの運命だと、二人で無事に越境できるように願って車を出発させる。
歩けば日暮れまでに議政府に着くからというウニョクにヘギョンはレニングラードでの切ない想いを言葉にし始める。
「どれほど後悔したか分かりません...
レニングラードにあなたを置いてきたことを...私には家族が居る。
いくらオラボニが目に浮かんでも、別れが辛くても、私には家族が大事で...。
果てしない雪道を歩きながら、私の心は崩れました。
オラボニの隣に残るべきだったのに...
オラボニは生きているのかと...
そのときも今と同じように胸が痛みました。
もう2度とあなたから去ることは出来ません!」
「お前を北へは連れて行くことは出来ない」
「38度線までです、そしてその前で約束して下さい。
待っていろ、必ず戻ってくると...
そうすればいつまでもウニョクオラボニを待ちながら一生懸命生きられます」
泣き崩れるヘギョンに一言も声を掛けてあげることもできないウニョクだった。
一方半島ホテルでは、ヘギョンが逃げたことを知り、ウニョクとヘギョンを捕らえようと焦るパク・チャンジュがチャン・テクサンの許しを得てホテル内を捜索し始める。ソッキョンの閉じ込められた備品倉庫の鍵をあけると、中から手を縄で縛られた状態で憔悴したソッキョンが出てくる。パク・チャンジュは誰がこんなことを、とソッキョンに問いかけるが、遠くからソッキョンを見つめるトンウの表情にはっとしたソッキョンは咄嗟に“なんでもありません。モダンクラブの備品を取りにきたら鍵がかかっただけです”と嘘をつく。トンウの後を追うソッキョンはトンウの気持ちを取り戻そうとする。
「二人とも無事に北へ行けるでしょうか。
無事に越境するか、一緒に死ぬか、二つに一つね。
死を望んではいないは、昔の縁があるもの...生きて越えることを願うわ。
こうして元の場所に戻るのね、チェ・ウニョクさんとキム・ヘギョン、
トンウオラボニと私...最初の場所に戻っていくんですね。
全て終わったんです。オラボニ、もう私のところへ戻ってきてください。
つつましく私を守ってくださったあの頃に戻ってください。
モダンクラブは解散してもかまいません。オラボニの望むとおりにします」
トンウはソッキョンの話を静かに、表情を変えずに聞いていたが、何一つ答えずにソッキョンに背を向けて歩き出す。
ムン・ドンギらにウニョクが越境するとの知らせが入り、ウニョクが北へ着く前に射殺されるかもしれない事態を深刻に受け止めたムン・ドンギは北朝鮮にウニョクの保護を要請する。
パク・チャンジュらはホンドゥのトラックがウニョクを乗せたことを調べだすと、兵を率いて38度線へと向かう。ヘギョンとウニョクを心配し、トンウも車で向かったことを知ったチャンジュはチャン・テクサンの命令を無視してウニョクとトンウを見つけ次第射殺すると断言する。
|