“プロポーズを撤回してほしい”
ヘギョンの言葉に今まで心に秘めてきた想いがあふれ出すトンウ。ウニョクは結局自分の信念のためにヘギョンさんを捨てたのだときっぱりとヘギョンに話す。だとしても思い出が消える訳ではなく、ウニョクオラボニと一緒に過ごした時間を思い出に抱くだけでも幸せで、
私がどうなろうとあなたには関係ないとヘギョンはトンウの気持ちを受け入れようとはしなかった。それでもウニョクを忘れて欲しいというトンウに忘れことも諦めることも絶対にできない、忘れられるはずもないとトンウへの怒りすら抱くヘギョンだった。トンウにとってもウニョクは忘れることは出来ない友人であり、その友人の恋人を愛してしまった自分を卑怯だとも感じながら、どうしても抑えることのできない感情をヘギョンにぶつけ続ける。
“お願いです。お願いだから私からウニョクオラボニを追い出さないでください”
どのようなヘギョンの言葉にも耳を貸すことができないトンウは、自分への気持ちが生まれるまで待っていると伝える。
〜1950年春〜
一方ウニョクの行方は1948年5月金日成大学教授としての消息を最後に
途絶えてしまい、トンウは必死でウニョクの消息を探るがまったく手がかりはつかめない。パク・チャンジュは北側からソウルに何度も潜入し、南労党の勢力結集を図る北極星と呼ばれる組織幹部の人物がチェ・ウニョクではないかと警戒を強める。パク・チャンジュらはウニョクがヘギョンに接触することを予測し、警備を更に厳重にしてゆく。
ヨ・ウニョンの墓前、南側に侵入したウニョクが跪いていた。祖国の統一の遺志を継ぐことも出来ず
に恥ずかしいと墓前で苦悩の気持ちを漏らすウニョク。南と北が対峙し、祖国の運命を前にして何一つできずにいる自分はどうしたらよいのかとヨ・ウニョンに問いかけるウニョクをオ・
チョルヒョンがじっと見守っていた。ウニョクの望む世界とは何なのか、両非論者
となり、灰色の人物になってしまったのか
とウニョクに問いかけるチョルヒョン。ウニョクの思想を問題視する者たちもいると話すチョルヒョンに、悲劇は防ぐべきであり、人民のための政治はファシズムになってはならないと本来の共産主義の最初の理念が崩れることがあってはならない
との決意を新たにするウニョクだった。
へギョンを心配する母や家族達はイ・ドンウとの結婚をすすめようとヘギョンを説得し始める。
「人は恥を知らねばならぬ。
愛がどんなに重要なのか分からないが
愛がないなら恩を返すつもりで結婚しなさい。
恩を返しながら仕えて暮らせといっているのだ。」
母の強い訴えにヘギョンは表情を曇らせるだけだった。ちょうどその頃、ヘギョンの家の前に酒に酔ったトンウが現れる。
「ウニョクの不幸を望んだことはなかった。
ウニョクが金日成大学にいると知ったとき
ウニョクの元へ行かせようかと思いました。
あなたさえ幸せになるのなら
誰にも気づかれないようにと....。
(指輪を取り出すトンウ)
いつかあなたにはめてあげたくて
いつも懐に入れていました。」
手元のおぼつかないトンウは大切な指輪を落としてしまい、トンウらしからぬ様子を見ていたへギョンの心は揺れ動く
。酔いつぶれて眠ってしまったトンウだが、ヘギョンは眠れずに悩み続けていた。母の言葉を思い出しながら...。翌朝、ある決意を胸にトンウの前にたったヘギョンは、昨夜トンウが落とした指輪(トンウの母の形見)を手渡し、じっとトンウを見つめる。
「局長がはめてください」
「何と言いましたか?」
ヘギョンの言葉を信じられない表情で受け止めるトンウに、そっとヘギョンは左手を差し出した。
トンウとヘギョンの婚約式
の準備が整う中、ソンヒからトンウとヘギョンの婚約を聞いたソッキョンは激しいショックを受けトンウの前に現れる。こんなにも不幸な自分なのに、ヘギョンと幸せになれるのですかと険しい表情でまくし立てるソッキョンにもトンウは表情ひとつ変えずにいた。
「権力も名声もピアニストの夢も全部取り戻したのにそれ以外に何を望む?」
「虚しいです。オラボニの言うとおりに全て手に入れたのに...
単にオラボニだけいないだけなのに...
耐えられないほど寂しくて...とても虚しいです。」
そんな話はもう聞きたくも無い
とトンウに突き放されたソッキョンは泣き崩れ、酔いつぶれてしまう。パク・チャンジュはソッキョンを抱き上げると、その後も涙が止まらない彼女の様子を遠くからじっと見守っていた。
婚約を控えたヘギョンの元へ
ウニョクの父母が婚約式の祝儀を持ってやってくると、ヘギョンは複雑な心境で受け取り、思わずウニョクの母を“お母さん(オモニ)”と呼んでしまう。これからはお母さんなんて呼んではいけないよ、本当に幸せになるんだよ、と言葉をかけられて余計に辛くなるヘギョン。
一方アジトに潜んでいるウニョクは新聞でトンウとヘギョンの婚約を知り愕然とする。ウニョクを心配するチョルヒョンに、トンウならヘギョ
ンを幸せにしてやれると平然を装うウニョクだが、遠くからでもへギョンの姿をひとめ見るべきというチョルヒョンの言葉も耳に入らない様子だった。
炎の前、ウェディングドレスを胸に抱くヘギョン
は胸の中のウニョクを消すことができず、ただただ悲しみにくれていた。妹のヨンギョンが言葉を掛けると、ヘギョンは忘れられる、忘れなければ
、愛するように努力し、局長を幸せにできるよう真心を尽くすとウニョクへの想いに別れを告げるかのようにウェディングドレスを炎の中へと投げ込むと、声を上げて泣き続けた。
トンウとヘギョンの婚約式当日、ソッキョンが現れ、パク・チャンジュからの情報でウニョクが南にいることをトンウへ話してしまう。動揺が
隠し切れないトンウだったが、ヘギョンには一言も話さずに一人胸に抱え込むことにする。この頃ウニョクはへギョンを想い、
思い出の湖のほとりに立ちすくみ、涙を浮かべていた...。
トンウの父母に温かく迎え入れられるへギョンは今までの恩を返すように真心を尽くすことを決意していた。結婚式後は政治界への入門を、
と父に諭され、素直に頷くトンウ
。婚約を控えた二人は一見幸せそうに映っていたが、心の中にはそれぞれのウニョクへの気持ちをそっとしまっているのだった。
北では、副首相
が南侵攻の決断をムン・ドンギに伝えるが、彼は犠牲が大きすぎるとこれに猛反発する。しかし、ムン・ドンギの訴えはすでに受け入れられる状況ではなかった。そんな
北の動きをトンウは敏感に感じ取り、米軍政に戦闘機などの配備協力を申請するが、トンウは心配しすぎていると一笑されてしまう。
南を脱出しないと危険な状況のウニョクだが、危険を省みずヘギョンの姿をひと目みようと外に飛び出す。ウニョクを止めるチョルヒョンに、もしかしたら二度と戻れないかもしれない
とヘギョンの顔を見れば耐えられると言い残し、一人パク・チャンジュらが警戒する半島ホテルへと向かう。
半島ホテルの前に立つウニョクを
ついにパク・チャンジュが発見し、後を追う。ヘギョンの姿を胸を痛めながら見つめるウニョクだが、早くもホテルに乗り込んできたパク・チャンジュらに追われることになり、ホテルの備品倉庫に忍び込む。
「どなたですか?
ここは関係者以外立ち入り禁止です。」
懐かしいへギョンの声に帽子を取り振り向くウニョク。
「オラボニ...」
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