半島ホテルの備品倉庫に身を潜めていたウニョクは、ヘギョンの声にゆっくりと振り返る。帽子を取り、眼鏡を外したウニョクは懐かしそうにへギョンを見つめる。“久しぶりだな”と声を掛け
ると、ヘギョンは久しぶりに見るウニョクの姿に全身の力が抜けてその場に倒れこんでしまう。ヘギョンに駆け寄り
手を差し伸べ彼女を支えようとするウニョクだったが、ヘギョンはその手を振り払う。
「生きていたんですね...待つなと、二度と戻って来ないと言っておいて
、ここにいたんですね...生きていたんですね」
涙を流しウニョクを見つめながら苦しい胸の内をゆっくりと話し始めるヘギョン。
「私はトンウさんと婚約しました」
「ああ知っている」
「私の手紙、受け取りましたか?返事は望みもしなかったけれど,,,元気でいるという便りだけでも人づてに伝えてくれないかと待っていましたが...もしそうだとしたら、オラボニをいつまでも待っていられたのに...」
「俺がどうやってお前をこれ以上引き止められる」
こんなに元気でいたのなら、どうして一度も連絡をくれなかったのか、あなたにとって私はそんなに重荷だったのか、どうしてこんな姿でいまさら私の前に現れるのかと泣き叫ぶヘギョンを前に切ない表情を浮かべるウニョク。トンウさんに申し訳ないことはしたくない、オラボニを見なかったことにするから
、とウニョクを倉庫に残しヘギョンは想いを封じ込め、その場を立ち去ろうとするが本心は激しく動揺していた。
「婚約おめでとう。幸せになれ」
「ええ、そうなるでしょう。私が幸せなら、トンウさんも幸せなのだから。私だけが幸せでいていいのか、いつも心が痛みました。これから私...心の中からオラボニを消して幸せになれますね。無事にお帰りください」
心から愛し合い、強い縁で結ばれているウニョクとヘギョンの2人だったが、自らの幸せをあえて手放し、祖国統一への希望を抱き、国のために生きることを選んだウニョクの信念のため
、悲しみを抱えながら別々の道を進むことになってしまう。
半島ホテルにやってきたパク・チャンジュから“北極星がチェ・ウニョクである”と知らされ、今まさに半島ホテルにウニョクがいることを知らされたイ・ドンウは彼の言葉を信用しようとはしなかった。ウニョクがいるのなら、逮捕して調べれば分かる
だろうと席を立ち、真っ先にヘギョンを探すトンウ。そして備品倉庫前で涙を流すヘギョンを見つけると、彼女の様子がおかしいことを悟る。トンウを見て平然を装うヘギョンは備品を点検していて目に埃が入ったと思わず嘘をつき、ウニョクのいる備品倉庫に鍵を掛けるが、トンウはその手元が震えていることにも気が付いていた。
ウニョクがホテルにいると聞いたが、会ったのか、とのトンウの問いにも一切真実を語らないヘギョン。そんなヘギョンにトンウは二度とウニョクのことに巻き込まれないで欲しいとだけ話す。とうとうヘギョンの元へパク・ソンジュらが現れ、ヘギョンはやむを得ず備品倉庫の鍵を手渡すのだった。トンウと外出しなければならないヘギョンだったが、ウニョクが心配でたまらずに、忘れ物をしたと
慌てて駆け出していく。警察の目をそらすためにホテルの非常ベルを押すヘギョンの様子をじっとトンウは見守っていたのだ。混乱した中、ウニョクは隙を見てチャン・テクサンを人質に逃亡する。
トンウとヘギョンの二人は婚約式の衣装で写真撮影に出かけるが、ウニョクの悲しそうな姿を思い出しヘギョンは微笑むことができずに涙が次々と溢れ出てくる。隣でヘギョンの悲しみを想い胸を痛めるトンウはヘギョンに一言優しい言葉をかける。
「心配しないで ウニョクは無事でしょう...」
38度線近くまでテクサンの車を使って逃亡してきたウニョクはテクサンを解放すると、すぐに警備隊に追われることになり、大きな危険に晒される。ウニョクを待っていた
チョルヒョンらは銃声を聞き援護に向かうが
、激しい銃撃戦の末、とうとうウニョクが銃弾を受けて
しまう。大怪我を負ったウニョクはその場を離れようとしないチョルヒョンを自分を置いて行けと説得する。一緒に死ぬのも悪くない、とウニョクを連れて行こうとする
チョルヒョン。
「指揮権は俺にある 命令だ行け!俺は死なない... あの時もお前は俺を助けようと一人残って...もう俺に借りを作らせないでくれ」
悲痛なウニョクの頼みにも納得できない
チョルヒョンだったが、党員たちに引きずられ、ウニョクを残し北へと向かっていった。ちょうどこの頃、慰問公演のため近くに来ていたソッキョンはパク・チャンジュからウニョクが近くにいることを知らさ
ていた。パク・チャンジュらはウニョクの姿を見つけることができず次の朝を迎えることになる。その朝ソッキョンは移動中、道に血を流し倒れている男性
がいるのを発見し、それが大怪我を負い意識を失っているチェ・ウニョクであると気がつくと、迷わずウニョクを車に乗せ、近くにある別荘へと向かう。
一方トンウはウニョクが逃亡中だと聞かされると、国家か友情か選択の岐路に立たされるときがくれば、国家が優先であり、チェ・ウニョクは
すでに友人ではなく大韓民国の敵でしかないときっぱりと言い放つ。トンウはウニョクのことを隠し通すヘギョンの心に無理を強いているのではないかと悩み苦しんで
いた。迷い悩むトンウを説得するヘギョンの母の言葉にも、へギョンがウニョクを忘れる日が来るでしょうか...と不安そうに話す。
「へギョンを不幸にしようと婚約するのではありません。私の傍にいるのが辛くて大変なら、今からでも放してあげないと。私が欲を捨てないと..」.
ちょうどその会話を聞いていたヘギョンは
自分のために、ずっと胸を痛めていたトンウの優しさを想うと居てもたってもいられなくなり、トンウを探し回り、ようやく二人の婚約写真の前に佇むトンウの元へ駆け寄る。
「俺に同情しなくていい。お前を不幸にさせてまでつなぎとめておくのは、愛ではなく利己心だろう」
こう言って、ウニョクと一緒に北に行きたければ手伝いをするし、ヘギョンの望むとおりにしてあげると彼女を手放そうとするトンウ。心の中のウニョクを消すことはできないがと、トンウに正直に自分の気持ちを話し始めるヘギョン。
「オラボニに会ったときは、無事に逃げ出せればいいと思いました。そして、このことでトンウさんが傷ついたらどうしようとも思いました。心は一方にだけ傾くものと思っていましたが、私はそうでなかったようです。あなたが好きです。とても不足でしょうね...でもこれば今あなたに申し上げられる私の本心です。トンウさんが好きです」
ヘギョンの真心のこもった言葉に、二度と隠し事はしないで欲しいとトンウはヘギョンを抱きしめる。
ソッキョンの別荘では、ソッキョンが無免許の医師
を呼び、ウニョクの治療を施してもらっていた。治療が終わると、車の後部座席にウニョクを乗せ、毛布をかけてソウルへの道のりを急ぐ
ソッキョン。そんなソッキョンを待っていたのは養父であり、今は国の代表者であるイ・スンマンだった。チョンジャに運転を任せ車を暗いところへ止めておくように話す
と、ソッキョンはイ・スンマンの待つ家へとむかう。イ・スンマンは婚約したトンウとへギョン、ソッキョンとを会わせ
、和解させようと考えていたのだ。お互い慈しみ合いながら本当の兄と妹、姉と妹のように生きていきなさい
と話すイ・スンマンに、笑顔を浮かべて"もちろんです”と答えるソッキョンとトンウだった。
家を出ると、ヘギョンは過去のことは水に流そう、とソッキョンに語りかけるが、そんな気持ちはこれっぽっちもないと答えるソッキョン。へギョンには
ウニョクのことを一言も話さず、彼を自宅へと連れ帰るソッキョンだった。ソッキョン
とチョンジャが出血の止まらないウニョクを看病する中、朦朧としていたウニョクがようやく意識を取り戻すと、ソッキョンにソウルへ戻ってきたことを知らされ愕然とするのだった。
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