北軍がソウルへ侵攻を始める中、パク・チャンジュらが刑務所に収監されている南労党の幹部らを次々に処分する。とうとうヘギョンまでもが犠牲になろうとしたそのとき、ムン・ソッキョンの声が響き渡る。
「やめて!」
ヘギョンの処刑を中断させるソッキョンを抑えるパク・チャンジュだったが、最後だから遺言だけでも残させてあげて欲しいと願い、ソッキョンは命を奪われる直前のヘギョンへ歩み寄る。
「お前がどうしてここにいるのだろうね...最後に残す言葉はないの?お前を憎んではいたけれど死んでほしいとは望んではいない」
ヘギョンを悲痛な表情で見つめるソッキョンに、これは私の運命だと言うヘギョンは最後の頼みをソッキョンに託す。
「私の母に必ず伝えてください。世界中の誰よりもお母さんを愛していると....お父さんの側に先に行く親不孝な娘を許してください。ずっと先のいつか...お母さんに会えるその日を待ちますと」
トンウに残す言葉は、とソッキョンに尋ねられるヘギョン。
「どんな言葉があるというのです。私を忘れて幸せになるのを願っていると...トンウさんの温かい気持ちを胸に抱き、怖がらずに去ったと伝えてください。ありがとうお嬢様.l...本当は....本当は...私、怖くて、恐ろしくて、寒くて、震えてしまっているのに
、こうして私の側にいてくださってありがとう」
ソッキョンはヘギョンの頬に手を伸ばすと、ヘギョンの頬を伝う涙をそっと拭きながら“来世で会うときはこんな縁ではないといいわね”と今生の悪縁を惜しむようにヘギョンに伝える。
ちょうどその頃、ヘギョンや捕らえられている南労党の政治犯を解放するため、ウニョクらが刑務所に到着する。ウニョクはイ・ジュハ、キム・サムリョンらを助け、できるだけ犠牲を少なくするよう呼びかけるが、刑務所内ではすでに処刑が始まっていることを聞き、顔色を変え中へと救出に急ぐ。刑務所前では、政治犯の釈放要求する民衆
たちが声を上げていた。その中にはヘギョンの無事を願っている母の姿もあった。トンウがヘギョンを救うために刑務所にやってくると、どうすることも出来ずにヘギョンが命を奪われることにショックを受けたソッキョンがふらふらと歩いてくる。
「オラボニ、ケヒが...ケヒが!」
ヘギョンに銃が向けられると、覚悟をしたようにヘギョンは目を閉じる。
すると南労党の一員が“同志たちが外にいます!力を出しましょう”と声を上げたことをきっかけにパク・チャンジュらが銃を向け、党員たちを虐殺し始める。
「やめろ!今すぐ虐殺をやめろ!」
トンウが駆け込み、ヘギョンの縄を解くとパク・チャンジュに叫ぶ。
「これ以上の虐殺はやめなさい!中止しろ!」
トンウの叫びにも、軍事顧問団の局長であっても介入は許せない、と聞く耳を持とうとしないパク・チャンジュだった。そのとき刑務所内に潜入したウニョク率いる人民軍と南の兵士たちとの銃撃戦が始まり、チャンジュはウニョクが来たことを知
ると全員射殺するようにソンジュに命令を出す。姿勢を崩さないパク・チャンジュに腹を立てたトンウは、人民軍が侵入し、ソウルも陥落寸前だというのに、部下までも殺すつもりなのかと彼らの要求(政治犯の解放)を受け入れるように説得する。そして“ソッキョン
をどうするのか”とチャンジュの大切な人を引き合いに出すと、自分がウニョクと交渉すると銃撃戦の起こっている現場へと向かう。射撃中止の合図でトンウが現れると、トンウの存在に気がついたウニョクも攻撃をやめるよう指示を出す。
真っ先にヘギョンの無事を確認するウニョクにトンウは頷き、これ以上の虐殺はやめるべきだとウニョクに伝え、刑務所内の南の兵力を
解放し怪我を負った政治犯から治療するようにと交渉する。パク・チャンジュはやむを得ずトンウの言うとおりに兵力を撤収 させることを決断し、騒ぎが大きくなることを恐れ、南労党のキム・サムリョンとイ・ジュハの遺体を運び出すよう指示する。
気を失ったヘギョンを抱くトンウにウニョクは“死刑囚だったヘギョンにはどこへ行っても危険が伴う”と引き留めようとするが、お前とは関係ない
、ヘギョンを北朝鮮へは行かせない、そしてこの戦争に対して責任を取らなければならないと言い残し、トンウはその場を立ち去っていく。途中意識を取り戻すヘギョン
は不安そうに“出て行ってもいいんですか?”とトンウに問いかけると、トンウは頷き、二人は刑務所を後にする。ヘギョンが助かることを信じて刑務所前で待つ母は
、トンウに救われ、自分の足で歩いて出てきたヘギョンの姿を見て涙が溢れ出す。
多くの党員の犠牲者を前に愕然とするウニョク
はキム・サムリョンとイ・ジュハの姿が見えないことに気がつくが、この状態で警備を維持するようにと部下に指示を出す。
ヘギョンが自宅に戻ると、家族が温かく彼女を迎え入れる。チョ・ホンドゥは、信じていたイ・スンマンがソウルを発ったことをトンウから聞かされ、自分の身が危なくなる可能性があることも知る。息子のトルはトンウの助言からも父ホンドゥにソウルを離れようと話す。
トンウはヘギョンはソウルに残るべきだと、一人で大田に発とうとする。
この恩はどんなことをしてでも返しますというヘギョンの母の言葉に、“私でなくてもウニョクがヘギョンを助けたはずです。ウニョクが来たんだ...”とウニョクの助けでもあることを二人に伝えるドンウだった。元気でと家を出て行くトンウを追いヘギョンが外に飛び出してくる。
「どうして出てきた?外に出てはだめだ」
「どこへ行くんですか」
「整理しなければならないことがある。事務所の整理をしてから大田に行く...。もうあなたには二度と会えないのかな...。それでも平気です。あなたがこうして生きているだけで..ウニョクが来たから、もうあなたは心配いらない。ウニョクが守ってくれるでしょう」
一方ウニョクはヘギョンが収監されていた牢にいた。ヘギョンが辛い思いをしていたその場所で、ヘギョンが残していったものを手に取り(聖書や二人の写真)ヘギョンの心の中にいるトンウの存在が
大きくなっていることを感じるウニョクだった。
トンウの気持ちを想うと、胸が痛み、いてもたってもいられずに事務所に向かって走り出すヘギョン。
「私もついて行きます!あなたが行くところがどこであろうとついて行きます」
「何度も祈ったよ。ヘギョンが助かるのならこの地を発ってもいい。すべてを捨ててお前のいない国へ行き暮らす...神様がいらっしゃるなら、お前を助けてくれと」
「あなたは...本当にいい人ですね」
大田ではヘギョンを守ることができない
からとヘギョンを連れて行こうとしないトンウだが、自分の体くらい守る自信があるとトンウを説得する。
「その言葉だけで十分だ。ありがたくて、幸せだ。だからこれ以上俺に信義を尽くそうとしなくていい。ウニョクが守ってくれる...」
「私はチェ・ウニョクさんの婚約者ではなく、トンウさんの婚約者です!トンウさんが心の中から私を消さない限り私はあなたの婚約者です。私はあなたから離れません...」
ヘギョンの真心に動かされたトンウはそれなら一緒に行こうと写真館の前での待ち合わせをするのだった。
一方、大田放送局ではイ・スンマンが大韓民国の国民らの混乱を避けるため、政府は大統領以下全部が通常通り中央庁で勤務し国民の安全を守ると嘘の放送を流していた。その声を聞きながらソッキョンはパク・チャンジュからすでにイ・スンマンはソウルを離れていることを聞かされる。パク・チャンジュに説得されソッキョンはソウルを離れる準備をするが、チョンジャはここに残るとソッキョンに
はついて行かないと決意する。パク・チャンジュは漢河橋が混雑していることを聞かされるが
、ソッキョンを必ず守り抜くという強い意志を抱き、車を走らせる。
イ・インピョンの次男チョンウが人民軍に拉致された事実を掴んだソン秘書はウニョクの元へ
行き、事情を話し、チョンウを助けて欲しいと頼む。子供を人質にするという非道な方法に腹を立てたウニョク。
「忘れないでください。この戦争は解放戦争です!最低限の道徳もなしに、どうやって人民を解放させるのですか?」
ウニョクは人民軍の兵士を一喝し、チョンウを抱き上げると、ソン秘書の元へと連れて行く。
ソウルを離れるために漢河橋に向かっていたパク・チャンジュは道中トンウの姿を見つけると、車を降りてトンウに歩み寄り、挑発するかのようにヘギョンの話を持ち出す。
「局長がキム・ヘギョンをどうするのか...大田に連れて行けば死刑囚だから逮捕されるだろうし置いて行けば愛する婚約者をチェ・ウニョクに渡すことになるだろうし...どうするのか心を決められたのですか?」
トンウと待ち合わせた写真館の前、ヘギョンのところに現れたのはウニョクだった。
「オラボニがここにどうして?」
「トンウから聞いた。まだ分からないのか?トンウがお前をどうして置いていったのかを...お前は大田では生きられない」
「二人とも同じね...私は何なの?物ですか?以前38度線ではあなたがトンウさんに私を頼み、今も...私には心や意志がないとでも思っているの?」
写真を見つめて涙を流すヘギョンに、トンウの気持ちも分かってやれ、と自分の悲しさも心にしまい込んでヘギョンをそっと見つめるウニョクはトンウの残した言葉を思い出していた。
「ヘギョンを頼む。これが俺の人生で一番辛い選択だ...」
ヘギョンの悲しそうな姿を一度は見送ったウニョクだったが、ヘギョンの心を大切に感じ、トンウのところへ行こうとヘギョンを車に乗せる。トンウの姿を見つけたヘギョンは群衆の中、大きな声でトンウの名を叫ぶ。
「トンウさん!一緒に行きましょう!一人で行かないで。一緒に行くわ...そこにいて、私が行くわ!」
「待っていてくれ!ヘギョン、今は駄目だ!必ず迎えに来るから待っていてくれ!」
トンウの言葉に大きな声で“待っています”と答えるヘギョンをウニョクは複雑な想いで見守っていた。トンウを見送りソウルに戻ろうとしたそのとき、大きな爆発音が響き渡る。人民軍がソウルを占拠することを防ぐための爆破により、非難するために橋を移動していた多くの人々が犠牲になってしまう。トンウの乗った車もまた、行方が分からなくなる。混乱の中
、ソッキョンの姿を見失うパク・チャンジュや逃げ出そうとしていたホンドゥら家族、トンウの父イ・インピョンらもソウルに残ることになる
。こうして戦争開始3日後、人民軍の支配下に置かれることになったソウルには人民軍のムン・ドンギやオ・チョルヒョンが姿を現し、街は共産主義一色となり始める。
キム・サムリョン、イ・ジュハが見つからないことに肩を落とすウニョクを労うムン・ドンギに、ウニョクはトンウが生死不明だと伝えずにはいられなかった。
ウニョクが久しぶりに自宅へ戻ると、ウニが出迎え、父母と再会し、互いの無事を喜びあう。これからは平等な世の中で平和に暮らすことができると希望を胸にするウニョクだが、妹のソンヒは決して受け入れようとはしなかった。
ウニョクの元へトンウの車
らしき車両が見つかったとの連絡が入り、現場に駆けつけると、大破したトンウの車の中からトンウの身分証が出てくる。ショックを受けたウニョクだが、早速トンウの安否を心配しているヘギョンの所へ向かい、川から
トンウの車を引き上げたことを正直に伝える。
「どうしてこんなことが,,,トンウさん、トンウさん...」
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