【ソウル臨時人民委員会前〜人民軍と国防軍の銃撃戦】
ソッキョンの家にパク・チャンジュが率いる兵が現れたことで、オ・チョルヒョンは人民軍を率いて現場に向かう準備を急ぐ。パク・チャンジュを捕らえるために、一度は
チョルヒョンにとめられたチェ・ウニョクも同行し、激しい銃撃戦が始まる。チョルヒョンは、ムン・ソッキョンの叔父であるムン・ドンギに、場合によってはムン・ソッキョンも即刻処分すると伝えていた。ムン・ドンギは実の兄ムン子爵が命を落とす前に残した言葉を思い出し、ソッキョンの身を心から案じていた。
「どうかソッキョンの面倒をみてくれ...」
パク・チャンジュに保護され、邸宅を逃げ出すソッキョンだったが、瞬く間に人民軍に包囲されてしまい、国防軍の兵士たちは次々に命を落としていく。事態の深刻さを悟ったパク・チャンジュはソッキョンをウニョクに手渡すことを決意する。
「申し訳ありませんお嬢様。最後までお仕えすることができません。行って下さい!生き残れば...必ずお嬢様を迎えに行きます!生き残ってください!」
ソッキョンの存在がムン・ドンギの心の負担になると感じていたチョルヒョンは、ソッキョンを射殺するとウニョクに断言するが、ウニョクはこれに反対し、ソッキョンの処分はトンギに任せるべきだと、銃を構える
チョルヒョンを制止する。
ソッキョンが歩き出し、ウニョクがソッキョンを保護した瞬間、チョルヒョンとパク・チャンジュの口論を火種に、また激しい銃撃戦が始まる。混乱の中、人民軍車中に一人取り残されたソッキョンは今まで経験したことのないような恐怖に打ち震えていた。
この頃、空き家に身を潜めていたイ・ドンウが銃声を聞きつけ、現場へと駆けつける。逃げ場を失ったパク・チャンジュらの目の前に現れたのはトンウだった。チャンジュらを保護しながら人民軍に発砲し逃亡するトンウの姿をウニョクは見逃さなかった。命を落としたとばかり思っていたトンウの姿を目撃したウニョクはその男が本当にトンウだったのかどうかは確信が持てず、心の中の不安が徐々に膨らんでいくのだった。
一人残されたムン・ソッキョンを追い詰めるチョルヒョンは、ウニョクの制止も聞かずにソッキョンに銃口を向ける。
「だめよ、こんなのだめ!叔父を呼んで!」
ソッキョンが迫りくる死の恐怖に震えるその瞬間、ウニョクが現れる。一人の女のために多くの味方の兵士が犠牲になったことを理由に処分を急ぐ
チョルヒョンに、ソッキョンのせいではなく、パク・チャンジュの仕業であると、処分を止めるように説得するウニョクだった。ムン・ドンギが姪ソッキョンのために動揺し、それによってトンギの立場が悪くなる事を避けたいとの
チョルヒョンの考えに、ムン・ソッキョンは人民の意により処罰するべきだとウニョクは必死の説得を続ける。
「処罰より改善教育が先だ!機会を与えるべきだ」
ソッキョンが震え、ウニョクとチョルヒョンが言い争いを続ける中、その場へトンギが現れるとソッキョンの側に歩み寄る。
「叔父さん...助けてください。怖いの、私を助けてください...私、死にたくない..死にたくない!」
ムン子爵の亡き後、トンギに恨みを抱き続けていたソッキョンは、そのトンギの胸にしがみつき、子供のように泣き崩れる。
【臨時人民委員会/半島ホテル】
ヘギョンは総班長として復帰することになり、同僚に祝福を受ける。ウニとともに館内を見回る中、かつてトンウが使っていた部屋をウニョクが使うことになったと聞かされると、表情を曇らせる。その場へウニョクと
チョルヒョンが戻り、チョルヒョンの提案でヘギョンの復帰祝いをとの申し出がある。ヘギョンは硬い表情のままその申し出を断ると、厳しい目でウニョクを見つめてその場を後にする。
二人の深い縁を知るチョルヒョンは肩を落とすウニョクを励まそうと声をかける。
「お前とヘギョンさん...ヨ・ウニョンさんの暗殺さえなければ結婚していただろうな。そのときと今と変わったことなどないさ。お前はヘギョンさんを愛していて、ヘギョンさんも...変わってはいないだろう、死を覚悟してお前を38度線まで連れてきた人だ。愛がなければ そんなことは出来ないだろう?」
「やめよう 友達の婚約者だ」
「じれったいこと言うな。二人の間に割り込んだのはトンウで、彼はもう死んだんだ」
「心から消えないことがある...取り戻せるなら 初めから、俺を追って38度線まで来たヘギョンを 捨てて去りはしないだろうと」
「だから取り戻せばいい」
「歴史において仮定が馬鹿げているように、人の運命や関係も同じだ。取り戻せないんだ」
「そうかな。歴史も関係も結局正しきに帰するんではないのか?俺からすればじれったいが時間が必要なようだ。歳月が教えてくれるだろう。お前たちの縁がどれだけのものか」
【トンウの隠れ家】
トンウの中にあるヘギョンへの愛情は薄れることはなく、トンウの支えとなっていたが、そんな様子のトンウにパク・チャンジュはわざと冷たい言葉を浴びせ、彼の復讐心をかき立てようとする。
「利用されたことをまだ認められないのか?どの世界でも二人のうち一人は死ぬ運命なんだ」
【人民委員会 会議】
委員らが宣伝活動のためにもと人民裁判を急ぐ中、ウニョクは人民裁判の本来の目的は己の過ちを人民大衆の前で反省し、共和国の一員として容認するか処罰するかを人民に聞くことで、宣伝活動ではないと主張する。この意見に同意するトンギは、姪のムン・ソッキョンのことで公私混同していると非難され、ソッキョンを裁判に立たせるべきだとの意見が飛び出す。ちょうどこの会議を聞いてしまったヘギョンが動揺する様子に気づいたウニョクはヘギョンを部屋から出るよう促す。
【ソッキョンの部屋】
ヘギョンはソッキョンを心配し、ソッキョンが軟禁されている部屋へと急ぐ。心配してやってきたヘギョンに対し、ソッキョンは意地を張り、皮肉を言い続ける。そんなソッキョンに、ヘギョンはトンウが漢河橋の爆撃で行方不明であり、生死が分からない状態だと思わず話してしまう。誰よりも大切に感じていたトンウが命を落としたかもしれない事実に激しい衝撃を受けるソッキョンは張り詰めていた糸が切れたようにその場に座り込んでしまう。ヘギョンから人民裁判に立たされることも聞かされたソッキョンは一度は強がる様子を見せるが、徐々に死の恐怖におびえ始める。
「死ぬのは怖くなかったのに、堂々と死のうと思っていたのに...チョンジャ!叔父さんに伝えて!私を助けてと」
子供の頃のように、優しく接してくれるヘギョンに、ソッキョンは本当の気持ちを話し始める。
「私、本当に死ぬのかな?ヘギョンお前は分かるでしょう?死ぬということがどういう事が、良くわかるでしょう?」
会議でウニョクが言っていたことを伝え、希望を持ってとソッキョンをなぐさめるヘギョン。ムン・ドンギもチョンジャも自分も、多分ウニョクもソッキョンが死ぬのを望んではいないと話し、ソッキョンの傍に寄り添うヘギョンはソッキョンを助けるために「お嬢様が人民の一員としてがんばると、贖罪の機会をくださいと言ってください」と説得すると、ソッキョンの頬を伝う涙を優しく拭き取った。
【人民委員会 会議】
公私混同だと批判されるムン・ドンギは自分にとって唯一の血縁であるムン・ソッキョンの人民裁判を認めること、その裁判で姪ソッキョンを弁護すること、助けるために人民に哀願することをきっぱりと伝える。反論する
チョルヒョンに、中央委員の地位を党に返すとまで決意するトンギに驚くウニョクは別の案を立ててソッキョンの裁判を回避しようと努力する。ソッキョンを利用し、パク・チャンジュを初めとする国防軍を捕らえることができるはずであり、それには少し時間が必要だとの意見を出すウニョクに、
チョルヒョンを除いた委員たちが同意する。ウニョクに腹を立てたチョルヒョンは、第一次処刑対象者としてトンウの父であるイ・インピョン委員が適当だと提案し、この案が決定となってしまう。複雑な想いで心が揺れるウニョクに追い討ちをかけるように、この裁判の検事を引き受けるようにと
チョルヒョンが伝えにくる。トンウの父が立たされる裁判に検事として選任されたことで動揺するウニョクだが、共和国から権限を与えられた検事として責任を果たすと約束するのだった。
トンウの父が人民裁判に立たされることに驚いたヘギョンはウニョクの元へ急ぐ。ちょうどその頃、ウニョクはイ・インピョンの告発者としてソン秘書を立たせようと説得していた。血相を変えてウニョクの部屋に駆け込んできたヘギョンは、厳しい表情でウニョクを責める。
「オラボニが検事ですって?他の誰でもなく、トンウさんのお父様でしょう?もう友達も同義までも全部忘れてしまったのですか?」
「法は私的な情の上にあるもの。俺は人民裁判の検事として責務を果たすまでだ。イ・インピョン委員はトンウのお父さんである前に民族と歴史における罪人だ。...すまない」
ヘギョンに全てのことを話せる立場ではないウニョクは胸の引き裂かれる想いで言葉を絞りだしていた。
【イ・インピョン邸】
イ・インピョンの元へ向かうヘギョンは、トンウの死は噂だけであり、誰も目撃した人はいないから希望を持ってくださいとトンウの両親を勇気付けようとするが、トンウの父はヘギョンの話も聞かずに“二度と来るな”とヘギョンを追い返してしまう。
【トンウの隠れ家】
トンウは、父が人民裁判に立つことを知り、大きなショックを受け、居ても立ってもいられずに家を飛び出していく。パク・チャンジュは、生き残って仕返しをするべきだ、家に着く前に殺されてしまうと、トンウを必死で引き止める。成すすべのないトンウは声を上げて泣き出してしまう。
「お父様...この親不孝ものをどうしたらいいんですか!お父様!」
この頃、韓国側を支援する米軍が軍隊を投入し始めるが依然北朝鮮軍が優勢な状況は変わらなかった。そんな中、人民軍が支配するソウルでは食糧不足が深刻化していく。そしてとうとうイ・インピョン人民裁判の日がやってくる。 |