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韓国ドラマ ソウル1945

ストーリー 第54話


최운혁/チェ・ウニョクからキム・へギョン
への言葉

ノン ナルル クロン チシラゲ ボインニャ?
넌 나를 그런 치졸하게 보이냐?

 お前には俺がそんなに稚拙に見えたのか?

 


 
ソウル1945 OST

 
【人民裁判】

民衆が集まる中、人民裁判の場に向かうイ・インピョンの姿をヘギョンは遠くから見守っていた。途中乱暴な扱いを受け、倒れこむイ・インピョンを放っておけず、思わず駆け寄り手を差し伸べるヘギョンだったが、いきなり頬をぶたれてしまう。

「お前がトンウと結婚したのも、全てチェ・ウニョクを助けるためだったんじゃないのか?私の息子を死に追いやったのではないか!どうしてお前みたいな女に騙されたのか...」

絶対に生き残ってくださいと勇気付けるヘギョンにトンウの父は、”これ以上惨めな思いをさせないでくれ、目の前から消えてくれ!”と怒鳴り、ヘギョンを憎しみが満ちた表情でにらみ付ける。

【人民委員会】

一方、人民委員の副委員長は少しでもムン・ドンギ委員の助けになればと、姪であるムン・ソッキョンにイ・インピョンの告発をするよう説得する。ソッキョンは幼い頃から自分を実の娘のように可愛がってくれたトンウの父を告発することにためらう。心から懺悔する態度を見せれば、人民裁判のときに参考になるとの副委員長の言葉に、生き残るためにトンウの父を告発することを決心するソッキョンだった。

その頃ウニョクはイ・インピョンの公開処刑についてチョルヒョンと意見をぶつけ合っていた。ウニョクは公開処刑は避けるべきで、恐怖政治は効果があるがそれは一時的なものであると チョルヒョンに主張するが、チョルヒョンは人民裁判における公開処刑が思想改革に大きな影響を与え、人民の意識を一瞬にして変えると信じていた。ウニョクの強い訴えにも、 チョルヒョンは戦争中は人民が受ける違和感など考える余裕などないと、これまでの姿勢を崩そうとはしなかった。

ソン秘書とイ・インピョンに使えてきたプアン宅の侍女までも告発者に立たされることを聞いたヘギョンがウニョクの部屋へと駆け込んでくる。

「お二人に聞きたいことがあって来ました。人民の意とは関係なしの公開処刑が行われるのは事実ですか?
ならば人民裁判は何のためにするのです?」

憤るヘギョンを前にチョルヒョンは思想を疑われるような誤解を招く発言はやめろと腹を立てて部屋を後にする。ウニョクと二人になったヘギョンは、トンウの父が公開処刑されるかもしれないという大きな悲しみを前にウニョクの胸の内を知る余裕も無く、ウニョクに怒りをぶつける。

「トンウさんを忘れたんですか?もうトンウさんを忘れてしまったの?トンウさんが見守っています。こんなことしてはいけません!トンウさんを助けてください...トンウさんのお父様を助けてください...」

泣き崩れるヘギョンを前にウニョクはどうすることもできずに苦しんでいた。

【人民裁判】

父が裁判に立たされることで、ひと目だけでも父の姿を見るためにトンウは危険を承知で変装し、イ・インピョンの裁判の場へと足を運ぶ。トンウ、ヘギョンをはじめとする民衆たちが集まる中、判事であるムン・ドンギ、検事であるチェ・ウニョクが現れ、いよいよ人民裁判が始まる。検事としての任務を果たすため、ウニョクはイ・インピョンの前に立つ。

「人民が貧困に苦しんでいるとき、あなたはその労働力を搾取し富を築いたし、既得権を失いたくなくて米軍政府と野合したのです」

罪人として友であるトンウの父の罪を問うウニョク、続いて証人として立つことにしたソッキョンは罪悪感に苛まれ続け、涙を流しながらイ・インピョンの告発を始める。

次に告発者として立った女性と、30年間イ・インピョンに仕えてきたソン秘書は、イ・インピョンを弁護する証言を始める。悪質地主とは言えないこと、過去にインピョンが行った教育事業についてや臨時政府への献金についても証言し、これに関する証拠を提出する。続いて裁判の場に来ていたウニョクの妹ソンヒも、幼い頃イ・インピョンに助けられたことを証言すると、民衆からイ・インピョンを助けるべきだとの声が上がり始め、騒然とした雰囲気になる。“一旦整理しよう”というムン・ドンギの言葉に、裁判は閉廷となる。

ウニョクに対して人民委員から抗議の声があがると、“これは人民裁判であり、誰でも告発できるし、弁護もできる”とウニョクは検事として、人間として、裁判の正当性を訴える。このままでは面子が立たないという副委員長に、面子を立てるためにむやみに人を殺してはならないときっぱり言い切るウニョクは“真実の無い裁判をどうして裁判といえるのか”と恐怖政治から脱しようと一人戦っていた。

ソッキョンは許しを請うためにイ・インピョンの元に向かい、心から自分の弱さを謝罪すると、インピョンは昔と変わらぬ笑顔でソッキョンを優しく見つめていた。

「国軍が戻ってきたらこの恨みをきっとはらします...トンウさんの恨みを晴らします」

ソッキョンの手をとり「ありがとう」と微笑むトンウの父は、幼い頃から娘のように愛してきたソッキョンを責めることはなかった。

一方、裁判でインピョンを弁護したソン秘書はチョルヒョンに暴行を受け、誰の指示なのかと問い詰められると、その場にウニョクが現れ、 ソン秘書に掴みかかるチョルヒョンを引き離す。ソン秘書に事前にインピョンを助けるため、弁護をするよう促したのは実はウニョクだった。

〜回想〜

「全てはソン秘書にかかっています。失敗すれば、旦那様を助け出すことはできません」

「ありがとうございました、ありがとうございました、チェ教授...」


ウニョクを疑い、チョルヒョンは怒りにまかせて“お前には革命よりイ・インピョンやイ・ドンウが大事なのか?”とウニョクに掴み掛かる。

「俺は共和国から権限を与えられたものとして俺の任務を果たしただけだ。イ・インピョンを裁判に立たせ、死刑を論告したのは検事としての俺の役目で、トンウの友人として友人の父に対する道理を尽くしたのは、一個人であるチェ・ウニョクの良心だ!」

何よりも信念を重んじるチョルヒョンと、信念と、人間として守らなければならない尊厳とをどちらも大切にしようとするウニョクとの溝はどんどんと深まっていく。


【人民委員会】

イ・インピョンが過去に臨時政府に3回にわたって寄託したのは事実であることを確認したムン・ドンギは、この裁判の検事としてイ・インピョンの刑を申し渡すようウニョクに全てを託す。

【人民裁判】

イ・インピョンとともに裁判に立たされた他の二人には無常にも死刑判決が言い渡される。そして、いよいよイ・インピョンの判決をウニョクが言い渡す時がやってくる。

「臨時政府に独立資金を献納し、一時教育事業に身を尽くした功労は認める。しかし親日行為や米軍政府との結託で民族の正気を濁し、徳山銅鉱山で多くの
労働者を死に追いやった罪、不法で敵産企業払い下げを受け労働者を搾取した罪は審判を受けて当然である」

この時、民衆の中にトンウを見つけ、動揺するウニョクは言葉に詰まってしまうが、ムン・ドンギに促され刑を言い渡す。

「よって本人民裁判では、イ・インピョンの全財産を没収し、労働刑20年を求刑します。人民の皆さん同意しますか?」

人民らの賛成の声により、判決がムン・ドンギにより言い渡されると、イ・インピョンは“トンギ、お前の兄さんがこの席に立たなくてよかった”と穏やかに語りかける。

死刑判決を受けた二人は無残に処刑され、残された家族が悲しみと衝撃で泣き崩れる様子を見て胸を痛めるウニョクだった。この人民裁判の様子全てを見届けていたヘギョンはウニョクに抗議にやってくる。

「こんなにも残酷な人だとは知らなかったわ...私に恥ずかしくない世の中を作るといったのはこんなことだったの? お年寄りを死に追いやらなければオラボニの望む世界が来ないんですか?」

「俺の姉さんは12歳で坑道に入って石を切って銅を掘った。そのときトンウの父は何をしていた?額ほどの土地さえもてない...この地の大多数の人民は生まれてひとり立ちできる年になれば仕事をする。野で、山で、炭鉱で... 腰が曲がって老いて死ぬまで 空腹に耐え仕事をする...どうしてその子供たちやお年寄りたちが働くのは良くて、イ・インピョン委員はだめなのだ!」

「なぜなら、なぜならば、オラボニのために命をかけたトンウさんのお父様だからです!クミ姉さんに対する私的な復讐心が入ってはいけないからです。しかもそれはムン子爵時代のことです!

「お前には俺がそんなに稚拙に見えたのか?お前の目に映った俺はそんなやつだったのか?先に行く...」

取り戻せない二人の間の距離に、それぞれの涙を流すウニョクとヘギョンだった。

人民裁判で見かけたトンウを私服で一人探し回るウニョクの姿を見かけたトンウは、銃を片手にウニョクの前に姿を現す。

「トンウ!生きていたのか!」

生きていたことを知り、嬉しそうにトンウに近づくウニョクに、トンウは表情を変えず銃を突きつける。