オーケストラのための準備金3億ウォンが詐欺にあった事をイ・ドゥンからの知らせで市長が知ってしまい、トゥ・ルミはは窮地に立たされる。市長の元へ呼ばれたルミはうつむいたまま何も言えずに座っていた。遅れて現れたカン・マエが市長に事情を全て話してしまい、指揮者の交代などでルミに腹を立てていたカン・マエは、市長の謝罪の言葉を受け入れ、迷わずソンナン市を離れるつもりで席を立つ。カン・マエが部屋を出ようとした瞬間、秘書がチョン・ミョンファンから市長あての電話 を受ける。その内容から後任者がまさにチョン・ミョンファンだと察したカン・マエは、踵を返し、市長の前に戻ると、後任は私が探すと申し出る。ところが市長はカン・マエのこれまでの経歴を調べており、カン・マエが第一級の指揮者でありながら、一つの楽団に6ヶ月以上在籍したことがない事実や奏者たちが最も共演したくない指揮者の一位といわれていることを並べ立てる。チョン・ミョンファンの実績について触れた後、市長はカン・マエにはゆっくり休んでいただきたいと話し、やんわりとカン・マエを遠ざけようと試みる。
すると無表情のままのカン・マエが、緑茶のティーパックを掴み、チョン・ミョンファンならこの緑茶でも素晴らしい味が出せるのかと突然ティーパックを食べてしまう。
−幸い香りが少し残っているようだ…大丈夫です。可能です。私も魔術を一度お見せしましょう。後任ではなく、私が直接お見せします。公演、期待してもらって結構です。
呆気に取られていた市長とキム係長は、席を立つカン・マエの後を追うが、カン・マエは意に介さず、ルミに20分後から練習を始められるよう団員らをすぐに呼び集めるようにと言い市庁を後にする。
練習室のある建物の屋上に集まった団員たちを前に、カン・マエが団員1人1人に対し質問を始める。
−キム・ガビョンさん。市響にいらっしゃったそうですね。何故引退をされました?
−年齢が…
−辞めろといわれて辞めたと?その健康な57歳が?
−規定が…
−他のオーケストラへ何故入らなかったのですか?
−年齢が..
−弁明です。
カン・マエ、ヒョッコンの前に立つ。
−大学を卒業して何故オーケストラに入らなかったのですか?
−受け入れ先がなくて..
−弁明です。
次にカン・マエが向かったのはペ・ヨンギの前。
−音大は何故行かなかったのです?
−父が病気だったので就職を…
−お母さんは?兄弟は、姉は妹は、何をなさっているのです?
−私は一人っ子で、母も留守が多くて…父を助けようと
−病気だと何もできないとでも?具合が悪いとラーメンすら煮て食べられないと?
−それでも親ですから...
−それとぺ・ヨンギさんと何の関係があるんです?
団員たちに向かって続けるカン・マエ。
−子供、両親、他は必要ありません!自分のことだけ考えればいいんです!
コヌに近づくカン・マエ。
−お前は何故大学へ行かなかった。
−まぁ、傲慢なバカが何も望むものはないか...
コヌが答える前に冷たく言い放つカン・マエに、コヌがあきれた表情を浮かべる。
−利己的になりなさい。皆さんたちは善良すぎる。いや、善良ではなくバカです。両親のため、子供のために犠牲になった?錯覚です。結局皆さんのこのザマは何です?やりたいこともなく、生活も苦しく、誰かのために犠牲になったと被害妄想が生じているのではありませんか?これは善良でもバカでもなく卑怯なことです!腹さえ括ればいくらでも作り出せる百種類を超える言い訳ばかりして逃げてきたんです、皆さんは!もうこれ以上逃げる場もありません。ここは崖っぷち…屋上です。それでも私には無理だと思う方はとめません。どうぞ、最後に逃げる機会を与えます。
意を決したヒョッコンが手を上げて前に歩み出ると、すかさずカン・マエが続ける。
−ただし、あの扉は私が閉めましたので、(屋上の柵を指さしながら)逃げ道はあちら側だけです。3秒あげます。1,2,3!いませんか?はい、いいでしょう。皆さんの選択を尊重します。
強引ともいえるカン・マエのスタイルに誰一人反論を許されないまま、カン・マエの丁寧な指導での練習が始まる。指導してもらえたことに喜ぶ団員たちにカン・マエは憮然とした表情を浮かべる。
−皆さん方には自尊心もないのですか?
プロならこんなことはありません、あり得ません。いくら指揮者だからといってプロに対してああしろこうしろとテクニックに干渉しません。皆さんは今気分を悪くするべきところです。だが自尊心をすぐに持つようにできませんのでこのやり方でいきます。
団員たちが練習中、一人自室にいるカン・マエの前に、ライバルであるチョン・ミョンファンが姿を現す。彼らの実力を見たいというミョンファンを止めるカン・マエ に、事情を聞いていたミョンファンはあと2週間であっても彼らには無理だろうと話す。団員たちへの配慮もできないカン・マエには、彼らの指導は難しいだろうと言い残し、ミョンファンは部屋を出 てしまう。
団員たちの練習の様子を見守っていたカン・マエは、彼らが変らずコヌを頼りにしていることを悟り、右手に怪我をしたように装い、練習期間中コヌを指揮者として指導しようと試みる。
一方、市長はオーケストラの公演を取りやめようと考えていたが、政敵のチェ議員の言葉を受け、何が何でも公演を成功させようと決意する。早速オーケストラの練習室に現れた市長は、彼らの水準を見たいとカン・マエに申し出るが、その言葉にカン・マエは眉をひそめる。指揮台を降りたカン・マエはシューベルトの「ます」のメロディをピアノで奏でた後、誰の曲か分かりますかと市長に尋ねる。市長は咄嗟に答えることができずにいると、カン・マエがシューベルトについて語り始める。
−そう、シューベルト。だがすぐにその才能は認められませんでした。ピアノも買えず、ギターで作曲するほどでした。まさに経歴を重視するあなたのような人のせいで!
他にもロッシーニの貧しさ、ショパンの栄養失調、シューマンの精神疾患、ビバルディの貧しさなどを語るカン・マエは、さらに自分もかつて貧しかったことと経歴もなかった事実を打ち明ける。お金もなく、ピアノもない、そんな自分には音楽を楽しむ資格もないのかと続けるカン・マエに、ルミやコヌや団員たちは驚いた表情を浮かべ、さらに市長も言葉が出てこない。 それでも経歴は必要だと続ける市長に対し、今度はルミが団員たちを擁護する態度を取ると、市長はルミに腹を立て、出ていって辞表を持ってこいと怒鳴る。立ち上がるルミに“座れ”と言ったカン・マエは、ルミを庇い、“私の楽長だ”と断固とした態度を取り、ここにいる人は私のオーケストラの団員であり、むやみに見下すことは我慢できないと、彼らを見下す権利はただ私にだけあると主張する。失敗することがあれば、市長の足マッサージでもすると約束するカン・マエの姿に、団員たちは彼の新しい一面を見ることになる。練習後、カン・マエはルミに対して指揮者と楽長、団員は一心同体だと言葉をかけ、その言葉にルミは安心したように微笑む。
そんな中、停職中のコヌは、公演当日が復職予定の日であることに気がつき、事情をカン・マエに話すが、カン・マエはここまで来て途中でやめることは許さないと言い、コヌの言葉を聞きいれようとしない。音楽への情熱が芽生え始めていたコヌは、直属の上司に事情を話すが、当然受け入れてもらえず、直接署長に話そうと試みるが、なかなか機会が巡ってこない。
一方、オーケストラを辞める決心を固めたチョン・ヒヨンだったが、オーケストラの一員としてチェロを弾きたい想いは消すことはできなかった。夫と言い争いになり、家を飛び出したヒヨンが向かったのは甥であるコヌの家だった。ところが署長に会うため不在のコヌに変わって、ドアを開けたのはカン・マエだった。酒に酔って正気を失った状態で泣きながらチェロへの想いを打ち明けるヒヨンの姿を見たカン・マエは、胸が痛み思わず外に出てしまう。
公演が迫り、団員達の結束が徐々に固まり始めるが、肝心のソロパートの楽器の決定がまだ発表されていなかった。団員たちに質問されたカン・マエは、沈んだ表情で練習室に入ってきたコヌをちらりと目にすると、トランペット奏者コヌにソロを任せると発表する。
:::베토벤 바이러스:::
韓国MBCドラマ18部作
(韓国放送日:2008.9.10〜2008.11.12)
企画:オ・ギョンフン/演出:イ・ジェギュ/脚本:ホン・ジナ.ホン・ジャラム/主演:「白い巨塔」「不滅の李舜臣」キム・ミョンミン.「ファン・ジニ」チャン・グンソク.「太王四神記」のイ・ジア。