Beethoven Virus  第8話

公園にルミを呼び出したカン・マエは、現実から目を背けているかのようなルミの態度に心配が募り、現実に向き合わせようと あえて厳しい言葉をルミにぶつける。

耳が聞こえない、それがどんなことか分かるのか?傍にいる人たちの声が聞こえないということだ、会話もできない!山へ行こうと鳥の声も聞こえず、海へ行こうと波の音も聞こえない、雷もただ光だけ見えて自動車も無音で近づいてただお前のそばを通り過ぎて行くということだ!...何より音楽が消える!君のそのヴァイオリン!

 カン・マエの言葉に傷ついたルミは何も答えることもできず、ただショックを受け茫然としたまま涙を流す。

聴神経腫瘍?なるべくしてなったんだな。ピッタリだ、君に!

呆れたような表情でルミを一瞥し、カン・マエはルミを置いて1人歩き出す。

−おい!止まれ!

カン・マエの態度に傷つき、“ただ実感がないだ”と話すルミに、湖に飛び込めば実感できるだろう、飛び込んでみろと言うカン・マエ。この言葉に頷いたルミは湖に向かって走り出し、カン・マエの目の前で湖に飛び込んでしまう。

おい!トゥトゥ・ルミ!

目を閉じたまま湖の中に落ちたルミは、徐々に息苦しくなり、意識が遠のいていく。カン・マエはルミが浮かび上がってこないことで慌てるが、水に飛び込むことができず、ただ水の中に向かって叫び、そわそわしながら近くにあった竿を手に 、水中をつついてみながら“誰かいませんか!”と助けを求める。すると近くに居合わせた青年が事情を知り、すぐに助けに飛び込んでくれたことで、ルミは無事湖から助け出される。

カン・マエはルミを車に乗せ、家まで運転して帰ると、手作りの温かいシチューをルミのために用意する。その頃、コヌはカン・マエに贈るワインを選んでいた。幸せそうな表情でシチューを食べるルミを呆れたように見つめるカン・マエ。

−君は元々こんなに間抜けだったのか?

−いい薬になると思いからかっただけなのに本当に飛び込むやつがいるか?死ぬかもしれないとは思わなかったのか?

−飛び込むしかありません。そうでなければ私が猫をかぶっているとブツブツ言われるもの

−それを真に受けるのか?強めに警告しただけのことなのに、それを

−なら先生は警告を何故してくれたんですか?ただの団員が耳が聞こえなくなろうが、気がつこうがどうしようが関係ないのでは?先生はそんなの知ったことではないでしょう?

気まずい表情で答えをためらうカン・マエは、ルミが食べ終わったのを見てあたふたと食器を片付けようとするが、ルミは食器をしっかり掴み、カン・マエを覗き込む。

−先生、さっき私がおぼれている間、何を考えていました?周りに誰かいるかをまず見たでしょう?目撃者がいなければ逃げようってさらに誰か現れたら自殺ほう助罪で捕まっては大変だって。もしくはレクイエムを選んでいたかしら?葬送曲の素敵なものを選んで、葬儀のときは指揮するべきだ、それで罪が償えるかもしれない..って。(笑って)そうでしょう?

ルミの言葉に真剣な表情で答えるカン・マエ

−君に二度と会えないかと思った...。君をからかうのがかなり面白いから、それができないからという意味だ。何をそんなに緊張してる?

 驚いて黙ったままのルミをよそに、急いで食器を片付けるカン・マエは、部屋が臭くなるからシャワーを浴び るようルミに話す。カン・マエの部屋でシャワーを浴びたルミは、着替えが無いことで戸惑っていると、ベッドの上にさりげなく準備されていたカン・マエの洋服を見つけて袖を通す。ルミがカン・マエの服を着て居間へ戻ってくると、そこへ荷物とワインを手にしたコヌが戻ってくる。ルミを見て驚くコヌ。

−お前ここで何してる?

−ああ、それがねシャワーを浴びたんだけど、服が濡れてしまって..

−?シャワー?ここで?何故だ?

−だからね、その湖に落ちたの。先生が服を、シャワーを

ルミが慌てている様子に、カン・マエはコヌが誤解しないよう“事故に遭った”と咄嗟に言い訳をする。さらにカン・マエはちらりとルミを見て、話を合わせるように目で合図する。二人が苦しい言い訳を続けるが、コヌは真っ先にルミが怪我をしなかったかと心配し、さらに湖で車に落ちたのに何故車が濡れていないのかと尋ねる。ところがそんなコヌにカン・マエが何故戻ってきたのかと話の方向を変えてしまう。ルミが部屋を出ると、コヌはカン・マエにワインを手渡し、また先生に習いたいと申し出る。

−私をけなしたそうですね?無知なくせに礼儀知らずで、生意気ですって?クセをおさえてしっかりしつけろとか?頭にきて戻ってきました。そんな奴じゃないと見せるつもりです。先生の傍で指揮法をパッとマスターして自分のものにして、カン・ゴヌは良く考えればいい奴だったと自白してもらいます。覚悟してくださいよ。オーケストラで研究団員を続けながら勉強し、大学も行きます。指揮デビューもして、認められて見せますよ。

誰がお前の計画を聞きたいといった?だからといって私の元に戻る必要はないだろう

そんなふうに素敵な指揮者になって先生に会いに行きます。行って、僕を育てた人はこの人だ、この人がいたから今の僕がある、世界最高の指揮者はチョン・ミョンファンではなく、まさにこの、カン・ゴヌマエストロだ世の中に宣言しますよ。

そういって微笑むコヌに、心の内を隠すようにカン・マエはいつものように淡々とした表情で“笑うな”と言い、さらに“兄さん”と呼びかけられ、驚いた表情を浮かべたまま固まってしまう。

 ああ、うちの一番上の兄さんが先生と同じくらいの年なんです。呼んでみたくて

当惑したまま何を言ったらいいのか分からないままのカン・マエ

−...私には姉が1人だけだ、弟はいない。

相変わらずの返事だったが、コヌはニッコリと笑い、カン・マエの方を真っ直ぐに向き、ピンと背筋を伸ばす。

−一生補佐します!忠誠!


カン・マエ率いるソンナン市響の文化図書館開館記念演奏会が予定されていたある日、図書館の中央で演奏する市響メンバーの中に、有名なヴァイオリニスト、ヨンジェ・オニールの姿を見つけたルミたちは 、彼を羨望の眼差しで見守る。そんな中、オーボエ奏者カビョンの姿が見えないことに気づいたコヌは、館内を探しに行く。ようやくカビョンを見つけたコヌが声をかけると、コヌに対し敬語を使い他人のように接するカビョン 。一瞬戸惑うコヌだったが、すぐに事情を察し、表情を曇らせる。市長らの見守る中、市響の演奏が始まるが、カビョンが全く演奏できず、本人はもちろんカン・マエや周囲の団員らの表情は青ざめていく。演奏終了後、カビョンを心配したイドゥンは男性用のトイレに入ったままのカビョンの元へ向か い、言葉を
かける。そんな二人の会話を、偶然カン・マエが耳にしてしまっていた。

近づく創立公演の打ち合わせのため市長の元を訪ねたカン・マエは、市長からベートーベンの「第九」公演メイン曲にして欲しいと 以来される。カン・マエは現在のオーケストラの規模では難しいだろうと答え、合唱団と客員も必要になる曲の演奏は無理であると市長の申し出を拒否する。同席していたキム係長から、この曲を演奏するたびにトラブルが起こるというジンク スについて触れられたカン・マエは、余計に意固地になり「第九」の演奏を拒み続ける。市響は市民が望む曲を演奏すべきであり、一度客員の実力をテストしてみてはどうかとキム係長が提案すると、市長もそれに同意し、客員であるルミたちの試験が行われることになる。

 客員らにベートーベン「第九」の楽譜が配られ、カン・マエの指揮で彼らの演奏が始まると、その実力の素晴らしさにカン・マエの表情が変わっていく。明らかにこの曲を練習してきたかのような彼らの様子を不思議に感じたカン・マエは、練習室から一旦出ると、ヒョックォンに事情を尋ねる。ヒョックォンから彼らが練習していたのはこの曲だけではない、と聞かされたカン・マエは、再び団員らの前に姿を見せる。 

−楽譜に穴が開きませんでしたか?1ヶ月間この曲だけ練習したそうですね? (団員らがヒョックォンをじっと睨む様子を見て)パク・ヒョックォンさんが話したのではありません。どう考えてもおかしいのでエサを投げてみただけですが、すぐにかかりましたね。 

落ち込む団員たちを注意深く見たカン・マエはルミに視線が止まり、友人の医師の言葉を思い出す。

 −いいでしょう。やってみましょう。私が注目したのは 、1曲だけ集中練習したことではありません。“1ヶ月”です。1ヶ月の間練習してこの程度...簡単ではありません。(微笑んで)実力もずいぶん伸びました。頑張りましたね。

カン・マエの褒め言葉を素直に受け止めることができない団員たちは、しばらくどう解釈していいのかも分からずに固まってしまい、ヒヨンが思い切ってカン・マエに質問する。

−やってみようというのは...公演のことですか?

ええ、可能性を信じてやってみようということです。何です?したくありませんか?

ようやく実感の湧いた団員たちから歓声が 上がるが、その後カン・マエがカビョンに伝えた言葉に、水を打ったように静まり返る。

キム・ガビョン先生、先生はダメだということはご存知ですね?...認知症だからです。

イドゥンが抗議するが、カン・マエは全く介さずに続ける。

これまで大変お疲れ様でした。明日からは参加いただかなくて結構です。

練習室を去るカン・マエを追い、カビョンはカン・マエの部屋で自分は健康だと主張する。 

−私は先生の実力を誰よりも知っている人間です。だから年齢制限も無視してきました、それでも先生にやめていただくことにした理由は何だとお考えですか?

全く分からないと答えるカビョンに、コヌから聞かされた図書館での出来事を話すカン・マエ。ところがカビョンは音楽を続けていたい一心で弁明を続ける。

−一度だけ機会をください。今度失敗したら自分から辞職します。

−できません。先生を使うくらいなら、むしろ路頭の音楽家を使います。彼らは道端で10時間演奏しても平気でしょう。実力も重要ですが、公演出来るか出来ないかも重要です。私に必要なのは、実力と健康を兼ね備えた方々です。先生は違います。

明確に意思を伝えたカン・マエは、ソファーから立ち上がると、自分の机へと向かう。しばらく の間動くことすらできずにいたカビョンがようやく立ち上がり、部屋を出ようとした瞬間、カン・マエが“認知症でしょう?”と追い打ちをかけるような一言を言う。珍しく大きな声を出し、それを否定したカビョンは、自分にとって命のように大切な品格やプライドや名誉を失うわけにはいかないと言い、部屋を出ていく。カビョンはその足で街頭へと向かうと、オーボエを取り出し、路上で演奏を始める。事情を知ったルミ は、カン・マエにカビョンを受け入れて欲しいと願い出る。カビョンの傍でヨンギやヒヨン、イドゥンらも演奏を始め、彼らの周囲には徐々に人が集まり始める。 そんな様子を見せようと、コヌはカン・マエ に食事をしようと言いその場に連れ出す。コヌとカン・マエが見守る中、たった一人で演奏し続けるカビョンだったが、夜になると客引きをする店の店員に絡まれ、楽器を粗末に扱われてしまう。黙って見守り続けていたカン・マエは、たまらずコヌと共にカビョンを助けに向かう。楽器を片付け 始めるカビョンにカン・マエが語りかける。

9時間35分たちました。明日の練習は9時からです。お疲れでしょう、しっかり休養を取ってきてください。これからが問題です、戦争ですよ。 (嬉しそうに微笑むカビョンに、もう一度)...認知症でしょう?

違います。

−25分残っています。しっかり演奏してください。

翌日、カビョンを含む研究団員たちは市響のメンバーらと共に練習に参加する。練習が始まり、カン・マエ は市響メンバーの演奏に細かい指導をするが、彼らは受け取ったばかりの楽譜だからと弁明をする。カン・マエの口の悪さに腹を立てた市響メンバーたち は、カン・マエに認められている客員らに反発心を抱き、経歴のない客員にも、配慮の無い指揮者にも耐えられない と言い、席を立ってしまう。

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Information

  • :::베토벤 바이러스:::
    韓国MBCドラマ18部作
    (韓国放送日:2008.9.10〜2008.11.12)

    企画:オ・ギョンフン/演出:イ・ジェギュ/脚本:ホン・ジナ.ホン・ジャラム/主演:「白い巨塔」「不滅の李舜臣」キム・ミョンミン.「ファン・ジニ」チャン・グンソク.「太王四神記」のイ・ジア。
     

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