【雲住寺】
部下との再会を果たし、王孫ソッキョンへの忠誠を再び胸に誓うテハは、ヘウォンと部下を連れ寺へと向かう。
テギルが臥仏のある山頂へと到着すると、すでにテハ一行は姿を消していた。近くの寺の中に一行がいることを察したテギルは、仲間と共にすぐに追跡を始める。
【仁祖王 左議政イ・ギョンシクと密談】
亡き長男昭顕が遺した唯一の血縁であり、自分の孫にも当たるソッキョンを目障りに感じている仁祖王は、清国の使臣としてヨンゴルテが来る日を警戒しながら、左議政イ・ギョンシクにチェジュ島にいるソッキョンを暗殺するように指示を出す。
【寺院内 テハとヘウォン】
祈りをささげるヘウォンの隣にテハがやってくる。
−お役人様の将来が穏やかであるよう、祈りを捧げていました
−そろそろ出発の時間です...
−はい
−どこへ行くのか、どうしてお聞きにならないのです?
−どこへ行くのかは重要ではありません。誰と行くのかが、重要ですから
【テギル 寺へ】
寺へたどりついたテギルらが扉を開けた瞬間、視界に入ったのは寺の小坊主だけだった。小坊主の話から、テハ一行が寺の後ろのふもとに通じる道へ降りたことと、オンニョンも一緒だったことを知ったテギルらは、急いで山を降りる。遺された馬の蹄の跡などから、彼らが足跡を消しながら進んでいることを悟ったテギルは、少し前にすれ違った籠を持った男らの存在を思い出す。ソルファの話から籠を持った男たちの行き先を追ったテギルは、山中に置き去りにされた籠を発見する。真っ先に籠に近づき、その中に手を伸ばすテギルは、敷物にぬくもりが残っているのを感じながらも、オンニョンを咄嗟に守ろうと、仲間にすでに敷物が冷たいと嘘をつく。
【朝鮮重臣ら 清国使臣ヨンゴルテと】
清国からやってきたヨンゴルテは、仁祖王に会う前に、昭顕の息子で一人残ったソッキョンを自分が育てたいとの難題を申し出てイ・ジョンシクらを閉口させる。
【儒学者チョの元へ】
夜が更ける頃、ようやくソン・テハは王孫と部下と共に、目的地である儒学者チョの元に辿りつく。テハの到着を心から歓迎するチョに対し、テハは師匠を守りきれなかったことを心から謝罪する。大勢に歓迎を受けながらも、テハはまだ到着していないヘウォンを案じていた。
【テギルとチェ将軍】
その夜、なかなか眠りにつくことのできないテギルの様子を案じたチェ将軍が、“オンニョンを見つけたらどうするのか”と語りかける。 奴婢を二人捕らえるだけのことといつものように答えるテギル。
−婚礼が事実で幸せに暮らしていたら、どうするつもりだ?
−…幸せに暮らしたらダメだろう...俺がこんな生きザマなのに。俺がだ、こんな人生なのに…幸せに暮らしたらダメだ…
深く傷つき、動揺している様子のテギルに、チェ将軍はいつでも頼ってほしいと温かい言葉をかける。
【ヘウォン テハの元へ到着】
大門で官服に着替えてヘウォンの到着を今か今かと待つテハの前に、ヘウォンと部下たちが到着する。
テハ:いらっしゃいましたね。ずいぶん待ちました…
ヘウォン:(テハの官服姿に目をみはり)見違えました
テハ:久しぶりに着たら、他人の服を着ているような気がします
ヘウォン:官服をお召しになられると、手の届かない方のように感じます
テハ:中へどうぞ。部屋を準備しておきました
ハンソム:(部下に)ご案内しろ
テハ:いや…私が行こう
仲睦まじいテハとヘウォンの後姿を見て、クァンジェがハンソムに問いかける。
クァンジェ:あの女性は一体誰なんだ?
ハンソム:何..見て分からぬか?兄嫁だ
クァンジェ:“兄嫁”?お前に兄上がいたのか?
ハンソム:おい、奴婢に落ちて頭の回転も落ちたな…全く
クァンジェ:お前にとっての兄嫁なら俺にとっても兄嫁だが…兄上はどこにいる?
ハンソム:全く、鈍い奴だな...
【ファン・チョルン 漢陽へ】
テハを捕らえることに失敗し、その上怪我まで負ったチョルンは、漢陽にたどり着いても、母の元へも帰ることのできない。傷ついた体を引きずりながら夜の街を彷徨い、寒空の下とうとう意識を失い倒れてしまったチョルンは、オ捕校に発見され、妻の元へと戻される。怪我を負い、意識のないチョルンに、ただただ失望するイ・ギョンシク。
【ヘウォン 炊事場】
炊事場で朝食の支度をしているヘウォンを見つけて驚くハンソム。
ハンソム:...何をなさっているのですか、兄嫁様!
ヘウォン:お米を炊こうと…
ハンソム:ああ、置いておいてください。我々がすればいいことです
ヘウォン:男性が炊事をするだなんて!もう出てください
ハンソム:私にも出来ますが…
ヘウォン:さぁ、早く出てください
ハンソム:…はい、それでは
戸惑いながらハンソムが炊事場を後にすると、食事の支度をするヘウォンの元にテハが姿を見せる。笑顔でテハを見つめるヘウォン。
テハ:よく眠れましたか?
ヘウォン:綿の布団がむしろ慣れなくて…
テハ:食事の支度をなさっていると報告を受けました
ヘウォン:そんなことまで報告を受けるのですか?
テハ:戦場で炊事をするのは朝飯前の部下たちです。任せて出てください
ヘウォン:そうとは言っても彼らは女性にも勝るのですか?
テハ:これまで苦労されましたから、ゆっくりしなければ…
ヘウォン:どうしてそんなに鈍感なんですか?私の手で、お役人様にご飯を炊きたくてしているのです。
テハ:分かりました…
ヘウォン:これからは男性は台所に立ち入り禁止と伝えてください
テハ:そうしましょう
ヘウォン:お肉でも煮ないと…買いに行かないといけません
テハ:すぐに準備させます
ヘウォンの真心を知り、うれしそうに微笑むテハは、一度炊事場に背を向けた後、ふと振り返る。
テハ:ありがとう、一緒にいてくれて...
初めてテハが自分にかけてくれたくだけた言葉遣いに、ヘウォンは喜びがこみ上げる。
【目を覚ますチョルン】
瀕死のチョルンがようやく意識を取り戻すと、そこにはイ・ギョンシクが待ち構えていた。
−チェジュのことはどうなった?なぜ答えない?
−婿も息子だと仰いませんでしたか?体はどうかと聞くのが先では?
−息子になりたかったのか?任務は終えたのか?またチェジュへ行くのか?
−あの方はチェジュにいらっしゃいません
−どちらにいらっしゃる?
−ソン・テハが…先に手を回しました。
−失望したな!お前がその程度の人間だとは、知らなかったぞ!
−あと一息で逃しただけです
−過程などはどうでもよい。ただ、結果だけが全てを物語るのだ!
−私が見つけ出します
−そうしなければ、でなければ死んだとしても、ふたたび戻れる場所などないぞ!
チョルンの身を案じることもなく、ただ権力に固執するイ・ギョンシクは、王に事実を報告し、厳しい言葉を受け止める。
【儒学者チョ テハと】
王孫ソッキョンを保護した儒学者のチョは、テハの前で新しい朝鮮のために革命を起こすと宣言する。
チョ:ついに王孫様をお迎えできた。我々は現世子の鳳林大君を否認し、王孫様を新たな世子様とし、全身全霊を注ぎ新たな朝鮮を取り戻すのだ!師匠なき今、お前と私が先導せねばならん。
儒学者:我々は皆ソン将軍を信じています!ソン将軍が先頭に立ってください
テハ:計画はありますか?
チョ:全国に通知し、志あるものを集め 時をあわせて挙兵する
テハ:謀反をなさるおつもりですか?
チョ:上書をあげるだけでは解決できる問題ではない
テハ:王孫様の赦免を…
チョ:王孫様ではなく、“世子”だ!
テハ:世子様の赦免を請いながら鳳林大君に会われてはいかがでしょう
チョ:朝廷はすでに左議政派の天下だというのに、奴らが世子様の即位を認めると思うか?
テハ:挙兵をするならば、多くの人が死ぬことになります
チョ:血を流さずに成功した革命はあるのか…すでに支持者は至る所にいる。そなたもまた私を信じてくれることを願う。将軍には革命軍の長となってもらう!
自分の目指す革命とは別の革命を企てるチョ学者の言葉に、テハは言葉を失ってしまう。
チョ:そしてあの女性だが...
テハ:信頼できる人ですので、心配はご無用です
チョ:我々の命運だけでなく、朝鮮の将来がかかっている問題だ。保安の上でも、外部のものを入れるのはまずい
テハ:あの女性は、私の妻になる人です
チョ:おい、ソン将軍!
テハ:必要であれば、婚礼の儀を行います
チョ:慎重に考えろ。志を抱く男にとってつねに、女は障害になりえる
テハ:気持ちはすでに固まっております。お先に失礼します…
【テハ ヘウォンの元へ】
周囲の圧力に屈しないためにも、一日も早くヘウォンの身を守ろうと考えたテハは、王孫の面倒を見ているヘウォンの部屋へと向かい、縁側に腰掛ける。
ヘウォン:外は寒いですよ、中へどうぞ
テハ:いいえ
ヘウォン:突然男女の礼に忠実のようですね…お入りください
テハ:私と…結婚しませんか?
ヘウォン:...はい?
テハ:婚礼をあげる必要があるということです
ヘウォン:必要というと?婚礼は、必要だからあげるのでしょうか?
テハ:そうではありませんが、王孫様にお仕えする人も必要ですし
ヘウォン:それなら乳母を雇ってください
テハ:部下の目もありますし...
ヘウォン:体面のためですか?
テハ:あなたがこうしているのを不安に思う者がいるかもしれないので...
ヘウォン:では私が去りましょう
ては:婚姻は断るということですか?
ヘウォン:はい…お役人様に必要なのは、夫人よりも、支えとなる友人や忠実な部下ではありませんか?
テハ:それは違います
ヘウォン:では何なのですか?何が必要で、私と婚礼を挙げようと仰るのですか?
テハ:...
ヘウォン:王孫様が風邪をひきます。戸を閉めましょう
テハは何も言えないまま、立ち上がり扉を閉める。
【テハ 再びヘウォンの元へ】
テハ:入ります
今度は部屋に入り、ヘウォンの前に座るテハ。
ては:私は今…どうあがいても逃亡中の奴婢です。あなたは両班の女性です。奴婢が、そのような方に、求婚してもよろしいでしょうか?
ヘウォン:どんな身分かより、どんな人かが大切です。奴婢であることは、何の意味もありません
テハ:先ほど、何が必要で婚礼をあげるのかと聞かれましたね?私には、あなたが必要です。恩を返すためでもなく、責任感のためでもない、これまで苦楽をともにした義理のためでもありません。ただあなただけが私の心の中にいるからです。生涯…大切にします…私と結婚してくださいますか?
涙を浮かべてテハを見つめるヘウォンは、テハの真心のこもった求婚に胸を熱くする。
テハ:変わることなく、一途な男になります...
ヘウォンは、熱い涙を流しながらテハに問いかける。
ヘウォン:私に望むことはないのでしょうか?“いい妻になってくれ”とか、でなければ“部下によくしてくれ”とか…
ヘウォンの言葉が求婚への答えだと悟ったテハは、笑顔を浮かべて愛しいヘウォンを見つめる。
【テギル チョ学者宅へ】
テハとヘウォンの婚礼の準備が着々と進む中、
手がかりを掴んだテギルは、テハ一行が身を寄せるチョ学者宅へ進入する。
その頃、テハを革命軍の長として集う儒学者らが、テハの婚礼に反対の動きを見せる。儒学者らの声を聞いたチョ学者もまた、革命に男女の情など必要ない
と、テハの突然の行動に反発する。
【テギル テハとヘウォンの元へ】
テハの姿を見つけたテギルは、建物の影に身を隠し、短刀を握り締める。テハに向かおうとしたその瞬間、テギルの視界に10年間探し続けた女性オンニョンの姿が...。テギルの目に映るオンニョンは、幸せそうに微笑み
、テギルの狙うソン・テハと見つめ合っていた。
手を取り合い、微笑む二人の姿に凍りつくテギル。テギルの脳裏に
は、かつて自分を見つめ微笑んだオンニョンの姿が浮かぶが...
第11話 あらすじ / 第13話 あらすじ