【テギル テハとヘウォンの元へ】
消息を求め続けた愛する女性オンニョンと、自分が命懸けで行方を捜してきたソン・テハが、手を取り合い、見つめ合い、幸せそうに微笑む姿を見てしまったテギルは、建物の影に隠れたまま身動きすら取ることもできない。そんな二人の間に王孫が歩み寄り、オンニョンが抱き上げた様子に、テギルはすでに二人の間には幼い子供までもいると思い込み、激しいショックを受ける。
こみ上げる悲しみを必死で胸の奥にしまい込みながらも、テギルは全身の力が抜けていくのを感じていた。ふと、テハが人の気配に気がつき様子を見に行くと、すでにテギルは姿を消していた。
【テハとヘウォン婚礼の儀】
テハとヘウォンの婚礼の儀は、王孫はもちろん、部下ハンソムやクァンジェらに見守られる中、厳かに行われる。
その頃、重い足取りで人通りの多い市場にたどり着いたテギルは、力を失ったように座り込むと、10年間大切に抱き続けたオンニョンの似顔絵を見つめながら、涙を流していた。テギルの頬を大粒の涙が次々と伝い、ソルファが近くにいることにも気づかないまま、とうとうテギルは声を上げて泣き叫び始める。テギルの胸の痛みを感じたソルファもまた胸が引き裂かれるような痛みを感じて涙を流す。
【漢陽】
チョルンに部下を殺され、失意のまま漢陽の居場所へ戻ってきたチョン・ジホは、仲間の姿が見えないことを不審に思い、仲間の行方を捜し始める。画伯の話から仲間がチョルンによって殺されたと考えたチョン・ジホは、仲間の命を奪ったファン・チョルンの家に乗り込むことになる。
一方、傷が癒え、ソン・テハを倒すことへの執着から再び立ち上がったファン・チョルンは、儒学者の名簿を手に入れると、ソン・テハの行方を捜す過程で数々の殺戮を重ね、ついにソン・テハの居場所の手がかりとなる情報を得る。
【テギル 雲住寺へ】
行く当てもなく彷徨い、いつのまにか寺に向かったテギルは、自分の人生の全てだったオンニョンが、すでに他の男性と妻となっていた事実を受け止めようと苦しんでいた。
【ヘウォン 雲住寺へ】
テハとの婚礼の儀を終えたヘウォンは、心の中のテギルと決別するため、寺へと向かっていた。ところが寺の入り口でチョ学士に引き止められ、ソン将軍の障害になる行動はやめて欲しいとの言葉に、寺には入らず引き返し、テギルとはすれ違うことになる。
【仁祖王 清国使臣と】
訪朝中の清国の使臣ヨンゴルテは、仁祖王が昭顕世子の息子ソッキョンについての申し出を受け入れないために、業を煮やして部下をチェジュ島へと送ることを決意する。
【チェ将軍 ワンソン】
テハの行き先について情報収集を続けていたワンソンは、ついに手がかりを掴み、食事をしながらチェ将軍に内容を報告する。そんな二人のそばで、テギルの涙を見てしまったソルファはいつになく食欲を失ったままでふさぎこんでいた。ソルファを気に掛けるチェ将軍とワンソン。
ソルファ:私…見たの。男が泣く姿…男の人があんなふうに泣けるんだなって思って…そんな男の人を見たら、なんだか嬉しくもあって、悲しくもあって…この世にあんな男の人がいるとは思わなかった。だけど…私はそんな人に近づくこともできない…
チェ将軍:ソルファ、何があったんだ?
ソルファ:だから男の人が泣くのを見たのよ
チェ将軍:男だからって泣かないとでも言うのか?早く飯でも食え
ワンソン:食べないならお前の分も俺が食うぞ!
その頃、テギルはふらふらとした足取りで、再びテハとヘウォンの滞在する屋敷へと向かっていた。
【テハ ヘウォンと向き合う】
テハ:世子が、清国の人質として留まられていらした時、後継をもっと残して欲しいと私が助言しました。その後生まれた方が、王孫様です。幼い頃、王孫様は大半の時間を私の胸で過ごされました。私にとっては王族である以前に、息子のような方です。しっかりお世話をしていただけますか?
ヘウォン:母親“代わり”になろうという考えは、ありません。真の母親になります
テハ:頼れる男になります...
ヘウォン:一途な妻になります
互いへの愛を誓い合い、微笑む二人の影を、テギルは障子戸越しに見つめながら、オンニョンの影に向かい手を伸ばしていた。
部屋の入り口に揃えられたオンニョンの靴に手を伸ばしたテギルは、オンニョンの靴を胸に抱くと、抱き続けた愛に決別するよう、テハの靴の隣に、オンニョンの靴をそっと戻してその場を去っていく。
【テギル 仲間の元へ】
チェ将軍からワンソンが手がかりをつかんだと聞いたテギルは、ワンソンが意気揚々と情報を話し、分け前を100両出してくれと無邪気に話す姿にふと目線を移す。
テギル:ワンソン…(手元の枕をワンソンに投げつける)
ワンソン:何だよ、突然すごんだりして…
テギル:お前、金を稼いで何をするんだ?
ワンソン:何だよ、いきなりだなぁ。俺はな…秘密なのにな…。この前仕事でヨジュに行った時、そこにいい土地があったんだが、その土地を買って大〜きな宿を建てる!
ワンソンの夢を聞いたテギルは声を立てて笑った後、チェ将軍にも問いかける。
チェ将軍:夢の言えるほどのことでもないが、冬の食事も心配しなくていい程度、農地があればいいし、家も広く、子供が弓の練習でもできればいいが...
ワンソン:欲張りだな〜家で弓だなんて!
チェ将軍の話を茶化すワンソンを横目に、ソルファにも問いかけるテギル。
ソルファ:私はただ、素敵な男性に出会って、愛されて、食事の心配もせず、それが全てよ
ワンソン:お前が?身の程知らずだな!旅芸人の分際で!
言葉が過ぎるワンソンをテギルが諭すが、傷ついたソルファは部屋を飛び出してしまう。
テギル:お前とチェ将軍の夢は金があればかなうが...チビ助の夢は、一生掛けてもかなわぬ夢だろう?
ソルファの抱く悲しみに、自分のやるせなさが重なり、テギルはそのまま眠りにつく。翌朝、夜が明けても動き出そうとしないテギルを急かすワンソン。テギルの様子がいつもとは違うことに気づいたチェ将軍がテギルに“何かあったのか?”と声をかける。
テギル:行かなきゃな...家に帰ろう!何をしてる?漢陽に帰るぞ...
チェ将軍とワンソンが驚いて理由を尋ねても、テギルはただここにはソン・テハはいないと言い通す。500両の賞金を目の前に諦めきれないワンソンが、自分だけでも行くと意地を張ると、テギルはワンソンに“やめろ!”と大声を出し、ついにワンソンに手を出してしまう。殴り合いを始める二人に、チェ将軍が真剣を手渡す。真剣を手にした二人が勝負を始めようとするが、テギルは短刀をワンソンに向けることができない。チェ将軍に促され、外に出て風に当たるテギル。
チェ将軍:突然戻ろうといった理由は何だ?
テギル:ここじゃない。場所を間違えた
チェ将軍:お前、もしかしてオンニョンを見たな?話してみろ、オンニョンを見たか?
テギル:俺が見つけたなら、手ぶらでは帰らないだろう?。捕らえるか、殴るか程度はしたさ
チェ将軍:それなら何故だ?
テギル:俺たち、もうやめよう、チュノ師…
チェ将軍:突然何の話だ?
テギル:この仕事が好きか?
チェ将軍:誰が好きなものか…
テギル:だからやめようって。俺はもう嫌だね。女を捜して朝鮮中を飛び回るのは疲れたし、奴婢がボロボロと涙を流すのを見るのも、命を狙われ、毎日ヒヤヒヤしながら生きるのもうんざりなんだよ...
チェ将軍:...お前、オンニョンに会ったんだな?
テギル:利川(イチョン)にな、農地2万坪買った。家も建てている。農地の隣に将軍の家、向かいに俺の家、往来の多い通りはワンソンの宿も建ててる。まぁ、まだ支払いの途中だけれどな
チェ将軍:金はどこから出てきた?
テギル:どこから出てきたって?俺がこれまで稼ぎをくすねたのが一度二度だと思うか?お前らに任せたらどうなっていたか分からないし、一生このまま生きるわけにはいかないだろう?俺たちも他の奴らみたいに、たとえ1日でも手足を思う存分伸ばして、人間らしく生きてみないか?
チェ将軍:本気なのか?
テギル:本気さ…どれほど幸せだろうな!家も買って!土地も買って!皆一緒に暮らすぞ!…オンニョンも、オンニョンも見つけたら…どんなにいいだろう…
チェ将軍は、テギルの様子から、彼がテハと暮らすオンニョンの姿を見たとを確信する。
チェ将軍:オンニョンは、幸せに暮らしているのか?
テギルは何一つ答えられないまま、涙をこらえながら無理に笑顔を作る。そんなテギルに優しく語り掛けるチェ将軍。
チェ将軍:もう帰ろう、漢陽へ...
そんな二人の前にソルファがやってくると、テギルはソルファにも餞別の反物でも買ってあげたいと言い、ソルファを連れて市場へ向かう。テギルはその場で買い物に出かけてきたオンニョンと再会し...
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