【テハとテギル 処刑場】
イ・ギョンシクの陰謀により、何の手続きも踏まずに処刑場に送られることになってしまったテハとテギル。テギルの首を縄が締め付け、徐々にテギルが意識を失い始めると、官軍に紛れて密かに様子を見守っていたチョン・ジホが動き出す。
さらにそこへ清国の使臣ヨンゴルテが送り込んだ武官らがテハを救いに現れ、突然の襲撃にあたりは騒然とする。救い出されたテハは、吊るされたままのテギルの方へと振り返りると、テギルの首を締め付けている縄を狙い、手にした刀を投げる。テハが投げた刀が縄を斬りおとすと、チョン・ジホがテギルの元へ駆け寄り、何度も名前を呼びながらテギルの胸を強く叩き続ける。とうとう意識を取り戻したテギルは、官軍の兵士を振り払うと、チョン・ジホと共にその場から逃走する。その様子の一部始終を見ていたオッポクは、かつて自分を捕らえた推奴師イ・テギルの後を追っていく。
テハを狙い官軍が放った矢がヨンゴルテの部下ヨンイの胸に突き刺さると、彼らは人目を避け、姿を隠すが、ヨンイは命を落としてしまう。後ろ髪を引かれる思いでヨンイをその場に置き、兵服に着替えてヨンゴルテの元へと向かうテハ。
【イ・ギョンシク チョ学士と】
チョ学士を懐柔し、仲間の情報を集めようと考えたイ・ギョンシクは酒の席へとチョ学士を呼び出す。ところがチョ学士はイ・ギョンシクの申し出を受け入れようとせず、断固とした態度をとり続ける。ソン・テハが死んだと嘘の情報を伝え、さらにチョ学士の心を揺さぶるイ・ギョンシクは、何でも好きなようにしていいと、全面的に後ろ盾する意思を表し、同志の名を知らせろと忠告する。
【テハ ヨンゴルテの元へ】
ヨンゴルテ:ソン将軍!会いたかったぞ
テハ:お変わりありませんでしたか?
ヨンゴルテ:さぁ、座ってくれ
テハ:ヨンイが…先に逝きました
ヨンゴルテ:ヨンイはどこに置いてきた?
部下:連れて来る余裕がありませんでした...
部下はヨンイの髪を取り出すと、ヨンゴルテに差し出す。
ヨンゴルテ:絹で包んで故郷の地に埋めてやれ
テハ:私は、すぐに発たなければなりません
ヨンゴルテ:どこへ行くというのだ?ここは朝鮮で最も安全な場所だ
テハ:ソッキョン様をお連れしないといけません
ヨンゴルテ:どこにいらっしゃるのか聞かせてくれるなら、部下を向かわせる
テハ:婚礼を挙げました。私の妻がソッキョン様をお連れしていますが、滞在していた場所から離れています
ヨンゴルテ:ではどこにいらっしゃるというのだ?
テハ:実家がヨジュにありますので、そこにいると思います
ヨンゴルテ:女性の身で王孫を連れて…
テハ:思慮深い女性です。勇敢でもあります。ですが、何が起こるかわかりませんので、急がねばなりません...
その頃、どこへ向かっても人相書きを手にした役人の姿が見える中、ヘウォンはソッキョンを連れて寒さをしのぎながら実家のあるヨジュへと向かっていた。
ヨンゴルテ:今動けば、城の外へ出る前に捕まるだろう。左議政がすでに監視している可能性もある
テハ:殿下に、狩りをしようと申し出てください
テハ:狩りか。いい考えだ。狩りに出る我々に紛れれば、外に出られるだろう
【テギル チョン・ジホと山中へ】
逃亡中に背中に矢を受けてしまい、瀕死のチョン・ジホを山中まで連れて行ったテギルだったが、歩く力を失ったチョン・ジホは、少し休もうとテギルに声をかけると、雪の残る地面に横たわり、青空を見上げる。
チョン・ジホ:こうして横になると、はっきりと、空が見えるんだな
テギル:起きろよ
ジホ:こいつ。犬でさえ3日間は主人を忘れないのに…
テギル:俺は虎だ
ジホ:そうだった!テギル、うちのテギルは虎だった!
テギル:早く起きろよ!
再びチョン・ジホを抱きかかえ歩き出すテギルだったが、歩く力が残っていないジホは、喀血し、倒れて木にもたれかかる。
テギル:本当にもう歩けないか?道端に捨てていこうか?知ってるだろ、兄貴思いの弟にも限界がある
ジほ:テギル...訓練院のファン・チョルンだ。俺とお前を除いた仲間皆を殺した…だからだな、お前と一緒に復習しようとしたのに。だから今日お前を助けたんだ
テギル:夢がデカイな
ジホ:テギル、俺が教えたこと覚えてるか?
テギル:もちろんだ。恩は返さなくても仇は絶対に返す。いいことを教えてもらったよ
ジホ:昔の俺なら矢が12本飛んできても平気だったのにな…
テギル:もう喋るなよ
徐々に弱っていくジホを前に、テギルはオンニョンに再会したことを打ち明ける。
テギル:俺な、オンニョンを見つけたよ
ジホ:どうかしてるぜ。どうでもいいことしたな…
テギル:だよな…
ジホ:俺が見つけてやると言っただろう?
テギル:はいはい、だがな、幸せに暮らしていると思ったら、そうでもなかったようだ
ジホ:言うことを聞かないからだ…この兄貴が、見つけてやると言ったのに…
テギル:いいことを教えてくれたなら、素直に従っただろうが、俺の知る限り兄貴ほど下劣な奴は見たことがない。チャッキを除いてな
ジホ:こいつ、心配するな。生きていればもっと下劣な奴に会うさ
テギル:経験することはもう十分経験したさ
ジホ:世の中は、経験だけで分かるものじゃない。一発食らわないとな…。なぁテギル、テギル...テギル…それでもお前は、俺の最後の道のためにこの服を作ってくれたな…
テギルを強く抱きしめると、ジホは自らの死を覚悟したように口に小銭を入れる。
ジホ:だがどうしてこんなに足の指が痒いんだろうな…最後に、気持ちよく…兄貴の足の指を…掻いてくれないか、テギル!
テギル:まったく汚いことを頼む兄貴だよ…あ〜臭いな。くすぐったいか?気持ちいいだろう?どうだ?久しぶりに掻いてもらって気分がいいだろうな
ジホの返事がないことに気がつくテギル。
テギル:何故黙ってる?うん?気分がいいかって聞いてんだよ!
ジホの死を悟ったテギルの胸に、悲しみと痛みが押し寄せてくるが、その感情を必死でこらえながらジホの足を口元に引き寄せ、息を吹きかけて温め始める。
テギル:兄貴、足がカッチカチに凍ってるぞ..温かいだろ?
そこへ官軍の兵士たちがやってくると、テギルは一瞬で包囲されてしまう。
テギル:お役人様、罪を犯しました。一言だけ言って立ち上がりますから...(ジホを見て)儲けは山分けだ、兄貴!
官軍の兵士を次々と倒したテギルは、周囲が静かになるとすぐにジホに歩み寄り、胸元から稼いだ金を取り出すと、ジホに持たせる。
テギル:これ兄貴の分だ...見たか?俺はテギルだ!イ・テギル!兄貴並みの奴が大勢来たところで、俺は死なない。それを知ってて来たのか?兄貴、兄貴がしてくれたことって何がある?オンニョンを早く見つけてくれていたら、そうしてくれたら...こんな姿で死ぬこともなかっただろうに…
そこへ、密かにテギルの後を追ってきたオッポクが現れ、敵だと感じていたテギルへ銃口を向ける。
テギル:え?そうしていたらこんな姿にならずに済んだんだよ、この間抜け!そうだったらこんな姿で死ななかっただろう!チョン・ジホ!虫けらのように生きて、虫けらのように死ぬのか?“足の指でも掻いてくれ”が遺言なのか?おい?
テギルの瞳から涙が流れ出す。
テギル:兄貴が死んだからって、俺が泣くとでも?経験上だな、“泣いても人生変わりない”と知ったんだ...
涙がこみ上げ、こらえきれずに座り込むテギルは、再びジホの足を顔に寄せ息を吹きかける。その姿を見ていたオッポクは、引き金を引くことができずにその場を後にする。
【オッポク チョボクと】
テギルを撃つのをやめて戻ったオッポクは、チョボクに心情を打ち明ける。
オッポク:分からなくなってきた…大業を成すからと、人を殺していいものかどうか。人の命ってのは、どんな命にも意味があるような気がしてな。お前、獣が泣くのを見たことがあるか?
チョボク:泣かない獣はいないでしょう?
オッポク:虎刈りの訓練のとき、こんな話を聞いた。獣が鳴いているときは銃を撃つものじゃないって。次の機会に撃てばいいって話だ
チョボク:誰のこと?
オッポク:獣だよ。さぁ、帰ろう。牛のえさを作る時間だ
オッポクとチョボクの前に、他の家に売られた奴婢パンチャクの姿があった。主人にひどい扱いを受け涙を流すパンチャクを、涙ながらに送り出す親の姿を見ていたたまれないオッポクとチョボクは、なすすべもない無力さに胸を痛める。
【テハ 城外へ】
ソン・テハが逃亡したとの報告を受けたチョルンは、すぐに清国のヨンゴルテの仕業だと察すると、イ・ギョンシクの命令を聞かずに独断でテハの追撃を始めようと動き出す。チョルンの推測どおり、狩には同行せずに城の外へとすぐに出ることを決意したテハに、ヨンゴルテは準備していた刀を手渡す。
ヨンゴルテ:ソン将軍と再会したら、試合をしようと準備していたものだ。王孫を探し、ともに清へ行こう。そこで勢力を拡大してから王座に就けばよい
テハ:ソッキョン様を見つけ出したら、現世子の鳳林大君にお会いして、ソッキョン様の赦免を請うつもりです。まず、ソッキョン様の安全を確保するのが先ではありませんか?
待っていると答え、テハを送り出したヨンゴルテは、密かに部下にテハの後を追跡させる。
【テギル 城外へ】
ジホを丁寧に埋葬したテギルは、城から抜け出すと、オンニョンの実家のあるヨジュへと向かう。翌朝、道中で官軍に捕らえられたヘウォンが連行されていく姿を見たテギルが彼女に向かって走り出した途端、テハがテギルの行く手を阻む。
テギル:国も衰退したもんだな。逃げた奴婢が朝鮮をウロウロしているなんて
テハ:お前はお前の道を行け...これは私の問題だ
テギル:それをお前が言える立場なのか?国中で王の孫だか世子の子だかを捜しまわっているのに、それを放っておいて“名分ある死”を遂げるといった奴が、今になって何を言う
テハ:そのお方は、王孫である以前に、私の息子だ…
テギル:結局は王孫だろう?どのみち息子じゃないってことだ。前もって気づいていたら、ここまでは来なかった…
二人は刀を持たずに素手で勝負し始める。その間、官庁に連行されたヘウォンは、オモク村のキム・ヘウォンだと身分を明かし、子供を連れて実家に戻る女性をなぜ捕らえるのかと気丈に振舞っていた。
テハ:お前に付き合う時間はない…
テギル:おい奴婢、ひとつ聞こう。お前は誰を救おうとしているんだ?王の孫か?それともオンニョンか?
テハ:言ったはずだ?私はオンニョンなどという女は知らないと
テギル:結局お前たちは同じだ…下劣な両班でしかない
テハ:関わるなと言ったはずだ
テギル:...お前はお前の仕事をしろよ…俺は俺の仕事をするだけだ…
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