【テハとテギル ヘウォンの元へ】
地方の官庁に捕らわれたヘウォンが身元を明らかにすると、部下から事情を聞いた地方官は、キム・ソンファンという名で商いをしていたヘウォンの兄の消息を、彼女に伝えようとする。
−徳の高い両班だと?お前の兄キム・ソンファンは…
その瞬間、身を潜めていたテギルが地方官の背後に回り、その首に刀を突きつける。
地方官 はテギルの脅し文句に全く怯まず、周囲で見守る官軍の兵士らにテギルを捕らえるよう指令を出す。兵が動き出した途端、別の場所に隠れていたテハが現れ、命を奪わないよう配慮しながら次々と兵士をなぎ払う。その間、テギルはオンニョンの無事を確認すると、テハとともに官庁の兵士らと戦い始める。全ての兵士を気絶させたテハは、テギルを厳しい表情で一瞥し、忠告する。
−ここで市場で通用する脅迫などが通じると思ったか?命よりも名分が重んじられる場所であることを、忘れるな
王孫ソッキョンを守るヘウォンの姿を、テハは複雑な想いを抱きながら見つめると、彼女の元へ一歩一歩近づいていく。ヘウォンに何があったのかと問いかけられても、彼女が奴婢だったことを隠していたことに対して受けた衝撃の大きさに戸惑ったままのテハは、ヘウォンから視線をそらし、何も答えることができない。
日没まで身を隠せる場所を探そうと言うテハに従い、ヘウォンとテギルは人気のない小屋に一旦身を隠す。腰を下ろしてからもじっと黙ったままのテハに、ヘウォンが不安感を抱く。
ヘウォン:何があったのですか?あの日から姿を消されて、どういったわけで一緒に現れたのですか?
テハ:日が暮れたら、漢陽へ戻ります。
テギル:笑わせるな。なぜあんな場所へ?虎たちが大きな口を開けて待ってる場所に…
テハ:チョ学士がどうなったのか、確認しなければならない
ヘウォン:どうなったとは…何かあったのですか?
テハ:状況しだいでは、世子にソッキョン様の赦免を請います
テギル:(冷笑し)訳の分からない事を言ってないで、身を隠して生きろよ
テハ:お前の問題ではない
テギル:朝鮮中で捕校たちが嗅ぎ回っている。一旦夕立を避けるべきだな。月岳山の霊峰へ行けば、安全な場所がある。命を粗末にするものじゃない。
ヘウォン:ナウリ(お役人様)、どうして返事を避けているのです?何日待っても戻られないので、良くないことが起きたと思っていました。兄にソッキョン様を預けて、ナウリを探そうと思っていました。それでもこうしてお会いできましたので、安心しました。どう考えても、私はナウリのそばにいる資格はありません。ソッキョン様をナウリの元へお連れしたら、去る決心をしていました。...私はナウリを騙していました。
そこへ官軍の捜索が入り、三人は屋根裏で息を潜める。
【オッポク 奴婢の革命軍と】
近いうちに宮殿の米や材木を集める場所を襲撃し、官庁の奴隷の証書がある場所である掌隷院に放火する計画をリーダーに聞かされたオッポクは、徐々に現実味を帯びてくる革命に向け、仲間と共に士気を高めていた。
【ヘウォン テハに告白】
身を隠すテハとヘウォンの間に重苦しい空気が流れる中、テギルが沈黙を破る。
テギル:行こう。逃げるなら人影の少ないときが一番だ
テハ:方向が違うのだ、別々に動こう
テギル:訳のわからないことを言うな。王孫だと明らかになれば、同志が捕らえられ皆殺されるはずだろう?だから、誰も知らない場所に隠しておけと言っているんだ
テハ:お前と議論する余裕がない。我々はどのみち進む道が違う。
ヘウォン:私も行きます...
テハ:どこへ行くというのです?
ヘウォン:兄も心配ですし…先ほど申し上げたはずです。もう一度言えと仰るのですか?
テハ:今度にしましょう
ヘウォン:避けて先に延ばしても、解決する問題ではないということです。すでにナウリもご存知で、私も知っています。無理をして、隠し避けています。違いますか?
テハ:…
ヘウォン:私の名前は、オンニョンでした
テハ:私はそんな名前の女性は知らぬ!
ヘウォン:オンニョンという女は、随分前に死にました。そして、キム・ヘウォンという名でふたたび生まれたのです。
いたたまれない想いで二人の話を聞いていたテギルは、静かに立ち上がり、一人外へ出る。
ヘウォン:ナウリを騙すべきではありませんでした。奴婢という、その言葉が恐ろしく、口にする勇気が出来ませんでした
テハ:これ以上聞きたくありません。私はオンニョンという女は知らぬといいませんでしたか?
ヘウォン:もうご存知でいらっしゃるでしょう?想い人がいたことをお話しましたよね…。その男性は、高官になり、この世を変えたいと言いました。身分の区分のない平等な世の中を、一人の女のために、世の中を変える勇気を持っていた方でした。その勇気と愛が私にはもったいないほどで…。
その頃、外で過ごしていたテギルは、オンニョンの得た新しい名前を地面になぞってみると、一人つぶやく。
テギル:キム…ヘウォン…
ヘウォン:亡くなったと思っても、その方が忘れられませんでした。そしてナウリに出会いました。私が婚礼を挙げたのは、ナウリが両班だからではありませんでした
立ち上がるヘウォン。
ヘウォン:それでもナウリが両班である限り、私が去らなければなりませんね…。良い世の中を作ると仰いましたよね?その世の中は、身分が違うからと、人の心を残酷に切り裂く世の中ではありませんよね?二度と私のような人間が生まれないような世の中にしてください。短い時間…ナウリに罪だけ犯して去ります
テハが抱くソッキョンの頬に手を伸ばすヘウォン。
ヘウォン:ソッキョン様もお元気でいらしてください…
涙を流して部屋を出るヘウォンだったが、テハはあまりの衝撃にソッキョンを抱いたまま身動きさえ出来ずに立ち尽くす。ヘウォンが出て行こうとする姿を悲痛な表情を浮かべて見つめるテギル。
妻が自分の元を去ろうとしているのは、自分の考えが誤っていたためだとようやく悟ったテハは、外に飛び出しヘウォンを引き止める。
テハ:待っていてくれますか?
ヘウォン:何をです?
テハ:民の苦しみを悟ろうとはしたが…身分の差がなく、奴婢がいない世の中までは考えていませんでした
ヘウォン:無理をなさらないで
テハ:奴婢に落ちても、考えが及びませんでした。どれだけ時間がかかっても、私が考えを正すことができるまで、そばにいて、待っていてくれませんか?
ヘウォンの手を握り締めるテハの瞳に涙が浮かぶ。
テハ:約束しましたよね?互いの義理を守ると…こうして去るのは義理ではありません..
ヘウォンとテハとの心が通じ合う姿を見届けたテギルは、先に部屋へと戻っていく。
【チョルン イ・ギョンシクの命令に背く】
チョ学士の懐柔に成功したイ・ギョンシクは、謀反の首謀者イ・ジェジュン大監のいる水原(スウォン)へ向かえとチョルンに命じる。ところがイ・ギョンシクを信用できなくなってしまったチョルンは、命令を拒否すると、ソン・テハと王孫の捜索を続けるといい、自分の意志を貫こうとする。テハとテギルの情報を得たチョルンは、スウォンへは行かずヨジュへ向かうとイ・ギョンシクに断言する。
チョルンは、オ捕校からテギルの情報を得ると、徐々にテギルらの足跡を追い始める。
【テハ一行 脱出】
日が沈み、テハとテギルがヘウォンとソッキョンを守りながら動き始めた途端、捕校らに見つかってしまう。テハが捕校らと格闘する間、テギルが震えるヘウォンの元へ駆け寄る。
テギル:あいつは腕が立つが、話が通じない。良く聞け、月岳山の霊峰へ向かいチャッキをたずねろ。分かったか?月岳山の霊峰だ…
ヘウォンの抱いていたソッキョンを抱くテギル。
ヘウォン:若様…
テギル:お前は絶対に生き延びろ…
捕校を振り払ってテハは、ソッキョンとテギルの姿が見えないことに驚き、ヘウォンの手を取り走り出す。
【月岳山】
月岳山のチャッキの元では、逃亡した奴婢たちが身分差のない暮らしを送り、平穏な時間が流れていた。怪我を負ったチェ将軍とワンソンもまた、チャッキの元で傷を癒していた。
【テハ ヘウォンと】
ヘウォン:ナウリ、心配なさらないでください。信用できる人ですから。ナウリ…申し訳ありません。ソッキョン様をお守りできずに…
焦燥感に駆られる様子のテハに必死で訴えるヘウォンの言葉に、ふと立ち止まり振り向くテハ。
テハ:謝罪などしないでください。彼が何者かはまだ良く分からないが、悪人ではないだろう
ヘウォン:私もそう信じています
ヘウォンの口からテギルのことを聞くたび、複雑な想いがするテハは、この言葉に目を伏せる。
テハ:...そして夫人のためなら何でもできる人でしょう…
山中を進む二人の耳に、子供の泣き声が聞こえてくる。急いでその声のほうへ向かう二人の前に、テギルが泣き続けるソッキョンを怒鳴る姿が映る。
テギル:泣くな!これ以上泣いたら承知しないぞ!やめろ!
子供をあやしたことなどないテギルが、不慣れな様子でソッキョンをあやしていると、ヘウォンが駆け寄りソッキョンを抱き上げる。
テギル:チュノをするよりガキを面倒見るほうが手が焼けるぜ
テハはテギルのこの言葉に怒りを抑えられず、テギルの頬を殴ってしまう。
テハ:ソッキョン様に無礼なことを申すな!そなたもこの国の民だ!
テギル:...ここがどこだか分かるのか?王様さえ諦めた夜叉の地だ。(周囲に呼びかけるように)東大門のイ・テギルだ!隠れているのは分かっている、早く出て来い!
盗賊らに囲まれたテハとテギルとヘウォン。実はテギルの親しい仲間でもある彼らに保護されながら、霊峰で暮らすチャッキの元へ向かう。
第18話 あらすじ / 第20話 あらすじ