鶴の舞の修練中、舞に集中できずに上の空だったチニは、突然舞をやめてしまい、ペンムの問いかけにも答えずに部屋に戻って
いく。妓女らにペンムの前へと連れ戻されたチニは、何故舞わぬかというペンムの言葉に、今は舞いたくない、舞えない、と
反発する。チニがペンムの罰を受ける頃、都城のプヨンは着実に鼓無を習得し、舞譜を仕上げていく。3日間、水も与えられずムチで打たれるチニだったが、舞を舞うことはできないと頑なに拒否し続ける。痛々しい姿を見ていられず、ムミョンがチニを助け、母ヒョングムの元へ連れて行く。
ヒョングムは、チニが舞うのをやめたのがキム・ジョンファンへの想いが捨てきれないためなのかと問うと、チニはその考えを否定する。
その頃、王の元へ戻ったチョンファンは、宴の規模を小さくするべきだと提案し、他の臣下の反発を買っていた。チョンファンの言葉に動かされた王は、民と苦痛を共にするためにも宴の規模を縮小すると約束する。
突然教坊から姿を消し、周囲を騒がせていたチニは、ムミョンを連れ、鳥が多く飛来する場所
に足を伸ばし、じっと鳥の動きに心を傾けていた。チニの居場所を突き止めたペンムは、
早速その場所へと向かい、川岸に佇み鳥の姿を追うチニのそばへ歩み寄ると、いきなり“教坊へ戻れ”と声を荒げる
。
−私がここで何をしているか、分かりませんか?(鳥たちの方へ目線を移し)あれを見ても、何も感じることはありませんか?
鳥たちの方へ視線を移すペンムに、チニは感想を聞かせてほしい、と続ける。
−ここでお前と無駄口をたたく暇などない!
−まだ何が過ちなのかも、分からない様子ですね...
−何だと?
−あなたの舞譜は偽物よ。あんな偽物は燃やしておしまいなさい。
チニの言葉に衝撃を受け、ペンムは絶句してしまうが、そんなペンムに背を向け、チニはその場を後にする。教坊に戻ったチニの元へ、
ペンムが腹立たしさを抑えきれずにやってくる。
−自信がないなら無いと言え...舞が難しすぎて習えないと、正直に言え!
−その通りです。あの舞は...とても難しい。難しさが尋常じゃないわ。
−やっと
本音が出たな。
−理由は何だと思いますか?これほど難しい足使いや腕使いが、凝縮されているのは...
−そんなことも分からないのか?これほど長い間舞を教えてきたのに、基本からまた教えなければならぬのか?
−基本からまた始めなければならないのは、私ではなく、行首様ではありませんか?
鶴の舞譜をペンムの前にかざすチニ。
−これは、自己顕示欲の塊のゴミでしかないわ。
−この世で一番美しく、神秘的な舞を作るための膏血そのものだ!
−“この舞は、こんなに難しくて、こんなにも大そうなものなのに、誰ができるというのだ”と誇張したいのでしょう?
−ミョンウォル!
−その傲慢さが最大のあだになったのよ。ここには鶴を美しく描きたい舞妓がいるだけ...鶴の心も、その鶴にあこがれる人間の願望すらない。
−難癖をつけるな!
−難癖ですか?
チニの言葉を受け入れることができないペンムの前で、チニは真の鶴の姿を心に抱きながら舞を舞う。その舞の素晴らしさに言葉を失うペンムに、チニは追い討ちをかけるように、真の舞は技をひけらかすことではないと苦言を呈す。鶴の舞を罵り続けるチニを黙って見ているしかないペンムの目に、涙が溢れ出す。ショックを受けたペンムは、取り乱した状態で部屋に戻ると、心配してやってきたクムチュンの前でも動揺を抑える
ことができない。
人生の全てを賭けてきた鶴の舞を完成させようと、ペンムは舞に心を奪われたよう、夜通し舞い続ける中、以前のように舞えなくなった自分自身の芸の衰えに気づくことになってしまう。
亡きウノとの思い出の場所で、チニがウノへと語りかけ、本当の別れをしていると、ペンムが姿を見せる。
−お前が正しかった...お前の言うとおり、あの舞譜は失敗作だ。もう一度、初めからやり直したい。真の鶴の舞を、完成させたい。お前が必要だ...お前が見せてくれたあの動き、あそこから始めよう、お前と私が力を合わせれば...
−嫌だと言ったら?
−チニ...
−ミョンウォルよ!...私の名を呼ばないで。あなたには二度とその名で呼ばれたくないわ。
−私にどうしてほしい?どうすれば、私と再び舞を舞ってくれるのだ?
−ひざまずいて謝って...私にではなく、亡きあの人に...ここで息絶えていった可哀想なあの人に、ひざまずいて頭を下げて。ひざまずき、涙を流し、許しを請って、間違っていたと、懺悔して!懺悔してよ!できないわよね?できっこないわ。人が死ぬことなどなんでもないと、芸に比べれば些細なことだと思ってる...それがまさにあなただから
よ...違う?
ペンムは黙ったまま、チニの前にひざまずく。
−勝ったわ。あの尊大で高慢な行首様に、私が勝ったみたいね。
−満足か?
−でもどうたらいいのかしら?これじゃ満足できないわ。鶴の舞が嫌なの。私は、あなたの執着心の化身になりたくない。恐ろしくて、うんざりよ!
その頃、ピョク・ケスは、私財を投じて鉱脈を発見するのに必死になっていた。ミョンウォルを手に入れたい気持ちを抑えることができないケスは、とうとう鉱脈を発見し、その手柄を王に称えられ褒美は何が言いかと問いかけられると、官妓ミョンウォルを妾としてそばに置きたいと申し出る。その様子を見守っていたチョンファンは、ピョク・ケスの部屋を訪ねると、
ミョンウォルを苦しめるなとケスを説得するが、ケスは当然その言葉を聞き入れようとしない。教坊にもミョンウォルにピョク・ケスの妾になるようにとの王命が伝えられ、ピョク・ケスの子供を宿しているタンシムの目に涙が溢れる。
祝宴が開催されるその場所では、ピョク・ケスを初めとする両班らがミョンウォルが現れるのを今か今かと待
っていた。そんな中、真っ白な衣服に身を包んだチニが現れると、手に持っていたロープを投げつける。
−何の真似だ?それをどこに使うのだ?首でも括るのか?
−さようです。嫌々妾になるならば、この場で死むつもりです。
−そう来ると分かっていた。素直に妾になるような女ではないからな。私の妾がそれほど嫌か?よかろう、ならば妾から逃れる道を教えてやろう。
ピョク・ケスを初めとした文客らと詩合わせをし、勝てば妾にするのをやめるというケスの提案に、チニは思いもよらないことを申し出る。負けたほうが衣服を脱いでいくのはどうかと申し出たチニの無謀な考えに、ピョク・ケスは表情を曇らせる。文才に長けたチニは、次々と詩を詠み、両班たちを黙らせ、彼らは徐々に窮地に追いつめられていく。凍りついたようなその場の雰囲気を和ませようと、そばで見守っていたペンムが口を開き、今日のことは余興であり、これから舞をお見せしたいと申し出る。悔しさの収まらないピョク・ケスは、妓女の舞を見ながら唇を噛み締める。怒りがこみ上げたピョク・ケスは、やめろ、と叫ぶと、彼女たちの舞を侮辱し始める。謝罪にきたペンムにまで杯を投げつけたピョク・ケスに、舞は男の気を引くためのものでしかないと大声を張り上げる。舞などやめて酌をしろというケスの言葉と、自分を“老妓”と呼びさらに罵る様子に腹を立てたペンムは、表情をこわばらせたまま、妓女たちに呼びかける。
−全員立て!お前たちは娼妓ではない!早く立つのだ!
ピョク・ケスをじっと睨み付けるペンム。
−一度始めた舞は...何があってもやめてはならぬ。それが芸人だ!
ペンムの様子が明らかにいつもと違うことに気づいたチニがペンムを止めようとすると、彼女に突き飛ばされてしまう。ペンムはピョク・ケスの元へ歩み寄る。
−あの子達を最後まで舞わせてください。舞った後、酌をいたしますから。
−つたない舞など必要ない!
ケスの言葉に怒りがこみ上げたペンムは、ケスらの卓をひっくり返してしまう。
−無礼者!
...卑しい身分だからといって、芸まで見下すのか?舞は...舞はまだ終わっていない!