ソンナン市響の 練習日初日、カン・マエの前に現れたコヌは、かつての団員たちのいる練習室の後ろに立つと、彼らと一緒に研究団員として参加するとカン・マエに伝える。カン・マエは元団員らに部屋から出るように言うと、コヌに後で話そうと一言伝え、練習を始める。練習室から出た団員らはカビョンの提案でベートーヴェンの「第九」の楽譜を受け取り、変わらず練習を続けることに意欲を示す。コヌの考えが理解できないルミは、コヌにメールを送り、二人は外で話を始める。ルミになぜ研究団員になるのか問いかけられたコヌは、理由を答えずにはぐらかす。
− 何よ、自分の口で言えないほど恥ずかしい?それなら代わりに言ってあげようか?カン・マエになんとか団員として選ばれたけれど、そうそうたる顔ぶれが怖くなって、追いつくのも面倒で逃げたくて、そこに傍にいると気が楽な人たちがいると気づいて、下っ端よりはリーダーの方がいいと思ったからじゃないの?
− 何?...今、俺は何故お前が腹を立ててるのか理解できない。俺に何だってそんな態度を取る?あえて言うなら、この前の公演の日カン・マエに聞かれたんだ、自分の考える幸せは何かと、そのために行動しろと。俺は仲間たちとオーケストラで指揮をするのが一番好きだ。だから来ただけだ。
−一言で言うと遊ぶのがいい、そうなのね?
−おい!
−考えてみてよ。それほどの実力があり市響の団員になれたのにもっと上を目指さなきゃ、何故下りてくるの?
− 上に行ってどうすると?俺が今やりたいのは月給をもらう市響団員じゃない、指揮なんだ!お前達と一緒に研究団員をしながら、勉強して、大学も行って指揮を学んで、そうしようと思って来たよ!なのにこんなふうにお前が何故怒る?
−怒る?いいえ、私も初めは誇らしかったわ。でも私たちは落ちて、あなたは選ばれて、その時は少しうらやましかったし、嫉妬もした。でもあなたは本当にいい奴だから、優しい奴だから、思う存分祝おうと思ってた。ところが今は、あなたが言った通り腹が立つ。あなたは欲がないの?出世したくないの?
−出世が何だって?出世して有名になり、それがそんなに重要かお前にとって?
−どうやらいい奴なんかじゃない...馬鹿なのね。
近くで話を聞いていたカン・マエが口を挟む。
−O.K.! 良かったぞ、そこまで。
コヌとルミに近づくカン・マエ は、ルミが言う通り、コヌには欲が足りないと言い、研究団員となったコヌへいきなり解雇を宣告する。(*詳しい会話はan impressive performance7へ )
コヌが解雇されたことを知ったルミは、カン・マエに直談判に向かうが、逆に耳の診断書を出すよう切り出され、言葉につまる。正常な状態だから診断書などない、と言うルミの言葉を信じられないカン・マエはルミの前で友人の医師に確認の電話をする。ルミの耳の状態が深刻であり、手術で腫瘍を取り除くことはできても聴力は失うと知らされたカン・マエは、電話を切った後、ルミをじっと見つめる。
−どこまで間が抜けている!
−(事情が伝わったと思い、戸惑うルミ)…ああ、私はわざとそうしたわけではなくて...
−特別治療費を払わないと言ったそうだな!医者を指名して治療を受けたなら治療費の他に特別に払うべきだろう?その13,000ウォンが惜しくて騒ぎ立てるのか?恥ずかしいと言われたぞ、友人に!
−(安心したように笑って)ああ、私は先生の紹介だったから必要ないと思って…ハハハ...
カン・マエが知らない振りをしたことで、ルミは安心し、コヌのことでカン・マエを訪ねたことをすっかり忘れて部屋を出て行く。コヌの事を思い出したルミがカン・マエの部屋に戻ろうとすると、カン・マエが部屋から出てくる。憮然とした表情でルミをじっと見つめるカン・マエ。
−凛々しい…これが凛々しいはずがない、間抜けなだけだ。確かに、人生それぞれだ。...ルートヴィヒ・ヴァン・ドゥ・ルミッシ!
何のことか分からないルミは、いつの間にかカン・マエに煙に巻かれてしまう。
一方、市響練習室では研究団員と市響団員たちの間で揉め事が起こり、その場に戻ったカン・マエが戻ってきていたイ・ドゥンの顔を見て事情を察し、騒ぎの原因となった団員らは練習室から追い出されてしまう。
その頃、コヌはカン・マエに再び受け入れてもらうため、トイレの中で用意したメモを読み上げていた。そこにたまたま居合わせたチョン・ミョンファンがコヌに興味を抱き、コヌはミョンファンの前でトランペットの腕前を披露することになる。コヌの実力を褒め、何故解雇されたのかコヌに尋ねるミョンファン。
−毒気なしで音楽をしてはだめでしょうか?楽しむのはいけませんか?音楽は元来楽しむものですよね?
−確かに…モーツァルトも楽天家だった。だが、「ミゼレーゼ」という聖歌を知っているか?とても美しい歌だ。ところが教皇庁がその聖歌があまりにも美しく、楽譜を隠してしまった。するとどこかの誰かが、メロディーが9つもあるのにだ、たった一度だけ聴いて楽譜に写したそうだ。それも14歳で。
− 誰ですか?もしかして先生ですか?
−いや、モーツァルトだ。天才、それこそ天才だ。そういう人物だけが楽しみながら仕事ができる。正直言うと俺も羨ましいよ。とはいえモーツァルトが作曲している時、楽しかっただろうか…考えてみるとコヌはどう思っているかな?お前ではなくお前の先生のコヌだ。行って聞いてみるか?気になるな。お前俺の弟子になるんだろう?かつての先生カン・ゴヌのところへ行って許可をもらわないとな。着替えてくる!
コヌが慌てて声をかけるが、コヌの呼びかけが聞こえない様子のミョンファンは強引にコヌをカン・マエの家へ連れて出かける。ソファーに座ったカン・マエは少し沈黙した後、コヌに切り出す。
−私にクビにされた途端訪ねたのがこの程度の奴なのか?
−おいおい、この程度とはひどいな…お前がそんなにひねくれているからこんなに素晴らしい原石に気がつかず投げ出すんだよ。
−原石?そいつは砂利だ。それも工業用だ。
−O.K!それはモノになるな。お前はいつも逆のことを言うからな。
−お前、犬を飼っているか?
−犬?面倒で飼っていないが、熱帯魚を少し飼っている。
−気をつけろ。あいつは思うようにならないと熱帯魚を全てつかまえて刺身にして食べる奴だぞ。
− ハハハ!そうか?(コヌを見て)じゃあどうしようか、お前さえ良ければ受け入れて俺の弟子にする。どうする?俺に習うか、もしくはこの人に習うか…
終始黙っているコヌをよそにカン・マエが答える。
−嫌だと言っただろう!
−お前には聞いてない。コヌに…littleカン・ゴヌ、お前の考えは?俺のところに来るか?それとも彼のところに戻る?
−嫌だと言う方に…あえて習う気はありません。
ミョンファンはコヌの意外な答えに驚き、一瞬三人の間に沈黙が流れる。
−ではこうしよう、1週間。急に決断しろというのもなんだから、私が発つ前までの1週間の間二人とも余裕を持ち...
−連れて行け。
−おい、それでもこいつにとっては一世一代の重要な決断だぞ...
−連れて行け、今すぐに!
カン・マエの冷静さを欠いた様子にミョンファンはコヌに席を外すように話し、コヌが外へ出ると、二人はワインを飲みながら話を続ける。
−お前はモーツァルトが作曲中も楽しかったと思うか?どうだ?
−遊びながら曲が生まれるのか?
−だよな?俺もそうだから…俺も必死だったお前に追い抜かれまいとな。審査員に礼をせずマイナス1点。正論を吐いてマイナス10点、くだらない減点をされるお前に追い抜かれたりしたら…恥ずかしくて死にそうだ。そのうえ俺のイメージが何だ?天才だろう?余裕があるように見せないと。徹夜して鼻血が出ても吸い込まなければならず。顔色が悪い?化粧をしてでも隠したさ。なぜだ?俺は天才だから…。俺がこんなに努力していることを知ったらお前はさらに努力をして、俺を追い抜いただろう…終わりだよ…
−慰めか?
彼の思いがけない心情に触れ、目の前で涙を流すミョンファンを見て、穏やかに微笑むカン・マエ。二人は黙ってワインのグラスで乾杯する。
−俺が見るに、あいつは…俺よりお前に良く似てるよ。行き過ぎた実直さも何かに惹かれれば一直線なところも、それであいつが気に入った。一週間後に訪ねてくれば俺が受け入れる、弟子として。必ず…
翌朝、家を出たカン・マエを待っていたコヌは、許してもらえるならこのまま傍にいたいと申し出ると、カン・マエは1週間せいぜいかしずいてみろとしぶしぶコヌを受け入れる。カン・マエの要求を素直に聞き入れていたコヌが1本のワインのために街中を探し回っている頃、コヌの部屋へ入ったカン・マエが、コヌが採譜した楽譜を手に愕然とした表情を浮かべていた。戻ってきたコヌに事情を聞いたカン・マエは、コヌが一度聞いただけの曲を採譜した事実に衝撃を受ける。コヌの秘められた才能を確信したカン・マエは、1人部屋へ戻ると今まで眠らせていたコヌの才能にもどかしさを感じ、チョン・ミョンファンに連絡を取る。
カン・マエに会うためにやってきたミョンファンが、カン・マエと二人きりで話をする間、コヌが落ち着かずに1階の様子を探りに行くと、ミョンファンがマエの部屋から出てくる。気まずい表情で黙って階段に佇むコヌにミョンファンが声をかける。
−正式に許可をもらったぞ。お前を連れて行っていいと…大丈夫だな?一旦お前の大学の問題は俺が調べてみるから、空港で話そう。
黙ったまま出ていくミョンファンを見送ったコヌにカン・マエが話しかける。
−願っていたことだろう?やってみろ。
突然カン・マエに突き放され、一瞬ためらうコヌだったが、目の前に開かれた夢への道のりに希望が膨らみ、チョン・ミョンファンの元で指導を受ける決心を固め、ルミへと連絡を取る。話を聞いたルミはコヌが夢に向かうため一旦ソンナン市を離れることに寂しさも感じるが、笑顔で背中を押す。ルミを大切に感じ始めていたコヌとは対照的に、ルミはコヌへとまっすぐに向かうことができない理由に気づき始めていた。 翌朝、空港に到着したコヌは、チョン・ミョンファンから思いがけない話を聞かされ、カン・マエの心情を初めて知ることになる。(*詳しい会話はan impressive performance7 part2へ)
チョン・ミョンファンは、唯一のライバルであるマエストロ、カン・ゴヌが、自分に何かを“頼む”と言ったのはこれが初めてだとコヌに伝える。しばらく言葉が出なかったコヌだったが、ミョンファンに謝罪すると、これまでの師でありこれからも師となるカン・ゴヌの待つソンナンへ戻るためミョンファンに背を向け、迷わず走り出す。
その頃、カン・マエはトーベンを連れて出かけた公園にルミを呼び出していた。カン・マエの姿を見つけたルミは大きな声で“先生!”と呼びかけ、駆け寄っていく...。
:::베토벤 바이러스:::
韓国MBCドラマ18部作
(韓国放送日:2008.9.10〜2008.11.12)
企画:オ・ギョンフン/演出:イ・ジェギュ/脚本:ホン・ジナ.ホン・ジャラム/主演:「白い巨塔」「不滅の李舜臣」キム・ミョンミン.「ファン・ジニ」チャン・グンソク.「太王四神記」のイ・ジア。